続きです。
戦闘描写って難しいですね。
どうせなら、番長だけでなくそれぞれのキャラを活躍させたいし・・・。
・・・
“スカンダ”とは、元々はヒンドゥー教の軍神の事である。
父はシヴァ、母はデーヴァセーナー(パールヴァティー)もしくはガンガー(パールヴァティの妹)で、代理父がアグニ、代理母がスヴァーハー。
軍神インドラに替わって新たな神軍の最高指揮官となる。
後に仏教にも伝わって韋駄天(異名クマーラからは鳩摩羅天)となった、とされる。
一方で、
それ故に、正確に言えば、“スカンダ”の方がある種“韋駄天族”の元ネタ、みたいなものなのだが、まぁ、特に日本においては、そこら辺はゴチャゴチャしているものだ。
そもそも番長が所持している“ペルソナ”においても、元々は同一の存在、とされる“ペルソナ”が別々の個体として存在していたりもする。
それにそもそも、あくまでシャドウあいかは、あいかの内面を現したものであり、その在り方がたまたま“スカンダ”、あるいは“韋駄天族”に合致しただけであり、また、“ペルソナ”はあくまで神や悪魔の似姿でしかなく、所謂“本物”ではなかったりもする。
ただ、神々や悪魔にとっては、本物かどうかはあまり関係ないらしく、また、人にとっては大きな違いである次元の違い、世界の違いもあまり関係ないようである。
キッカケさえあれば、“ペルソナ”も神々や悪魔の記憶を受け継ぐ可能性もあり(シャドウあいかは、パールヴァティーとの邂逅をキッカケとして、その記憶を呼び覚ましてしまったようである。)、そしてそれによって、更なる能力に覚醒する恐れもあるのであったーーー。
横島の発言の通り、横島らは以前、とある一件で“韋駄天族”と関わりを持った事がある。
そしてその時に、“韋駄天族”のみが会得する事ができる奥義、『超加速』という能力に触れる機会があったのだ。
『超加速』とは、一時的に時の流れを遅らせる術である。
まぁ、分かりやすく言えば、目茶苦茶速く動く事によって相対的に相手が認識する暇もなく動く事ができる術であり、一種の瞬間移動のような移動が可能なのである。
ただし、その為には大量のエネルギーを消費する為に連続使用ができない、という弱点がある。
(もっとも、その時に戦った悪玉の“韋駄天族”は、普通に連続使用をしていたのであるが。)
また、元々は“韋駄天族”の技ではあるが、小竜姫や敵対していたメドーサも使う事ができたのである。
さて、長々と説明してきたが、その“韋駄天族”の元ネタであるところの“スカンダ”にも、『超加速』が可能だとしたらどうだろうか?
それは、番長達に優位だった状況が振り出しに戻り、いや、むしろシャドウあいかに圧倒的に有利な状況になる事を意味するのであったーーー。
・・・
シャドウあいかは、パールヴァティーの説得に反発し、番長達に傾きかけた状況が変わる。
そして『超加速』を発動させたのであった。
何故シャドウあいかがそんな技に目覚めたかと言うと、パールヴァティーから逃げる為である。
横島が語った通り、“スカンダ”はパールヴァティーの重い母親の愛情に辟易していたのである。
それ故に、誰よりも速く、どこまでも遠く、“逃げたい”という一心でその術を無意識の内に会得してしまったのであった。
まぁ、先程も語った通り、“韋駄天族”に可能ならば元ネタである“スカンダ”にも可能だった、と言う事である。
しかし、そんな神々や悪魔の理不尽さに巻き込まれた番長達はたまったものではなかったのだがーーー。
番長side
「ガハッ!!」「グッ!!」「あべしっ!」「グハッ!!」
「ど、どうしたんだ、オメェらっ!!」
シャドウあいかとパールヴァティーの親子げんかを端から見ていたハズの俺達は、突然吹き飛ばされていた。
不思議な事に、会話に加わっていた横島とあいかは無事であったが。(おそらく、横島がシールドか何かであいかを保護していたのであろう。)
幸いな事に、それで倒れるほどのダメージではなかったが、しかし流石に無視できるほどのダメージでもない。
それに、集中力が途切れてしまったのか、顕現させていたパールヴァティーも強制的に送還されてしまったようである。
「!!??・・・アハ、アハハハハッ!!コレハイイッ!!口ウルサイヤツモ消エ去ッタシ、アンタラヲ一方的ニ痛メツケル方法ニモ目覚メタノカッ!!!」
謎の攻撃に戸惑っていると、シャドウあいかは何かに納得したようにそう叫んでいた。
・・・マズい。
幸い、オート系のバフのおかげか、思ったほどのダメージではないものの、これが続けられれば、当然ダメージは蓄積してしまう。
それに、オート系のバフは、時間経過によってその効果を失ってしまうのだ。
仮にこの攻撃の正体が分からぬまま、バフが切れてしまったら、一気に劣勢に立たされる事となる。
「こい、パールヴァティー!」
「サセナイワヨォ!!」
「グッ・・・!!!」
とりあえず俺は、回復も兼ねてもう一度パールヴァティーを召喚しようとする。
しかし、流石にそれは、シャドウあいかにとっても嫌な事だったのか、謎の攻撃によって俺の行動がキャンセルされた。
「・・・まさかっ!?『超加速』かっ・・・!!??」
「・・・って、何ですか?横島さん?」
「ああ、えっと『超加速』ってのは一時的に時の流れを遅らせる術の事で、韋駄天族の専売特許のような技の事だよ。簡単に言えば、目茶苦茶速く動く事で、相手が認識する暇もなく一方的に攻撃が可能な技の事だな。」
「・・・って事は、所謂防御無視の貫通攻撃、って事ですか?」
「あれ?結構詳しいな。その通り。ただ、エネルギー消費が激しくて、連続使用できない、っていう弱点があるし、同じ『超加速』の使い手なら対抗手段もあるんだけど・・・。」
「・・・もしかして、鳴上くん達がピンチなのでは?」
「・・・。」
横島とあいかのそんな会話が遠巻きに俺達にも聞こえてくる。
『超加速』か・・・。
そういえば、小竜姫さまに見せてもらった事があったが、これに対抗するのは至難の業だ。
さて、どうするか・・・。
「マズいですね・・・。このままでは、一方的にやられてしまいます。」
「っつっても、攻撃だけじゃなく、こっちの攻撃も当たらない可能性が高いだろ?攻撃できなきゃ、相手を倒す事もできんぞ。」
「雪之丞の言う通りだな・・・。どうにか攻略の糸口を見付けないと。」
「・・・わっしに任せてくれませんかノー。試したい事があるんですジャー。」
「タイガー?」
「耳を貸してほしいんジャ。」
「アラアラ、何ノ相談カシラァ〜?私モ混ゼテホシイワァ〜!!」
番長達が相談事をしている隙に、シャドウあいかは再び『超加速』で攻撃を仕掛ける。
術が発動すると、シャドウあいか以外のその場にいる人物達はその動きを止める。
もちろん、本当に時が止まっている訳ではなく、わずかではあるが番長達は動いている。
しかし、加速状態に入っているシャドウあいかにとっては止まった的のようなもので、その状態では回避行動も防御行動も起こせないので、結果シャドウあいかの攻撃だけが一方的に番長達に届く、という訳だ。
これに対抗する為には、番長達も同じく加速状態に入るしかないが、残念ながらそれができる可能性があるのは、この場では『
(他にも、龍神の武具を借りる事で、『超加速』を使う事は可能なのだが、当然普段から準備してあるものではないので、ここでは意味のない事であろう。)
実質的にあいかを守っており、更には退却の事を鑑みれば、横島を温存しておくしかない。
つまり、ある種正規の手段ではなく、別の方法で『
「ウフフゥ〜。一瞬デ終ワラセハシナイワァ〜。ジワジワトナブリ殺シニシテアゲルワァァァ〜〜〜!!」
サディスティックな笑みを浮かべ、シャドウあいかは誰に聞かせるでもない言葉を呟いた。
もっとも、本来ならばいくら優位になったと言えど、番長達が危険な存在である事には変わりない。
故に、決められる時にさっさと決めてしまうのが戦いの基本であるのだが、元が“スカンダ”という軍神であっても、あくまであいかの見たくない部分、内面の悪い部分の誇張された存在であるシャドウあいかは、所謂戦いの素人でもあった。
それ故に、変に相手を痛め付ける事にこだわっており(ここら辺は、あいかの嫉妬心やストレスから来るものなのかもしれないが)、一気に戦闘を決する事をおろそかにしてしまったのである。
そこに、付け入る隙があった。
先程の焼き増しのように、番長らを一方的に殴り飛ばしたシャドウあいか。
「エッ・・・!?」
しかし、何故か先程とは違い、手応えがなかった。
当然ながら、加速状態はずっとは続けていられない。
もちろん、小竜姫らのように、加速状態を維持しながら戦う事も可能だが、その場合は、横島の言う通りエネルギー消費が更に激しくなるのだ。
シャドウあいかが『超加速』の連続使用を可能にしているのは、霊格としては小竜姫と同等レベルであるとは言えど、あくまで攻撃の“入り”と“抜き”の一瞬だけ使用しているからである。
故に、その事に混乱しつつも、加速状態が解除されてしまう。
「・・・と、言う訳デスジャー。」
「なるほど。やってみる価値はあるな・・・。」
「・・・と、言うか、何か風が通り過ぎませんでした?」
「・・・もしや、シャドウあいかが『超加速』を使った後では?」
「・・・だとしたら、タイガーの策はハマる可能性が高いな。」
加速状態が解けると、止まっていた番長らは、先程の続きの作戦会議を再開していた。
一通りの作戦会議が終わってしまったようで、シャドウあいかの妨害は無駄足に終わってしまったようであるが、しかし彼女も、先程の攻撃の失敗や番長らが無傷で立っていた事にますます混乱してしまう。
「イッタイ、ドウイウ事ダッ・・・!?」
そう呟きつつ、シャドウあいかは再び『超加速』を刊行した。
ピタッーーー!
再び動きを止めた番長達を、今度は冷静に観察するシャドウあいか。
そして、先程の違和感の正体にようやく気が付いたのであった。
「・・・ソウカッ!“幻惑”ッ・・・!!!」
それは、タイガーの
これは、先程戦った大型シャドウにも有効な手段であった。
つまり、先程のシャドウあいかは、タイガーが作り出した番長達の分身を攻撃したに過ぎないのである。
当然ながらそれは本物ではないので、手応えもないし、番長達にダメージも通らないのである。
分かってしまえば何て事はないが、しかし分からなければ、延々と幻影を攻撃し続ける事となる。
それは、いくらかなりの霊格を誇るシャドウあいかと言えど、無駄に消耗させられるところであったのである。
しかし、
「“ネタ”ガ分カッチャエバ、何テ事ハナイワッ!次ハ、確実ニ仕留メテアゲルッ!!」
そう。
こうした搦め手は、“ネタ”が分かってしまうと脆い部分も存在する。
少なくとも、『超加速』によって、一時的に相手の時を(擬似的に)止められるシャドウあいかにとっては、己の優位性を損なう事ではなかったのであった。
シャドウあいかは勝利を確信し、そのターンの『超加速』を終了する。
だが、このわずかなタイムラグが、シャドウあいかにとって致命的な隙となってしまう。
パッーーー!
再び通常状態に戻ったところで、間髪入れずに番長達が動き出した。
「幻影投射、最大出力っーーー!!!」
「エッ・・・!?」
確かに『超加速』は、非常に有用な技である。
しかし、その連続使用には、実はわずかなインターバルが必要なのである。
もちろん、先程も述べた通り、小竜姫やメドーサのように、かなり長い期間加速状態を続ける事もできるのであるが(もちろん、その為には更なるエネルギー消費が必須となるが)、残念ながらシャドウあいかには、短期間しか加速状態を続けられないという弱点が存在した。
故に、一回使用→終了すると、ここにわずかなインターバルを挟まなければ再び使用する事ができないのであった。
その間に、タイガーが次なる一手を繰り出してきた。
今度は、分身などではなく、視界全てが真っ暗になってしまったのである。
もちろん、これも幻惑の一瞬だ。
本当に周囲が暗くなってしまった訳ではない。
しかし、シャドウあいかは、これによって視界の一切が閉ざされてしまった訳である。
もっとも、仮にシャドウあいかが、所謂“心眼”の使い手であればこれも大した問題はなかったのであるが、先程も述べた通り、あくまで彼女は、強い力を持ってはいるが、戦いの素人でしかないのである。
人間であれば、視覚が重要なのは今更語るまでもないだろう。
そして、シャドウとは言えど、シャドウあいかにとっても、この“見えない”という状況は、非常に不利益な状況であった。
少なくとも、再び『超加速』を使ったとしても、そもそも攻撃すべき対象がどこにいるかも分からないのであるから、ただの無駄打ちに終わってしまう。
シャドウあいかが『超加速』の連続使用が可能といっても、やはり使えば使うほど霊力を消費する訳であるから、いくら小竜姫クラスの霊格を持っていても、いずれは霊力が尽きてしまう訳で。
「・・・マサカ、私ノ力ヲ消費サセル狙イカッ!?」
シャドウあいかは、そう判断したが、もちろんそれは、不正解である。
あくまでシャドウあいかの視界を閉ざしたのは、反撃に転ずる為の一歩に過ぎないからである。
タイガーの
例を挙げると、以前タイガー(とエミ)と対決した美神(とおキヌ)は、タイガーらの策に見事にハマり、幻惑を見させられていた。
しかし、タイガーサイドには、通常の空間が見えていたので、一方的に攻撃する事が可能であったのである。
これと同様に、今現在も、シャドウあいかには真っ暗な空間が広がっている様に見えていても、番長達には先程の空間が広がっているので、幻惑を見ている=ろくに反撃も出来ない状況であるシャドウあいかは、まさに良い的な訳であったーーー。
・・・
番長side
「ビンゴッ!」
「タイガーの策が、上手く行きましたねっ!!」
「今がチャンスですジャ!!」
「この機会を逃せば、次のチャンスはもう訪れないかもしれないぞっ!!!」
「分かってるさ、鳴上っ!温存はなしだ!!ありったけの霊力をぶち込んでやるぜっ!!!」
動きを止めたシャドウあいかを確認した俺達は、短くそう確認し合う。
『超加速』がむやみに使えない今が、もしかしたらラストチャンスかもしれないからである。
少なくとも、タイガーの
これほどの術儀を使った以上、霊力の消耗は激しいだろうからな。
「みんな、俺に波動を送ってくれっ!!」
「「「っ!!!」」」
雪之丞がそう言うと、俺達は瞬時に彼が何を言いたいかを察した。
ここで下手に全員で攻めるより、俺達の中で一番攻撃力の高い雪之丞に力を集め、一気に決めきってしまう、と言う事であった。
即座に俺達は雪之丞に霊波を送る。
可能な限り出力を上げて。
「キタキタキタ〜〜〜!!」
その結果、まるでエフェクトのように雪之丞の身体が発光し始める。
人間に耐えられる限界ギリギリの霊力が、雪之丞の身に一身に集まっているのである。
「今ですっ!」
「いけぇっ!!」
「おおっ!!」
「雪之丞っ!援護するっ!こい、ベルゼブブッ!」
カッーーー!
俺は、最後の力を振り絞り、ベルゼブブを召喚した。
ベルゼブブは貴重な飛行系の“ペルソナ”であり、しかもかなりの大型でもある。
先程の大型シャドウとの一戦を鑑みれば、ベルゼブブをカタパルト代わりにする事で、雪之丞の攻撃力を更に高める事が可能だろう。
「サンキュッ!」
雪之丞も、瞬時に俺の狙いに気が付いたらしく、見た目的にはかなり気持ち悪いが、迷う事なくベルゼブブの肩に乗った。
ブーンッーーー!!
耳障りな飛行音と共に、瞬時に高度を上げたベルゼブブ。
そして、
「宿主の友人よ。ゆくぞっ!」
「応っ!!」
俺の意識と繋がっているベルゼブブは、俺の思考を読み取り、雪之丞をシャドウあいかに向かってぶん投げる。
勢いや位置エネルギーなども加わって、まさに申し分ない攻撃力が期待できるだろう。
「うおぉぉぉぉっーーー!!!」
雪之丞はライ◯ーキックの体勢に入った。
「クソガァァァッーーー!!!」
が、最後の抵抗とばかりに、シャドウあいかは、見えない中で周囲に目茶苦茶に攻撃をし始める。
が、残念ながら、流石に頭の上はおろそかになっていたのか、それは雪之丞の攻撃を阻むものではなかったのである。
チュドーンッーーー!!!
まるで、ミサイルの着弾のような衝撃の後、視界が砂埃に包まれた。
「どうだっ・・・!?」
「やったか・・・!?」
まるでフラグのようなセリフを吐いてしまう俺達であったが、しかし、それは全く問題とならなかった。
何故ならば、視界が晴れてきて、最初に目に入った光景は、シャドウあいかの胴体に広がっている大きな穴だったからである。
「・・・成敗っ!!!」
「イヤァァァッーーー!!!」
雪之丞の決めポーズと共に、断末魔の悲鳴を上げて爆散するシャドウあいか。
「勝ちましたね・・・!」
「わっしらの勝利ですケンノー!」
「ああ・・・。」
それを見た俺達は、戦闘の終わりを感じ取っていた。
・・・だが、これまでの経験から、俺はまだ話は終わっていないだろう事も、同時に感じていたのであったーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。