P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


美神さんからは逃げられない 2

 

・・・

 

番長side

 

「それで、そのGS試験っていつなんですか?」

「今度の土日ね。今は年2回、春と秋に実施されるの。で、今年の春の試験は、今度の20日、21日ってワケ。」

「そらまた、えらく急ですねぇ〜。」

「そう?アンタの時は試験参加は前日に決まったんだから、それに比べたら、まだある程度時間の猶予はある方でしょ?」

 

あっけらかんとそう言う美神さんに、俺は軽く目眩を覚えていた。

 

しかし、考えてみたら、春と秋にしか実施されないとなれば、美神さん的には今回を逃す手はない訳だ。

まだ、問題が解決していないから何とも言えない訳だが、上手くすれば秋頃には、俺は向こうの世界に戻ってしまうかもしれないからである。

 

「まぁ、やると決めた以上全力で臨みますよ。けど、具体的にはどの様な試験なんですか?」

「さっきも言ったけど、試験内容自体はいたってシンプルよ。まず、一次審査で霊力の審査を行うの。霊能力の弱いヤツは、ほとんどここで落とされるわね。で、それを通過すれば、後は受験者同士の試合、って形式になるわ。試合はトーナメント形式で、合格するには二試合勝てばそれでOKね。その後は、まぁ、ある意味成績を決める為だけの試合だけど、成績はそのままその後の仕事に関わってくるから、皆必死だけどね。」

「へぇ〜。」

「俺も、試験を受ける前は結構無茶苦茶な試験だとは思ってたけど、よくよく考えれば理にかなってるんだよなー。プロのGSともなると、悪霊や妖怪とやり合う事になる。それは、好むと好まざるとに関わらず、だ。ま、中には話の分かる連中もいるけど、大半の悪霊は理性が吹っ飛んでるし、妖怪も好戦的なヤツは多い。で、そうなると当然ながら、最低限戦う術は身に付けとかなきゃならん。せっかく資格を与えたってのに、それでポンポン死なれちゃGS協会も困っちまうからなー。つまり、人間相手にやられる様なら、はなっから悪霊や妖怪と渡り合う事はできねー、っつー訳だ。」

「横島クンの言う通りね。中々野蛮な方法だけど、試験にはそれなりに意味があるのよ。」

「なるほど。」

 

確かに、話し合いで解決できればそれに越した事はないだろうが、そもそもその意思疎通すら困難で、有無を言わさずこちらの命を狙ってきたら、それは戦うしかないだろう。

で、生き残る為には、霊力だけでなく、それを活かして戦う術も求められるから、それを測る上でも“試合”という形式にしている、という訳か。

 

「ただ、注意しなければならない点は、GS試験はあくまで霊能者の発掘を念頭に置いてる点ね。つまり、ただの格闘家とか武道家みたいな、強さは持っていても、霊能力は持っていない、ってなると、当然資格を与える訳にはいかないわ。そこで、試合は特殊な結界内で行う事になってるの。その中では、霊力を使わない攻撃は、相手にダメージを与えられない。つまり、いくら強くても、霊力のこもらないパンチは痛くもかゆくもないけど、霊力のこもったパンチならそのまま相手に通るってワケね。」

「なるほど。霊力は持ってないけど強い人、ってのが間違っても試験に合格しない様に、って事ですか。」

「そ。まぁ、そもそも人間、多かれ少なかれ霊力は持ってるモンなんだけど、それをある程度自在に操れないとお話にならないからね。ま、それも、まず一次審査で落とされる仕組みになってるから、どちらかと言えば、純粋な霊能力への習熟度や強さを測る、って意味合いの方が大きいだろうけどね。」

「なるほど・・・。ちなみに、武器なんかの持ち込みもOKなんですか?」

「もちろん。試合は、原則的にルールなしのストリートファイトよ。そもそも、いくら霊能者って言っても、横島クンや鳴上クンの様な、オカルトグッズのサポートなしに戦える能力者の方が稀なの。一般的にはオカルトグッズを駆使して戦うのが普通よ。となれば、武器の持ち込みをNGにしちゃったら、ろくに戦えなくなっちゃうからねー。ただし、持ち込める道具、武器は一つだけになってるけどね。」

「っつっても、カオスのじーさんみてぇに法令違反はダメだけどな?」

「・・・何かあったのか?」

「俺が試験を受けた時の話だけど、カオスのじーさんはマリアを“道具”として使ったのよ。まぁ、それ自体は認められたんだが、マリアには銃火器も内蔵されとったから、それで銃刀法違反で失格になった。」

「そ、それはまた・・・。」

「ただ、マリアに関してはじーさんの迂闊さが裏目に出たけど、しっかりと使用許可がおりている刀剣類なら使用しても問題ないのよ。刀剣類の中には、霊刀、霊剣の類も存在するからねー。」

「マジですか・・・。」

「マジよ。ちなみに、西条さんも霊剣ジャスティスを所持しているわ。実体剣だから、悪霊はもちろん、人間も斬れてしまう代物よ。」

「滅茶苦茶危ないじゃないですか。」

「ま、横島クンは霊波刀で防げるし、鳴上クンならペルソナで対処する事が可能でしょ?と、言っても、さっきも言ったけど、鳴上クン自身にはそれを防ぐ手立てはないかもしれないけど・・・。」

 

・・・まぁ、武器の持ち込みがOKなら、マヨナカテレビで使っていた武器はあるんだが・・・。

もっとも、それは当然銃刀法に引っ掛かる可能性が高いので、大っぴらに持ち込む訳にはいかないのだが。

 

「参ったな・・・。俺はオカルトグッズなんて持ってないぞ。」

「それなら問題ないわ。アンタには()()を贈呈しようじゃないの。」

 

俺の呟きに、待ってましたとばかりに美神さんがとある箱を渡してくる。

中身は・・・、それは十数本の“神通棍”であった。

 

「み、美神さんが他人に物を贈るなんてっ・・・!?」

「それも自分の商売道具よっ!?」

「明日は、槍でも降るんでござろうかっ!?」

 

それを見た横島、タマモ、シロは、驚愕しながらそんな言葉を呟いた。

 

「ったく、いちいちうるさいわねぇ〜。」

「しかし、こんな物を頂く訳には・・・。それなりに値がはる物ですよね?」

「まぁ、そうなんだけど、置いといても無駄になっちゃうだけだからねぇ〜。ま、厄珍あたりに返品してもいいんだけど・・・。」

「えっ・・・?“神通棍”って美神さんのメインウェポンじゃないっすか。予備はいくらあっても困らんでしょ?」

「それは以前の話よ。アンタは知らなかったかもしれないけど、今の私が使ってる“神通棍”は特注品なの。そっちは一般に流通している物で、私も以前は使っていた物よ。」

「はっ・・・?何でまた、特注品なんかわざわざ使ってるんすか?」

「察しが悪いわねぇ〜。今の私は、小竜姫のところで修業した結果、かなりパワーアップしてるでしょ?ほら、今の私が“神通棍”を起動した時、その形状がどうなってるかを思い出してみなさいよ。」

「どうって、女王様らしく、ムチみたいな形状に・・・、って、あっ・・・!」

「そ。私の出力に耐えきれず、通常の“棒”の状態ではなく、“ムチ”の状態になってしまっているのよ。そうなると、どうなると思う?」

「・・・もしかしてっすけど、普通の“神通棍”だと、一回使ったらぶっ壊れちゃうんですか?」

「その通りよ。そもそも、“棒”以外の形状になる事を想定していないからねぇ〜。だから、小竜姫のところでの修業以降、私は特注品の“神通棍”を使ってるワケ。こっちは、私の霊力に合わせて調整されているから、一回使ったら壊れる、なんて事はないわ。ただその結果、一般流通している方の“神通棍”はもう使えないから、ずっと倉庫に眠っていたってワケね。」

「それを引っ張り出してきた、と。」

「そ。さっきも言ったけど、厄珍に返品してもいいんだけど、もし鳴上クンが使う様なら、それならそれでも私としてはいいのよ。どうせ私にはもう使い物にならない代物なワケだし。」

 

そんな事情があったのか・・・。

と、言っても、本来なら返品、返金できただろうに、わざわざ倉庫に置いておいた、ってのがやや不自然なんだが・・・、まぁ、ここは美神さんの厚意に甘えておこう。

結局のところ、今の俺がオカルトグッズを仕入れるツテなんかない訳だからな。

 

「美神さん。ありがとうございます。大切に使わせて貰います。」

「そ。」

 

短くそう答えた美神さんに、横島もシロもタマモも、彼女の分かりづらい優しさを察したのか、さりげなく生暖かい目で美神さんを見つめていた。

 

若干微妙な空気になっているところに、俺はさっそく箱の中の“神通棍”を一つ取り出して、しげしげと眺めてみる。

 

「通常は“柄”の部分しか存在しないわ。それ故に携帯には非常に便利ね。で、霊力を少しこめると、特殊警棒なんかと同じで、刃、棒の部分が飛び出してくる仕組みよ。」

「えっと、こうかな?」

 

ジャキンッーーー!

 

美神さんの説明を受けて、俺は“神通棍”の形状変化に成功する。

・・・うん、やはり刀剣類は使い慣れている事もあってか、数回振ってみるがかなりしっくりくる。

 

「それだけでも人をしばく事はできるけど、もう少し霊力をこめれば、悪霊とか妖怪にも通用する武器となるわ。発光したり刻まれた文字が浮かんでくるから、わかりやすいと思うわよ。」

「えっと、こんな感じかな?」

 

ブンッーーー!

 

「おおっ〜〜〜!」

 

何か、見た目的にはビームサーベルみたいで俺のテンションは上がっていた。

 

「大丈夫みたいね。使わない時は、念じれば元の“柄”に戻るわよ。これで、GS試験は問題ないわね。」

「もう少し慣れておきたいですけどね。」

「それは個人的にやって頂戴。ただ、さっきの話もあるから、一応は護身用として常に一本は身に付けておいた方がいいかもね。」

「分かりました。そうします。」

「鳴上どの。拙者と手合わせしないでござるか?何やら、構えが堂に入っているでござるよ。もしや、かなりの使い手では?」

「どうかな?一応、刀剣類は使った事はあるんだけど。」

「ハイハイ。やるんなら庭でやんなさい。鳴上クンも、“神通棍”に慣れるにはちょうど良い練習になるでしょ。ただし、事務所をぶっ壊したら、タダじゃおかないわよ?」

「わ、分かってるでござるよ、美神どの。」

「どうだか・・・。タマモ、シロの監視、よろしく。」

「ん。」

 

何やらウズウズした様子のシロに誘われ、さっそく手合わせする事になった俺は、シロとタマモと共に事務所の庭に移動するのだったーーー。

 

・・・

 

道化師side

 

「んで、どこまでが本当なんすか?美神さん。」

「・・・何が?」

 

鳴上とシロ、タマモが出て行き、美神さんと二人っきりになったところで俺はそう聞いた。

 

「前の“神通棍”を倉庫にしまいこんでいた、なんて嘘っしょ?美神さんが、わざわざ自分が使えない物をコレクションしておく趣味があるとは思えないし。」

「・・・私が、あの“神通棍”をわざわざ鳴上クン用に用意したとでも言いたいの?」

「違うんすか?」

「・・・ま、半分不正解ね。確かにアンタの言う通り、私には自分が使えない物をコレクションしておく趣味はないわ。それに、横島クンもおキヌちゃんも、基本的には“神通棍”は使わないしね。けど、実はわざわざ取っておいたのは本当なのよ。」

「そりゃまた何で?いえ、美神さんの財力なら、別に余分に持っておいても困りゃしないでしょうけど、ウチの倉庫もそこまで広くないっすよね?」

「半分は偶然よ。たまたま処分を忘れていたの。ほら、色々とあったからねー。」

「・・・ああ。」

 

俺は、美神さんが言外に何を言いたいのかを察した。

確かに色々とあった。

それこそ、他の事を気にかけている余裕がないほどに。

 

ただ、その後は多少落ち着いたワケだし、処分するタイミングはあったのだろうが、それでもわざわざ取っておいた、って事か?

 

「んで、処分しようかなー、って思ってたところに、イザナギさまと鳴上クンがこっちに現れたってワケ。で、もしかしたら必要になるかもと思って、今度は意図的に取っておいたのよ。別に私がそこまでする必要はないんだけど、イザナギさまにも頼まれちゃったしね。“もしかしたら、悠くんに武器が必要な時が来るかもしれない”ってさ。」

「・・・なるほど。イザナギさまは、今の状況を予知していた、と?」

「さあ?神様もそこまで万能じゃないと思うけど、多分アンタもそうだけど、鳴上クンも所謂“巻き込まれ体質”だから、そう言っただけじゃない?ま、そんな事もあって、今回、鳴上クンに取っておいた“神通棍”を渡した、ってワケよ。なんだかんだ言って、ひのめの件でも世話になってるしね。私のお下がりだけど、ま、何かの役に立つならそれもいいでしょ。」

「そういう事っすか。」

 

俺の予想は外れたワケだが、それでも美神さんが他人の為に色々と動いていたのを、俺は微笑ましく思っていた。

・・・いや、鳴上の為にそこまでしていた美神さんに、軽くやきもきする思いもあったのだが。

 

「不思議なヤツっすね、鳴上って。ま、イザナギさまから金塊を貰っていたってのもあるでしょーが、()()美神さんを動かしちまうなんて・・・。」

「・・・少し気になる言い方だけど、言わんとする事は分かるわ。彼には、多分周囲を動かしてしまう様な“何か”があるのかもね。それこそ、アンタと同じよーに、ね。」

「・・・えっ?」

 

いたずらっぽく微笑む美神さんに、俺は一瞬ドキッとしていた。

 

すぐにいつもの表情に戻った美神さんだったが、それはいつもとはまた違った、別ベクトルの魅力であった様に俺は感じていたーーー。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると嬉しく思います。
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