続きです。
今回はボス戦です。
脳内で、例のBGMを思い浮かべると雰囲気が出るかもしれませんね(笑)。
人は、生きる上でいくつもの“仮面”を使い分ける生き物である。
何故ならそれは、人間が社会性を持つ生き物だからである。
社会、すなわち“群れ”では、協力や協調が重要になってくる。
何故なら、各々が好き勝手に動いてしまうと、秩序が守れなくなってしまうからである。
これが、個々で動く野生動物ならば、そんなものは必要ない。
何故なら、その場合、責任は全て自分に返ってくるからである。
狩りをしたくなければ自分が飢えて死ぬだけの事だし、巣作りが面倒くさいのなら、外敵から身も守る事ができないだけの事。
単独で動く者は、一見自由に見えても、それだけ自身にのしかかる責任はかなり重いのである。
では、“群れ”の場合はどうだろうか?
“群れ”の場合は、その責任を分散する事ができるので、そうした意味では非常に効率が良い。
何でも自分でやらなければならない生物に比べて、様々な負担を減らす事ができるのである。
一方で、自己の責任が軽くなる事によって、働かなくなる者達も出てくるようになる。
自身が何もせずとも、仲間が働いてくれたら、それで食う事ができるからである。
もちろん、そうした者達は、“群れ”とっては害悪でしかない。
故に、“群れ”の秩序を乱す者は、淘汰される事となる。
これは、現代では“イジメ”という形で残っていたりする。
場の空気を読めない者、場を乱す者を排除しようとするのである。
もちろん、中には、そうしたある種当然の流れとは別に、ただ身体的特徴などに由来する“イジメ”も存在しているので、これは大問題ともなる。
“群れ”にとっての害であるから排除するのではなく、ただ一部の人間の感情論やくだらない自尊心の為の行為であるからこそ、“イジメ”はもっとも愚かな行為なのである。
まぁ、それはともかく。
つまり、“群れ”に所属する以上、どうしても協調性が重要になってくるのである。
故に、当然ながら各々が様々な個性を持っていたとしても、ある一定の協力姿勢を演じる必要があるのだ。
その為に、人々は“仮面”をかぶるのである。
特に日本の社会においては、“本音”と“建前”を使い分ける事が重要になってくる。
家ではだらしなく、面倒くさがりなお父さんでも、一歩会社に行けば、バリバリと仕事をこなしている、なんて事も珍しい話ではない。
子供がやらかして、それに怒っていたお母さんが、電話に出る時には一転して愛想よくなった、などもそうした社会性故の事である。
そしてそれは、当然子供の社会にも存在するものであったーーー。
ご承知の通り、番長達は“マヨナカテレビ”という特殊な状況下で、自身の“影”、“シャドウ”、あるいは“ドッペルゲンガー”と向き合い、それを認めた事で、“ペルソナ能力”に目覚めている。
もっとも、彼らはそれらを自身の見たくない、認めたくない自分の一部、と考えているかもしれないが、もちろんそれも正解だが、実際にはそれは過剰に演出されたものでもある。
これは、“シャドウ”があえて宿主に自身を否定させる事によって、宿主から独立する為の作戦だったからである。
当然ながら、“シャドウ”は非常に不安定な存在である。
何故ならば、彼らが存在できるのは、
逆に言えば、彼らはどうにか安定しようとする本能を持っている。
故に、宿主の醜い部分を増幅した姿で登場し、彼らから独立する、いわばより安定した姿に成ろうとするのである。
もちろん、先程も述べた通り、あくまで彼らが存在できるのは“精神世界”や“異界”のみである。
(もっとも、イザナミの策によって、その現実と虚構の“境界”を曖昧にする事によって、現世へと進出を果たそうとした事もあったが、これはご承知の通り番長達に阻止された。)
故に、“マヨナカテレビ”の中に入らない限りは、“シャドウ”に出会う事も、転じて“ペルソナ能力”に目覚める機会もないのである。
ところがこれは何度となく言及しているが、GS世界は番長達がいた世界よりも霊的に活発であり、“悪霊”などと呼ばれる存在が実際に存在するし、一般市民であっても出会ってしまう可能性の高い世界なのである。
それはつまり、“シャドウ”が現れたとしても不思議な話ではない事を意味する。
もっとも、美神も言及した通り、そもそも霊的に活発な世界故に、わざわざ特殊な状況下でしか存在を維持できない“シャドウ”が出現する方が、
故に、美神でさえ“シャドウ”や“ペルソナ能力”を見聞きした事はほとんどなかったのである。
ところが、今回の場合はたまたま全ての条件が揃ってしまったのであった。
魔鈴によって“異空間”が繋がった事。
あいかが、次元の狭間を超えて霊的に活発な
それに加えて、番長らに関わっていた事で、知らず知らずの内に“ペルソナ能力”の影響を受けていた事や、あいか本人にも自覚していなかった番長に対する嫉妬(というか、本来はある種の憧れや羨望に近い感覚だろうが)が複雑に絡み合った結果、あいかの“シャドウ”が出現する事となってしまったのであるーーー。
番長side
「アハハハハッ!そうよっ!貴女は私じゃないわっ!私こそ、
「ああっ!!」
「あいかちゃんっ!!」
「クッ、遅かったかっ・・・!」
シャドウあいかをあいか自身が否定した事で、シャドウあいかに変化が訪れた。
今やオリジナルであるあいかにそっくりだった容姿は変貌を遂げ、怪物へと成り果てたのである。
「お、おいおい、なんだありゃ・・・!」
「す、凄まじい霊圧を感じます。最低でも、中級神魔ぐらいの力はあるかもしれませんね・・・。」
その様子に、雪之丞とピートも驚愕の表情を浮かべていた。
「我は影・・・真なる我・・・。じゃあ、手始めに、目障りな鳴上くんから殺してあげるわっ!!!」
「来るぞっ!横島はあいかをっ!!他のみんなは、戦闘準備だっ!!!」
「「「お、応っ!!!」」」
「あ、あいかちゃんっ!こっちへっ!!!」
「あ、あぁ・・・。」
あいかは腰を抜かしていたが、そこはそれ、横島に任せとけばとりあえず安全だろう。
何だかんだ言っても、ヤツは頼りになる男だからな。
むしろ、問題となるのは俺達の方だ。
こうなった以上、戦いは避けられない。
まぁ、相手が襲ってくるのだから当然と言えば当然なのだが。
しかし、元の世界のシャドウ達も強力だったが、
もちろん、俺も含めて仲間達の力を合わせれば、何とか勝利する事が出来るだろうが、そのレベルとなると、一瞬の油断が命取りとなる。
仲間達も、それは理解しているのか、一瞬で気を引き締めるのだっだ。
だが、
「遅いわぁ〜!!“ソニックブーム”!」
「グハッ!」
「グッ・・・!」
「ひぎぃっ!」
「ガハッ・・・!」
「おい、オメェらっ!!」
「な、鳴上くんっ!!??」
こちらの体勢が整う前に、シャドウあいかは強襲を仕掛けてきた。
は、速いっ!!!
「アハハハハッ!手も足も出ないまま、不様にやられなさいっ!」
勝ち誇った表情を浮かべながら、歪んだ笑みを浮かべるシャドウあいか。
・・・確かに、ヤツの速さは脅威だ。
しかも、速いとは、実際には=攻撃力の高さにも直結するので、ヤツが勝ち誇るのも分かる気はする。
だが、
「・・・調子に、乗るなよっ!」
「きゃんっ!」
雪之丞の反撃に、シャドウあいかは驚いた様な表情を浮かべていた。
「なっ・・・!わ、私の攻撃が効いてないのっ・・・!?」
「効いてるさ。けど、
ヤツの攻撃は、所謂“先制攻撃”かつ重い“全体攻撃”だ。
並の相手では、最初の時点でパーティーが瓦解するほどの強さであろう。
しかし、先程の大型シャドウとの戦闘を踏まえて、俺はあらかじめ“
ここで、簡単に“ペルソナ”のスキルに関して説明しておこう。
“ペルソナ”のスキルには、“アクティブスキル”と“パッシブスキル”が存在する。
“アクティブスキル”とは、すなわち番長(ペルソナ能力者)の任意(手動)で発動するタイプのスキルである。
先程、大型シャドウと一戦交えた際に使っていたのが、この“アクティブスキル”に該当する。
一方の“パッシブスキル”とは、番長(ペルソナ能力者)の承認を必要とせず、持っているだけで自然と発動するタイプのスキルの事であった。
つまり、それらの“パッシブスキル”を持つペルソナをあらかじめ装着しておけば、何もせずともスキルが発動する事となるのである。
で、番長にはこの“
それは、色々と魔改造した“タムリン”であった。
ペルソナには、ペルソナ合体によってスキルを継承したり、スキルカードによって、本来持っていないスキルを所持させる事もできる。
で、この“タムリン”は、元々耐性面も優秀であり、なおかつ覚えるスキルも優秀である為に、番長は最後まで重宝し続けたペルソナの一つであった。
具体的には、“マハタルカオート”、“マハラクカオート”、“マハスクカオート”という、仲間全体に攻撃力アップ、防御力アップ、命中アップと回避アップを自動で発動するパッシブスキルを持っていたのであった。
先程の大型シャドウ戦でもお分かりの通り、味方全体にバフを掛けられると、それだけで戦闘はかなり楽になる。
戦術によっては、所謂“1ターンキル”すら可能だ。
ただし、再三述べている通り、番長のペルソナ能力はあくまで“精神世界”や“異世界”と呼ばれる場所でこそ真価を発揮する関係上、現実世界で常にペルソナを降魔し続ける事は実質的に不可能な為(それをし続けると、番長の霊力がどんどん消耗してしまうからである)、これまでは使えなかった戦法でもあるが、どうやらこの場所は、所謂“精神世界”や“異世界”に該当する場所の様なので、番長の能力がフルに使えるのである。
そんな訳で、番長は、あいかやシャドウあいかに追い付く前に、この“タムリン”をすでに降魔していた為、なし崩し的にシャドウあいかとの戦闘に突入した瞬間から、すでにパッシブスキルが発動している状況だったのである。
故に、もちろんシャドウあいかの先制攻撃にみんなダメージを受けていたが、それで即座に壊滅状態になるどころか、反撃に転じる余裕さえあった訳であったーーー。
「喰らえ、連続霊波砲!」
「ダンピールフラッシュッ!!」
「グッ・・・!」
雪之丞の反撃にシャドウあいかが怯んだのを見逃さずに、雪之丞とピートが一気に攻勢を仕掛けた。
所謂“ボスシャドウ”は、本来は長期戦覚悟で挑むものであるが、しかし
つまり、決められる時に決めてしまうのが、
絶え間ない、容赦のない二人の弾幕の前に、さしものシャドウあいかも反撃の隙を見出す事は困難だったようである。
ただ、少なくとも小竜姫様クラスの相手が、この程度の筈もない。
少なくないダメージを受けながらも、ヤツはブチ切れた。
「こ、コノォッ!!オマエラコソ、調子ニノルナァァァッーーー!!!」
「「「「クッ・・・!!!」」」」
半ばやけくそ気味の“全体攻撃”によって、雪之丞とピートの攻撃が止められてしまう。
それは、相手のターンに入ったのと同じ意味を持っていた。
「アハハハハァッ〜!今度コソ、反撃ノ隙モ与エヌママ、ジワジワトナブリ殺シニシテアゲルワァッ〜〜〜!!!」
そう言うと、シャドウあいかは、更に形態を変化させる。
所謂、“第二形態”というヤツであろう。
先程までの怪物とはまた違い、どちらかと言えば“ペルソナ”に近い洗練されたような姿に変じていた。
「なっ・・・!?ま、まさか、“韋駄天”、なのかっ・・・!!??」
後ろの方で、横島の驚愕したようなセリフが聞こえてくる。
が、それを横島に確認している暇はなかった。
ここで、ヤツから目を逸らすのは、明らかに悪手だからである。
それに、ある意味周囲に気に掛ける余裕もなかった、というのが本当のところであった。
「ひ、怯むなっ!もう一度行くぞっ!!」
「り、了解っ!!」
「ま、待て、二人ともっ!!」
雪之丞とピートは、ヤツの変化に驚きながらももう一度特攻を仕掛ける。
もちろん、ヤツを倒しきれない事にはこの戦いは終わらないから、その判断はある意味正しい。
しかし、形態が変わったという事は、攻撃パターンも変化した可能性がある。
故に、ここは一旦様子を見るべきだと俺は思ったのだが、先程も述べた通り、“戦い方”、という意味では根本的に考え方の違う俺達は、ここで致命的なチームワークのズレを発生させてしまう。
俺の静止を耳に届かなかったのか、雪之丞とピートは、二方向からシャドウあいかに強襲を仕掛ける。
「ムダムダムダァ〜!“刹那五月雨撃”!!」
「グハッ!!」
「ガハッッ!!」
しかし、シャドウあいかの反撃に、アッサリと返り討ちに遭った。
・・・やはり、先程よりも更にステータスが上がっているようである。
冷静にそう分析しながらも、俺は二人を素早くフォローする。
「こい、パールヴァティー!」
「お呼びですか、
「ああ、パールヴァティー!“ディアラマ”だ。」
「承知。“ディアラマ”!」
俺は、ここでパールヴァティーを顕現させる。
もっとも、本来ならもっと強力な回復魔法を使えるペルソナもいるにはいたのだが、ふと、先程の横島のセリフが頭をよぎったのだ。
まさか、“韋駄天”、と。
俺の付け焼き刃の知識が正しければ、“韋駄天”、すなわちスカンダは、シヴァとパールヴァティーの息子である筈だ。
そして、パールヴァティーの愛情の重さに、苦手意識を持っていた、らしい。
もちろん、所謂“ボスシャドウ”には、弱点属性がない事も多い。
しかし、その関係値が、もちろん本物ではなかったとしても、ペルソナ同士の力関係に影響を及ぼすのではないか?、と考えた訳である。
故に、パールヴァティーだったのだ。
これで、仮にシャドウあいかが弱体化すれば儲けもの、くらいの気持ちだったのである。
しかし、これが思った以上の効果をもたらす事となった。
・・・もっとも、俺が思い描いた方向性とは若干違ってしまったのであるが・・・。
「サンキュー、鳴上!」
「助かりました、鳴上さん。」
「二人とも、無事で良かった。」
「ゲッ!ハ、母上ッ!?」
「姿形は若干違いますが、貴方、スカンダね?何をしているのかしら?」
「イ、イエ、コレハ、ソノォ〜・・・。」
「何だ何だ?」
「シャドウが、鳴上さんのペルソナに気圧されている・・・?」
「どうやっとるジャ?」
「・・・俺にも分からん。」
「コホンッ、説明しよう。」
「・・・横島?」
「俺も、最近は多少事務所で勉強しとるからな。んで、俺は以前、韋駄天族の奴らに会った事があって、ヤツの服装が、若干それに似ていたのよ。ま、つっても、あくまでそうじゃないかなぁ〜、って程度だったけどよ。ただ、お前がパールヴァティーを顕現させて、ヤツが動きを止めた事で、それは確信に変わった。」
「俺も、詳しくは知らないが、仮にヤツがスカンダだとしたら、女神パールヴァティーに苦手意識を持っているだろうとは思ったけどな。」
「そ。で、何で苦手意識を持ってるか、ってーと、今のヤツは個に見えるが、元々スカンダは6人兄弟だったんだ。それを、パールヴァティーが彼等をあまりにかわいく感じて強く抱きしめた為、彼等は頭と腕の数はそのままに体が合体して一つになった、って逸話があんのよ。」
「あ〜・・・。」
「・・・母親の愛情の重さ、ってヤツですか。」
「そ。だから、ヤツはパールヴァティーに苦手意識を持っとるワケだ。ま、そもそも息子側からしたら、母親ってのはどうにも頭の上がらん存在だしなー。」
「確かに・・・。」
そんな、ノンキな話をしていた俺達をよそに、シャドウあいかとパールヴァティーは押し問答を続けていた。
「人様に迷惑をかけるような、そんな息子に育てた覚えはないわよ?そもそも貴方は、インドラ殿に変わる“軍神”なのよ?さ、こんなくだらない事してないで、矛を納めなさいな。私も一緒に謝ってあげるから。」
「・・・。」
まるで、バカな息子の暴走を諭す母親の様な口調で、パールヴァティーはシャドウあいかの説得を試みる。
まぁ、端から見た分には、怪物と女神の言い合いにも見えるのであるが、そこはそれ、やはり神様や悪魔と言えど、人間と大して変わらないところもあるのかもしれない。
しかし、逆に言えば、いくら神々と言えど、思春期真っ只中、みたいな感じの息子が、そう簡単に説得に応じるワケでもないのあった。
「・・・ウルサイナ・・・。」
「・・・えっ?」
「ウルサイトイッタノヨッ!今更アナタニ、母親面サレルイワレハナイワッ!ッテカ、私達ハ、ソモソモ“似姿”デシカナインダシッ!!」
「っ!?」
以前にも言及した通り、“ペルソナ”は本物の神様でも悪魔でもない。
あくまでその人の内面が反映された姿形でしかないのである。
(もちろん、番長の様に、所謂“本物”を召喚してしまった例もあるが。)
故に、シャドウあいかの発言は、ある意味至極真っ当な意見でもあった。
まぁ、端から見た分には、あくまで子供の癇癪、みたいにも見えるのであるが。
しかし、そこはそれ、腐っても神々に近しい存在であるから、その影響は人間の比ではないのであるがーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。