P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


Step by Step 4

 

・・・

 

???side

 

陽介達が、遼太郎が、美姫や貴子が未来に向かって突き進んで行く中、それでも変わらない、変われなかった者達もいた。

 

「ねぇ、お願いがあるんだけど・・・。」

「なんだよ?もう一回戦か??」

 

下卑た笑いを浮かべる男に、女は苦笑まじりにそれを否定した。

 

「それはまた今度。話を聞いてよ。」

「へいへい。」

 

そこは、所謂“ラブホテル”であった。

そこには、ベッドに横たわる二人の裸の男女が存在していたのであった。

 

男の方は、全身に様々なタトゥーを施した、いかにもなチンピラである。

この男、壊滅した『WF(ホワイトファング)』の生き残りであった。

 

そして、もう片方の女は、見た目はかなり整った容姿をしているものの、普通の高校生のような感じであった。

少なくとも、一見半グレと付き合うようなタイプには見えない事だろう。

 

「実は、さ。ある女を裏に沈めて欲しいんだよね。」

「あん・・・?」

 

物騒な事を言い出した女に、しかし男の方は、そういう事は日常茶飯事なのか、さして驚いた風でもなく、単純に訝しげな表情を女に向ける。

 

「オメェも知ってんだろ?チームが潰れちまってんだよ。今はあんまり派手に動けねぇ。」

 

男は、やれやれと事実を告げる。

 

そうなのだ。

陽介らの活躍によって、『WF(ホワイトファング)』は実質的には壊滅に追い込まれている。

彼の仲間の多くも、警察によって逮捕されていた。

 

その中にあって、彼は悪運が強かったのか、はたまたチームの中では大した影響力を持たなかったからか、どうにかそうした事態からは回避していた。

 

だが、当然後ろ盾を失った彼は、本当にただのチンピラに過ぎなくなってしまっている。

しかも、大捕物があったばかりのこの街で、時を置かずして再び派手に動き出せば、今度こそ彼も逮捕されてしまう事だろう。

 

それが分かっている彼は、今は大人しくしていたのである。

 

「それは分かってるよ。けど、アンタならどうにかなるんじゃない?」

「・・・。」

 

一方の女は、一応は理解を示しながらも、しかし譲らなかったーーー。

 

 

この女、実は美姫や貴子のクラスメイトである。

学校ではクラスの女子の中心的存在であり、成績も素行も所謂“優等生”であり、先生方からの信頼も厚かったのである。

しかしその実、悪い男と付き合いつつ、あまり褒められた事ではない事も仕出かしていた。

 

彼女を一言で表せば、自尊心の塊、であろう。

 

彼女は幼い頃より人気者であった。

常にクラスの中心的存在であり、近所でも評判の才女としてチヤホヤされてきたのである。

 

しかしそれが故に、歪んだ自尊心が今の彼女を形作ってしまう。

自分が一番である事が当然であり、自分を脅かす存在などいてはいけないのである、と。

 

しかし、そんな彼女を脅かす存在が現れてしまう。

それが市来美姫であった。

 

以前にも言及したかもしれないが、あくまで美姫の夢は歌手になる事であり、その為に、レッスンやバイトに励んでいた。

故に、鍛え上げた歌唱力を持ってはいるが、これは才能と努力によって育まれたものであった。

だが、同時に彼女は、“整った容姿”、という武器も併せ持っていたのである。

 

これは、歌唱力とは違い、もちろん多少の努力をする余地はあっても、生まれ持った才能である事には変わりない。

そして、歌手という、ある意味人に見られる仕事を志望している彼女にとっては、その見た目の良さはプラスの要素となる可能性が高い。

 

しかし、特に女性の世界では、容姿に優れた存在に対する嫉妬心が少なからず存在するものだ。

しかもその女(美姫)は、その美貌で様々な人々を魅力しつつも、(彼女自身は自分の夢を追いかける事に必死で)特に恋愛に興味を示す素振りもないのであった。

これが、女子達の鼻についてしまったのである。

 

言うなれば、“お高くとまっている”と勝手に解釈してしまい、なおかつ美姫自身の人付き合いの悪さも相まって、次第に美姫を快く思わない人々が出てきてしまったのである。

 

彼女もその一人である。

しかも彼女は、先程も述べた通り、今まで周囲からチヤホヤされてきた環境が当たり前であったからこそ、彼女の“世界”、を壊す存在であった市来美姫を敵視するようになっていったのである。

(もちろん、これは彼女の一方的な思い込みと嫉妬心から来た事であり、美姫にはそんなつもりは毛頭ない訳だが。)

 

ただ、彼女は無駄に頭が回るタイプであり、表向きは美姫をどうこうする事はなかった。

所謂“イジメ”などをすれば、いくら隠してもいずれはバレてしまう可能性もあり、今まで築き上げてきた自分のイメージを壊してしまう可能性もある。

自己保身に長けた彼女からしたら、それは悪手でしかなかったのである。

故に、彼女は自身の手を汚す事なく、美姫を排除する方法をずっと考えていたのであった。

 

ここで、少し話は変わるが、この年頃の女性であれば、彼氏持ちである事が一種のステータスになる事もあるだろう。

しかも、少し悪い男と付き合っている、という事が、所謂“大人”である、という誤った認識を持っている事もあるかもしれない。

それ故に彼女は、自身のハクを付ける意味合いで、特に好きでもないこの男に近付いたのであった。

 

いや、彼女の手練手管から言えば、もっと“上”の男を狙う事も可能だった事だろう。

しかし、彼女はここでも保険をかけており、仮に『WF(ホワイトファング)』が潰れたとしても、特に影響がない存在、かつ、自身に波及しないラインギリギリを見極めていたのであった。

 

こうして半グレの彼女、というポジションを手に入れた彼女は、この連中を利用して市来美姫を貶める策を思い付いたのであった。

 

彼女は、美姫が金を必要としている事を知っていた。

もちろん、どうしてそうなのかなど、興味もないので聞き流していが、女子同士のネットワークとは時としてそれだけ凄まじいのである。

 

そして、あくまで親切心から、という(てい)で半グレ連中を紹介したのだ。

 

後は簡単だ。

当然ながら、そんな連中が所謂“上玉”である美姫を放っておく訳もないからである。

あの手この手を使い、美姫を騙して、風俗に沈めるだろう、と考えたのである。

 

そうなれば、目障りな美姫はもはや表には戻ってこれない。

少なくとも、彼女の“世界”、つまり女王の如く君臨している学校に居場所がなくなる、と踏んだのである。

 

彼女の計画は、半分までは上手く行った。

しかし、後一歩、というところで、思わぬ邪魔が入ってしまったのであった。

 

もちろん、これは陽介の事だ。

しかも、そこからは彼女も全く予想だにしない展開の連続であり、あれよあれよという間に、沖奈の街を裏で牛耳っていた『WF(ホワイトファング)』はアッサリと壊滅してしまったのであった。

 

当然、美姫も無事である。

少しの間休んだだけで、彼女もアッサリと学校生活に復帰したのである。

 

予定を狂わされた彼女は大いに焦った。

もちろん、上手く立ち回ったので、彼女の目論見が周囲にバレる事はなかったが、しかし、彼女の一言がキッカケとなって、美姫が危ない目に遭う事となってしまった、という事実は変えられない事である。

 

その結果、それまで彼女を持ち上げていた連中も、妙によそよそしくなってしまったのである。

(まぁ、彼女が美姫をよく思っていない事を何となく察していただけに、この結果が彼女が何か仕出かしたからではないか?、という疑念を生んでしまったからである。

マトモな感性の持ち主ならば、自身も危険な目に遭う可能性を考慮すれば、彼女との付き合いを見直すのは当然の判断であろう。)

つまり、彼女の“王国”もアッサリ崩れ去ったのだ。

 

 

今まで散々チヤホヤされてきた彼女からしたら、それは耐え難い屈辱であった。(もちろん、自業自得ではあるのだが。)

それに、(高々高校生活など後1年未満なのだから)それを耐え忍ぶ、という考えも覚悟も彼女は持ち合わせていなかった。

 

故に、『WF(ホワイトファング)』壊滅からそう間を置かずして、こうして男に泣き付いた、という流れであった。

 

 

「・・・で、俺に何の得があんだよ?」

 

しばし考え込んでいた男は、ポツリとそう呟いた。

女は、“食い付いた”と思いつつ、極力それを表情に出さないように努める。

 

「そいつ、認めるのはしゃくにさわるんだけど、中々上玉なんだよねぇ〜。上手くすりゃ、良い金づるになるかもしれないよ?」

「・・・ほぅ?」

 

自分の言葉に、好色そうな男の表情が少しニヤけたように彼女は感じた。

 

一方の男は、学こそそうあまりない方であったが、こと金の話や女の話に関しては、中々頭の回る人物であった。

 

手段さえ選ばなければ、女を意のままに操る事はそう難しい事ではない。

強姦や脅し、薬漬けと、もちろん犯罪行為ではあるが、これによって、女を己に縛り付ける事ができるからである。

 

実際、『WF(ホワイトファング)』時代は、こうした手段を用いて違法風俗を取り仕切る内の一人であった。

 

が、先程も述べた通り、『WF(ホワイトファング)』が壊滅した現在では、彼にはシノギの方法がないのである。

言うなれば、完全なプー太郎状態なのである。(もちろん、カツアゲとかそうした行為によって、金がない訳でもなかったのであるが。)

 

人は、一度味わってしまった甘い汁に抗う事は難しいものである。

それこそ彼は、『WF(ホワイトファング)』時代は何でも思うがまま、という状態であり、当然ながら今現在の状態を良しとはしていなかったのである。

 

いつか再起を果たしてやる、という無駄にバイタリティがあったのであるが、流石にほとぼりが冷めてから、とも思っていたのである。

 

しかし、わがまま放題に過ごしてきた男に、慎重さや我慢などがそこまで続く訳もない。

更には、人一倍色欲の強い彼が、“上玉の女”、というワードを聞き流す筈もなく、しかもいつもの手段を用いれば、マトモなシノギのない状態の今の彼からしたら、良い金づるが手に入る事でもあった。

 

素早くそう計算した彼は、

 

「・・・詳しく話を聞かせてくれよ。」

 

と興味を示し、女は“落ちた”と思いつつ、

 

「OK。」

 

と言った。

 

・・・

 

「でさー。」

「うんうん。」

「お話中失礼するわ。市来さん。少しよろしいかしら?」

「あっ、加藤さん・・・。」

「・・・ええ。大丈夫だけど。」

 

場面は変わって、ある日の放課後。

 

美姫と貴子が仲良くおしゃべりしている中、例の女、クラスの元・中心人物である加藤詩乃が美姫に声をかける。

 

貴子は、若干気まずそうにしながらも警戒感を示し、周囲からもざわめきが起きる中、美姫は何でもない風に詩乃の誘いに応じた。

 

貴子は目線で“気を付けてね”と訴え、美姫がコクリと頷く中、詩乃と美姫は連れ立って出ていくのであった。

 

 

「本当にごめんさない!」

「・・・えっ?」

 

人気のない場所に移動した二人は、周囲を気にする素振りを見せた後、おもむろに詩乃の謝罪で会話が再開した。

 

「えっと・・・。」

「私の何気ない一言で、貴女を危険な目に遭わせてしまったのでしょう?知らなかったとは言え、私にも一定の責任があるわ。」

「ああ・・・。」

 

美姫は納得した。

貴子も半グレやその後の結末を知っていた以上、詩乃がその事を知っていたとしても不思議な話ではないからである。

 

「本当なら、すぐにでも謝罪するべきだったのかもしれないけど、その、周囲の目が気になってしまって、ね。」

「・・・。」

 

詩乃の言葉に、再び美姫は納得する。

周囲からすれば、詩乃が意図的に美姫を貶めた、と映ったとしても不思議な話ではないからだ。(もちろん、詩乃はそのつもりだったが。)

 

故に、謝罪する機会を慎重にうかがっていた為、今日まで彼女から話しかけられる事がなかったのだ、と。

 

「今更何を言っても言い訳に聞こえてしまうかもしれないけど、本当に私にはそんなつもりはなかったのよ。本当にごめんさない。」

「・・・もういいよ。」

「・・・えっ?」

 

真摯に謝罪をする(と美姫の目には映った)詩乃に、美姫はニコリと笑った。

 

「加藤さんの謝罪を受け入れるわ。私にも悪いところがあったしね。」

「市来さん・・・。ありがとう・・・。」

 

美姫の言葉に涙ぐむ詩乃。

・・・もちろん、全て嘘である。

どうやら彼女には、女優としての才能があるようであった。

 

(一見すれば)わだかまりの解けた二人は、お互いに笑い合う。

そして、しかし、と詩乃が続ける。

 

「けど、言葉だけ、ってのは少し白状に過ぎるわね。市来さん、今日はこれから何か予定はあるかしら?」

「いえ、特に予定はないけれど。」

 

貴子の時にも語ったが、今現在の美姫は家族への配慮もあって、バイトやレッスンをセーブしている。

故に、放課後には時間があったのであった。

 

「それならば私がおごるから、お茶でもしましょう?・・・それに、実は市来さんとはおしゃべりしてみたかったのよね。」

 

貴子と同じような文言に、美姫はすっかり彼女の言葉を信じ込んだようである。

ニコリと笑うと、

 

「喜んで。」

 

と言った。

 

・・・

 

一方その頃、例のチンピラ男、益戸武弥は、とある喫茶店にて詩乃と美姫が来るのを、いまかいまかと待ちわびていた。

 

作戦はこうである。

詩乃が上手い事言って美姫を誘い出す。

そして、美姫がやって来たら拉致してホテルに連れ込む。

 

そこからは、説明するのもはばかれるあれやこれをした後、恥ずかしい写真を撮って美姫を言いなりにする手筈であった。

 

幸いな事に、この喫茶店は、一見オシャレな喫茶店ではあるが、実は裏で『WF(ホワイトファング)』の息のかかった店でもあった。

もちろん、すでに述べた通り、『WF(ホワイトファング)』自体はすでに壊滅した訳だが、当時、散々犯罪の片棒を担がせていた事もあって、それを盾に武弥が“お願い”をしたのであった。

 

残念ながら、一度でも悪い連中に協力してしまえば、最悪一生つきまとわれる事もあるのだ。

悪い連中とは付き合わないのが吉だ。

この店のマスターも、高い授業代を支払ったものである。

 

と、このように、(武弥的には)作戦は完璧であり、よほどのイレギュラーでも発生しない限り、全てが上手くいくーーー、筈だった。

 

しかし、彼らには残念な事に、その日に限って、()()()二人連れがやって来てしまった事で、全ての歯車が狂う事となってしまったのであったーーー。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
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