続きです。
この作品では、堂島さんにペルソナの事などを知って貰う事としました。
また、原作でもある程度の兆しを見せていましたが、この作品では例のひき逃げ事件を解決する事としました。
某VTuberさんではないですが、堂島家は守護らねばなりませんからね(笑)。
法皇side
刑事の仕事ってのは、一つのヤマが終わったからってそうそう落ち着けるもんじゃない。
トラブルってのは、毎日のように起きるもんだからな。
しかし、流石に昨年のような事件がこの稲羽市で毎年起こるもんでもない。
それ故に最近は、毎日しっかりと自分の家に帰れる状況になっていた。
いくら仕事だったとは言え、今までは菜々子のヤツにはさみしい思いをさせていたからな。
もっとも、昨年は悠のヤツが、今は鞠子さんがいるので、正直かなり助かっている。
少なくとも、菜々子を一人にする心配がほとんどなくなったからである。
ま、本音を言えば、最初は悠の関係とは言え、赤の他人である鞠子さんの事はかなり警戒していたのだが、菜々子のヤツが懐いてる以上悪い
とは言え、悠の婚約者云々ってのをバカ正直に信じるほど俺ももうろくしちゃいないが、ま、俺には言えない何かがあるんだろう。
そこまで考えて、俺はふと昨年の事を思い出す。
「稲羽市連続逆さ吊殺人事件」。
巷じゃ、そんな風呼ばれている事件の事だ。
これに関しちゃ、犯人と模倣犯が捕まってるので、とりあえず事件は解決、となっている。
俺にとっちゃ残念な事に、その犯人は足立のバカ野郎だった訳だが。
しかし、当然解決していない点も多く存在する。
例えば、足立の野郎が、どうやって山野真由美や小西早紀を殺したのか、とか、どうやって逆さ吊りにしたのか、などの謎は残ったままなのである。
足立の野郎は供述では(曲がりなりにも相棒だった俺は、当然ながら捜査からは外されているが)、自分がやったの一点張りだったらしいが、殺害方法や逆さ吊りの方法については曖昧なところも大きいようだ。
ただ、ここら辺は組織の悪いところだが、上層部は足立の犯行として「稲羽市連続逆さ吊殺人事件」の幕引きを図った。
ただでさえ、現役警察官の犯行と世間に知れ渡ってしまった訳だし、その上で立件できませんでした、では警察組織としてのメンツが成り立たん、という訳である。
一応俺も、全てが明らかになった訳ではないと上層部に抗議した訳だが、元・相棒を庇ってるとみなされて、結局それは無視された。
正直、かなりやるせない気持ちにはなったが、俺の心情はともかく、警察としても世間としても、「稲羽市連続逆さ吊殺人事件」はそういう形で終わった訳だ。
ただ、その最中にあって、悠達が不自然に動いていた事は俺も知っている。
悠にも言ったが、菜々子を助けたのも、おそらく悠達なのだ。
もちろん、どうやったかは知らないが、な。
それも合わせて考えてみると、おそらく足立の野郎を追い詰めたのも、多分悠達なのだ。
そして、悠達だけが、事の真相をハッキリと理解しているのだろう。
ま、俺も聞く気はないし、多分悠達も言うつもりはないのだろうが、な。
逆に言えば、急に現れた鞠子さんや薙輔さんも、おそらくその辺と関わりがあるのかもしれない。
ま、さっきも言ったが、最初こそ警戒していたが、二人の裏に怪しい点はないし、公的に不審な点も見付からなかった。
むしろ、悠の仲間達はもちろんの事、菜々子やご近所の評判も上々。
俺も助かってるのもあって、その辺は有耶無耶にする事としている。
ま、刑事としちゃ失格かもしれんがな。
さて、そんな事をぼんやり考えながら、俺は帰路についていた。
帰る前に連絡を一本入れておいたので、晩飯をこしらえておく、との事だった。
鞠子さんは、かなり今どきの若者っぽい見た目をしておきながら、案外、というのも失礼だが、家事全般が得意、らしい。
特に料理については菜々子も俺もお気に入りであり、擬似的ではあるが、家族団欒の時間を俺も密かに楽しみにしていたりする。
ま、流石に千里には劣るがな。(←ノロケ)
本当に彼女が悠のヤツとくっつけば、マジの家族になっちまうかもなぁ。
などと、ちょっとした妄想を振り切り、俺は自宅の扉を開ける。
ガラガラ。
「ただいまぁ〜。」
「あ、おとーさんだ。おかえりなさぁ〜い!」
トトトと菜々子が出迎えてくれる。
それだけで、今日の疲れが吹っ飛んじまうってなもんだが、俺は玄関にある複数の靴が気になっていた。
「おお、菜々子、ただいま。ところで、誰か来てんのか?見覚えのない靴があるようだが。」
「うん!陽介おにーちゃんと薙輔おにーちゃんだよ。後は、知らない女の人。」
「・・・何?」
花村が来るのは、特に問題じゃない。
悠のヤツがいた時は、しょっちゅう来てたし菜々子のヤツもかなり懐いてるからな。
一人で来るのは珍しいが(大抵は熊田と一緒だからな)、悠がいなくなってからもたまにやって来る事はあった。
それに、薙輔さんは本当に珍しいが、鞠子さんを預かってる建前上、様子を見に来たとしても不思議な話ではない。
問題は、菜々子も知らない女の人が一緒、ってところだ。
俺は少し考え込んだが、ここで考えていても始まらないので、とりあえず居間に向かう事としたーーー。
「あ、堂島さん!おかえりなさぁ〜い!お邪魔してまぁ〜す!」
「こんばんは、遼太郎さん。勝手に上がり込んでしまって申し訳ないですね。」
「・・・。」
そこには、菜々子の言う通り花村と薙輔さん、それと、見知らぬ女子高校生が所在なさげに座り込んでいた。
彼女は俺に気付くと、おずおずと会釈をする。
「それは別に構いませんが、こちらのお嬢さんはどちらさんです?」
俺の当然の疑問に、花村と薙輔さんは顔を見合わせる。
その後、「ここはボクが」と言って薙輔さんは俺を外に連れ出すのだったーーー。
・・・
「急に押しかけて申し訳ない、遼太郎さん。実は、折り入ってお願いがありましてね。」
「ふむ・・・。」
玄関先で男二人で一服しながら、おもむろに薙輔さんはそう切り出した。
「実は彼女、市来美姫ちゃんって言うんですが、をしばらく預かって欲しいんですよ。」
「・・・はっ?」
「詳しく説明しますね・・・。」
「なるほど・・・。例の半グレ集団に、ね。」
「やっぱり、遼太郎さんのお耳にも入ってましたか。」
「ええ。隣町の事ではありますが、その手の噂話は職業柄耳に入ってきますよ。それに、いつ連中がこの稲羽市にも進出してこないとも限りませんしね。」
「確かに。しかし、ならば話は早い。それで、お願いできませんか?」
「・・・質問しても?」
「どうぞ。」
「では、まず一点。確かにその手の連中に住所が掴まれてる可能性は否定できません。しかし、ならば沖奈の警察に保護して貰う事もできたでしょう。何故、管轄違いの、しかも一介の刑事でしかない俺を頼ったんですか?」
「それはもっともな疑問だと思います。しかし、現役の警察官を前に言う事ではないかもしれませんが、警察が頼りにならない可能性もありました。半グレ集団は暴力団以上に厄介な存在です。そもそも沖奈で彼らが幅を効かせている現状を鑑みると、それでは根本的な解決に至らない可能性は否定できない。」
「・・・耳が痛いですな。」
「失礼。刑事さん達の苦労は、何となく分かるつもりです。」
「・・・。」
警察ってのは、あくまで法に縛られた立場だ。
だから、いくら評判の悪い連中が現れたと言っても、明確な証拠もなしにしょっぴく事はできない。
逆に、彼女の存在が、例の半グレ集団を壊滅させる足掛かりになるかもしれないが、あくまで噂だが、その半グレ集団は警察組織内部にも協力者がいる、かもしれなく、その事実を握りつぶされちまう可能性もある。
警察官、なんて言っても、中には金で動いちまうような人間もいる、ってこった。
「何となく事情は分かりました。それでは、もう一点。貴方は何者なんです?」
「・・・。」
「花村が俺を頼るのは、何となく理解できます。ヤツにとっちゃ俺は、知り合いで、しかも現役の刑事だ。彼女を助けてみたものの、困って俺を頼るのは、ある意味当然の流れかもしれません。少なくとも、いきなり警察署を訪れるよりも、とりあえず俺に相談してみよう、ってのは分からん話じゃないですよ。しかし貴方は、全て理解した上で俺のところに来ている。多分、貴方なら、本当は俺なんか頼らなくとも、何とでもなるんじゃないですか?」
「それは否定しません。ただ、それをすると、色々と厄介でしてね。・・・ふむ。やはり少しばかり事情を説明しておいた方がよさそうだな・・・。」
ブツブツと呟くと、薙輔さんはおもむろにその
「なっ・・・!?」
俺は、思わずくわえていたタバコを落としながら、静かな驚きの声を上げていた。
元々大柄だった身体は更に膨れ上がり、いや、それどころか、どこか異形の見た目は、この世の者ではない事を暗に示唆していた。
だが、嫌な感じは全くせず、むしろ神々しいほどである。
信じられない光景だったが、俺は朧気ながらに、その存在が薙輔さんである事を察していた。
「御覧の通り、ボクは純粋な人間ではありません。ボクの正体は“ペルソナ”。人の心から生まれた存在です。」
「あ、ああ・・・。」
そう言うと、すぐに薙輔さんは人間の姿に戻った。
「ちなみにボクは、悠くんの心から生じた存在です。簡単に言えば、彼の守護霊とか、そういう存在だとご理解下さい。ただし、ボクとマリーは、その中にあって少々特殊な立ち位置でしてね。それ故に、こうして独立して存在する事ができるのですよ。」
「・・・。」
俺は、正直頭が混乱していた。
と、言うのも、今見た光景や、彼の言ってる事は、俺のこれまでの常識をぶち壊すものだったからである。
職業柄、俺はオカルト的な事は否定派である。
と言うか、そうした事を認めちまったら、刑事の仕事は務まらんからな。
しかし、この目で見ちまった以上、それを否定する根拠はもはやない。
それに、そうである、と前提で考えてみると、色々と辻褄も合うのである。
例の事件で悠達が独自に動いていた事は、俺も何となく察している。
先程も述べたが、菜々子を助けたのも悠達だと考えていたからな。
そしてそれは、今見た存在によるものだったのだ。
流石にただの高校生達に何かができるとは考えちゃいなかったが、特殊な力があったと仮定すると話は変わってくる。
俺は、とても信じがたいという俺の中の良識と、なるほどな、という謎の納得感が同時に存在していた。
「まぁ、遼太郎さんが混乱するのも無理はありません。“大人”にとっては、ボクらは非常識な存在ですからね。ただ、この世の中、科学が絶対ではないんですよ。中には、科学では説明できない現象も存在するのです。」
「・・・。」
「もちろん、だからと言って、全てを信じろとは言いません。本来はあなた方を巻き込む事は、ボクとしても本意ではありませんからね。ただ、ボクを喚び出してしまった事で、貴方の甥っ子をまた厄介事に巻き込んでしまった。しかも、今回の件では、あなた方も無関係ではないのですよ。」
「・・・どういう事です?」
「実はですね・・・。」
「なるほど・・・。つまり、悠、いや、貴方を狙っている勢力が存在し、そのせいで俺や菜々子が狙われる事となってしまった、と?」
「ええ、大変心苦しいのですがね。ただ、その対策はすでに打っています。」
「鞠子さん、ですか・・・。」
「ええ。遼太郎さんの方は、現役の警察官です。流石に彼らも、公権力に正面切ってケンカを売るような真似はしないでしょう。ただ、菜々子ちゃんは、まだ幼い女の子ですから、悠くんが不在である以上、一番狙われる可能性が高いのは菜々子ちゃんです。ですから、彼女を守る為に、一芝居うって、マリーを彼女の側に配置しました。」
「そういう事情があったのですか・・・。」
「ええ、隠し立てして申し訳ない。ただ、なるべくならあなた方は何も知らずにいた方が良いと思っていたのですが、そうも言ってられなくなりました。そこで、貴方には事情を説明しておこうと考えたのです。それに、遅かれ早かれ、実は貴方には事情を明かすつもりでした。と、言うのも、今回の件が落ち着いたら、悠くん達を、とある組織と引き合わせるつもりだったからです。」
「・・・とある組織?」
「ええ。極秘裏の事ですから、当然貴方も知らないとは思いますが、実は警視庁と桐条グループが共同設立した“シャドウワーカー”なる特殊部隊が存在しているのです。これは、“シャドウ”、つまり、言ってしまえばボクらのような超常の存在ですが、が関与する案件に対処する為の組織です。ボク達の例で言えば、“稲羽市連続逆さ吊殺人事件”がこれに該当しますね。もっとも、地方の事であった事もあり、彼らがこの件を正確に認知していたかは不明ですがね。結局この件は、彼らが関与する事なく、悠くん達が解決した訳ですから。」
「・・・しかし、桐条グループと警視庁が統括する組織なら、悠達がそこに所属してしまえば、変な連中も手出しできない、と?」
「そうです。もっとも、遼太郎さん達と似たような事情で、つまり、悠くん達にもなるべくなら自由に生きて欲しかった事もあり、これはまだ悠くん達にも言ってなかったんですがね。」
「下手に“力”がある、ってのは、良い側面だけじゃない、って事ですか・・・。」
「残念ですが、ね。」
悠達くらいの年代なら、自分達の力がいかに危険かが分かっていない事も多いかもしれない。
いや、むしろ特別な力に目覚めた事によって、“ヒーロー”になれるんじゃないか、なんて無邪気に喜んでいたかもしれない。
ただ、世の中は、そう都合良くいかないもんだ。
少なくとも、悠達は例の事件の時には上手く隠し通す事ができたのかもしれないが、それがもしバレたとしたら、その力を危険視する者が現れるのは、これは当たり前の話だろう。
そして、それ以上に厄介なのは、その力を利用しようとする連中の方だ。
現状では、悠達は危険な立場に置かれてしまった。
ならば、悠達の立場を確保する上では、どこかの組織に身を置いた方が安全というものである。
少なくとも、今の状況のままなら、また要らぬトラブルに見舞われてしまう可能性の方が高い。
俺は、薙輔さんの言っている事がもっとも現実的な解決策だと理解してそう言った。
「ある程度、状況は理解しました。いや、正直分かってない事も多いんですがね。ただ、貴方が悠達の事を思って行動してくれていた事は、何となく分かります。」
「・・・恐縮です。」
「では、今回の件は、その“シャドウワーカー”に引き継ごう、と?」
「あ、いえ、それはまた別の話ですよ。今回の件の遠因は、ボク自身にありますから。こう言っては何ですが、今回の件で彼らを頼った事で、変に借りを作りたくないのです。それは、向こうに
「いや、しかし、変な連中に狙われてるんですよね?それに、半グレ集団の件もありますし・・・。」
「それについては、すでに対策済みなんですよ。それに、半グレ集団の方は、ぶっちゃけると今の陽介くん達なら、問題なく壊滅させる事ができます。もっとも、それは法に触れてしまう可能性がありますので、直接的にどうこう、って話ではないのですがね。で、そこで刑事である貴方の立場を利用させて頂きたいのです。」
「・・・ふむ。」
「少なくとも、貴方なら横の繋がりもあるでしょう。で、甥っ子の友人が女の子を保護して欲しいと言ってきて、貴方はそれを警察官としての使命感から了承した。そして、彼女の証言から、半グレ集団の情報が手に入った、という
「・・・ほう。」
「多くの警察にとっては、半グレ集団はいなくなって貰った方が良い。しかも、現役の警察官からの情報提供となると、簡単に握りつぶす事もできないでしょう。少なくとも、陽介くんが直接沖奈の警察に掛け合うよりもスムーズだと思います。」
「なるほど・・・。」
「貴方には要らぬ苦労を強いる事となりますが、引き受けて頂けますか?」
しばしの黙考の後、俺は決意する。
ってか、悠達の為なら俺も喜んで協力するつもりだしな。
「・・・ま、乗りかかった船ですし、別に手柄が欲しい訳ではありませんが、そういう事情なら是非協力させて下さい。」
「おおっ!ご協力、感謝致します。では、報酬、ではありませんが、一つだけボクから情報提供を。」
「何です?」
「偶然だとは思いますが、実はその半グレ集団のリーダー格は、過去に
「なっ・・・!?」
ま、まさかっ・・・!!??
「被害者の名前は、堂島千里さん。貴方の奥さまですよ。」
「っ!!!」
どうやら、悠達に協力する理由が、一つ増えたようであるーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。