P4GS   作:笠井裕二

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続きです。

今回は、独自解釈強めで、番長の性格や性質はややアニメ寄りかもしれません。
イメージと違う事もあるかもしれませんので、一応ご注意を。


GS試験 8

 

・・・

 

白鳥九十九(しらとりつくも)は所謂“オタク”であった。

ただその背景には、巽完二と似たような生い立ちがあったのである。

 

元々は白鳥も、所謂普通の子供だった。

ただ唯一普通の男の子とは違ったのは、人形やおままごと、裁縫など、所謂女の子が好むような遊びの方が好きだった事であろうか。

 

人と違うという事は、それはその人の個性であるから何も悪い事ではないのだが、しかし一方で、普通ではない、というレッテルを貼られる可能性もある。

特に子供は、まだ倫理観も道徳観も未熟な事もあって、人とは違う、というだけでイジメの対象となってしまう事も往々にしてある。

 

“何だよ、お前、人形とか好きなのかよぉ〜。女みてぇだなぁ〜。”

“白鳥くんとはもう遊ばない。だって、遊んでると私達まで男子に笑われるんだもん。”

 

そういう心無い言葉が、白鳥の人格形成にマイナスの影響を与えたのである。

 

完二がその後、自分の趣味嗜好を押し殺して、“男らしさ”を求めてヤンキーっぽくなったのに対して、白鳥は完二とは違い、元々腕っぷしが強くなかった事もあって、“自分の世界”に逃げ込む事で己を守ったのである。

 

“自分”を受け入れられない事にビビって、自分から嫌われようとした臆病者(チキン)(完二談)と、“世間”との間に壁を作って、“自分の世界”に逃げ込んだ白鳥。

ここら辺も、方向性は違えど、“世間”と戦う上で“外殻”を纏った事では似たようなものであった。

 

ただ、その後の方向性は分岐してくる。

完二は番長達に出会い、例の事件で己と向き合い、ペルソナ能力を得た事で、自分の強さ、弱さを受け入れる事となった。

また、番長との交流を経て、自分の趣味嗜好を包み隠す事もなくなり、自分なりの“生き方”ってのを何となく掴んでいった。

 

今では、編みぐるみやぬいぐるみ製作において一目置かれる存在になっており、その腕前に目を付けた陽介の父親に依頼されて、稲羽市商店街活性化のご当地キャラクター、“クマ”の監修を任されるほどに成長している。

 

彼がその後どうなっていくかは分からないが、多分悪い方向にはもう行かないだろう。

 

一方の白鳥は、完二が番長達という仲間を得た事とは対照的に、彼にはそうした存在が現れなかった。

ただその代わり、霊力に目覚めるという事と、その力に目を付けた謎の人物達からの接触を受けたのである。

 

霊力に目覚めた当初の白鳥は、その力はそこまで対した事はなかった。

せいぜい、そのままの大きさのモガちゃん人形を操る程度のもので、それを戦闘に使えるほどではないし、“霊波弾”も使えなかったのである。

 

ただその後、謎の人物達から、

 

()()を変えたくはないか?”

 

と提案された事で、世間に思う事のあった白鳥はその提案を受け入れた。

 

結果、“人形使い(ドールマスター)”白鳥九十九の誕生、と相成った訳である。

 

もちろん、それだけの力を得る為に白鳥は、ある種の代償を支払う事となる。

具体的には、とある計画に参加する予定なのである。

 

もっとも、白鳥自身もまだ詳しい内容は知らないのだが、大まかにはある種の常識を覆す計画のようである。

 

先程も述べた通り、自身の経験から世間や社会に対しても思うところのあった白鳥は、それを踏まえた上でそれに乗る事とした訳だ。

その手始めとして、まずはGS資格取得に乗り出した訳である。

 

そして、無事にGS試験に合格し、その過程で鳴上悠、という少年と対戦し、結果敗北する事となった訳であるがーーー。

 

・・・

 

「う、うぅ〜ん・・・。こ、ここは・・・?」

 

気が付くと、そこは知らない天井であった。

白を基調とした清潔そうな場所であり、白鳥はおぼろげながらにそこが保健室や病室のような空間である事を察していた。

 

「あらぁ〜〜〜、気が付いたのねぇ〜〜〜。よかったわぁ〜〜〜。」

「???」

 

近くで、のんびりとした舌っ足らずの声が聞こえる。

ふとそちらに目を向けると、そこには看護師のような格好をした女性と、狛犬のような動物(?)が白鳥を眺めていた。

 

「え、えっと、貴女は・・・?」

「私は六道冥子よぉ〜〜〜。で、こっちが私の式神でシュウトラちゃんよぉ〜〜〜。私達は医療スタッフをしてるのよぉ〜〜〜。」

「は、はぁ・・・。」

 

のほほ~んとした冥子に、白鳥も若干ひいていた。

こんな、言い方は悪いが、とろそうな女性に、医療スタッフが務まるのだろうか、という至極真っ当な反応からである。

 

もっとも、その白鳥の感想は、半分正解で半分外れである。

何故なら、GS試験での怪我人とは、つまり普通の怪我ではなく霊的な損傷だからである。

 

そして、六道冥子は、ある意味最強の式神使いであり、その式神の一体、シュウトラは心霊治療(ヒーリング)を得意としている。

つまり、事心霊治療(ヒーリング)においては、彼女の右に出る者はいない、と言っても過言ではないのである。

もっとも、結局は彼女の式神が凄いだけの事なのであるが。

 

「・・・あの、試合はどうなりましたか?」

「ここにいる以上、分かりますよねぇ〜〜〜。アナタの負けですよぉ〜〜〜。ただ、そこまで時間は経っていないわぁ〜〜〜。相手の腕が良かったのねぇ〜〜〜。」

「・・・そうですか・・・。」

 

分かり切っていた答えだ。

白鳥と、その事には特段ガッカリはしなかった。

 

ただ、先程も述べた彼のコンプレックスから、見た目陽キャでイケメンの番長に敗北した事が、彼の中で引っ掛かっていたのである。

 

何故ならば、彼をイジメていた者達は陽キャのグループだったからである。

 

もちろん、番長とその連中とは全く関係はない。

と言うより、元々番長も、どちらかと言えば特殊な陰キャであり、転校が多かった事もあり、周囲に溶け込むコミュニケーション能力や協調性はあったものの、深く友人達と付き合う、という経験に乏しかった。

 

こうした、ある意味空虚な心の闇が、周囲に合わせて対応を変える事が、そのまま彼のワイルドの能力に直結しているのかもしれないが、それも陽介達と出会い、例の事件を経て成長し、今では立派な陽キャに成り上がっていたのである。

 

ただ、それは白鳥には分からない事だ。

そして、この敗北によって、白鳥は改めて世の中に対して“変革”を推し進めようと決意を新たにしていたのだった。

 

もっとも、

 

コンコン。

 

「はぁ〜〜〜い。」

「あの、こちらに白鳥さんはいらっしゃいますか・・・?」

「っ!?」

 

何故かこの場に番長が現れた事で、彼の人生の方向性はアッサリと変わったのであるがーーー。

 

・・・

 

番長side

 

俺は今、医務室の前にやって来ていた。

 

本来ならば、いくら試合とは言えど、勝者が敗者に会いに行く事など御法度である。

(実際、横島らにもやめとけと言われた。)

 

いくら健闘したとは言え、負けは負けだ。

それ故に、勝者からどれほど賛辞を送られようとも、相手にとっては嫌味にしかならないからな。

 

ただ、それでも俺はどうしても気になっていたし、それに会わなければならない理由もあった。

それは、彼のモガちゃん人形の存在である。

 

彼の気絶、戦闘不能と同時に、彼のモガちゃん人形も普通の人形に戻っていた。

そして、それを俺が拾っていたのである。

 

普通なら、関係者に預けて、彼の元に戻してやるのが正解なんだろう。

ただ、俺はどうしても気になっていたので、直接届ける事としたのである。

 

理由は、おそらく彼には完二に近しいものを感じたからかもしれない。

ま、彼と完二の共通項は、()()という一点だけなのだが。

それでもどうしても気になったので、こうして直接届ける事としたのであった。

 

最終的には、美神さんも納得していたしな。

 

「多分、鳴上クンの霊感に感じるものがあったのでしょうね。」

 

とは、美神さんの談。

 

と。

 

コンコン。

 

「はぁ〜〜〜い。」

「あの、こちらに白鳥さんはいらっしゃいますか・・・?」

「っ!?」

 

医務室のドアをノックすると、間延びした声が返ってきた。

それに、俺はドアを開けると、おずおずとそう訪ねたのであった。

 

俺の存在に気付くと、白鳥さんは目を見開く。

まさか、俺が訪ねてくるとは思ってもみなかったのかもしれない。

 

「ええ、いるわよぉ〜〜〜。ちょうど、さっき目を覚ましたところよぉ〜〜〜。」

 

ニコニコと、看護師姿の可愛らしい女性がそう答える。

いや、おそらく俺よりも歳上だろう女性に、可愛らしい、というのは失礼かもしれないか。

が、それ以外の表現が思い付かない。

 

「ワウワウッ!」

「・・・犬?」

 

次いで、何故かその場にいた犬が軽く吠えたと思ったら、俺に擦り寄ってくる。

 

「あらあらぁ〜〜〜。シュウトラちゃんが私以外の人に懐くなんてぇ〜〜〜。貴方、不思議な人ねぇ〜〜〜。」

「は、はぁ、そうですか・・・?」

 

マジマジと見られて俺は軽く困惑する。

いや、それよりも、俺はこの場には別の用事がある。

 

「・・・何用でござるか?敗者を嘲笑いに来たのでござるかな?」

 

白鳥さんは、先程試合をしていた時とは全く違う様子で自嘲気味にそう口を開く。

・・・ふむ。

こちらが、彼の本質の部分なのかもしないな。

 

「俺にはそんな悪趣味はないよ、白鳥さん。これを拾ったから、届けようと思ってね。」

「そ、それは某のっ・・・!」

「モガちゃん人形だ。大事なものなんだろ?」

「わざわざこれを・・・?」

「ああ。まぁ、スタッフの人達に言えばそれで済んだんだろうけど、彼らも忙しそうだったし、それに俺も、少しばかり貴方と話をしてみたくてね。」

「・・・は?」

「それってさ。もしかしてだけど、手作りじゃないか?」

「っ!!!???」

 

完二に付き合った経験から、俺はこれでもかなり人形などの事には詳しくなっている。

まぁ、それでなくとも、ジャンルは違えど、俺はぬいぐるみを収集する趣味や、プラモを組み立てる趣味があるからな。

 

で、その経験から、どうもこのモガちゃん人形が、市販の代物ではない事に気が付いたのである。

もちろん、俺はモガちゃん人形については詳しくないのでほとんど当てずっぽうだったが。

 

ただ、もしそうなら、世界は違えど、完二の同類がいる事になる。

俺の世界とこっちの世界は、直接的には繋がりはないのだが、それでも世界が違えど同好の士がいるのならば、彼らは良き友人になれるのではないか、と思ったのであった。

少なくとも、自分が独りではない、と思えるかもしれない。

ま、ただのお節介かもしれないがな。

 

「な、何故それを・・・?」

「やっぱりか・・・。と、言うのも、俺の後輩にこの手の代物を作る人物がいてね。で、彼に付き合った経験から、俺はその作り手によって“癖”みたいなものがある事に気が付いたんだよ。その経験から推察するに、特にこの辺とかに、出来合いの物とは違うんじゃないかと思った訳だ。」

「ふむ・・・、“癖”、でござるか・・・。そんな事、考えた事もなかったでござるな・・・。」

 

“某は、いつも独りだったでござるからな・・・。”

ボソッとこぼれ落ちた独り言が、白鳥さんの人となりを雄弁に語っていた。

 

つまり彼には、それを見せ合う様な友人がいなかったのだろう。

世の中、案外人から見なければ分からない事もある。

その一つが、自分の“癖”だったりする。

 

自分にとってそれは普通だから、案外気付かないものなのだが、端から見ると特徴がある、なんて事は往々にしてあるものだからな。

 

しばらくの沈黙の後、白鳥さんはその重い口を開く。

 

「・・・御指摘の通り、そのモガちゃん人形は某が制作したものでござる。元々この手の物が好きだった事もあるでござるが、某には友人と呼べる者がいないのでな。一人遊びを極めて行ったら、そうした事に行き着いたのでござるよ。」

「・・・なるほど。」

 

また一つ、ここで俺は納得していた。

自らの作り出した物故に、その人形が霊力を帯びる事となったのだろう、と。

 

白鳥さんが霊力に目覚めたのはどの時期から分からないが、おそらく俺の推測は当たっているだろう。

 

「フフ、気持ち悪いでござろう?」

「・・・は?」

 

俺がそんな事を考えていると、伏し目がちに白鳥さんはそう自嘲する。

 

彼の歳は正確には分からないが、おそらく俺とはそう離れていないと思われる。

で、そんないい歳した青年が人形遊びなど、気持ち悪いだろう、と白鳥さんは言ったのだろう。

 

完二の事もあって、そんな事を思わなくなっていた俺は、軽く反応が遅れる。

しかし、それは俺にとっては聞き捨てならない言葉であった。

 

「・・・何で気持ち悪いんだ?」

「・・・・・・・・・えっ?」

 

俺の反応は、彼が予想していたのとは違うものだったのだろう。

彼はポカーンとしていた。

 

「俺は人の趣味嗜好を笑う趣味はないよ。それに、どんな事であれ、物事を極めた人を、俺は尊敬する。もちろん、それが社会にとってマイナスなモノならば俺も考えるが、少なくとも人形制作や人形遊びが悪い事ではありえないだろう。いや、幼い子供達がそれで楽しく遊べるなら、それは立派な特技であり、貴方の個性に他ならない。」

「っ!!!」

 

他者に受け入れられない事は非常に苦しい事である。

実際、俺も俺の仲間達も、内心その事に思い悩んでいた。

 

もっとも俺達は、それを仲間の存在もあってどうにか受け入れる事ができた。

それ故に、ペルソナ能力に目覚めたし、結果として各々の悩みとどうにか折り合いを付けられた。

 

ただ、それができなかった人を、俺は少なくとも一人知っている。

足立透。

例の事件の首謀者であり(結局、黒幕はイザナミであったが)、間接的にではあるが、二人の女性をその手に掛けた殺人犯である。

 

ただ、彼は彼で、世の中に絶望しており、それを共有できる存在もいなかったのである。

 

〈・・・世の中クソだな〉

 

彼が放った言葉で、俺達はそれを肯定はできないが、それを心のどこかで否定もできなかった。

 

彼に足りなかったのは他者との絆だ。

つまり、俺と足立さんは、どこか孤独で似たような存在であったが、その違いは、俺には絆を育む仲間達がいた事で、彼はそれらを拒絶した事なのである。

 

ただ、一つボタンをかけちがえば、俺が足立さんになってしまっていたかもしれない。

少なくとも、菜々子の件で、当時犯人だと思い込んでいた生天目さんを“あの世界”に突き落としていたら、そうなっていた可能性もある。

 

それを踏み止まれたのは、やっぱり仲間達の存在だ。

俺にはそうした存在がいて、足立さんにはそうした存在がいなかっただけの事なのである。(まぁ、堂島家との関わりに、俺が割って入ってしまった事もあるのだが。)

 

このように、他者との関わりは面倒な一面もありつつも、それで救われる事もあるのだ。

少なくとも、仲間達がいたから、絆があったから、イザナミとので戦いで立ち上がる事ができた。

 

では、白鳥さんはどうか?

彼の生い立ちなどは俺は知らないが、もし、彼が俺の感じたように、完二と似たような境遇だとしたら、彼にもトラウマやコンプレックスがあるかもしれない。

 

そして彼は、“霊能者”という特別な能力者であるから、下手をすればこの先悪い方向に向かってしまったとしたら、その影響力はかなり大きいものになってしまうかもしれない。

 

もちろん、俺がそこまで気に掛ける必要はないかもしれない。

しかし、こうして関わりができた事は何かの縁かもしれないし、俺自身、そうして貰ったように、少しばかりお節介を焼いてみたくなったのである。

 

ま、なんだかんだ言っても、やはり俺は堂島さんの甥なのである。

 

「だから、自分の特技と能力を卑下するのは止めてくれ。そして、できればその(チカラ)を良い方向に使って欲しい。お節介かもしれないけど、な。」

「・・・。」

 

俺の言葉には答えず、白鳥さんは俺から返されたモガちゃん人形をジッと眺めていた。

 

ふと、これは俺の目の錯覚かもしれないが、モガちゃん人形が微かに、ほんの微かに微笑んだように見えたのであったーーー。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。
(お名前は伏せますが、誤字・脱字報告をしてくださった方にはこの場をお借りして感謝申し上げます。)

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々そちらもチェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
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