P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


異変

 

・・・

 

番長side

 

その後、和気あいあいとした雰囲気のまま、食事会は進んでいた。

 

横島が言う通り魔鈴さんの料理は絶品であり、しかも、最近蓄積していた疲労や精神的疲れなんかも吹っ飛んだ、ように感じる。

 

まぁ、また夢の中で、マーガレットとの特訓があるだろうから、一時的なものでしかないがな。

根本的にはそれが終わらない事には、本当の意味での解決とはならないが、まぁ、彼女も無意味な事はしないだろう。

 

「なるほどな・・・。あれだけ散々な日常生活を送りながら、夢の中でもお前しごかれとったんかい・・・。」

「それは疲れますよねー。流石の鳴上さんも、体力は無尽蔵じゃないでしょうし。」

「ああ。ただ、あまりの事に困惑する事しかできなかったが、みんなのお陰で大分リラックスできた。だから、今夜辺り、何故そんな事をするのか、改めて聞いてみようと思う。」

「では、詳しい説明もなしに?」

「彼女達は大体そんな感じだ。そもそも“ベルベットルームの住人”達の目的は俺もよく分かっていないからな。一応、体感的には敵、って感じはしないんだけど・・・。」

「ま、よく分からんが、味方だからって言えない事の一つや二つはあるもんだからな。こっちとしちゃ、全部説明して貰いたいもんだが・・・。」

「エミさんもそういうトコあるですケン。秘密主義と言うか何と言うか・・・。」

「美神さんもだなー。なんだかんだ、小竜姫さま達もそういうトコあるし。っつか俺なんてなー!ろくに説明もなしに悪霊の群れに放り込まれたり、海の底に突き落とされたりと、結構散々な目に遭ってんだぞ!」

「・・・そ、それでよく生きていたな・・・。」

「ま、まぁ、横島さんの生命力は半端ないですからね。美神さんもそこんトコ分かっているから、結構無茶な事もやれるんでしょう。」

 

ひょんな事から横島のトラウマを掘り返してしまったようだ。

 

その後、上司(主に横島による美神さんへの愚痴)の話題で多少盛り上がりながら、夜もふけていったのであったーーー。

 

 

「じゃ、そろそろ締めのデザートをお持ちしますわ。ああ、それと、窓の外には絶対に出ないで下さいね。」

「あ、めぐみさん。私も・・・。」

「いえいえ、大丈夫よ、あいかちゃん。せっかく久々に同郷の人に出会えたんですもの。もうすぐラストオーダーだし、どうせならこのまま鳴上さん達とご一緒しなさいな。それに、貴女もお客さんの()()は気になるんじゃないかしら?」

「・・・。」

「俺は歓迎だよ、あいか。みんなはどうだ?」

「もちろんいいに決まってんだろっ!ちょうどヤローばっかでむさくるしかったトコだ。あいかちゃんみたいな美少女は大歓迎だぜっ!」

「だな。」

「ええ。」

「そうですケンノー。」

「だ、そうだ。」

「決まり、ですね。では、一旦失礼させて頂きますわ。」

 

そう言うと、魔鈴さんは一旦その場から出ていった。

若干所在なさげにしていたあいかに座るように促すと、そういえば、と俺は言った。

 

「そういえば、ちゃんとみんなに紹介するのがまだだったな。改めて、彼女は中村あいか。前の学校のクラスメイトで、実家は中華料理屋をやってる。彼女自身もそこの手伝いをしていて、俺もかなり通わせてもらった。後、出前も担当していてこう見えてバイク技術はかなりのものだ。俺もかなり助けてもらったよ。」

「中村あいか。よろしく。」

「よろしく、あいかちゃんっ!ボクは横島忠夫っ!!」

「ピエトロ・ド・ブラドーです。ピートとお呼び下さい。」

「タイガー寅吉ですけんっ!!」

「人呼んで伊達雪之丞だ!!」

「う、うん・・・。」

 

横島らの圧に、あいかも珍しく圧倒されていたようだ。

 

「おいおい、あいかはあまり騒がしいのは好きじゃないんだ。少し抑えめで頼むよ。」

「ああ、ごめんよっ!」

「ん・・・。」

 

あんまり人見知りするタイプではないと思うのだが、それでも横島らのノリは独特だからな。

俺が注意すると、横島達は軽く謝罪した。

 

「・・・あいかわらず、鳴上くんは友達に恵まれてるんだね・・・。」

「・・・ん?ああ、そうだな。向こうでも陽介達がいたし、こっちでは横島達みたいな仲間ができたからな。本当にありがたい事だよ。」

「・・・。」

 

一瞬、俺や横島達を羨ましげにあいかが見たような気がするが、気の所為だったのだろうか?

 

それよりも、俺は魔鈴さんが言った事や、あいかがいた事で忘れていたのだが、この部屋に入ってからずっと気になっていた事を口にした。

 

「というか気になっていたんだが、窓の外の光景・・・。」

「ああ、こりゃ、魔鈴さんの魔法で異世界と繋がっとるんだわ。都内じゃ見ないような風景で雰囲気があるが、魔鈴さんの言うように絶対に外には出るなよ?」

「前はそれで、散々な目に遭いましたからノー。」

「だな。」

「・・・ボクはあまり覚えていませんけどね。なんせ、どうやらニンニク()を誰かに盛られたようですから・・・。」

「「・・・。」」(汗)

 

ピートの発言に、タイガーと雪之丞が冷や汗を流しながら固まった。

それに、俺と横島は何かを察する。

 

「まさか・・・!」

「お前らっ・・・?」

「し、仕方なかったんじゃーっ!そうでもしないと、ピートさんに女の子を持って行かれますケンッ!」

「大体、あの時は人数が多かったしよー!聞けばコイツ、学校でも散々モテてるらしーじゃねーか。少しは遠慮しろ、っつーのっ!」

「ほう、謝罪の言葉はなし、と?あの件がキッカケで、雪之丞くんは弓さんと婚約まで発展したと言うのに?それにタイガーも、一文字さんとお付き合いしてる事は知っているんだよ?」

「「す、すんませんでしたーっ!!」」

 

普段温厚なピートの圧に、すぐさまタイガーと雪之丞の綺麗な土下座を敢行していた。

そんな様子にあいかはまたしても目を丸くしていたが、まぁ、俺は大分慣れたのでそこまでの驚きはなかった。

 

「・・・もういいよ。過ぎた話だし、確かにあの時は人数的に男性側は一人多かったからね。ボクが遠慮すべきだったかもしれない。」

「っつっても、一応はおキヌちゃんからの話だったが、ある意味合コンみてーなモンだったからなー。冷静に考えても、ピートがいねーと女の子の反応も微妙だったんじゃねーかなー?」

「・・・ピートは客寄せパンダか何かか?」

「よく知らないけど、確かにこの中では、一番女の子受けするのはその金髪の人だと思う。だから、そっちのバンダナの人の言う事ももっともだと思う。」

「き、金髪って・・・。」

「ば、バンダナって・・・。」

「あ、ごめん。人の名前をすぐに覚えるのはちょっと苦手・・・。」

 

あいかの、ある意味とぼけた言動に空気が弛緩する。

 

「ハハハ、別にいいってっ!それでも、誰の事を言ってるのか分かるしなっ!」

「・・・ちなみに、中村さん的には、わっしと雪之丞さんの事はどういう風に捉えてるんじゃろうか?」

「大きい人と、目つきの悪い人?」

「お、大きい人!?」

「め、目つきの悪い人!?」

「ダハハハハッ!確かに間違いねーなっ!」

「プッ・・・、ま、まだ金髪の方がマシでしたね・・・。」

 

・・・しかし、見たまんまだな、あいか。

後、確かにその通りだが、“目つきが悪い”はあまり良い表現ではないと思うぞ。

 

 

「しかし、“魔法”というのは凄いな。空間と空間を繋げてしまうとは・・・。」

「確かにな。“霊能”でもそういう事はできないワケじゃねーけど、そういった場合はオカルトグッズを使ったりするのが普通だしなー。」

「それに魔鈴さんは、自力で空も飛べますもんね。」

「・・・やっぱり“ホウキ”か?」

「そ。ま、美神さんの事務所にも、中世からガメてきたカオスのじーさん謹製の“空飛ぶホウキ”はあるんだけどな。」

「ガメて、って、それは普通に犯罪では・・・?」

「ま、一般的にはそうかもしれんが、美神さんに常識を求めちゃダメよ。“バレなきゃいいのよ!”を地で行く人だし。それに、カオスのじーさんも、そういう細かい事はあんま気にせんしな。・・・まぁ、覚えてかなった、ってのもあるんかもしらんが。」

「・・・しかし、しれっと言っていたが、中世って?」

「あれ?お前は聞いてなかったっけ?美神さん親子は、そろって“時間移動能力者”なんだよ。で、一度事故って、俺とマリア、美神さんで中世ヨーロッパに飛んじまった事があんのよ。それ以降は、あまりに危険って事で、小竜姫さまに封印してもらってる。隊長も同様だな。」

「そういえば、そんな事を言っていた気もするな・・・。しかし、よく美神さんが封印に同意したな。こう言っては何だが、結構悪用が可能ではないか?」

「確かにその通りだけど、それ以上に危険が伴うからなー。下手したら行ったきり戻ってこれねーかもしんねーし、未来を変えちまう可能性もあるしな。ま、小竜姫さまの話じゃ、時間移動は元々そんな大した力じゃないらしいけどよ。過去も未来も、変えられる事しか変えられない。時間の復元力は人はおろか、神様の力よりずっと強いんだとよ。」

「なるほどな。戻ってこられる保証もないのなら、そりゃ危険だな。」

「そゆこと。」

「しかし、今のお話でふと思ったのですが、中村さんの“神隠し”も、ある意味時間移動に似ていますねー。まぁ、美神さん達は、“この世界”の過去や未来への行き来なのでしょうが。」

「・・・確かにな。時空間を超える、って意味じゃ、“神隠し”も時間移動の一種なのかも・・・。」

「・・・だれっ!!!???」

 

思わぬ話で盛り上がっていると、あいかが急にそんな事を叫んだ。

 

「ど、どうしたんだ、あいか?」

「窓の外!誰かいる!!」

「「「「「へっ・・・???」」」」」

 

急にホラーな展開に、俺達はゾクリ、とするのを感じていた。

これは・・・、霊感か?

 

俺は意を決して、あいかの指し示した方向を凝視する。

 

窓の外には、もうすぐ初夏である現実世界とは違い、雪景色が続いていた。

あいかの言うような人影は・・・、いや、遠くに確かに人影っぽいものがぼんやりと見えた。

 

俺は目を凝らしてみる。

その人影は、周囲に同化したようにひどく分かりづらい感じだったが、では何故それが分かったんだろうか?

 

それは、目が()()()()()()()()()()()()()()

 

「ま、まさかっ・・・!!!」

「わ、わたしっ・・・!?」

「「「「えっ・・・!?」」」」

 

あいかの言う通り、それはあいかと瓜二つの人物であった。

しかし、俺だけは、それが何なのかを朧気に察していた。

 

こちらが気付いた事に向こうも気付いたのか、ニヤリと顔を歪めるとすっと消えてしまった。

 

「あっ、ま、待ってっ・・・!!!」

「あ、あいかっ!!!???」

 

あいかとしては珍しく焦ったような声を出しながら、彼女は窓の外へと飛び出していった。

次の瞬間、先程は穏やかな雪景色だったのが、一転して吹雪となっていて、あいかの姿も一瞬でかき消えてしまう。

 

「ま、マズいっ!!!」

「ま、待て、鳴上っ!窓の外に出るのはマズいっ!!一度空間が閉じちまったら、最悪すぐには戻ってこれねーぞっ!あいかちゃんの事は心配だけど、ここは一旦魔鈴さんに報告してだな・・・!」

「そんな悠長な事は言ってられないかもしれないんだっ!さっき見た人影・・・。あれは、おそらく“()()()()”だっ!何故こんなところに、しかもあいかの姿をしていたのかは分からないが、場合によってはあいかが殺されてしまう可能性があるんだっ!!!」

「な、なんだとっ・・・!?」

 

あいかと瓜二つの容姿ではあったが、向こうのあいかは、金色の瞳をしていた。

昨年、仲間達の影に散々出会って来た俺は、すぐに彼女の“シャドウ”だと気付いたのである。

 

そして、“マヨナカテレビ”での経験から言えば、“シャドウ”の目的が何なのかは正直分からないが、最悪あいかが殺されてしまう可能性が高い事にも気付いていた。

実際、山野真由美と小西早紀は、自身の“シャドウ”に殺されたと見られている。

 

更に最悪な事に、“マヨナカテレビ”とは違い、今回はこの場所に侵入出来る機会が、もしかしたら今、この瞬間しかないかもしれないのだ。

いや、魔鈴さんが繋いだのなら、確かに横島の言う通り、彼女に報告すれば万事解決するかもしれないのだが・・・。

 

「・・・その話が本当だとしたら、躊躇している時間はないかもしれませんね・・・。見て下さい。空間がおかしくなり始めています。」

「以前と同じ感じだな。確か、前の時は、結構早い段階で再接続ができた、って話だったが・・・。」

「今回も同じように上手くいく保証はありませんノー。しかも、鳴上さんの話では、そうこうしている内に中村さんが殺されてしまう可能性もあるんじゃケン。」

「・・・すまんが俺は行く。友人を見殺しにするつもりはないからな。」

「付き合うぜ、鳴上。」

「ボクもお供します。」

「わっしも行きますケン。」

「・・・チッ、しゃーねーな。付き合ってやるよっ!それに最悪、俺の文珠(もんじゅ)があれば、自力で戻って来る事もできるかもしんねーしな。」

「みんな・・・。」

 

俺の言葉に、みんなも次々と名乗りを上げてくれた。

俺は無言で頷くと、

 

「・・・行こう。」

「「「「応っ!!!」」」」

 

こうして俺達は、あいかを救出すべく窓の外の異空間に飛び込んで行ったのであったーーー。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしよろしければ、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
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