続きです。
・・・
道化師side
グオォォォォーーーンッ!!!
「来るぜっ!!!」
「「「「っ!!!!」」」」
その大型シャドウは、所謂“ロボット”のような姿をしていた。
シャドウ自体にあまり知識のない俺らには目新しく映ったが、鳴上には見覚えがあったのか、若干顔をしかめていた。
そして、例の“ヒミコ”系のペルソナで
「注意してくれ。コイツは、とにかく耐久値が高い。しかも、物理攻撃が効きにくいのに、“魔法”、あ、いや、弱点属性もない。特に、“光”と“闇”は無効、どころか反射してくるから、絶対に避けてくれ。」
「って事は、物理攻撃でゴリ押しするしかない、という訳ですね?」
「へっ、そっちの方がシンプルで嫌いじゃないぜ!」
鳴上も、魔鈴さんとは別ベクトルではあるが、所謂“魔法”を操る事ができた。
もっとも、鳴上のそれは、言っちまえばただの“属性攻撃”でしかないがな。
鳴上の説明によれば、火炎、氷結、疾風、電撃、光、闇、それと万能属性が存在するらしい。
もちろん、俺らの世界では、そうした“属性攻撃”を操る能力者は珍しいが、全くいない訳でもない。
身近なところで言えばひのめちゃんが“
若干方向性は違うが、以前祓った雪女も相手を凍りつかせる存在だし、カマイタチのような、風属性の妖怪も存在するし、俺の記憶にはないが、電撃属性を操る存在もいるかもしれんからな。
光と闇についてはよく分からんが、神族と魔族がそれに該当する存在だろう。
あまり意識する事はなかったが、相手の属性を理解していれば、なるほど弱点を突ける可能性もあるだろう。
ま、今の俺らにはあまり関係のない話だがな。
鳴上の言葉が正しければ、この大型シャドウには弱点属性は存在しないワケだからな。
(ちなみに、俺の“
基本的に、物理攻撃でゴリ押しするタイプの雪之丞にとっては、あまり深く考えなくて良いタイプの敵だろう。
逆に、聖と魔を操る事に長けたピートにとっては、色々と行動を制限させる相手か。
シャドウに精神攻撃系統が通用するかは分からんので、タイガーにとっても相性の悪い相手かもしれんなー。
「先陣は任せとけっ!オメェらはサポート頼むぜっ!!」
もはや切り込み隊長と化した雪之丞が、先手必勝とばかりに大型シャドウに速攻を仕掛けた。
物理攻撃が決定打ではないにしても有効ならば、とにかくぶっ叩きまくるしかないから、その雪之丞の判断は正しいだろう。
それは仲間達も分かっているのか、先行した雪之丞に追従するように、ピート、タイガー、鳴上もそれに続いた。
しかし、
グオオオォッ!!!
「なっ、速えぇっ!!」
「「っ!!??」」
「くっ、“バンパイア・ミスト”っ!!」
ブンッ!!!
スカッ。
・・・ウガッ?
デカブツの割に素早い攻撃を繰り出してきた大型シャドウに、雪之丞は完全に面食らう。
しかし、そこはそれ、ピートが素早い機転によって雪之丞もろとも身体を“霧”に変えた事で、どうにか直撃は避けられた。
(ちなみに、ピートの“バンパイア・ミスト”は、ピート自身だけでなく誰か一人ならば一緒に“霧”にする事が可能であった。)
「雪之丞っ!?」
「だ、大丈夫だ。わりぃ、ピート。助かったぜ。」
「いや、無事で良かったよ。」
「・・・しかし、思った以上に速いな。あの図体で雪之丞に匹敵する速さか・・・。ま、流石に師匠ほどじゃないけどなー。」
「・・・これは、出し惜しみしている場合じゃなさそうだな。」
「そうですケンノー。」
思った以上に相手が強敵であると認識したのか、鳴上達の目つきが変わった。
「お〜い、大丈夫そ〜か〜?」
唯一戦闘に参加していない俺の緊張感のないその言葉に、鳴上達はしっかりと頷いた。
「ああ、問題ない。横島の手を煩わせるほどの相手じゃない。」
・・・ふむ、頼もしいものである。
確かに、思ったりも強敵には違いないが、残念ながら俺の仲間達の実力はまだまだこんなものじゃない。
むしろ、仲間達を本気にさせただけの事であるから、この大型シャドウの命運は尽きたに等しかった。
「要は、相手よりも素早く動ければ良いだけの事だ。それに、かたい防御力を突破できる攻撃力、と。ならば、これでどうだっ!こい、ネコショウグン!!」
カッーーー!
ブツブツと呟いた後、鳴上がおもむろにペルソナを召喚する。
すると、甲冑を来たネコが現れる。
・・・うん、ゆるキャラのようにも見えるが、鳴上が自信満々に喚んだからには、かなりエグい性能を持っているんだろう。
「呼ばれて飛び出てニャニャニャニャーン!へい、ご主人。何かご用かニャ?」
「ネコショウグン。“マハタルカジャ”だ。」
「オーケー、ご主人。いくニャ!“マハタルカジャ”!!」
「「「おおっ!!!」」」
甲冑ネコの魔法の効果によって、雪之丞達の身体を赤いオーラのようなものが包み込む。
「みんな、“マハタルカジャ”はしばらくの間、攻撃力を上げる効果のある補助魔法だ。それと・・・、チェンジ、ヤタガラス!!」
カッーーー!
「・・・お呼びですか、宿主殿。」
「ああ、ヤタガラス。“マハスクカジャ”を頼む。」
「御衣。“マハスクカジャ”!!」
「「「お、おおっ!!??」」」
続けざまに鳴上が、カラスのようなペルソナを召喚。
そのカラスが魔法を唱えると、雪之丞達の身体を、今度は緑色のオーラのようなものが包み込んだ。
「ありがとう、ヤタガラス。帰っていいぞ。」
「では、再びお会いしましょう、宿主殿。」
「みんな、“マハスクカジャ”は命中と回避を上げる効果のある補助魔法だ。おそらく、移動速度の上昇も見込めると思う。」
「おおっ!身体が燃えるようだぜっ!!」
「それに、いつもよりも身体が軽いように感じますね。」
「本当じゃノー。これなら・・・。」
・・・行ける。
俺は、そう確信した。
鳴上の機転によって、明らかに雪之丞達の動きが変わったからである。
しかも、更に鳴上は、ダメ押しとばかりにもう一体、ペルソナを召喚する。
「こい、ヤクシニー!」
「・・・ふむ、案外早くわらわを喚び出したものだの、鳴上どの。」
「色っぽいおねーちゃん、再びキターーー!!」
俺は、思わず興奮してしまう。
いや、半裸の美しい女神が現れたのだ。
男として、当然の反応だと思います。(言い訳)
「・・・なんだが、後ろの視線が若干不快だが、御用は何かな、鳴上どの?」
「あのデカブツに、“ラクンダ”を頼む。続けて、“電光石火”だ。」
「承知した。“ラクンダ”!!」
ヤクシニーがそう唱えると、大型シャドウの周囲に、どんよりしたオーラが包み込んだように見えた。
「みんな、“ラクンダ”は相手の防御力を一定時間下げる効果のある補助魔法だ。これなら、相手に攻撃が通りやすくなるだろう。ヤクシニーが先陣をきる。一気に押し切ってしまおう。」
「応っ!」
「了解ですっ!」
「分かりましたっ!」
相手はかなりの強敵だ。
ならば、あまり長期戦にするのはこちらの負担が大きくなるだけだし、それにあいかちゃんの事もある。
故に鳴上は、短期決着を考え、その準備が、今まさに終わったワケであった。
「“電光石火”!!」
グオッ!!!???
ヤクシニーの素早い連続攻撃に、大型シャドウがよろめいた。
ダメージはそこまででもないように見えるが、相手の意表を突いた攻撃にはなったようだ。
怯んだ相手なら、タイガーの精神攻撃が良く効く。
「幻惑精神感応ーーー!!」
ブンッ!!!
スカッ。
・・・ウガッ?
先程の焼き増しのように、大型シャドウがヤクシニーに反撃をするが、それは空を切った。
もっとも、今度の場合はピートによる“バンパイア・ミスト”による回避ではなく、タイガーの精神感応による幻惑の一種。
つまり、相手に幻覚を見せる事によって相手の五感(があるかは分からんが)を奪った結果であった。
いくら相手の攻撃力が高くとも、当たらなければどうという事はない、というワケだ。
「ナイスだ、タイガー!」
「一気に行きましょう!!」
・・・実は俺らには、鳴上のペルソナのような“必殺技”然とした技を持っていなかったりする。
そもそも、霊力をこめた攻撃そのものが、ある種の“必殺技”だからである。
だから、そもそも通常攻撃がそれに該当するワケだが、やはりそこは男であるから、鳴上に影響されたのか、雪之丞とピートはいかにもなちょっとかっこよさげな技名を叫びながら大型シャドウに特攻していく。
「喰らえ、“ダンピールフラッシュ”!」
“ダンピールフラッシュ”は、ぶっちゃけるとただの“霊波砲”の事である。
以前からそれを使う時には、こうしてピートは技名を叫ぶ事があったからそこまで不自然ではないが、実際には以前とは比べ物にならない威力もあったりする。
何度か言及している通り、ピートは“バンパイア・ハーフ”である。
故に、“人間”としての性質と、“バンパイア”としての性質を併せ持つ、いわばハイブリッドな存在なのである。
とはいえ、双方のいいとこ取りをしようとすると、実際にはかなり難易度が高いのである。
これは、俺自身も体験している事であるから、まず間違いないだろう。
もちろん、以前からピートは、その“聖”と“魔”の力を高いレベルで習得していたが、最近その力が、以前よりも更に増していたのである。
先程はただの“霊波砲”と言ったが、当然術者の出力が上がれば、それだけ攻撃力も増す事となる。
更には、鳴上のサポートを受けている事もあって、大ダメージ必至の特大の霊弾が複数、大型シャドウを襲ったのであった。
ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ!!!
ウガァァァァッーーー!!!
当然、それを喰らえばひとたまりもないだろう。
大型シャドウも不可思議な声を上げながら苦しんでいた。
ウガァァァァッーーー!!!
ブンッ、ブンッ、ブンッ!!!
スカッ、スカッ、スカッ!!!
激昂した大型シャドウは、自身のダメージは無視して、無茶苦茶に反撃する。
が、タイガーの幻惑や雪之丞達の回避行動の前に、それらは全て空を切っていた。
「トドメは俺に任せとけっ!いくぜっ!!とうっ!!!」
何だが異常にテンションの上がっている雪之丞は、インパラもかくやという跳躍力を見せた後、“魔装術”、改め“霊装術”にフォームチェンジする。
「燃えろ、俺の
・・・色々とアレな感じではあるが、なるほど、確かに雪之丞の“霊装術”は、見ようによっては仮面ライ◯ーっぽい感じなので、ライ◯ーキック的な必殺技は様になっていた。
もちろん、ピートと同様に、それはただのキックではない。
“霊装術”の持つパワー、+霊力のこもったキック、+器用な事にコイツは、俺の“サイキックソーサー”を真似て、それを足場として利用していたりする。
当然ながらただのジャンプキックでは、“重さ”の乗った攻撃になりにくい。
まぁ、対人であったらそれでも構わないのだろうが、より攻撃力を上げるならば、体重の乗った攻撃の方が良いのである。
そこで、雪之丞は、“サイキックソーサー”の特性を利用して、それを踏み込み台にする事で、更には攻撃力を高めたようなのである。
高い位置から、しかも充分な勢いの乗ったライ◯ーキック、もといファイティング・ドラゴン・キック(多分、弓さんの実家の“闘龍寺”とかけているのだろう)は、雪之丞の“霊装術”+霊力も加味されて、そのバカバカしいネーミングと見た目とは裏腹に、ミサイルもかくやという威力を秘めている事だろう。
ウガッ!!!???
だが、先程まで激昂状態だった大型シャドウは、流石にそれに危機感を感じたのか、その巨体に似合わぬ動きで回避行動を取ろうとする。
当然だが、当たらなければどうという事はないのは相手も同じなので、これは見事な判断と言えるだろう。
だが、こちらは一人ではないので、鳴上がそれを上手くフォローする。
「させるか!こい、ヨモツシコメ!」
「・・・御用でしょうか?」
「ああ。ヨモツシコメ、“デビルタッチ”だ!」
「御意。“デビルタッチ”!」
ウガッ!?
色っぽいおおねーちゃんから、髪の長い不気味なペルソナを喚び出した鳴上は、大型シャドウに新たなるスキルをぶつける。
「“デビルタッチ”は、相手に恐怖効果を与えるスキルだ!恐怖状態にすると、その場に立ちすくんだり、戦闘から逃走する事がある。本来はボス格の相手には効かないのだが、今の俺なら!」
ウガガガガッ!(ブルブル)
鳴上の言う通り、それを食らった瞬間大型シャドウは先程の俊敏さはどこへ、という具合にその場に立ちつくしてした。
おそらく、恐怖によって“金縛り”の如くその場から動けなくなってしまったのだろう。
これは、雪之丞からしたら有り難いサポートだ。
「サンキュ、鳴上っ!!!」
「「「いけぇっーーー!!!」」」
「うおぉぉぉぉっーーー!!!」
鳴上、ピート、タイガーの声援を受けながら、雪之丞が大型シャドウに突っ込んでいく。
ウ、ウガァァァァッーーー!!!
避けられないと悟ったのだろう。
大型シャドウは回避行動を諦めて、迫りくる雪之丞にカウンターの拳で迎え撃とうとする。
スゴゴゴゴッーーー!!!
キックと拳が激突し、しばしのせめぎ合いが起こるが、当然勢いや威力では雪之丞に軍配を上げる。
更に、タイガーによる幻惑はまだ効果が残っていたらしく、若干、雪之丞へのカウンターも逸れていたらしい。
更に更に、先程のピートからの攻撃のダメージや、鳴上から受けた諸々のデバフもあって、拳は弾かれ、その勢いのままに、雪之丞が大型シャドウのどてっ腹に大きな風穴を空ける事に成功した。
シュタッ!!
「成敗っ!」
ウギャアァァァッーーー!!!
雪之丞の着地と共に、大型シャドウは断末魔の叫びをあげる。
しばらくの後に、まるでガラスが砕けるようにその姿は崩れ落ち、その破片も空中で溶けて消えてしまった。
そんな場合ではなかったが、その光景はある種幻想的であり、俺らはそれを見届けると、その場は静寂に包まれた。
「・・・勝ったな。」
「ああ。見事だったぞ、雪之丞。」
「いや、何。みんなのサポートのおかげさ。俺は、トドメを刺しただけだ。」
「ピートとタイガーも、見事な働きだったぞ。」
「いえ、鳴上さんの方こそ。」
「上手く、みんなのフォローに回っとりましたノー。周りが見えている証拠ですケン。」
大型シャドウが倒れ、周囲からシャドウの気配も消えた事を確認すると、鳴上はみんなに労いの言葉をかける。
・・・中々良い雰囲気である。
やはり、鳴上には“リーダー”、というか、“司令塔”の素質があるらしい。
ま、自身も自ら戦えるが、ヤツの“ペルソナ能力”の真骨頂は、そのバリエーションの多彩さだからな。
そうした意味では、サポートに回った時が、一番その特性を活かせる為もあるかもしれない。
「みんな、お疲れー。んで、疲れとるとこ悪いが、まだあいかちゃんを確保したワケじゃないから、さっさと移動する事としよーぜー。」
戦闘に参加していなかった俺が偉そうに指示する事じゃないが、ここに来た目的を忘れてはいけないからな。
鳴上達もそれは理解しているのか、コクリと頷いた。
「ああ、そうだったな。」
「おい、見てみろよ。」
「ん?」
雪之丞が指差す方には、大型シャドウがいた位置に、空間の亀裂のようなものが見て取れた。
「・・・もしかしたら、あれに飛び込めば中村さんの居場所に辿り着けるかもしれませんね。」
「可能性はありますケンノー。」
「他に手がかりもないし、他に出入り口らしいものも見当たらないな。どうする?行ってみるか?」
「ああ。・・・でも、その前に・・・。」
「「「「・・・ん???」」」」
・・・
「あ〜あ。残念〜。」
「よ、よかった・・・。」
一方、あいかの“ドッペルゲンガー”の謎の力によって、モニター越しに番長達の激闘を見届けていた両名は、その結果に対象的な反応を示していた。
方や、心底残念そうに溜息を吐き、方や心底安堵したようにホッと一息吐く。
そして、続く“ドッペルゲンガー”の言葉に、あいかはいよいよ否定的な感情を爆発させてしまうのだった。
「・・・惨たらしく死んでくれたら良かったのにぃ〜。」
「っ!!!」
ゾッとするような声色で、そう呟く自分とそっくりな人物の存在。
瞬間、あいかは、思わずこう呟いてしまうのだった。
「・・・違う。」
「・・・ん〜?」
「変なところに辿り着いたな。」
「あっ!あれを見てくださいっ!!」
「何だっ・・・!?中村が、二人・・・?」
「鳴上さんが言っていた事は本当だったんジャノー。」
「“ドッペルゲンガー”ってヤツか。ってか、何だか様子がおかしくねぇ〜か?」
「・・・も、もしやっ!!??」
弾かれたように走り出した番長。
横島らも、それに慌てて付いて行った。
「どうした、鳴上?」
「一人で行くのは危険ですよ!」
「すまん!しかし、このままでは“シャドウ”がっ・・・!」
「「「「???」」」」
事情を知らない横島らは、番長が何に焦っているのか理解していなかった。
まぁ、“ドッペルゲンガー”があいかに危害を加える可能性は理解していたので、番長の慌てっぷりも多少は分からんではなかったのだろうが。
「・・・何が違うのかしらぁ〜?」
挑発的な“ドッペルゲンガー”の言葉に、あいかはもはや感情をコントロールする事ができなかった。
「・・・アンタなんか・・・」
「・・・ダメだ、あいかっ!!」
番長が静止の言葉を叫ぶが、それはあいかの耳にはもはや入らなかった。
「アンタなんか、私じゃないっ!!!」
そして遂に、その言葉を叫んでしまったのであったーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。