続きです。
・・・
道化師side
「やったぁ、やりましたよ、横島さん!鳴上さんが、無事にGS試験に合格しました!!」
「あ、ああ、そうだな、おキヌちゃん。」
幽霊だった時の名残か、思いっきり抱きついてきたおキヌちゃんにドギマギしながら、そう答えた。
ま、まぁ、この程度は想定通りだ。
と、言うのも、俺は鳴上とは修業仲間であるから、ヤツの実力を把握している為である。
それ故に、ペルソナ能力を使わずとも、鳴上のヤツならこれくらいはやってのけると分かっていたのである。
分かってはいたが、とりあえずGS試験に合格した事は、素直に喜ぶべきだろう。
「結局、その実力のほとんどを発揮しないまま、合格しちゃったわねー。」
「くじ運が良かった、ってのもあるんじゃない?二人の対戦相手は、どっちも真っ向勝負タイプだったし、鳴上クンとしてはやりやすかったんじゃないかしら?」
「まさか、ここまでの実力をお持ちだとは・・・。鳴上さんは、あの歳にして、すでに武術に関しては達人クラスかもしれませんね・・・。」
「ま、その分、純粋な霊能力者としてはまだまだ経験が浅いけどなー。もちろん、ペルソナ込みなら霊能力者としても相当なモンだが、持ってるだけなのと、使いこなすのでは雲泥の差がある。そりゃ、俺もお前も痛いほど分かってる事だろ?」
「・・・確かに。」
実は、俺、ピート、鳴上には共通した問題点があった。
それは、“力を使いこなせていなかった”、という事である。
前にも言ったが、ピートはバンパイア・ハーフだ。
つまり、生来聖と魔の両方の力を持っている。
しかし、父親に対するコンプレックスからか、魔の力に関しては中途半端にしか使いこなせていなかったのである。
それ故に、一時はスランプに陥った事もある。
良い、悪いはともかく、ピートは両方を持っており、そしてそれも含めて“ピート”なのである。
だから、変に魔を否定しては、本来持っている力を十全に発揮する事ができないワケで、それでは当然スランプにもなる、って話だ。
結局は、その力をどう扱うかによって、正義にも悪にもなる。
その事に気付いてからは、ピートは一気に成長した。
今では、バンパイアである自分も否定せず、己の信じる“正義”の為に、その両方の力を上手く使いこなしている。
そして俺は、元々はただの無能力者のガキンチョだったが、小竜姫さま、そして“心眼”(俺がいつも身に付けているバンダナに小竜姫さまの神気を吹き込んで生まれた存在だ)の力を借りて霊能力者として目覚めた。
その後、ヘタレな部分はあまり変わらなかったが、一応それなりに霊能力者として成長していったつもりだ。
と、そこまでなら良かったのだが、アシュタロスとの一件の折、ルシオラの献身的な行動によって死から逃れた俺だったが、その結果、俺は
ベスパの妖毒に侵された俺を救うべく、ルシオラが自身の霊基構造を分け与えた結果、俺は半人半魔の存在になってしまったのである。
これに関しては、ルシオラとしても完全に想定外の事態だったに違いない。
本来ならば、“人間”として定着させる予定だったんだろうが、思いの外俺の霊力が強かった事や、“魔族”としての部分の残してしまった事などが原因で(もっとも、詳しい詳細はいまだに不明だが、老師や小竜姫さま曰く、人の身でありながら、後に神や魔に至った者もいるらしいので、特段俺が特別なケース、ってワケでもないみたいだが)そうなってしまったらしい。
で、原因自体は全く異なるが、結果としてピート同様に、聖(ま、俺が聖とか違和感が凄いんだが)と魔の力を両方持つに至った。
・・・至ったはいいが、“霊力”の操作については身に付けていたが、“魔力”の操作などやった事もない俺は、非常に苦労する事となった。
ただでさえ、ルシオラ、ベスパ、パピリオの三人娘は、中級、下手したら準上級魔族の存在であるから、持っている魔力はとんでもなく大きい。
そして、人の身でそれを受け止めるのは、普通なら不可能に近い。
近いが、ここで俺が半人半魔である事が幸いし、俺はその存在を消滅させる事をなかった。
その代わり、以前にも説明した通り“半魔症”を発症し、長らく人知れず苦しむ事となったのであるが。
ま、それに関しては今は置いておこう。
結果として、俺はピートの助言に従い、老師や小竜姫さまに改めて師事し、“魔力”の操作を完全に身に付けたお陰で“半魔症”を克服。
それどころか、“霊力”と“魔力”を併せ持った、ハイブリッドな存在になったのである。
んで、肝心の鳴上だが、そもそもヤツは、“霊力”って概念を知らなかった。
ま、そうした存在が希薄らしい異世界から来たから仕方ないんだが、しかし一方で、ペルソナ能力は持っていたワケである。
ま、ヤツにとっちゃ、“ペルソナ”ってのが、“霊力”を扱う上での自然な形らしいが、しかし、ここでもう一つ問題があった。
それは、ペルソナ能力は非常に消耗が激しい事である。
イザナギさまによると、ペルソナ能力は“異界”、あるいは“精神世界”の様な、つまり現実とは異なる世界に特化した能力であるらしい。
もちろん、“脅威に対抗する為の手段”として、現実世界でもペルソナは発現可能らしいのだが、やはり現実世界でペルソナを具現化するとなると、かなり勝手が違うらしいのである。
特に顕著だったのが、“霊力”を異常に消耗する事だ。
ま、俺もあまり詳しくないが、“異界”とか“精神世界”の様などこか曖昧な世界だと、現実世界では起こり得ない事も簡単には起こす事ができる、らしい。
それ故に、“もう一人の自分”たるペルソナを召喚する事は簡単らしいのだが(もちろん、ペルソナがシャドウ化、つまり自分の敵になってしまうリスクがあるのでそれが良いとは一概には言えないみたいだが)、現実世界だとその“曖昧さ”が薄いので、ペルソナ召喚には、術者本人の“霊力”を大量に使うらしいのである。
(例としては少し違うかもしれないが、普段陸地で生活している俺らが、水中とか宇宙空間で活動するには、それなりの準備やエネルギーが必要となる様なモンか?)
さっきも言った様に、あくまで“異界”や“精神世界”に特化した能力故に、環境の違う場所ではエネルギーを食う様なのである。
んで、それを克服する為には、単純に“霊力”を鍛えるしかない。
しかし、俺らと違って、“霊力”って概念をそもそも知らなかった鳴上からしたら、全て1からの積み重ねなのである。
まぁ、鳴上のヤツは異常に飲み込みが良かったので、俺らほどの苦労はなかった様だが、しかし、元々霊的エネルギーが希薄な世界で生まれ育った影響からか、元々持っていた“霊力”自体少なかった、というハンデがある。
ま、それも修業によってある程度克服したが、しかし、“霊力”の総合的な数値は、ギリギリ“霊能者”と呼べるライン。
つまり、“霊力”そのものの数値自体は、トップレベルのGSには程遠いレベルでしかないのである。
まぁ、逆に鳴上は、その限られた霊力量を上手く扱うべく、“召喚”だけでなく“憑依”という状態、モードを会得しているし、素の状態でも戦い方を工夫する事で、今回の様な立ち回りをできる様になっている。
ま、さっきも言ったが、霊能力者としてはまだまだだ。
少なくとも、素の状態で悪霊や妖怪と渡り合うのは、まだ難しいだろうからなー。
もちろん、ペルソナ能力込みなら全く問題ないが、さっきも言った通り、“霊力”の消耗の問題が大きいので、多用はできないのである。
これが、能力を持っていても使いこなせるかどうかは別問題である事の正体である。
「ま、ともあれ、当初の目的は達成したワケだし、ここは喜んでやろうぜ。」
「そうですね。」
・・・
番長side
・・・ふう、どうにか勝てたな。
とりあえずこれで、GS試験合格という目的は達成された。
しかし、試験はまだまだ続く。
美神さんの話だと、資格を取ったからといって、その後の試合を棄権する事はできないそうだ。
そうすると、資格を辞退する事に繋がってしまうからである。
だから、まだまだ気は抜けない。
ここまでは、俺の弱点である霊力量の少なさを補う為にペルソナ能力を封印していたが、ここからはそれらも解禁さぜるを得ないかもしれない。
いや、資格自体は取得したのだから、あえて負けたとしても問題はないのだろうが、老師や小竜姫さま曰く、実戦に近い形式のGSの試合は、修業には持って来いらしいからな。
それに、単純に負けるのは、何か悔しいし。
と。
「よお、やったな、鳴上!」
「合格、おめでとうですジャ、鳴上サン!」
「伊達、タイガー。ありがとう。」
コートから出ると、伊達とタイガーから祝福される。
「俺らも負けてられないぜ!絶対合格しような、タイガー!」
「あまりプレッシャー掛けないで欲しいノー・・・。」
「二人も頑張れよ。」
「おう、じゃ、俺らも試合だから、行ってくるぜ!」
「やってやるですケンノー。」
俺とは入れ違いで、二人はこれから試合みたいである。
次の試合まで時間もあるみたいだし、二人の実力は実は興味もあった。
それ故に俺は、二人の試合を見学する事とした。
『さあさあ、第二試合は続々と進められています。コート数の都合で、若干ズレがある様ですが、ここでいよいよ注目の伊達選手とタイガー選手の登場です。』
『二人とも、昨日は危なげなく勝利してるある。やはり実力は本物あるなー。』
『そうですね。しかし、果たして今日もその実力を発揮できるでしょーか?』
「雪之丞か。昨日は普通に勝ってたけど、そういやアイツは、今どれくらい実力を伸ばしてんだろーな?」
「彼は、更にメキメキと実力を伸ばしていますわ。何でも、横島さんには負けていられない、とか何とか・・・。」
「あいかわらず、雪之丞のヤツは、アンタをライバル視してるのねー。ま、当初は勘違いもあったかもしれないけど、今のアンタの実力を見るに、案外雪之丞は見る目があったのかもしれないけど、ね。(ヒソヒソ)」
「ハハハ・・・。」
「しかし、雪之丞さんは闘龍寺に師事してまだ日が経ってませんよね?まさかこの短期間に、弓式除霊術を全てマスターしたとも思えませんし。」
「ええ、そうね。彼が元々在籍していた白竜会も、“僧兵”から派生した、という意味ではウチに似通っているんだけど、流石にこの短期間で弓式除霊術をマスターできるほどウチも甘くはないわ。ただ、すでに彼は、彼なりのスタイルを確立しているから、両親も下手にウチの型に嵌めるのは諦めたみたい。結局のところ、弓式除霊術の後継者は私であって、彼は婿養子って扱いなのよ。」
「じゃ、伊達さんは、独学で更に力を高めた、と?」
「いえ、そうでもないわ。さっきも言ったけど、彼の根底にある武術、技術はウチと似通った部分が存在するから、基礎の基礎からまた叩き直してるのよ。彼曰く、独学が多すぎて正道から外れすぎた、ってね。」
「そっか。基礎がしっかりしていると、結果として応用力も増すものね。横島クンもやってる事だし。」
「・・・確かに。」
「両者前へ。それでは、第二試合、伊達選手対横森選手の試合を開始します。両者、準備はよろしいですか?」
「ああ、いつでもいいぜ。」
「はい、大丈夫です!」
「よろしい、では、試合開始!」
「いくぜっ!」
「っ!!!」
「アイツ、得意の“魔装術”は使わないんだなー。ま、こんな序盤で使っちまうと、霊力の損耗が激しくなるか。」
「それもありますけど、これも彼にとっては修業の一環なんです。さっきも言った通り、今は1から鍛え直しているので、素の状態で戦う事に意味がある、とか。」
「なるほどー。皆、色々考えてんだなー。」
「っつか、ゴメンだけど、その“魔装術”って何だ?」
「アナタ、ほんとーに無知ねー。授業でも習ったでしょ?」
「いちいちうっせーなー。覚えてねぇから、多分寝てたんだよ。」
「まーまー。で、“魔装術”ですけど、これは、悪魔と契約した者だけが使えるという術、技です。体を霊波でおおう事で、自らを一時的に魔物に変え、人間以上の力を発揮します。」
「悪魔と契約っ!?それに、自らを魔物に変えるってっ!!??」
「ええ、もちろんリスクはあります。これは非常に難しい技で、一度コントロールを誤ると、本物の魔物と化してしまいます。実際、雪之丞さんの元・お仲間の一人は制御しきれずに魔物に変わってしまいましたし、もう一人のご友人、勘九郎さんは、自ら魔物になる事を望みました。」
「ま、今のヤツにその心配は無用だ。老師との修業で、ヤツは“魔装術”の極意を掴んでいる。“魔装術”の極意は、己を魔物に変えるのではなく、潜在能力を意志でコントロールして引き出す事。言っちまえば、“魔装術”ってのは、本来は“霊装術”、あるいは“
「へー。弓、アンタの旦那は、スゲェんだな。」
「ま、まだ旦那じゃないから・・・。」
『おーと、伊達選手対横森選手の試合は、伊達選手の一方的な展開となっています。』
『横森選手もかなりやるあるが、これに関しては実力が違い過ぎるあるね。しかも今の伊達選手は、以前に比べても終始落ち着いてるあるよ。もはや、武術に関しては達人の域あるね。無駄な霊力も一切使わず、相手を完封してるある。』
『よく、達人の立ち会いは、まるで派手さがない、と言われますが、今回もそんな感じですねー。』
「そんなモンか?」
「くっ、まるで勝てるイメージがわかないっ!!どこから攻めても、簡単に返されてしまうっ!!」
「アンタ、悪い腕じゃないぜ。けど、まだまだ素人レベルだな。この業界で生き残るなら、もうちょっと腕を磨くんだ、なっ!」
「ぐはあっ!!」
「そこまでっ!勝者、伊達雪之丞!!伊達選手、GS資格取得!!」
「わりぃな。俺も、こんなところで躓くワケにゃいかねぇんだ。ダチが、横島が高みで待ってるからよ。」
「やるな、伊達。無手ではとても敵いそうにないな。しかも、霊能者としてのキャリアも、俺よりも数段上、か。・・・もし彼とこの先対戦する事になったら、俺も本気でやらなければすぐにやられそうだな。」
「アッサリ試験合格を決めたわねー。しかも、以前よりも数段強い。」
「確かに。前は、どこかまだイキってる印象もあったけど、今は終始落ち着いてるワケ。こりゃ、うかうかしてたら、顧客を持ってかれるかもしれないわねー。」
「アンタんトコは、あんまり影響ないでしょ。どっちかと言うと、私の方が被害を被りそうだわ。」
「やりますね、雪之丞。こりゃ、僕もうかうかしてられないな。」
「アイツ、どこ目指してんだろーなー?やっぱ、最強の座、とかかな?」
「・・・。」
そりゃ、貴方ですよ。
無自覚な横島に、そう心の中で呟くピートなのであったーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
ぜひ、よろしくお願いいたします。