続きです。
今回から新章です。
意外な人物が登場予定なので、どうぞお楽しみに。
番長 やつれる
6/1
???side
突然だが、横島や鳴上が現在通っている高校では、大きく勢力が二分していた。
具体的には、かねてより学校の人気者、言わばアイドルだった“ピート派”と、この春、突如として現れて、そのルックスと持ち前の行動力などから一躍話題の中心となった“鳴上派”であった。
まぁつまり、簡単に言えば女子高校生達による“推し争い”である。
パンパイア・ハーフ、かつ霊能者で金髪イケメンのピートは、その人当たりの良さも相まって、以前からこの高校では女生徒からの人気はとんでもなかったのである。
バレンタインデーには大量のチョコが贈られ、普段でもお弁当の差し入れなどは頻繁に行われるほどだ。
まぁ、それは以前の万年金欠状態の横島やタイガーに分け与えられ(ってか強奪されており)、彼らのある種の生命線になっていたりする。
つまり、まわりまわって、後の英雄達をこの学校の女生徒達は支えていた訳である。
もっとも、本人達にその自覚はないのだが。
これが、この学校における日常だったのだが、悠が現れてから、多少流れが変わる。
悠の容姿が整っているのは、これは間違いない事実だろう。
しかし、その見た目のインパクトから言えば、金髪イケメンであるピートの方に軍配が上がる。
しかし、悠の特筆すべき点は、そのルックスだけでなく、無自覚に色々な人々を助けてしまう点であろう。
稲羽市時代は、それによって“絆”をつむぎ、結果“イザナギノオオカミ”を召喚する土壌となったのだが、その“コミュ”を築く癖がそのままその後の悠にも受け継がれ、結果こちらの世界にやって来てからも、無自覚に人助けをする癖が抜けなかったのである。
悠のコミュ力が高いのは周知の事実だろう。
実際、こちらの世界に来てからも、短期間の内に横島らと打ち解けているし、美神や美智恵、西条などの大人組からの信頼も厚い。
これが年頃の女生徒であったら、その持ち前のルックスも相まって、変な勘違いを起こしてしまったとしても無理からぬ話であろう。
結果、“ピート派”一色だったこの高校に、“鳴上派”が急激に台頭してその勢力を二分する事となってしまった訳である。
ただ、この学校の生徒達はノリが良いのもあるし、基本的に悪い人達も多くないので、過激な衝突がある訳ではない。
そもそも、推しであるピートと鳴上当人達が比較的良好な関係を築く中、取り巻きに過ぎない彼女達がぶつかり合っても空気を悪くするだけの事。
“推しに迷惑をかけない。”
これは、両派閥に属する女生徒達の共通認識となっていた。
ま、そんなこんなで。
・・・
〜とあるL○NEグループチャットにて〜
悲報、番長やつれる
近頃、番長こと鳴上悠氏が、やや元気がない様子。
何かの病気ではないかと心配でならない。
やっぱりそう思ってましたか?
私だけが感じたんじゃなかったんだ・・・。
△△の言う事はもっともだと思う。ちな番長は、高校生活はもちろん、ベビーシッターのバイト、GSの手伝いなど、普段から多忙である。
それなのに、人助けとかもしている模様。
・・・何、この聖人。
あー、それ、私も見ました。
何か、その時々で関わってる人が違うんですよねー。
お年寄りから子供まで、何か、知り合いがめちゃくちゃ多いみたい。
ってか、番長って、この春越してきたばっかだよね?
それなのに、多分ウチらより顔広いよね?
彼の人徳でしょう。
そのラインナップを見る限り、下心ありきの話ではなく、本当にただの善意からの行動なのですよ。
さす番
同上
ってか、原因ってそれじゃない?
普通に高校生活送ってるだけでも疲れるのに、バイトの掛け持ちに人助けまで・・・。
そりゃ、やつれるって。
確かに。何気に成績もトップクラスだし、スポーツも全般得意だしねー。
いや、でも、あの人体力もオバケだからなー。
それだけで、あんなにやつれるかなー?
では、別に原因がある、と?
や、別に何かの確信があって言ってるワケじゃないけどさ。
うーん。
・・・さて、そんな頭を悩ませてる皆さんに私から衝撃的な情報を一つ。
実は番長、頻繁に横島の家に出入りしている、らしいッス。
ソースは隣人の娘ッス。
横島って、あの“バカ、アホ、スケベ”で有名なあの横島?
ま、確かに、わりかし仲よさげだよねー。ちなウチ、番長と同じクラスの勝ち組。
へー、そうなんだー。っつか、番長と同じ組とか羨ましー!それって、ピートくんも同じ組って事だよねー?
なにそれ。毎日眼福じゃん。
へへへー。羨ましかろー。
ま、友達って事なら、遊びに行ってても不思議じゃないんじゃん?
ま、番長に横島の悪い影響がなければいいけど。
っつっても、一次期に比べてら横島もわりかし大人しくなったよ。あいかわらず賑やかなのは変わらないけど、最近は結構いい感じ。
ね。たまーに影を背負ってる表情をする事もあるし、ありゃ、多分失恋か何かだね。
ほーん。人に歴史あり、だねー。
いやいやいや。
ただ遊びに行ってるだけなら“衝撃的”なんてつけないッスよ。
いいですか?
“頻繁に出入り”って言いましたけど、おそらくほぼ毎日通ってるんスよ。
それどころか、もちろん、隣人の娘も逐一お隣さんを監視してるワケじゃないから曖昧な部分も多いんスけど、毎日のように泊まってる、かもしんないんスよ!
!!!
なん・・・だと・・・!?
若い男子が毎日のように二人きり。
何も起きないはずもなく・・・。
いやあぁぁぁーーー!!!
キターーーーー!!!
そ、その話、もっとkwsk!
い、いや、それ以上の情報は流石に持ってないッスけど・・・。
チッ・・・
ま、まさかの鳴✕横とはっ・・・!
鳴✕ピーだと思っていたのにっ・・・!!
おいおい、ここに過激派おったわ。
バッカオメー、横✕鳴に決まってんだろ!
ヘタレ攻めの強気受けなんだよっ!!
解釈一致
ちょっとちょっと、ここではBL談議は控えて貰えませんかねぇ〜?
などと一部過激な女子達が密かに騒ぐ中、その当の番長はと言うとーーー。
・・・
道化師side
ドヨーーーン!
「な、なんだか最近疲れていますねー、鳴上さん。」(ヒソヒソ)
「そうですケンノー。すっかり痩せ細ってるようにも見えますジャー。」(ヒソヒソ)
「あれじゃ、色男が台無しねー。横島くん。何か原因を知らない?一緒に住んでるんでしょ?」(ヒソヒソ)
「その言い方は語弊がある。一つ屋根の下である事は変わらんが、師匠や小竜姫さま、パピリオも一緒だし、部屋も別々だ。」(ヒソヒソ)
「ああ、横島さんは老師の内弟子で、鳴上さんは妙神山預かりでしたっけ?」(ヒソヒソ)
「うむ。公式的には別に住所が用意されとるが、鳴上のヤツは妙神山が仮住まいだな。」(ヒソヒソ)
「ってか気にはなっておったんですケン、それでどうやって毎日学校に来とるんですかいノー?妙神山って、めちゃくちゃ山奥にあるって話ですケン。」(ヒソヒソ)
「ああ、そりゃ簡単だ。神様パワーで妙神山と俺の部屋を繋げて貰っとるからなー。だから俺らは、俺の部屋から毎日登校しとる、っちゃーワケや。」(ヒソヒソ)
「・・・なるほど。」(ヒソヒソ)
「流石神様。何でも有りねー。」(ヒソヒソ)
一方、若干イケメン度が下がりつつある番長を遠巻きに眺めながら、そんな会話を交わす横島ら。
どこぞの女生徒達からの疑惑をアッサリと晴らす会話を交わしていたのだが、残念ながらそれは内緒話であり、それが周囲に伝わる事もなかったのである。
「ま、それはそれとして、やっぱり心配ねー。慣れない環境で、やっぱり苦労してるのかしら?」(ヒソヒソ)
「アイツがそんなタマには見えんがなー。わりかしスムーズに、こっちの世界にも馴染んでるよーに見えるが。」(ヒソヒソ)
「・・・きっと、本人にしか分からない苦労があるのかもしれませんよ?それでなくとも、学校に加え、美神さんからの無茶振りもあるんでしょ?」(ヒソヒソ)
「「「あー。」」」(ヒソヒソ)
俺らの共通認識として、“美神さんに関わるとろくな事がない”、ってのがある。
ま、前にも言ったかもしれんが、一見めちゃくちゃに見えて、あれで結構情に厚かったりもするからな。
・・・もちろん、カネが絡まなければ、って前提条件がつくが、な。
そうした面を知ってる連中は、美神さんを見捨てる事はないのである。
ただし、なるべくならメンドーには関わりたくない、ってのも本音だろーがな。
俺らも、もちろん彼女が悪い人(まぁ、一部では悪い人だが)ではない事を知ってるので、こうして今でも付き合いがある。(ってか、俺の場合はGSとしての先輩かつ師匠でもあるから、切っても切れない関係ではあるが。)
しかし、これはまた彼女のある種悪癖なのだが、自身が天才肌で、何でもこなせるってのもあり、他人に対する要求のレベルが高かったりするのである。
客観的に見れば今の鳴上の生活は、学校に俺らとの修業、これに、これはその日によって変わるが、ひのめちゃんのベビーシッターに西条の手伝い、そして、今ではGSとしての手伝いも要請される事もあるので、控えめに言ってもハードスケジュールである事は間違いない。
実際、俺もGSの助手のバイトを始めた当初は、ほとんどそちらにかかりきりになり、あやうく留年する可能性すらあったからなー。
ま、今では、お袋の取りなしもあって、かなりGSの仕事はセーブして貰っているが(それに、“例の事件”もあって、仕事があまりなかった、ってものある。)、今度はそのしわ寄せが、鳴上に行ってしまった、という事かもしれん。
それについちゃ、俺にも原因の一端があるかもしれんので、そこは申し訳ない気持ちである。
ま、ぶっちゃけると、結局は美神さんの無茶振り、って話でもあるので、そこはそれとなく俺から伝えるにしても、現状、鳴上をこのままにしておくのもしのびないなー。
あ、そーだ。
「おい、お前ら。ちょっと思い付いた事があるから、耳貸せ。」(ヒソヒソ)
「「「???」」」
俺の言葉に、三人は疑問符を浮かべながらも顔を近付けてくる。
「実はな・・・。」(ゴニョゴニョ)
「ああ、それは良いかもしれませんね。」(ヒソヒソ)
「横島くんにしては、中々ナイスな提案じゃない?」(ヒソヒソ)
「オメーは一言よけーだっつーの。」(ヒソヒソ)
「わっしの賛成ですケン。」(ヒソヒソ)
「んじゃ、雪之丞達にも声かけて、後は魔鈴さんにも相談してみよーぜ。鳴上の方は、俺が声かけるわ。」(ヒソヒソ)
「「「了解。」」」(ヒソヒソ)
・・・
番長side
ドヨーーーン。
最近の俺は、明らかに疲れている。
しかし、実はその心当たりがあった。
と、言うのも、マーガレットから夢の中で、“修業”と称して一方的にボコボコにされているからである。
何故、そんな事になったかは分からない。
確かに、前に彼女に挑んで、ギリギリ勝利した事はあったが、まさかそのリベンジ、って訳でもないだろう。
もちろん、彼女に直接理由を問い質したが、“貴方の為よ。”の一言で、それ以上は語ってくれなかった。
一応は、夢の中で怪しげな薬によって回復はしてくれるのだが、毎日のあれこれに加え、夢の中でもしごかれるとあっては、流石に体力には自信のあった俺も若干キャパオーバーを感じざるを得なかったのであった。
ただ、そう言ったマーガレットの目は真剣だった事もあり、こうして俺は、それに人知れず耐えていた訳である。
きっと、これは意味のある事なのだろう。
とは言え、いつまで続くか分からない今の状況に、若干の不安も覚えていた。
このままでは、俺はいつか倒れてしまうかもしれん。
それを見かねたのか、とある放課後、ベビーシッターのバイトも西条さんからの要請もない、本当に久々のフリーの日に、横島達から食事に誘われたのである。
一応彼らが言うには、“GS試験に合格したお祝い”という名目だったが、明らかに俺を労った催しである事はすぐに分かった。
こっちの世界でも、俺は仲間に恵まれているな。
そうした事もあって、俺はその日、初めて本物の“魔女”に出会い、ついでに衝撃的な再会を果たす事ともなったのであるがーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。