P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


道化師 パーティーを開く

 

・・・

 

魔鈴めぐみ。

 

横島や美神達の知り合いで、都内に『魔法料理 魔鈴』というレストランを経営している女性である。

 

実は彼女、所謂“魔女”であった。

 

以前にも説明した通り、横島らの世界(GS世界)は霊的に活発な世界である。

実際、あくまで現代社会の基盤は科学とは言えど、“現代のエクソシスト”たるGS(ゴーストスイーパー)が実在し、一つの職業として成り立っている事からもそれが分かるだろう。

 

しかし、そんな中にあっても、“魔女”という存在は非常に珍しいのである。

 

GS世界においても、“魔法”、特に古代ヨーロッパの魔法はほとんど滅びているからである。

我々一般人からしたら、魔法の如き力を振るうGSも、もちろん中にはその源流は古代ヨーロッパにある能力者もいるかもしれないが、正真正銘の魔法を扱う能力者はもはやいない、とされていた。

 

しかし、魔鈴めぐみには、魔女としての天賦の才能があったのか、わずかな記憶を頼りに独学で魔法を身に付け、今でも次々と失われた魔法を再発見しているのである。

 

そんな、ある意味重要人物っぽい彼女が、何故レストランなんかを経営しているかと言うと、“料理”というのが彼女の研究テーマの一つだからである。

 

彼女の考え方は、“霊的なバランス”に主眼を置いている。

古来の魔女とは、本来、自然と人間の仲立ちをする立場であったそうであるから、そうした発想に至ったのであろう。

 

そして、霊障の予防策として、清潔、健康、健全をモットーに、その手法の一つとして“魔法料理”を研究している、という訳である。

 

もっとも、過去に美神と対決した折に、自身の考える“霊的なバランス”というものが狭い範囲のものでしかなかった事を悟っていたが、それでも“料理”が与えるプラスの作用に関する信念は変わっておらず、今でもこうしてレストラン経営と魔法の研究に日夜励んでいるのであった。

まぁ、それはともかく。

 

ともあれ、横島の知り合いで数少ないレストラン経営者であり、なおかつ横島自身も体験した事でもあるが、彼女の作る魔法料理の効果は折り紙付きである。

それは、とにかく疲れている番長を励ますという点においては、二重の意味で理にかなっていた判断だったのかもしれないーーー。

 

・・・

 

番長side

 

「『魔法料理 魔鈴』・・・?ここか?」

 

横島に呼び出された俺は、地図を頼りに指定の場所に辿り着いていた。

 

外観はどう見てもオシャレなレストランである。

短い付き合いではあるが、どう見ても横島とは縁がなさそうな場所である。

 

そんな失礼な事を考えつつ、意を決して俺は扉を開いた。

 

「いらっしゃいませー。お一人様ですかニャ?」

 

そこで俺を出迎えた者は、猫耳をつけたメイドさん・・・、ではなく、正真正銘の黒猫であった。

 

「え、いや、その・・・。」

 

去年から今年にかけての事件や、横島達との付き合いで、ある程度非常識な事には慣れたつもりであったが、まさか動物がしゃべると思わなかった俺は、一瞬しどろもどろになる。

 

・・・そういえば、横島がこのレストランの経営者は“魔女”だとか言ってたような気がする。

という事は、この黒猫は、所謂“使い魔”、ってヤツだろう。

 

そう、短く思考すると、ようやく落ち着きを取り戻した俺は、招待状を見せて事情を説明しようとする。

 

「・・・実は、招待状を持っているんです。」

「ニャ?見せてみるニャ。」

「はい・・・。」

「ふむふむ、にゃるほど。御予約のお客様でしたかニャ。では、あちらの奥の間にどうぞニャ。」

「ど、どうも。」

 

短くやり取りすると、黒猫にそう案内される。

何ともシュールな光景だが、その場にいたお客さん達は、特に違和感を持っていないみたいだったので、ここではこれが通常運転なのだろう。

 

思わぬサプライズに驚きながらも、俺は案内された奥の間に進む。

 

しかし、そこで更に意外な人物と再会した事で、今以上の驚きが俺を待っていたのだった。

 

「失礼します。」

「まいどー。・・・あれ?鳴上くん・・・?」

「えっ・・・?も、もしかして、あ、あいかかっ!?」

 

そこには横島達と共に、見慣れぬ魔女っ子姿ではあったが、稲羽市で約1年を共にした“中村あいか”がいたのである。

 

俺は、思わずフリーズした。

 

確かに、彼女の神出鬼没っぷりは今に始まった事ではなかったが、しかし、“この世界”はイザナギ曰く、所謂“並行世界(パラレルワールド)”である。

 

故に、偶然友人と再会する、というサプライズが起こる筈もないのだが、しかし、あいかの方も俺を認識しているという事は、友人に似たそっくりさん、という線は消える。

 

ワケの分からない事態にお互い戸惑っていると(いや、あいかの方はあいかわらずの無表情であったが)、それを見かねた、これまたステレオタイプな魔女の格好をした妙齢の女性が俺達の間に立った。

 

「何やら事情があるみたいですが、立ち話も何ですから、とりあえずおかけになってはいかがですか?」

「そ、そう、ですね・・・。」

「ぐっ。」

 

現実的な意見に、俺とあいかもそれに同意し、その様子を見守っていた横島らもホッと胸を撫で下ろすのだったーーー。

 

・・・

 

中村あいか。

八十神高校で番長とクラスメイトだった女の子である。

 

また、実家が『中華料理屋 愛屋』であり、その縁で番長とはただのクラスメイト以上の付き合いがあった。(メタ的に言えば、番長のステータス上げにおいて愛屋は重宝するからである。)

彼女自身、すでに料理人としての修行を始めていたのか、愛屋を手伝い、出前もこなしている。

 

また、その神出鬼没っぷりはかなりのもので、林間学校中であろうと仕事をこなし、夏祭り中だろう浴衣姿で氷の出前を請け負ったり、修学旅行中だと言うのに親戚である『はがくれ』で修行していたりと、なんでこれで番長とコミュが築けないのか不思議であるくらい、濃い付き合いがあったりする。

 

ま、こちらも、メタ的に言えば、彼女はアニメオリジナルキャラであるから、本編でのコミュとは無縁なのだが。

 

とはいえ、そんな彼女が何でGS世界にいるのかと言うと、中々やんごとなき理由が存在するのであったーーー。

 

 

「「「「「迷い込んだ!?」」」」」

「そうみたいなんですよ。」

 

やれやれと言った表情で、妙齢の女性、魔鈴さんは溜息をこぼした。

 

当の本人は、あいかわらずの無表情っぷりでテキパキと仕事をこなしていたが。

 

「な、なんだってそんな事に?」

「さあ?いつもどーり出前を届ける為にバイクで移動していたら、気が付いたら変なところにいた。」

「変なところとは失礼ですねー。一応私の自宅なんですけどー。」

「えっと、魔鈴さんの自宅って、確か“異界”にあるんじゃなかったでしたっけ?」

「そうですよ。東京は土地が高いですからねー。異界空間にチャンネルを作って自宅にしているんです。」

「そこに偶然、中村さんが迷い込んだ、と?」

「みたいですねー。まぁ、絶対ありえない事ではないですけど、私も想定外の事でしたから、かなりびっくりしましたが。」

「・・・そういや、小竜姫さまも、たまーに時空を飛び越えちまう人がいるって言ってたっけな。確か、“神隠し”とか何とか・・・。」

「ええ、そうです。古来より人が忽然と姿を消す事例は結構ありますね。オカルト的な定説としては、そのほとんどが並行世界(パラレルワールド)に迷い込んでしまったらしいとされていますが、それを確認する術はありませんでした。それが、まさか実際に時空を越えてきた人と出会うとは私も思っていませんでしたよ。」

「・・・それにしても、その人物が、まさか鳴上さんの知り合いだったとは・・・。」

「偶然にしちゃ、できすぎだな。・・・案外、イザナギさま関連のあれこれに巻き込まれたんじゃねーだろーな?(ヒソヒソ)」

「・・・否定はできん。一応、イザナギにも確認しておこう。(ヒソヒソ)」

「とまあ、彼女には他に行くアテがなかった事もあって、こうして住み込みで働いて貰っていたんですよ。もしかしたら半分は私の責任かもしれませんし、それに、あいかちゃんは聞けば料理屋の娘という事で、即戦力となりましたからねー。」

「ぐっ」

 

心細い状況だっただろうに、あいかわらずあいかはたくましいな・・・。

 

「しかし、まさかお知り合いの方にこうして出会えるとな思っていませんでした。という事は、鳴上さんももしかして所謂“異世界人”で?」

「えっと、その・・・。」

 

何と答えていいか分からず戸惑っていると、横島が後ろからアドバイスをくれた。

 

「魔鈴さんも、言っちまえばGS関係者だ。悪い人じゃねーし、変に警戒する必要はねーよ。(ヒソヒソ)」

「そ、そうか・・・?(ヒソヒソ)え、ええ、そうなんです。」

「やっぱり!では、貴方もこちらの世界に迷い込んだので?」

「い、いえ、実はですね・・・。」

 

かくかくしかじか。

俺はかいつまんで事情を説明する。

 

「なるほど・・・。お若いのに、中々複雑な事情があるんですねー。」

「ええ、まぁ・・・。」

「しかし、意図的にこちらにやって来たのなら、という事は、貴方は自らの意思で向こう側に戻れるという事ですよね?」

「ええ。だからあいか。おそらく問題なく向こうに帰れるから安心して欲しい。“神隠し”って事は、急に向こうから消えたって事だろう?ご家族が心配しているだろうし。」

「助かる。出前の途中で帰れなくなったから、きっと心配してる。それに、仕事にも支障が出てるかもしれないし。」

 

最初に心配するのがそれか・・・。

 

しかし、中々分かりづらいが、やはり彼女なりに不安だったのだろう。

俺がそう言うと、どことなくホッとした表情をあいかは浮かべていた。

 

ともかく、後でイザナギと連絡を取らないとな。

 

 

「ま、まぁ、色々あったが、そっちは解決しそーだし、とりあえず本題に入ろーぜ!」

「あ、ああ。というか、何でこんな場所に集まったんだ?」

「何で、って、料理屋に集まったなら食事会に決まってんだろ。ま、野郎ばっかでむさくるしいけどなー。」

 

ヌハハハハ、と笑う横島に疑問符を浮かべていた俺に、ピートがフォローする。

 

「鳴上さん、最近お疲れの様子だったじゃないですか?それを見かねた横島さんが、GS試験の祝勝会と称してこの会を開催したんですよ。」

「ちょっ、ピート!それは言うなってのっ!!」

「ハハハ、いいじゃないですか。良い事なんですから。」

「・・・そういうの、俺のキャラじゃねーんだよなー・・・。」

 

ブツブツと呟く横島に、その場に集まった仲間達は彼を微笑ましく見ていた。

 

「・・・そうなのか。どうやらみんなに心配をかけたようだな。」

「いえ。もちろん、僕らも鳴上さんが言い出すまで、何があったかは聞きませんよ。しかし、せめてこれくらいはしても良いでしょう?」

「ああ、もちろんだ!みんな、ありがとう。」

 

・・・また一つ、みんなとの絆が深まった気がする。

(ちなみに後で聞いた話だが、本来は愛子やおキヌさん達も呼ぶ案もあったらしいが、歳近い男同士の方が気兼ねがないだろう、との事で、この面々に落ち着いたそうだ。)

 

「ま、まぁ、小っ恥ずかしい話はここまでにしようぜっ!魔鈴さんの料理は、マジで美味いからよ!オメーもぜってぇ元気出るって!」

「そうなのか?」

「ええ。魔鈴さんは、料理人としての腕はもちろんですが、それに魔女としての秘術を組み合わせた特殊な料理を提供してくれるんですよ。」

「大袈裟ですよ、ピートさん。魔法料理に使う材料は、何も特別なものばかりではありません。香料(スパイス)香草(ハーブ)は立派な薬草だし、身近な食材にも隠れた力が眠っているんです。その組み合わせとちょっぴりの魔力、おいしくて効果絶大!それが私の魔法料理のコンセプトなんです。」

「へぇ、それは興味深いな。」

 

空気を読んだのか、話が一段落した頃に、そんな事を解説しながら魔鈴さんとあいかが料理を運んでくる。

 

魔法料理と言ってる割には、見た目的に特殊な感じが全くしない。

しかし、横島達がそこまで絶賛するという事は、味や魔鈴さんの言う効果の方が重要なのかもしれないな。

 

「さあ、召し上がれ。横島さんからオーダーを受けて、疲労回復やスタミナ増強をメインにしてみました。」

「・・・あの、魔鈴さん。僕の料理にはニンニクは使ってないですよね?」

「ええ、もちろんです。ピートさんはバンパイア・ハーフですからねー。ニンニク抜きにしてありますよ。」

「よかった・・・。」

「「・・・。」」

 

ホッと胸を撫で下ろすピートに、微妙な表情を浮かべる雪之丞とタイガー。

・・・何かあったのだろうか?

 

しかし、ハーフとは言えど、吸血鬼(バンパイア)にニンニクはやはり天敵なのか・・・。

そんな事を考えつつ、俺達は各々に皿に手を付けた。

 

「これはっ・・・!ハイカラですね。」

「うまいーーー!」

「こらうまい!こらうまい!!」

「こんな料理なら、何杯でもいけますケンノー!」

「うん、本当にニンニクは入ってないね・・・。魔鈴さん、また腕を上げたんじゃないですか?」

「あら、ありがとう。私の料理も、常に進化していますからね。もっとも、実はあいかちゃんからアドバイスを貰ったからなんです。私のレパートリーは、ヨーロッパ方面に偏っていましたから。その点、あいかちゃんは、ご実家が中華料理屋さんだそうですから、そっちのレシピを教えて貰っているんですよ。」

「へえ、すごいな、あいか。」

「それほどでもー。なんだかんだ、めぐみさんにはお世話になってるからねー。それに、こっちも香料(スパイス)香草(ハーブ)の使い方は非常に勉強になる。」

「そうなのか?素人考えだが、二人の料理の方向性は結構違うように思えるが・・・。」

「そうでもないですよ。古来より、ヨーロッパ地方と中華圏はシルクロードで繋がっていましたし、香料(スパイス)の交易などもありましたからね。もちろん、使っている香料(スパイス)などの違いはありますが、結構参考になる部分も多いのですよ。」

「そうなのかー。」

 

魔鈴さんの料理に舌鼓を打ちつつ、そんな会話を交わしていた俺達。

転んでもただでは起きないのか、こんな状況になっても、あいかは自分を高める事に余念がないようであった。

 

「ってか気になってたんすけど、その、あいかちゃん?、の格好って何なんすか?やっぱり魔鈴さんの趣味?」

「一応、ウチは魔法料理をコンセプトにしていますからね。それなら、店員もそれなりの格好をしていた方が雰囲気が出るかと思って。それに、先程も言いましたが、あいかちゃんは着の身着のままでこちら側にやって来てますから、その・・・、着替えも何もなかったんですよ。」

「あー・・・。」

「そりゃそーか。旅行じゃあるまいし、常に着替え持ってるヤツなんてそうはいねーもんな。」

「今はそれなりに用意してありますが、最初はとりあえず私のお古を着てもらっていたんです。それを、あいかちゃんも気に入ってくれたようですね。」

「ぐっ。」

 

確かに、俺が見た事があるあいかの姿と言えば、制服姿に割烹着みたいな姿、浴衣姿くらいだからな。

魔女っ子姿は若干コスプレっぽいが、この店の雰囲気にはマッチしているし、彼女の見た目もあってかなり似合っていると思う。

 

「最初はびっくりしたが、似合っているぞ、あいか。」

「・・・。」///

 

 

「またコイツは、しれっと口説き始めましたよ・・・。」

「本人は、割と無自覚の様ですねー。」

「コイツ、いつもこんな調子なのか?」

「学校でもこんな感じですケン。ま、相手はおなごばかりではないんジャけど・・・。」

「ほぉー・・・。お節介かもしれんが、いつか刺されるかもしれんなぁ~。」

 

 

などという会話もありつつ、思わぬ再会のあった食事会はつつがなく進んで行くのであったーーー。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると幸いです。

はい、という事で、P4Aから中村あいかちゃんの登場です。
アニメオリジナルのキャラですが、アニメの完成度が高い事や、声優さんの名演もあって、かなり人気のキャラですよね。
個人的にも、かなり好きなキャラなので、どうせなら本作にもご登場頂きました。
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