P4GS   作:笠井裕二

67 / 103

続きです。


i'll Face Myself

 

・・・

 

あいかside

 

「終わった、か・・・。」

 

私の隣で、横島さんがそう呟いた。

 

私も、同じく決着がついた事は感じながらも、いまだに自分の目の前で起こった事を理解できていなかった。

 

それはそうだろう。

確かに魔鈴さんとの出会いで、この世には不思議な力を操る存在もいると知ってはいたが、しかし、それが自分の知り合い、それも、つい最近まで自分と同じ学び舎で学んでいた鳴上くんもそうだと分かったからである。

 

それに、自分そっくりの存在が現れて、しかも鳴上くん達と戦っていた事も私の混乱に拍車をかける。

 

「・・・で、あいかちゃんは、どうするんだ?」

「・・・えっ・・・?」

 

突然横島さんからそう問いかけられて、私は間の抜けた返事を返していた。

 

「鳴上達が戦ってる間、軽く説明しただろ?認めたくないだろーけど、あのあいかちゃんそっくりな“ドッペルゲンガー”、いや、鳴上が言うには“シャドウ”か。は、間違いなくあいかちゃんの一部なんだよ。」

「っ!!!」

 

改めて、私はその事実に衝撃を受けていた。

 

認めたくない。

正直な感想がそれだった。

しかし、一方で、妙に納得している自分も同時に存在していた。

 

周囲からは浮世離れしていて、悩みなどなさそうに見えても、やはり私も一人の女の子だ。

故に、注目されたいとか、憧れや嫉妬心など、そういった感情とも無縁ではないのだから。

 

「ま、っつっても、鳴上が言うには、あくまで彼女はあいかちゃんの心の負の側面をあえて誇張してるらしーから、全部が全部、キミに当てはまるワケじゃないみたいだけどさ。」

「・・・そうなんですか?」

 

フォローするような横島さんのセリフに、私は正直ホッとしていた。

 

「それに、そういう悪い側面が全て悪い、って事もない。俺なんて、バカでスケベだけど、その“煩悩”ってのが、俺の霊力のもととなってたりするしな。良い言い方や専門的に言えば、“どスケベ”ってのは、“精力”や“生命力”の象徴でもあるから、生物にとっちゃ非常に重要な要素なのさ。ま、あんまり誇れる事でもないんだけどさー。」

「・・・。」

 

ナハハ、と照れたように笑う横島さんは、案外可愛らしい印象を受ける。

 

「ま、つまり何が言いたいかってーと、良い部分も悪い部分も含めて全部“自分”、ってヤツなのさ。もちろん、それから目を背ける事も別に悪いこっちゃねーけど、それって自分の一部を捨てる、って事でもある。ま、どっちにせよ、決めるのはあいかちゃん自身だけどな。」

「・・・。」

 

そう締めくくった横島さんは、私から視線をそらし、鳴上くん達の方に目を向けた。

 

「お〜う、お疲れぇ〜。」

「横島もな。あいかの護衛、助かったよ。」

「なーに、何てこたぁねぇ〜よ。ほとんどこっちには、攻撃は()()()()()()()()()()()。」

「・・・え?」

 

何気ない二人の会話に、しかし私は耳を疑った。

 

確かに、いまだに目の前で起こった事は信じられない事ではあったが、しかし、あくまで戦っていたのは鳴上くん達であり、私と横島さんはただの傍観者だと思い込んでいたのである。

 

「ま、気が付かないのも無理はない。横島は、こう見えて所謂“達人”、みたいなものなんだ。普段神様に稽古をつけてもらっているからな。少なくとも、人間の中では最上位の使い手なのさ。」

「それにコイツ、遠隔操作で“サイキックソーサー”を操ってシャドウの攻撃を弾いていたからな。」

「ナハハ・・・。」

 

やはり私は、まだまだ人を見る目が養われていないのかもしれない。

私の印象では、横島さんはこの中で一番弱いと思い込んでいたが、その実、多分この中で一番強いのかもしれない。

少なくとも鳴上くんが信頼して、私の側に置いたところからも、それが分かった。

 

「・・・ところで、彼女、どうしますか?」

「とりあえず、さっきみたいな敵意は感じないケンノー。」

 

そう言うと、ピートさんとタイガーさんは、先程まで怪物となって暴れまわっていた私のそっくりさんを見据えた。

 

「ここから先は、あいか次第だ。少なくとも、力を使い果たしたみたいだから、今は大人しくしているよ。ただ、あいかの選択次第では、もしかしたらまた暴れる可能性もあるがな。」

「「「「・・・。」」」」

 

鳴上くんのセリフに、みんなが一斉に私を見る。

 

分かっている。

いまだに混乱の中にいるものの、先程は私の拒絶によって彼女は暴走をした事を。

 

正直、まだ受け入れられない部分も存在するが、しかし、先程の横島さんのセリフを思い出して、私はこう言った。

 

「彼女と対話、してみます。」

「「「「「・・・。」」」」」

 

私のセリフに、みんなはコクリと頷いた。

 

・・・

 

番長side

 

「あ〜あ、やられちゃったわぁ〜。まったく、ヤになっちゃう。」

「・・・気は済んだ?」

 

俺達が見守る中、あいかはシャドウあいかと対峙していた。

 

横島に何か言われたのか、あいかは非常に落ち着いた様子であった。

 

「ま、ね。力を失っちゃったし、今の状況じゃ、鳴上くんを殺す事なんてできそうにないしねぇ〜。」

「・・・そう。」

 

・・・分かってはいても、あいかのそっくりさんからそんな言葉が出てくるのは、俺にとっては少しばかりツラい。

心の奥底では、俺に対する否定的な感情があいかの中に存在する、という事だからである。

 

「・・・さっきは思わず否定しちゃったけど、私はアナタで、アナタは私、なんだね・・・。」

「っ!!!」

 

俺の仲間達同様、あいかは自身のシャドウを受け入れる発言をする。

 

俺も経験のある事ではあるが、自分でも見たくない部分を肯定する事は誰にでもできる事ではない。

やはり、あいかは強い()である。

 

他人(ひと)から見れば、私は飄々として浮世離れしてるように見えるかもしれないけど、本当の私は、人から注目されたい気持ちもあるし、自分の“世界”を、価値観を壊した鳴上くんに、憧れと同時に、嫉妬心もあったんだ、と思う。・・・ま、だからって、鳴上くんを殺したいとか、ちょっと拡大解釈過ぎるけどね。」

「・・ふふふ。」

 

あいかとシャドウあいかの対話に、俺はあからさまにホッとしていた。

 

・・・なるほど。

まぁ、俺自身はあいかに憧れられるような、嫉妬されるような覚えはないものの、それは結局のところ人それぞれだ。

俺という存在が、あいかにとっては何らかのそうした対象となっていて、それが、やはりシャドウによって拡大解釈された結果、俺を殺す、という結論に行き着いてしまっただけで、あいか自身にはそのつもりはなかった事を知って安堵していたのである。

やはり、知り合いに憎まれていたら、俺としてもツラいものがあるからな。

 

「忘れないで。アナタの心にも、やっぱり闇はあるの。けど、そこから目を背けないで。そして、もう少し、自分の心に素直になっても良いのよ。だって、アナタの人生は、アナタだけのものなんだから、ね。」

「・・・うん。」

「・・・。」

 

先程までの蠱惑的な微笑みとも違う、眩しい笑顔を浮かべて、シャドウあいかは光の粒子となった。

 

自分自身と向き合える強い心が、“力”へと変わる・・・

 

あいかは、もう一人の自分・・・

 

困難に立ち向かう為の人格の鎧

ペルソナ“スカンダ”を手に入れた!

 

「・・・ふぅ。」

 

ペルソナを手に入れた瞬間、あいかはその場に座り込んでしまう。

 

「大丈夫か、あいか?」

 

俺達はあいかに駆け寄り、そう声をかける。

 

「うん。ちょっと、疲れちゃっただけ。」

 

あいかは、多少の疲労こそ見えるものの、その表情はどこか晴れやかであった。

 

「で、ヤツは結局どうなったんだ?」

 

雪之丞がそう聞いてくる。

結局のところ、詳しい事情も説明しないまま、彼らを巻き込んでしまったからな。

ま、横島には、ある程度“ペルソナ”や“マヨナカテレビ”の事を語ってはいたのだが。

 

「あいかが受け入れた事であいかの心の中に還っていったよ。彼女の“ペルソナ”としてな。」

「ほーん・・・?」

「それなら、とりあえず一件落着、と言ったところですね。」

「ああ。」

「なら、こんなところに長居は無用だな。さっさと帰ろうぜ。」

「そうだな。横島、頼めるか?あいかを休ませなければならないしな。」

「オーケー。やっぱり、魔鈴さんは間に合わなかったなー。」

 

横島は、待ってましたとばかりに掌に“文珠(もんじゅ)”を取り出した。

 

「みんな、俺に近寄ってくれ。いくぞ、『脱』『出』!」

 

横島がそう叫ぶと、俺達の周囲が歪んだような感覚に陥る。

それは、“マヨナカテレビ”では散々体験した、アイテムや魔法によるダンジョン内から脱出した時の感覚に似ていた。

 

もっとも横島のそれは、単純な建物内からの脱出に留まらず、“異空間”そのものからの脱出ではあったが。

 

俺達は気が付くと、先程まで食事を楽しんでいた魔鈴さんのお店のパーティールームに立っていたのである。

そこには、不可思議な機械を装着していた魔鈴さんが座っていた。

 

彼女は、俺達やあいかの存在を確認すると、泣きそうな表情であいかを抱きしめたのであったーーー。

 

・・・

 

道化師side

 

「なるほど・・・。そんな事があったんだねぇ〜。」

「ああ。」

 

無事に現実世界に戻ってきた俺達は、その後疲労によって倒れたあいかちゃんを魔鈴さんに任せて解散と相成った。

色々と気になる事はあるものの、それはあいかちゃんが回復してから、という事で。

 

んで、妙神山に戻った俺と鳴上は、ちょうど戻って来ていたイザナギさまも含めて、師匠や小竜姫さまにも今回の一連の騒動を説明していたのであった。

 

「結論から言えば、あいかくんがこっちの世界(GS世界)にやって来てしまった遠因は、間違いなくボクの責任だろうね。」

「お主と鳴上が、“世界”を超えた影響、か・・・。」

「そ。ま、普通ならそんな事にはならないんだけど、彼女、お家の手伝いで、あちこちを飛び回ってるからねぇ〜。それでも普通なら、“次元の狭間”に陥る事などありえないのだけど、彼女の出前っぷりを実際に知っている悠くんなら、ありえなくはない、と思うだろう?」

「・・・確かに。」

 

俺には何を言ってるのか良く分からんが、鳴上が大真面目に頷いた以上、あいかちゃんはかなり常識では推し量れない()なのかもしれんな・・・。

 

「しかし、では何故、“シャドウ”が現れてしまったのでしょうか?」

「さあ?悠くん達の話から推察するに、おそらく偶然の産物だろうけどね。魔鈴くんがたまたま開いていた“異世界”の存在。あいかくん自身は知らなかったものの、“ペルソナ使い”ともそれなりに交流しており、彼女自身、“次元”を超えた事で異能力、いや霊能力に目覚めかけていた事。更には、あいかくんのコンプレックスの源でもあり、強力な“ペルソナ使い”であり、今や霊能力者でもある悠くんとの再会などなど。数あるピースが変な形でハマっちゃったんじゃないかな?」

「・・・つまり、イザナギさま的には、他には“シャドウ”が発生する可能性は低い、と?」

「多分ね。そもそもこちらの世界(GS世界)では、“ペルソナ使い”が誕生しにくい世界だと思うよ。妖怪や悪霊、神魔族がそこかしこに存在する世界だからね。故に、あくまで“異世界”、“精神世界”や“異空間”にのみ存在する“シャドウ”や、そこを主戦場にする“ペルソナ使い”は、活躍の幅が限定されてしまうからね。もちろん、それに類似した“能力者”がいたとしても逆に不思議ではないけど、現実世界ではその“能力”が制限させる中では、GSとしては活躍しにくいだろうからね。」

「・・・なるほど。」

「ま、確かにあんまり気にせんでも良いじゃろう。仮にナギの読みが間違っとったとしても、それでも“悪霊”が発生するよりかは確率は低そうじゃ。それに、今回は鳴上もおったが、GSの力が“シャドウ”にも有効じゃった以上、倒せん敵ではないだろうしの。」

「・・・。」

「良いか、小竜姫よ。お主はまだまだ若く、正義感に溢れた女子(おなご)じゃし、神族の在り方としては、人間に寄り添うモンじゃが、何でもかんでも助けたら良いというモンでもないのじゃよ。人間の問題は、あくまで人間の手でカタを付けなければならん。それを、ゆめゆめ忘れるでないぞ?」

「・・・はい。」

 

師匠の言葉に、小竜姫さまはしぶしぶと頷いた。

ま、小竜姫さまは結構人間に近い位置にいるし、彼女の性格から言えば感情移入してしまう事もあるかもしれないが、彼女はあくまで“神族”だし、また“神族”が絶対的に人間の味方である訳でもないからなー。

これに関しては、多分師匠の言ってる事の方が正しいのだろう。

いや、知らんけども。

 

「・・・話が逸れてしまったね。で、あいかくんの今後について何だけど・・・。」

「今後も何もないだろう?彼女は俺とは違い、あくまで偶然こちらの世界(GS世界)に迷い込んでしまったんだから、速やかに元の世界に帰すのが当然では?親御さん達も心配しているだろうし。」

「悠くんの意見はもっとも何だけど、ところがそうもいかないんだ。彼女は、“ペルソナ能力”に目覚めてしまったからね。」

 

師匠と小竜姫さまのシリアスな話から一転して、イザナギさまがそんな事を言い出した。

 

「何故だ?確かにあいかが“ペルソナ能力”に目覚めたのは否定しないが、しかしそれは、陽介達も同じ事だろう。」

「そうなんだけど、そもそも何でキミがこちらの世界(GS世界)にやって来る事となったのかを思い出して欲しいな。」

「・・・?」

 

イザナギさまの言葉に、鳴上は端から見ても分かっていない表情で頭をひねっていた。

 

「お主の“ペルソナ能力”、正確に言えば、お主に宿ったナギの存在を欲する組織が存在するから、じゃったかのぅ。」

「そういや、そんな事言ってたっすねー。」

「そう。すでにボクは、ある程度彼らの正体に気付いているが、それはまたおいおい話すとして、つまりはキミがボクを現世に呼び戻してしまった事が狙われる事となった要因だ。で、ボク達はいち早くそれを察知して、こちらの世界(GS世界)に避難した訳だよね?」

「・・・そうだったな。」

「で、当然それは、向こうもすでに承知している。そこで今度は、キミを呼び戻す為に、人質、つまりは菜々子くんや遼太郎くん、そしてキミの仲間達が狙われる可能性を考えた。」

「けどそれは、マリーの存在によって阻止できるんじゃないのか?」

「ここまでは、ね。では仮に、このままあいかくんを元の世界に戻したとして、一体彼女の身に何が起こると思う?」

「あっ・・・!」

「・・・もしかして、あいかちゃんもその連中から狙われる可能性がある?」

「そう。彼らにとっては、“ペルソナ能力”、つまりは“霊能力”を持っている事自体、非常に価値がある事なんだ。そして彼女は、陽介くん達とはまた別の立場でキミとの関わりがある。もちろん、マリーに庇護して貰う事は可能かもしれないけど、お家の事もあって、色々と飛び回らなければならない事になるだろうし、そもそも彼女は“ペルソナ能力”を、陽介くん達ほどまだまだ上手くは扱えない。“マヨナカテレビ”での経験もないから、実戦経験もない訳だしね。」

「・・・なるほど。」

 

戦略面から考えれば、相手の弱点をつくのはある種当たり前の方法だ。

あいかちゃんと鳴上の関係など、調べればすぐに分かる事だし、相手が何らかの能力者だった場合、あいかちゃんの身に変化があった事などすぐに看破してしまう事だろう。

 

つまり、期せずしてあいかちゃんは、“ペルソナ能力”を手に入れてしまったが為に変な連中に狙われる可能性が出てきてしまった、という訳か・・・。

 

「つまり、イザナギさま的にはこのまま彼女を元の世界に戻すのは得策ではない、と?」

「そ。ま、ボクらが遠因になってる訳だから心苦しい部分もあるんだけど、しかし、だからって何も考えずに元の世界に戻してしまって、あいかくんの身に何かあったら、それこそ申し訳がないからねー。」

「・・・確かに。」

「もちろん、彼女の意思は尊重するつもりだけど、とりあえずボク的には、彼女には悠くんと同じく、しばらくはこちらの世界(GS世界)に留まってもらうのがベストだと考えている。」

「それが良いじゃろうな。」

 

イザナギさまの言葉に師匠も同意する。

 

「しかし、問題はどうやって彼女を説得するか、だな・・・。」

「その辺はボクに任せてくれよ。何、悪いようにはしないさ。」

 

イザナギさまがそう締めくくり、その話はイザナギさまに一任される事となった。

・・・若干、嫌な予感もしないでもなかったがーーー。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。