P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


GS試験 6

 

・・・

 

『それでは、一旦今年度のGS試験合格者の大まかな割合をまとめてみましょう。やはり強い。合格者の3割は六道女学院の卒業生、あるいは現役生ですねー。』

『“霊能科”、あるな。もちろん、師弟制度によって、師匠からマンツーマンで教えを受けた者の方が、色々と実力や専門性は高いあるが、そうなると数は限られてくるあるからなー。その点、教育機関としての六道女学院の方が、細かい点では師弟制度には劣るところもあるかもしれないあるが、大量に人材を育てるには向いてるある。それに、生徒同士で切磋琢磨する事によって、実力を伸ばす事もできるワケあるし。』

『そういった意味では、やはりGS業界においては、六道女学院の存在は大きいでしょうなー。』

『うむ。』

『そして、残りの5割は、こちらも霊能関係者ですね。先程厄珍さんも仰っていた、所謂“師弟制度”によって霊能力を鍛え上げた人達ですな。』

『ふむ。例年だと、後はそういった人達が残りの割合を占めるあるが、その様子だと、残りはやはり・・・。』

『ええ、残りの2割の合格者は、六道女学院とも、霊能関係とも無縁の、所謂“一般人”から合格しております。』

『ふむ・・・。64人中、12、3人あるか。数字上では、そう高い数値とも言えないあるが・・・。』

『いえいえ、これは驚異的な数字ですよ。先程も述べましたが、この場に臨む人々は、それこそ霊能関係でもかなりの実力者となります。しかも、六道女学院や霊能関係者の間に割って入ってのこれは、およそ素人ではありえない事態です。彼らは、相当な能力に目覚めたのでしょーか?』

『ま、鳴上のボウズみたいに、元々何らかの素質を持っていた可能性もあるよ。一般人の中にも、何らかの実力に長けた者の中には、無意識に霊能力を使っている人々もいると聞いた事があるね。』

『ふむ。いずれにせよ、興味深い数値ですね。日本GS協会では、これから、才能のある一般人にまで、門戸を広げる、あるいは視野を広げる必要があるかもしれませんねー。』

『そうあるな。』

『では、ここからは、そんな今年度の合格者の中から、一番の実力を決める試合が開始されます。もちろん、あくまで参考的な試合とはなりますが・・・。』

『ここからの成績いかんでは、その後の注目度も全く違うある。プロとして、一流の活躍を目指すなら、当然この後の成績は大きな意味を持つある。おそらく、皆必死だと思うあるよ。』

『そうですね。これまでより白熱した試合が見られるのではないでしょーか?』

 

 

「さて、ここからは純粋に戦いを楽しめるな!」

「好戦的だな、伊達は。」

「ちょっと違うぜ。強くなるのが、純粋に好きなんだよ。強い相手と戦うのは、自分の実力を試すいい機会だからな。相手が強ければ強いほど、自分が成長した実感を持てるのさ。」

「なるほど・・・、そういう考えもあるのか。」

「雪之丞は孤児ですジャ。それ故に、生き残る為にも、強さに執着した過去を持っているのですケンノー。ま、それが悪い方向に利用され、メドーサの配下となっていた事もありますが、今は大分落ち着いた方ですジャー。やっぱり、弓さん。守るべき者が見つかったからではないですケンノー?(ボソボソ)」

「ふむ、そうなのか・・・。(ボソボソ)」

 

雪之丞の意外な経歴を聞かされて、妙に納得する番長。

 

「それに、これはあくまで試合さ。マジの殺し合いなワケじゃねぇんだから、自分の実力を試すのは悪い事じゃねぇ。それに、試合結果によっては今後のGS人生に影響もあるワケだしな。っつーワケで、もしどこかで当たっても、お互い恨みっこなしで全力でぶつかろうぜ!」

「ああ、分かった。」

「・・・なるべくなら、二人には当たりたくないですケンノー。」

 

 

『それでは、第三試合、32試合が行われます。くじ引きは、例によって、“ラプラスのダイス”で決定されます。』

 

 

「二割も素人が合格してんのかー。」

「ま、当時のアンタの例もあるから、一般人の中にも強大な霊力を持ってる連中がいたとしても不思議じゃないけど、それでもちょっと異常な数字ね。やっぱりこれも、“例の事件”の影響かしら?」

「ありえない話じゃないワケ。事件や事故で霊能力に目覚めるケースもあるからね。追い詰められた時に、潜在能力が開花したのかもしれないワケね。」

「あの時は、各地で危機的状況が頻発していましたからね。それで、霊能力に目覚めた、と。」

「ま、それでも、いきなりGSになれるほどの実力が身に付くとも考えづらいんだけど、なーんか裏がありそうねー。」

「一応、隊長や西条にも報告しておいた方がいいっすかね?」

「そーね。もちろん、GS試験の情報はママ達の耳にも入るだろうけど、一応は、ね。」

「最近、妙な事件も頻発してるみたいだし、それと関連もあるかもしれないワケ。」

「例の、“催眠アプリ”の事?」

「ええ。私の独自の調査だと、あれには強制的に能力を引き出す作用があるらしい事が分かったワケ。もっともこれは、他者を干渉、つまり洗脳する事に特化してるワケだけど。」

「ふーん、気になるわねー。」

「ま、そっちの調査は、オカルトGメンでも難航してるらしいから、両者が繋がってる確信はないんだけどね。でも、偶然にしてはできすぎなワケよ。」

「そーね。楽観的に考えるのは危険だと思うわ。ま、と言っても、結局のところ民間の私達にできる事なんてたかが知れてるけどねー。」

「それは、警察やオカルトGメンでも同じなワケ。結局のところ、何かの事件が起こってからでないと対処できないからねー。」

「歯がゆいっすね・・・。」

 

流石に“例の事件”に関わっただけあって、美神達はおぼろげながらにも何らかの事態が進行しているらしい事に気付いていた。

しかし、気付いてはいても、結局は具体的に何らかの事態が発生しない限り、それを未然に防ぐ事は困難なのである。

 

一抹の不安や多少の無力感を感じながらも、彼らは気を取り直して、GS試験の続きを見届けるのであったーーー。

 

・・・

 

番長side

 

結局、第三試合でも、運の良い事に伊達とタイガーと当たる事はなかった。

ちなみに、俺の次の対戦相手は、その、かなり変わった風貌をしていたので、俺も軽く困惑していた。

 

具体的には、赤いバンダナに赤チェックシャツにGパン、メガネに指ぬきグローブと、これでもかというステレオタイプのオタクコーディネートであった。

しかも、何故か謎のフィギュアを持ちながらそれに話し掛けるという具合である。

 

もっとも、俺もプラモとかは好きだし、完二の影響で人形やフィギュアに関する見識は広がっている。

だから、別に彼の趣味嗜好をとやかく言うつもりはないが、しかし、流石にこの場においては明らかに浮いてるだろう、とも思っていた。

 

「えっと、審判さん。あれって大丈夫なんですか?」

「問題ないですよ。()()の使用は、一つまでは認められていますからね。」

「いや、そういう事ではないんですが・・・。」

 

微妙に噛み合わない会話を交わす俺と審判さん。

ま、俺が気にする事ではないかもしれないが、今から戦うのに、そのスタイルは合ってるのか?、って話だからな。

 

しかし、それでも第三試合まで駒を進めている事実はあるので、俺もそれ以上は突っ込む事を止めた。

もしかしたら、実はかなりの実力者かもしれないからである。

 

「両者前へ。それでは、第三試合、白鳥選手対鳴上選手の試合を開始します。両者、準備はよろしいですか?」

「はい!」

「ヌフフ、大丈夫でござるよ。」

「では、試合開始!」

 

そして、その俺の予想は、すぐに正解であった事が分かったのであるーーー。

 

 

「これまた、えらく濃いヤツが現れたモンだなぁー。」

「完全に“オタク”、ってヤツね。」

「どことなく、横島さんの格好と似ている様な気もしますが・・・。」

「言われてみれば・・・。」

「よしてくれよ、おキヌちゃん。バンダナとGパンが被ってるだけだろ?」

「けど、アンタの格好も、見ようによっては“オタク”的イメージにピッタリよねー。」

「おたくも、今はそれなりに稼いでるんだから、もう少しファッションに気を使ったらどうなワケ?そうすれば、()()()モテるかもしれないわよ?」

「「っ!!!」」

「ん〜、確かにそうかもしんないっすけど、俺、ファッションには詳しくないんすよねぇ〜。それに、仕事をする上ではこの格好の方が動きやすいし、特に困ってないですしねー。」

「あら、そう?」

 

エミの何気ない言葉に、美神とおキヌが反応する。

確かに、横島は番長の様な特別イケメンではないかもしれないが、別にブサイクではないし、それなりに整った顔立ちをしている。

 

しかし、万年同じ様な格好をしている貧乏くさい感じや、生来の煩悩の強さ故に、女性にガツガツ行ってしまっていた事が原因で、“モテない”、という称号を貰っているし、本人もそう思い込んでいる。

 

しかし、多少軽薄なところはあるものの、自分に正直で元気であけすけで、そんな性格をしっかり理解している者達からは好まれているし、本人には自覚はないが、実際はモテている。

 

もっとも、横島に想いを寄せている者達からしたら、見た目もオシャレにしてしまったら、要らぬライバルを増やすだけなので、横島のその言葉に安堵していたのであろう。

 

「それよりも、その“オタク”くんは、どういう戦い方をするのかしらね?ここまで駒を進めている以上、それなりに実力者だろうし。」

「そうですね。おや、何やら動きがあった様ですよ?」

 

 

審判さんの合図によって、俺はすでにここ数日ですっかり使い慣れた“神通棍”を構える。

対する白鳥選手は棒立ちのままである。

 

それに少しお節介かと思いながらも、俺は彼に声を掛けた。

 

「・・・?えっと、始めてもいいんだよな?構えなくて大丈夫か?」

「ヌフフ、これはお気遣いどうも。ですが、ご安心下され、鳴上氏。(それがし)の戦闘準備はすでに整っておりますので。」

「・・・そうか。なら、行くぞっ!!」

 

にこやかにそう返答する白鳥選手に応じて、俺はこちらから仕掛ける。

どうやら、今までの相手とは違い、白鳥選手は積極的に仕掛けてくるタイプではないと判断したからである。

 

それ故に、俺の方から仕掛けないと、そもそも試合が進まないし終わらない、かもしれないのである。

もっとも、この試合には時間制限などはないのであるが、持久戦は、なるべくならこちらとしても望むべきものではないからな。

 

「ヌッ!?はやいですなっ!」

「もらったっ!」

 

俺は、老師から習った“瞬動術”、正確には中国武術の“縮地”を使う。

(簡単に言えば、“縮地”は中国武術の技法の一つだが、“瞬動術”はそれを霊力と併用した移動術である。

霊力は、単純に身体能力の強化にも使用できるので、これを極めれば、それこそ目にも止まらぬ速度で相手と間合いを詰める事が可能である。)

 

白鳥選手はそれに反応を示したが(もちろん、まだまだ俺の技術が未熟な事もあるかもしれないが、それでも超スピードに反応できるだけでも彼がかなりの実力者である事が分かる)、しかし、反撃の体勢に入っている様には見えなかった。

その間にも俺の“神通棍”は彼を捉えて振り下ろされている。

 

おそらく、誰の目から見ても、そして俺自身も決まった、と確信する中で、予想を反してそこに割って入ってくる存在があった。

 

ガキンッーーー!!!

 

「なっ・・・!!??」

「はいはぁ〜い。イケメンのおにーさぁ〜ん。悪いけど、こんなんでもご主人をやらせるワケにはいかないのよねぇ〜。」

「ヌッフッフッ。モガちゃ〜ん。()()()とは酷いでござるよぉ〜。」

「うっさい、ごくつぶし!ついこの間までただのニートだったヤツは黙ってなっ!」

「ヌフフ〜、これは手厳しい。」

 

 

「まさか!“人形使い(ドールマスター)”っ!?」

「・・・って、何ですか?」

「さあ?」

「“人形使い(ドールマスター)”は、文字通り人形を操る能力者の事よ。系統としては、“式神使い”、冥子の能力に近いわね。もっとも、式神使いが鬼や神々を使役しているのに対して、あくまで人形使い(ドールマスター)は人形を使役しているに過ぎないわ。だから、そこまで強力な能力とは言えないんだけど・・・。」

「けど、あの人形は鳴上さんの一撃をアッサリ受け止めましたよ?それに、大きさも人間大ぐらいですし・・・。」

「人間を模して作られた人形は魂が宿りやすいの。付喪神(つくもがみ)の一種ね。それなら、大きさはある程度自在に変えられるわ。」

「そういや、以前に美神さんの持ってたモガちゃん人形も勝手に動き出した事ありましたもんねー。」

「あれは、私の強力な霊力が蓄積した結果だけど、それを意図的に作り出したとしたら、彼は相当な霊力を持ってるか、人形に対する思い入れが人一倍強いんでしょーね。しかも、鳴上クンの一撃を防ぐくらいには人形も強力の様だし、かなりの強敵かもしれないわよ。」

「ほぉ〜ん。やっぱ、色んな能力者がいるんすねー。」

「そんな悠長な。鳴上さん、負けちゃうかもしれないんですよ?」

「いやいやおキヌちゃん。いくら人形が強力、たって、本体を叩けば終わりだろ?残念ながら俺の目から見れば、アイツ自身と鳴上の力量差は歴然だ。人形をくぐり抜けて、どうにか本体をやっちまえば、それで済む話さ。」

「あ、そうか!」

「・・・そう上手くいくかしらね?」

「「・・・へっ???」」

 

 

白鳥選手が先程持っていたフィギュア。

()()が、俺の攻撃を防いだのである。

なるほど、審判さんが()()と言った理由が理解できた。

 

つまり、白鳥選手は、どういう理屈かは分からないが、人形を意のままに操る能力があるのだろう。

しかもその人形は、俺の一撃をアッサリ弾き返すほどの力量を備えている。

マトモにやりあえば、苦戦は必至である。

 

ただ、この手の使い手は、本体、つまり術者が脆弱な事か多い、と横島が言っていた。

それに、あくまで人形を操っているのは、どちらにせよ術者な訳だから、ここは人形は無視して、速攻で本体を叩けば終わりである。

 

素早く俺はそう判断すると、目の前の人形を振り切り白鳥選手に強襲を仕掛ける。

もちろん、ただで人形も通してくれる訳はないのだが、そのパワーとは反比例して、反応速度やらスピードはこちらの方が上だった為か、アッサリ彼女を振り切る事ができた。

 

今度こそ終わりだーーー。

 

と、思ったら、白鳥選手は、指でピストルの形を作って、それを俺に向けていた。

 

「ヌッフッフッフ、そうくると思いましたぞぉ〜。確かに某は、マトモに組み合えば貴方には敵いませんが、それならば近付けなければ良い話です。それに、先の貴方の戦い方は、某も大いに参考になりましたぞ?」

 

そう言うと白鳥選手は、そこから“霊波弾”を射出する。

 

ある程度の使い手となると、霊能力者は霊波をまるで弾丸の様に射出する事ができる、らしい。

もちろん、得手不得手はあるだろうが、放出系は不得意と言っていた横島でさえ可能だったのだから、白鳥選手がそれを扱えても不思議な話ではなかった。

 

当たり前だが、これを食らってしまえば、霊力の攻撃はそのまま通す、というGS試験のルール上、俺にもダメージが通ってしまう。

もっとも、こちらの霊的防御力を高めればノーガードでも無傷となる可能性もあるが、しかし、この場には白鳥選手だけでなく、彼女の存在も忘れてはいけない。

 

白鳥選手が、乱雑に()()した“霊波弾”を、俺は最小の動きで避ける。

・・・避けるが、先程白鳥選手は俺の戦い方を参考にしたと言っていた通り、避ける先を予測した次の攻撃が飛んできて、それをまた避けるとまた次の攻撃、という様に、俺をその場に釘付けにする作戦が上手くハマっていた。

 

そうこうしている内に振り切った人形がすぐに追い付く。

所謂、挟み打ちの状況となった。

 

「つれないじゃない、イケメンのおにーさん。私とも遊んでよ。」

「ヌッフッフッフ。」

「クッーーー!」

 

 

「彼、強いわ。それに、戦略もよく練っている。」

「それに、おそらくあの人形はある程度自立型(スタンドアローン)タイプね。そうじゃなきゃ、人形を操りながら術者本人も攻撃するってのは、流石にマルチタスク過ぎるし。」

「言っちまえば、“霊力を持った”マリアとカオスのじーさん、みてーな関係か。数の上では単純に二対一。前衛と後衛で役割分担もハッキリしてるし、こりゃ鳴上のヤツが圧倒的に不利だなー。」

「ど、どうするんですか!?」

「んー、そうなると・・・。」

 

 

「ペルソナを召喚するしかないでしょうね。素の状態の鳴上さんでは、お二方を相手取るのは少々難しいでしょうからね。」

「けど、霊力の消耗が激しいんでちゅよね?」

「そうも言ってられないでしょう。もちろん、これは試合ですから、負けても得るものは大きいですが、当然無傷という訳にはいきませんからね。先を見越しすぎて、足元をすくわれたら、それこそ本末転倒でしょう。」

 

 

前衛の人形に四苦八苦しながら、後衛の白鳥選手の“霊波弾”も警戒しなければならない。

まさしく、俺はジリ貧状態に追い込まれていった。

 

このままでは、遠からず霊力切れを起こしてしまい負けてしまうので、俺は意を決してペルソナ召喚に踏み切る事にした。

 

「こい、ヤクシニー!!」

「「っ!!??」」

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
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