P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


GS試験 7

 

・・・

 

ヤクシニーは、番長の持つペルソナの中では、所謂“初期ペルソナ”に近いペルソナである。

当然ながら、“真の黒幕”であるイザナミと対峙した番長は、もっと高レベル帯のペルソナも所持している。

 

では何故、そうした高レベル帯のペルソナを召喚しなかったのか、というと、ここでも霊力が関係してくる。

 

当然ながら高レベル帯のペルソナは、非常に強力なものが多い。

しかし、逆を返すと、それだけ強力ならば、具現化するにはそれなりのエネルギーを消費してしまう、という事でもあった。

 

番長や横島、イザナギも言及していた通り、ペルソナ使いの主戦場は、あくまで“異界”とか“精神世界”、つまり現実世界とは異なる、ある意味曖昧な場所であって、もちろん現実世界でもペルソナ能力を行使する事はできるが、そうした場所とは違い、非常にエネルギー消費が激しい訳である。

 

で、そうなると、当然ながら、連戦が予測される場であるならば、ペース配分が重要になってくるのである。

 

何も考えずに、高レベル帯のペルソナを召喚してしまえば、その試合は一方的な展開で勝ち上がる事が可能かもしれないが、その後、ガス欠によって次の試合はアッサリ負けてしまう可能性もあるからである。

 

もっとも、すでに番長は、当時の目的であるGS資格の取得を達成しているので、今後いつ負けても問題はないのであるが、しかしそこはそれ、男の子としてはできる事なら負けたくはないだろうし、それに万が一の事態を想定するのならば、今後こうした経験、つまりいかに霊力を温存したまま戦えるか、いうなれば“継戦能力”を高めておく事は、今後の明暗を分ける可能性もある。

 

ここら辺は、こちらの世界の番長の師匠であるところの老師と小竜姫からのオーダー、約束であった。

 

しかし、そうは言ってもこれまでは素の霊力だけで何とかなったが、今現在対峙している相手、白鳥はかなりの実力者であった。

少なくとも、単純に二対一の構図では、いくら歴戦の猛者である番長と言えど、素の霊力や身体能力だけで対抗する事は困難を極めたのである。

 

そこで、数の上での不利を解消すべく、ペルソナ召喚に踏み切った訳である。

が、なるべくなら霊力を抑えたい、という思惑もあって、高レベル帯のペルソナではなく、こうして“初期ペルソナ”に近いヤクシニーを召喚する事とした訳であるがーーー。

 

 

『色っぽいおねーちゃんキターーーー!』

『おーと、鳴上選手、ここで白鳥選手の様には何かを呼び出したようです!』

『・・・ふうふう。し、式神、あるかね?鳴上のボウズは、“式神使い”だったあるか?』

『さあ?詳細は分かりませんが、しかし、これで勝負はまた振り出しに戻った訳ですね。』

『そうあるな。単純に二対二あるから、後は単純に力量が上の方が勝つ訳あるからなー。』

 

 

「色っぽいおねーちゃんキターーーー!」

「よ、横島さんは見ちゃダメです!!」

「ああ、おキヌちゃん!?これじゃ、前が見えんのやが!!??」

「ヤクシニー!?仏教における夜叉の事じゃないっ!時には悪神とも善神ともなる、かなり強力な神の一柱よ?」

「ま、鳴上クンの話だと、あくまで元の神を模した存在らしいけど、それでも、よく考えるととんでもない能力よねー。そもそもイザナギさまを降ろしてる時点でとんでもないのに、その他の神々まで内包してるワケだし。」

「そうなんですか?」

「私達みたいな霊能者が“神”を降ろすのは非常に危険が伴うわ。例えば、私なんかの実例だと、小竜姫さまの龍神の武具などを借り受けて、一時的に龍神、つまり神さまの力を使えるようになった事があるけど、その反動で、しばらく強烈な痛みで動けなくなった事があったでしょ?神さまの力は、人間にはとても耐えられない圧力を持っているのよ。そんな神さま、あるいは悪魔の、本物ではないにしろ、力を借り受けて、それを顕現、あるいは憑依させても平気なんてのは、本来ならありえない事だわ。改めて、ペルソナ能力ってのはとんでもない能力のよーね。」

「しかも、イザナギさまは、老師がおっしゃってる以上、所謂“本物”なワケだからねー。仮に私達がイザナギさまの宿主となっていたら、おそらく数分も保たず塩の柱になってしまうかもしれないワケ。」

「こ、怖いですねぇ〜。」

「ま、そんな事にはなりえないから、心配しなくても平気よ。けど、これほど()()()神さまを召喚した以上、霊力の消耗は激しいでしょーけど、鳴上クンの勝ちは揺るがないものになったわね。」

「あのぉ〜、それはいいんですが、この紙袋はどかしちゃもらえませんかね?」

「ダメよ、横島クン。神さまとはいえ、女性の半裸をアンタに見えるワケには行かないわ。前も言ったけど、アンタの目線は宇宙で一番汚らわしいのよっ!」

「そ、そんなぁ〜!!」

「「「ははははは・・・。」」」

 

 

「・・・久方ぶりだな、鳴上どの。よもや、わらわの事を忘れていた訳ではあるまいな?」

「あぁ〜、いやぁ〜、そういう訳では・・・。」

「フフフ、冗談じゃ。そなたの事は、ずっとそなたの中から見ておったわ。今のわらわの分霊体、いやペルソナだったかの?の力では、そなたの“れべる”にはついて行けまい。それは理解しておるわ。わらわが本物なら、他の神々にも引けを取らぬ自信があるがの?」

 

やはりヤクシニーも、イザナギ達と同様に喋る事が可能なようである。

ただ、今現在の自分の立場、俺の持つ“ペルソナ”の中では、自分が弱い(と言うと語弊があるが)方である事も自覚しているようである。

 

もっとも、仮に“似姿”ではなく所謂“本物”であったなら、本人が言う通りかなり強力な神族である事は間違いない。

 

ヤクシニーは、インド神話における鬼神であり、後に仏教に取り入れられた際に、仏法を守護する護法善神となった、とされている。

当然、言わば守護神とも呼べる存在が弱い訳はない。

 

もちろん、階級みたいなものや、立場的には彼女達より上位の存在もいるのだが、ここら辺は、現実世界における首相とSPの関係みたいなもので、単純な武力においては、彼女達の方が優れている、なんて事も珍しくないのである。

 

ま、実際に神々や悪魔なんかの強さは分からないのだが(今現在の俺達のように、世界各地に存在する神々や悪魔を集めて、総当たり戦でもやれば分かるかもしれないが、それは不可能な話だ)、事武力に関しては、彼女の言う通り他の神々にも引けを取らないのかもしれない。

 

俺も、ペルソナ能力を得た事によって、神話の類などには詳しくなっているのであった。

ま、それはともかく。

 

「それで鳴上どの。久方ぶりに呼ばれたわらわの相手は、どこのどいつじゃ?」

「あの人形を抑えておいて貰いたい。流石に二対一はキツくてな。できるか?」

「愚問であるぞ。今現在の姿でも、人形相手に遅れはとらんわ!」

「頼もしいな!」

「では、参る!」

 

 

「な、何か出たわよ、ご主人!」

「・・・う、美しい!!!」

「・・・へ?」

 

一方の白鳥は、番長の呼び出した存在(ヤクシニー)に驚くより先に、その姿に目を奪われていた。

 

ヤクシニーは、ペルソナの中でも勇ましく、そして美しいペルソナだ。

しかも、その姿はほとんど全裸に近い格好であり、男性諸君には目の毒かもしれない。

(実際、厄珍と横島は興奮していた。)

 

故に、白鳥もそうなのかと言うとそうではなく、厄珍や横島が男性的に興奮していたのとは対象的に、白鳥は、その神々しさに目を奪われていたのであった。

 

これは、彼の性癖というか趣味嗜好なのかもしれないが、彼は人形をこよなく愛するのは、現実の女性にはない美しさをそうしたモノに求めていたからである。

 

つまり、彼なりの美的感覚故なのであるが、“似姿”とは言えど、神々の一柱たるヤクシニーは、当然ながら人間や人形ともまた違う美しさを兼ね備えている。

それ故に、彼女の存在に目を奪われていたとしても特段不思議な話ではなかったのである。

 

「そんな事言っとる場合かっ!ってか、アンタは私だけ見てりゃいいのよ!」

 

バキッーーー!

 

「はうっ!・・・はっ、某は何をっ・・・!?」

「来るわよっ!」

「!?」

 

 

白鳥とモガちゃん人形がコントのようなやり取りをしている中、番長とヤクシニーコンビは強襲を仕掛ける。

 

「“電光石火”!」

「きゃっ!!」

「うわっ!!」

 

まず、ヤクシニーがスキル“電光石火”を発動。

“電光石火”は、敵全体に物理属性で小ダメージを1~2回与えるスキルである。

もちろん、この世界では言わば“霊体”であるペルソナ、ヤクシニーの攻撃は、物理属性であろうと、当然霊力のこもった攻撃となるから、特殊な結界内でも相手に攻撃が通る。

 

もっとも、流石にここまで勝ち上がっている事もあってか、この程度では白鳥もモガちゃん人形も沈んだりはしなかった。

しなかったが、それでも一瞬ひるませる事はできた。

 

その隙に、番長は白鳥へ、ヤクシニーはモガちゃん人形へと、相手の分断を図る事に成功した。

 

「よしっ!」

「ご主人っ!」

「おっと、そなたの相手はわらわじゃ。」

「ちょっ、どいてよ、オバサンッ!」

「オバッ、誰がオバサンじゃっ!」

「きゃあーーー!」

「ほ、程々にな、ヤクシニー。」

 

どんな存在であれ、女性に年齢的な事を言うのはご法度なのか、ヤクシニーの地雷に触れてしまったモガちゃん人形はボコボコにされる。

流石に番長を苦戦させたとは言え、そこはそれ、ただの人形とペルソナでは、その実力差は歴然である。

 

それに、白鳥とモガちゃん人形の強みは、結局のところ数的優位である。

モガちゃん人形が前衛として相手の行動を制限する中、隙をついて白鳥が相手を遠距離から“霊波弾”で追い込む。

当然、二人分の攻撃をさばかなければならない相手にとっては消耗も激しいし、集中力もそんなに保つものでもない。

結果、どちらかの攻撃がヒットし、ひるんだ隙に一気に勝ちをもぎ取るのである。

 

これが、ここまでの白鳥らの必勝パターンであったが、相手も自分と同じように何らかの存在を召喚できる者だった場合、そのパターンを使う事ができないのである。

 

二人のコンビネーションは脅威だが、個々の力は、番長とヤクシニーにとっては大した事はなかった。

故に、数的優位が崩れ去ると、アッサリと流れは変わったのである。

 

「ひっ!来るな来るなっ!!」

「無駄だっ!」

 

前衛を失った白鳥は、番長にめちゃくちゃに“霊波弾”を撃ち込む。

もはや、霊力の消耗がどうとかは頭から抜け落ちているようであった。

 

もちろん、一対一の状況でそんな攻撃が番長に通用する筈もない。

番長は、白鳥の“霊波弾”を、時にかわし、時に“神通棍”でさばいて、確実に白鳥に近付いて行った。

 

「っ〜〜〜!!!」

「貰ったっ!!」

「あんぎゃあぁぁぁぁ〜〜〜!!!」

 

そしてとうとう、番長の一撃が白鳥を捉えた。

肉弾戦、近距離戦はやはり苦手だったのか、その一撃で、アッサリと白鳥は意識を手放したようであった。

 

その証拠に、ヤクシニーとやり合っていたモガちゃん人形がその姿を消した事を、番長は目の端で確認していた。

術者の意識が途切れたから、術儀もその効力を失ったのである。

 

審判もそう判断したのか、白鳥の様子を確認すると、彼は声高にこう叫んだ。

 

「そこまでっ!白鳥選手の戦闘不能を確認!勝者、鳴上悠選手!!」

「ありがとうございました!!」

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
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