続きです。
今回から新章です。
こちらは陽介sideのお話。
番長の出番は、しばらくお休みとなります。
もうがっかり王子なんて呼ばせない
・・・
小西早紀。
例の事件で山野真由美と共に被害者となってしまい、帰らぬ人となってしまった女子高校生である。
彼女は当時、番長や陽介の一個上の高校三年生で先輩、番長や陽介の一個下に弟の小西尚紀がいる。
年上であり、姉と言う立場からか、面倒見がよく、争い事は嫌いな様子。
実家は商店街の酒屋だが、大型スーパーのジュネスでバイトをしていた。
また、陽介の思い人であり、彼女も先輩と言う立場からか、陽介を「花ちゃん」の愛称で呼んでいた。
そして、それ故に一年以上経過し、事件の真相や黒幕に到達しても尚、陽介の心にしこりとして残り続けている存在でもあったーーー。
さて、彼女が殺害されてしまった事が、番長や陽介が本気で“マヨナカテレビ”攻略に乗り出すキッカケとなったのだが(もちろん、クマとの“約束”もあったが)、そこでの彼女の言葉、
「ずっと……言えなかった……私、花ちゃんの事…」
「ウザいと思ってた」
これが、陽介の影がシャドウ化するキッカケとなってしまったので誤解している人も多いかもしれないが、もちろんそれは小西早紀の本音の一つだが、それが全てでもない。
彼女も一人の人間であるから、良い面も悪い面もあるのだ。
そして、本当の彼女は温厚で面倒見が良い故に、自らを押し殺してしまう、悩める少女だったのだろう。
様々な事情が重なった結果、
「ウザいと思っていた」
というセリフに繋がるが、それを肯定していたのなら小西早紀の影はペルソナ化している筈なので、結果としてシャドウに殺された彼女は、それを否定していた事となる。
つまり、番長に初めて会った時に言った「お節介でウザいけど、イイ奴」と言うのが、陽介に対する彼女の本音なのであった。
まぁ、どちらにせよ、陽介をどこか弟扱いしていた、つまり恋愛対象とは見ていなかった可能性は否定できないので、陽介の恋愛が破れた可能性は高い訳だが。
まぁ、それはともかく。
さて、そんな風に、いまだに特に陽介の心にしこりとして残っている彼女の存在だったが、彼女には実は雪子のような悩みもあったりした。
これは、若者特有の悩みであり、田舎暮らしに辟易して“ここではないどこかで新たなる人生を始めたい”、というものである。
実際彼女は、彼女を“連れ出してくれる存在”と共に八十稲羽から出ようとした過去があったようであるが、これは最終的には成就せず、稲羽市に戻ったようである。
友人には、
「やっぱり自分の力でなんとかしないと……」
と語っていたようだ。
これが、ジュネスでのバイトに繋がるのかどうかは定かではないが、こうした悩みや願望は、特に若者にとっては決して珍しくないものであろうーーー。
・・・
5/26
魔術師side
イザナギさまの家庭教師を受けていた俺だったが、当然ながら模擬試験は別口で受けなければならない。
ちょうど先週の日曜日、相棒が向こうでGS試験を受けていた頃、俺もとある模擬試験を受けていたのである。
で、その事で、最近は割と頻繁にお隣の沖奈市を訪れる事が多かったりする。
もちろん、なるべく繁華街は避け、例の“半グレ集団”・『
相棒はもちろんだが、俺も割とトラブルメーカーだからな。
連中が限りなく怪しいのはすでに分かっているが、イザナギさまによる助言により、俺らとりあえず連中を泳がす方針を取っている。
その俺が、曲がりなりにも相棒の不在により新リーダーとなっている俺が、連中とトラブルを起こす訳にはいかないからである。
と、そんな決意を胸に秘めていた俺なのだが、どうやら運命の女神は、俺を相棒のようにスマートにはいかせてはくれないようであった。
何故ならば、今正に、一人の女子高校生と怪しい男連中が、俺の目の前で何やら言い合いをしている場面に出くわしてしまったからであるーーー。
「約束が違うじゃん!」
「だからよぉ〜、それは謝ってんじゃん。俺等だって悪りぃとは思ってんだぜ?けど俺等も、上にゃ逆らえねぇのよ。だから、な?大人しく追加の仕事を頼むわ。」
「ふんっ!偉そうにしてる割には情けないんだね!!」
「・・・あ゛っ!?」
「コイツ、チョーシに乗ってんな・・・。」
「下手に出てりゃ、いい気になりやがってよ・・・。」
「どうする?ヤッちまうか?」
「・・・そうだな。前々からコイツの事は、ちょっと、いや、かなりいい女だと思ってたしよ。」
「んじゃ、いっちょ拉致っとく?」
学校終わりに沖奈市に向かい、とある塾で模擬試験の結果を受け取った俺は、かなり上機嫌で帰路についていた。
何故なら、その結果が、驚きのB判定だったからである。
あまり勉強が得意ではない俺がこの結果は、俺自身もかなり驚いていた。
ま、ここら辺は、ちょっとズルもあるけどな。
イザナギさまの話だと、ペルソナ能力者は集合的無意識との繋がりが強いので、その影響で、武術とかスポーツ、勉学なんかでもその恩恵がもたらされる事があるそうだ。
もっとも、つまりは“コツ”を掴むのが異常に早い、ってだけで、結局のところ、努力なしにチート能力を持てる訳じゃねぇみたいだけど。
それでも、イザナギさまの教え方が上手いのか、結果として俺は、自分の力でB判定を獲得する事ができた訳だ。
もちろん、だからと言ってまだ安心できる訳じゃないし、これからも努力は必要だろうけど、結果が出るのは単純に嬉しい。
そんな訳で、多少気分も良かった事もあって、俺は注意も忘れて意気揚々と沖奈市の繁華街を堂々と歩いていた訳なのであるがーーー、
「・・・はぁ〜〜〜。」
俺は、やっちまったと思っていた。
何故なら、ガラの悪い連中が一人の女子高校生に絡んでおり、しかも、その俺の視線が、運悪く連中の一人に見られてしまったからである。
この手の出会いは、自分達で目立っておきながら、何故かこう言うのがお決まりの流れなのである。
つまり、
「・・・何見てんだよっ!」
である。
いや、見られて困るなら、こんな場所で揉めんなって話だが、こういう連中には道理は通用しない。
それに、実際、これだけ騒いでるにも関わらず、たまたま近くを通りがかった人達は、連中の方を見もせずに、そそくさと足早に通り過ぎるか引き返すかしている。
良いとか悪いとかではない。
誰だって、トラブルに巻き込まれるのはごめんだろう。
俺だって、おっかない連中に睨まれたらブルっちまうしな。
以前の俺なら、ここでは軽い調子でやり過ごす場面だった。
「いや、見てないっすよ。ハハハ、し、失礼しまーす!」
とか言って、適当に逃げるところだ。
多勢に無勢。
パンピーである俺が、下手な正義感で立ち向かって行っても、ボコボコにやられてしかも女子高校生を助ける事もできないで終わるのがオチである。
ならば、適当に逃げてから警察に通報しておく方が、まだ現実的な解決策だろう。
だが、
「向こうで話しよーぜ。」
「ちょっ、離してよ!」
「うっせ、大人しくしとけっ!」
「きゃっ!!!」
パンッ!
「っ!!!」
「い、いたっ!!」
「騒げば、もっと痛い目にあうぜ?コイツ、ちょっとヤベー趣味あっからなぁ〜。」
「大人しく言う事聞いとけや。」
「だ、誰かっ!助けてっ!!」
「ギャハハハッ!この街で俺等に歯向かう奴がいっかよ!」
「ほら、来んだよ!」
「い、いやぁっ!!!」
「あぁ〜〜〜、彼女、嫌がってるじゃないっすか。離してやったらどうっすか?」
「「「「「っ!!!???」」」」」
「・・・あんっ?」
男達が女子高校生に手を上げたのを見るや、俺は思わずそんな事を口走っていたのであった。
「・・・なんだい、にいちゃん。何か俺等に文句でもあんのかっ!?」
連中の一人が俺に近寄ってきて、メンチを切りながらそんなセリフを吐く。
ま、いきなり殴られなかっただけマシだな。
もっとも、今の俺なら、連中の攻撃はかすりもしないのだろうが。
それでも、この手の連中は怖いは怖い。
だが、一度連中の注意を引き付けてしまった以上、ここで逃げる事はできないだろう。
意を決して俺は、連中と対峙する事とした。
「文句っつーか、意見っすけど、アンタら情けなくねぇ〜の?事情は知らねぇ〜けど、よってたかって女の子一人に詰め寄っちゃったりしてさぁ〜。しかも、手まで上げるし。」
「ハハハ、中々言うじゃねぇ〜か。」
「コイツ、俺等の事知らねぇ〜んじゃねぇ〜の?」
「目立ちたがり屋の正義マンかぁ〜?」
俺の言葉に、何がおかしいのか、激高するどころか笑い出す男達。
大方、面白いオモチャがやって来たと思って喜んでるのだろう。
確かに、客観的に見れば多勢に無勢。
俺が仮に武術の達人だったとしても、この人数相手では、万が一にも自分達がやられるとは思ってないのだろう。
もちろん、ペルソナ能力者として、イザナギさま曰く、達人の領域に入ってるらしい俺だが、この人数相手には、マトモにやって勝ち目がない事は分かり切っている。
ただ、“ただの達人”と違って、俺はあくまで“ペルソナ使い”だ。
だから、普通の人には扱えない
この事が、こういう連中に絡んでいきながらも、俺が冷静でいられる要因となっていた。
「聞いて驚けや。俺等は『
「・・・(ボソボソ)」
「あんだぁ〜?今更ブルっちまったのかぁ〜!?」
「後悔しても、もうおせぇ〜よ!俺等に歯向かった事、キッチリわからせてやんぜっ!!」
「おら、テメェもこっち来いやっ!」
「っ・・・!!」
バキッ!
先程の女の子には、平手打ちだったが、今度はグーパンだ。
普通なら、ここで戦意喪失して、夜の闇に消えていく流れだろう。
だが、その攻撃は、
「いって・・・!テメェ、何すんだよっ!!」
「は・・・?えっ・・・??」
「おいおい、急にどうした?仲間割れは止めとけってっ!」
「そういうワケに行くかよっ!何でアイツじゃなくて俺を殴ったんだよっ!」
「い、いや、やってねぇ〜よ。アイツを殴ったんだってっ!!」
「何訳分かんねぇ〜事言ってんだよっ!!謝れや、コ゛ラ゛ッ!」
「って〜なっ!やってねぇ〜っつってんだろっ!!」
「えっ?えっ??」
「どうやらお忙しいようなんで、ここら辺でズラかろうぜ。」(ボソボソ)
「あ、う、うんっ!」(ボソボソ)
この手の連中に、仲間意識なんてあってないようなモンだ。
ちょっと
そうなりゃ、一瞬俺らに対する注意は逸れる。
その隙に、俺は女子高校生の手を引き、アッサリとその場からの脱出に成功したのであったーーー。
花村陽介がやった事。
それは単純明快である。
彼自身も言及した通り、彼は“達人の領域”に到達しているし、かなりの身体能力を有するに至っているが、それ以上に重要なのは、彼が“ペルソナ使い”である事である。
という事はつまり、様々な“スキル”や“魔法”を扱える、という事である。
シャドウ相手にも通用するスキルや魔法は、当然人間相手には効果テキメンだろう。
もっとも、彼の代名詞とも言える“ガル”系の魔法、疾風属性の攻撃魔法は、ハッキリ言ってかなりの殺傷能力を持っている。
まぁ、これは、他の魔法も同様だ。
アギ系の火炎属性は、場合によっては相手を火だるまにしてしまうから、危険極まりないし、ブフ系の氷結属性も、相手を氷漬けにしてしまうから言わずもがな。
ジオ系の電撃属性も当然危険だ。
ハマ系、ムド系は、即死魔法に該当する魔法であるから、効くか効かないかはともかく、人間相手には試さない方が賢明だろう。
で、疾風属性は一見それらに比べたら危険度が低そうに感じるが、しかし考えてもみてほしい。
竜巻や台風ほどの強風は、建造物すら破壊する威力を秘めているのだ。
つまり、決して疾風属性は、他の属性に比べて劣っている事はない、という訳である。
女子高校生に絡んでいた連中は、客観的に見れば所謂“悪人”だろう。
しかし、だからと言って、陽介が疾風属性の魔法を繰り出してしまったら、場合によっては相手の命を簡単に奪ってしまう可能性がある。
もちろん、現実世界では、陽介がやったという科学的な根拠はないので罪に問われる事はないかもしれないが、当然、陽介も、自分が殺人犯になるつもりなど毛頭なかった。
ここら辺は、直接的ではないまでも、“ペルソナ能力”を悪用していた足立透を知っているからこそ、その選択肢は出てこないのである。
そうでなくとも、彼には非常に便利なスキルや魔法が他にもあるからだ。
テンタラフー。
敵全体に混乱効果を与えるスキル、魔法である。
これを使えば、シャドウも同士討ちをする事がある。
ならば、人間も当然そうした効果が期待できる。
結果は知っての通り。
『
更には追い打ちをかけるように、陽介は次のスキル、魔法を発動。
トラフーリ。
一部の戦闘を除いて確実に戦闘から逃走するスキル、魔法である。
テンタラフーによる混乱効果、内輪揉めも相まって、結果陽介と女子高校生は、アッサリとその場から離脱する事ができた訳である。
最小の労力で、最大の結果を導き出した陽介は、客観的に見れば派手さはないまでも、なるほど、番長達に参謀を自称していただけあって、かなりの策士なのかもしれないーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。