続きです。
個人的には陽介の事が好きなのですが、本編中ではあまりモテる感じが描かれませんでしたので、二次創作くらいはそういう描写があっても良い、よね?
・・・
世界side
「・・・まさか、そんな・・・!
「確証はないけれどね。しかし、今のボクの宿主、鳴上悠が狙われているのはまず間違いない。彼自身もペルソナ能力者として非常に利用価値のある人物だが、それだけで彼が必要以上に狙われているのはやはり違和感がある。つまり、彼自身、というよりも、彼の身に宿った存在の方が
「・・・イザナギさま、ですか。この国における貴方様の影響は、人間が思っているよりずっと大きい・・・。ふむ、確かに、そう考えるのが妥当、と言ったところかもしれませんね。」
「だろう?」
ボクは今、とある神の一柱と会談を行っていた。
以前、悠くんにも話した事であるが、彼が横島くん達の世界に行く事となった要因は、ぶっちゃけるとこの国の神々の内輪揉め、である。
日本は、古来より、八百万の神々が存在する特殊な土地柄だ。
もちろん、その中にあって、最高神に近い存在であるアーちゃんなんかがいるのである程度の秩序が保たれているが、それでも実際には一枚岩ではないのが実情なのである。
実際、日本書紀や古事記にも、神々の対立は記されているからね。
もっとも、本来なら現状の力関係が大きく変化する事はない、筈だった。
何故ならば、それをひっくり返せる存在が居なくなっていたからである。
つまり、ボクの事だ。
もっとも、
彼女は、国産みの女神であると同時に、黄泉の国の管理人でもあるからだ。
つまり、下手に彼女に手出しすれば、その呪いや厄災がばら撒かれてしまう恐れがあるのである。
神々はともかく、人間はそれに耐えられないだろう。
そうなると、謎の疫病やら不幸やらが、ちょっかい掛けた神々の支配する土地を中心に広がる恐れがあるのである。
神々にとっても、人間の信仰は重要な意味を持つ。
逆に言えば、そうした厄災に見舞われると、一時的に信仰心は高くなるかもしれないが、そもそもそれをする人間が少なくなってしまうので、言わば諸刃の剣となってしまうのである。
そんな事しなくとも、もう一柱の最高神に近い存在であるボクが帰還したとなると、そちらを狙った方が、まだ現実的な話なのである。
歴史的にも、天皇の権威を利用して、実権を握ろうとした人達も多くいる。
悠くんが狙われているのも、もちろん、悠くん自身にも利用価値もあるが、その身に宿している存在、つまりボクを味方につければ、神々の勢力図を塗り替える事が可能だと判断した結果だろう。
(ま、そうした事に嫌気がさして、ボクは根源へと還る事を選択した理由だけどね。
ちなみに、今でも現役で信仰されているアーちゃんこと、アマテラスやツクヨミ、スサノオの三貴人であるが、そちらに手出しするのはもっと政治的に難しい。
例えるなら、現役の天皇や指導者に手出しする事と同義だ。
下手すれば、この国に住まう神々、人間問わず全ての者達を敵に回してしまいかねないので、それは悪手も悪手なのである。
その点、ボクは、ある意味引退した野良神に過ぎない。
もちろんその影響力はかなり大きいが、ボクを守る存在もいないし、与するならボクが一番の狙い目、なのである。)
「あい、分かり申した。私とて、この国が乱れる事を今更望むべきものではありません。神々の集いの折には、貴方様を支持する事をお約束いたします。」
「ありがとう、助かるよ。
「恐れながらその件で一つご提案が御座いますれば。いえ、私如きが口出しするべき事では御座いませんが、やはり“生命の神”たる貴方様の不在は、今のこの国の陰りに影響を与えているのでは、と。」
「ふむ・・・。少子高齢化、かい?」
「ええ。当たり前ですが、この国を担う若者が減っていけば、いずれこの国は滅びましょう。貴方様にもお考えがおありなのでしょうが、今一度、貴方様の現世復帰を愚行致しますれば。」
「うぅむ・・・。難しい問題だが・・・、しかし、考えておこう。」
「よろしく、お頼み申します。・・・しかし、何故、今になってこのような事態となったので御座いましょうか?貴方様とイザナミ様の約定は、今でも有効な筈ですのに・・・。」
「・・・。」
おそらく彼は、ボクと
昔話でも馴染み深いとは思うが、寿命や生死の概念を反映させたのがこの“黄泉下り”だ。
詳細は割愛するが、黄泉の国の女主人となった
それに対して、ボクは、一日千五百人生まれるようにする、と応じている。
この事によって、この国に寿命の概念が導入され、また、世代交代や人類が繁栄する事を示してもいる。
だが、今のこの国では、この機能が正常に働いていない、と言っても過言ではない。
もっとも、何故そうなったのかは、ボクは何となく心当たりがあるのだが・・・。
「やはり、
「・・・はい?」
「いや、何でもないよ。じゃ、長居してもあれだからね。ボクはそろそろお暇するとしよう。わざわざ時間を作ってもらって、悪かったね。」
「いえいえ。基本的に我々神々は暇ですからなぁ〜。」
「ハハハ、じゃ、また。」
「はい、お気をつけて。」
そういうと、ボクはその場を辞した。
このように、こっちと向こうを行き来しながら、陽介くん達の面倒を見つつ、ボクを支持してくれる神々なんかと会合を繰り返してその足固めに奔走していたのであった。
彼らだけに面倒事を押し付ける訳にはいかないからねぇ〜。
・・・
魔術師side
「ふぅ〜・・・。」
何とか連中から女子高校生を救出する事に成功した俺は、沖奈市駅前にやって来ていた。
こっちは、あんまり俺も土地勘がないし、これほど大人数が行き交う場所ならば、いくら連中でもそうそう俺らに手出しできないと踏んでの事だ。
「はぁ、はぁ・・・。あ、あの、助かりました・・・!それで、その、あの、手を・・・。」
「あ、あぁ〜、すんません。俺ってば夢中だったモンで。」
一息吐きながら、女の子はお礼を言いつつ、繋がれていた手の事を言っていた。
そう言われて、俺は慌てて手を離す。
逃げ出す時に、彼女の手を引きながらずっとここまで来たのである。
状況が状況だったと言えど、見知らぬヤツにずっと手を引かれたままだと、彼女としても気持ち悪いだろう。
「あ、いえ、別に嫌ではなかったので・・・。あ、いや、その、ハハハ。」(ボソボソ)
「・・・?」
うつむきながら何かを呟く女の子のセリフを、俺は上手く聞き取る事ができなかった。
なんだかんだで、ここは人通りが多い場所だからな。
その分、雑音を大きいのである。
「その、殴られたところ、痛くないっすか?」
「え・・・?あ、ちょっと口唇、切れてますね・・・。」
「ひでぇ事しやがる・・・。あ、ちょっと俺、“おまじない”できるんすよ。痛いの痛いの飛んでいけ〜、って。」
「プッ、何ですか、それ。「ディア。」・・・え?」
連中から暴力を受けた彼女は、軽く口唇が切れていた。
それを見かねた俺は、おどけながら回復魔法・ディアを掛ける。
何が起こったか分からない彼女は、キョトンとしていた。
ま、普通は魔法なんて使えないんだから、その反応も当然なんだけどね。
「痛く、ない・・・。」
「良かった。“おまじない”、が効いたみたいっすね。」
「・・・アナタ・・・。」
マジマジと俺の顔を見る彼女。
ま、本当の事は言えないからな。
ここは誤魔化しておこう。
「それよりも、一体何があったっすか?貴女みたいな人が、あんな連中に絡まれるなんて・・・。」
「あっ・・・。」
俺がそう聞くと、彼女はうつむいた。
ま、簡単に他人に言える事ではないだろう。
先程はあまりの事にマジマジと観察はしていなかったが、見れば見るほど彼女は、何となく小西先輩に似ていた。
いや、顔が似てるとかそういう事ではない。
その、雰囲気、と言うか、そういうのだ。
だから放っておけなかったのかもしれない。
ただ、見た目で判断するのは失礼かもしれないが、少なくとも不良っぽい雰囲気は感じない。
だから、連中のような半グレ集団と繋がりがあるのは不自然なのだ。
逆に言えば、もしかしたら例の“闇バイト”みたいなモンに引っかかっちまったのかもしれないな。
「あ、すんません。他人にゃ言えない事もあるっすよね。」
「・・・はい、ごめんなさい。あ、そう言えばまだ名乗ってなかったですね。私は、沖奈西高校三年の、
「あ、同学年なんっすね。俺は、八十神高校三年の、花村陽介っす。」
「花村さん・・・。あの、本当にありがとうございました!」
「あ、いや、男として当然の事をしたまでっすから。えっと、市来さん。ここまでくりゃ、安全だとは思うっすけど、その、こっから帰れるっすか?」
俺は、夢中になって駅前まで来ちまったが、彼女の自宅の場所は知らない。
だから、場合によっては逆方向、なんて事もありえるのでそんな事を聞いた。
「あ、いえ・・・。私の家、沖奈の繁華街を超えたところにあるんですよね・・・。それに・・・。」
「・・・彼女をそのまま帰すのは、ちょっと危険かもしれないね。」
「「っ!?」」
と、そこへ、俺らの会話に割り込んできた存在があった。
それは、人間形態のイザナギさまであった。
「イザナギ、あ、いや、薙輔さん。」
「やあ、陽介くん。ナンパかい?」
「ち、ちげぇっすよ!ってか、何となく事情は察してるみたいな素振りだったじゃないっすかっ!」
「ハハハ、ゴメンゴメン。」
新たなる人物の登場に、市来さんは困惑している。
ま、それも無理はない。
イザナギさまの人間形態は、2m近い大男だ。
物腰は柔らかいので、そこまでの威圧感がある訳ではないが、目立つ事この上ないだろう。
俺も、知り合いでなかったら、まず避けるだろうお人である。
女の子からみたら、ビビる要素の方が多いだろうな。
「おっと、いきなり会話に入ってしまってすまないね、お嬢さん。ボクは久須美薙輔。大学生で、陽介くんの家庭教師をしている者さ。」
「ど、どうも。市来美姫です。」
「うん、美姫ちゃん。よろしくね。」
「んで、薙輔さん。そのまま帰すのは危険って、一体どういう意味っすか?」
イザナギさまと市来さんが軽く自己紹介をしたところで、俺は気になっていた事をイザナギさまに問い掛けた。
「何、簡単な話だよ。美姫ちゃんみたいな娘が、あんな危ない連中と関わっていたってのは、どう考えてもおかしな話さ。そもそも、接点があるとは思えないからね。って事は、他に考えられる可能性としては、所謂“闇バイト”じゃないかと思われる。」
「・・・。」
それについては、俺も考えていた事だ。
俺は目線を市来さんに送る。
市来さんは、やや戸惑った末に、コクリと頷いた。
「やはりね。ああ、もちろん、キミを責めている訳じゃない。人には色々と事情があるだろうからね。それに、キミの仕事内容的には、特に犯罪行為とは無縁なようだ。故に、その件でキミに落ち度はない。」
「「・・・。」」
全て見透かした様なイザナギさまのセリフに、市来さんはホッとしていた。
いや、よくよく考えてみれば、ほぼ初対面に近いイザナギさまが、彼女の詳しい事情を知ってる方がおかしいのだが、そこはそれ、なんだかんだ言ってイザナギさまは“神様”であるから、謎の説得力があるのだろう。
彼女も、特にその事に対して疑問を抱いてないように見えた。
「ただ、問題となるのは、あの手の連中に一度でも関わってしまうと、非常に高いリスクを背負う恐れがある事の方さ。具体的に言えば、個人情報を抑えられてしまう、とかね。」
「「っ!!!」」
・・・そう言えばニュースなんかで聞いた事がある。
“闇バイト”は、普通の若者が手を出してしまう。
その事情は様々だろうが、簡単に大金が手に入るとか、そうしたメリット故だろう。
しかし、メリットがあればデメリットもある。
“闇バイト”の場合は、通常のバイトなんかと違って、その裏に存在しているのは十中八九あくどい連中だ。
つまり、俺も詳しくは知らないが、契約するに当たって、連絡先や氏名など、所謂“個人情報”がそういった連中に握られてしまう恐れがあるのである。
もしかしたら、住所や家族構成なんかも把握されてしまっているかもしれない。
そして、そうした連中に倫理観などないから、それは脅しのネタとして使ってくる事も考えられる。
市来さんの場合、もしかしたら住所がすでに割れていて、先程は上手く逃げる事ができたが、自宅に先回りされている可能性もある、って訳か・・・。
「ど、どうしよう・・・。家族には普通のバイト、って言ってるのに・・・。」
イザナギさまの指摘に、市来さんは青ざめたようにそう呟いた。
やはり、何某かの心当たりがあるのだろう。
「な、何とかなんねぇ〜すか、薙輔さん!?」
「一応心当たりはある。けど、ちょっと問題点もあるね。ごめんね、美姫ちゃん。ちょっと陽介くんと話をさせて欲しい。」
「は、はぁ・・・。」
ちょいちょいと手招きをしたイザナギさまに、俺は近寄った。
「ぶっちゃけて言えば、マリーの力を借りれば、彼女の個人情報を何とかする事は簡単だ。もちろんボクにも可能だが、なるべくなら余計な力は使いたくないからね。悠くんの負担が大きくなるし。」(ボソボソ)
「な、なんだ、そんな簡単な方法があるんじゃないすか。」(ボソボソ)
「うん、そうなんだけど、キミ、その
「・・・えっ?」
神妙な顔をしたイザナギさまに、俺はポカーンとする。
「ボクは言った筈だよね?現時点では、連中に関わるのは時期尚早だ、と。仮にここで彼女を何とかするとしたら、半グレ集団はともかく、その裏にいる連中は、確実に“
「・・・。」
確かに、イザナギさまの指摘はもっともだ。
市来さんとは、今日初めて会ったばかりの、言わば見ず知らずの他人だ。
その市来さんを助ける為に仲間達や菜々子ちゃんを危険にさらすのは、相棒の代わりにリーダーを務める俺としては、一番やっちゃいけない事だろう。
だが、だからと言って市来さんを見捨てるのは、それも違うように思う。
もちろん、下手な正義感からではない。
もし仮に、相棒が俺と同じ立場となったら、多分悠は、市来さんを見捨てないと思うからである。
「で、どうなんだい?」(ボソボソ)
「・・・多分、イザナギさまの言ってる事は正しいんだと思うっす。リーダーとしては、時に大を活かす為には小を切り捨てる判断も必要っすからね。けど、悠なら、こんな時、多分彼女を見捨てない。」(ボソボソ)
「ふむ・・・。」(ボソボソ)
「それと、考えようによっては、これはチャンスかもしれないっすよ?ちょっと考えてみたんすよ。何で、半グレ集団を裏で操ってる連中が、そんな半端者連中に関わってるのか、って。」(ボソボソ)
「・・・ほぅ。」(ボソボソ)
「おそらく、都合良く動かせる手足が欲しかった、ってのもあると思いますが、もう一点、その資金源が欲しかったんじゃないっすかね?」(ボソボソ)
「・・・。」
「半グレ集団が巻き上げる金は、それこそ軽く億を超えるとか聞いた事があります。何をするにしても、当然資金は掛かりますから、方法はともかく、半グレ集団が稼ぐ金は裏に存在する連中にも魅力的だと思います。逆に言えば、その資金源を一つ潰せるなら、連中にとっては痛手じゃないっすかね?もちろん、他にも資金源があるかもしんないっすけど。」(ボソボソ)
「・・・なるほど。」(ボソボソ)
そうなのだ。
これでも俺はジュネスの店長の息子で、俺自身も経営を学ぶ為に大学に行こうとしている。
だから、昔は朧気にしか分かっていなかった資金の重要性を、今はハッキリと理解できる。
結局のところ、悠や菜々子ちゃんを狙ってる連中が何者かは分からないし、その更に裏には“神様”が控えてるかもしれないが、何か行動を起こすならば、当然活動資金は必要となる。
で、イザナギさまにも言ったように、他にも資金源があるかもしれないが、少なくとも例の半グレ集団なんかと関わってるのは、上手く彼らを利用する為だろう。
その目的も、例のアプリをバラ撒く事だけに留まらず、その資金源も目当てである可能性がある。
所謂、“上納金”ってヤツだ。
つまり、例の半グレ集団を何とかするのは、こちらにもリスクがあるが、逆に向こうにとっても、ある程度の痛手となる可能性が高いのである。
「それに、ウチの連中はそんなヤワじゃないっすよ。逆に俺がここで、我が身や仲間可愛さに女の子を見捨てたとしれたら、ぶん殴られちゃうかもしれないっす。」(ボソボソ)
「ハハハハハ。確かに、それはありえそうな話だ。特に、千枝くんや完二くんあたりがキレるかもしれないね。」
続けた俺の言葉に、先程までの剣呑な雰囲気はどこへやら、イザナギさまは朗らかに笑った。
「うん、合格だよ、陽介くん。キミも立派に成長しているようだね!」
「・・・へっ?」
それに、再び俺は、ポカーンとする。
「なんだい?ボクが本当に女の子を見捨てるべきだと言ってると思った?」
「あ、いえ、その、はい・・・。」
「まぁ、否定はしないよ。場合によってはそうした選択肢も有りだからね。ただ、リスクを犯さず勝利は得られない。逃げてばかりでは強くはなれないからね。時には危険と真正面から向き合う必要もあるんだ。そしてその為には、策を労する必要があるし、時に仲間の力を当てにする必要もある。キミは、ただの正義感からではなく、しっかりと自分達のメリットも考えた上で結論を出している。リーダーとしては、及第点の判断力だと思うよ。」
「・・・。」
イザナギさまの言葉に、俺は自分が試されていた事に気付いた。
軽く脱力しかける。
「おっと、気を抜くのは早いよ。まずは、彼女をどう説得するか、って問題が残ってるからね。いずれにせよ、話はそれからだね。」
「あ、そっか・・・。」
イザナギさまの指摘に、俺は脱力しかけた全身に再び力を込める。
そして、どう彼女に説明するかを、頭をフル回転させて考えるのであったーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。