続きです。
前回は、番長は完璧超人と言いましたが、残念ながら“霊力”という概念については、流石にGS世界の一流どころには劣ります。
というか、物語的にも番長に弱体化してもらわない事には、もうアイツ一人でいいんじゃないかな?、って状況になりかねないので、致し方ない部分ではあるんですがね(笑)。
・・・
番長side
「それでは、改めてルールを確認しておきます。先程も申し上げた通り、最終試験は所謂“障害物競走”となります。この広い六道家の敷地内を、規定のルートを走破し、最終試的にゴール地点に先にゴールした方が勝ちとなります。もちろん、どのようなルートを選んでもらっても結構ですが、ただしこちらが設定した複数のチェックポイントをしっかりと通過して頂かないと、仮にどれだけ素早くゴールしたとしても無効となりますので注意して下さい。それと、これはある意味実戦も想定した試験となりますから、相手に対する妨害なども有りとします。ただし、こちらも注意して頂きたいのですが、あくまで試験内の事でもありますので、相手を殺傷するような事も当然ご法度となります。仮にレギュレーション違反が認められた場合、その時点で失格となりますのでご注意下さい。それと同様に、こちらでも罠などは設置しておりますが、もちろん命を奪うようなものではありません。ただ、場合によっては怪我ぐらいはするかもしれませんので、そちらもあわせてご了承下さい。」
「「・・・。」」
俺と政樹さんは、無言で頷いていた。
昼食後、俺と政樹さんは、改めて
聞く限り単純ではあるものの、その実、結構考えられた内容でもある。
俺は知らないが、案外六道女学院にて実際に組み込まれているカリキュラムなのかもしれないな・・・。
「さて、ここまで聞いて頂いて危険が伴う事はご理解頂けたと思います。それで最終確認なのですが、棄権されるなら今が最後のチャンスですが・・・、いかが致しますか?」
なんて事を考えていたら、
確かに、命の危険はない、との事であるが、その一方で、怪我ぐらいはするかもしれない訳だ。
もちろん、霊能力を扱う以上は、それはある意味当然ではあるが。
しかし、もちろん俺達の意思は決まっていた。
「問題あらへん。さっきも言うた通り、僕は試験に臨むで。」
「俺もです。」
俺達の言葉に
「結構。もちろん、試験途中にリタイヤする事も可能ですので、そちらはご心配なく。もっとも、その時はすでに怪我を負っているかもしれませんがね。それと、冥子お嬢様は心霊治療もできますので、そちらもご心配なく。では、お二方にはチェックポイントの記された地図をお配りします。」
そう言うと、
「試験が終わったら回収させて頂きますので、くれぐれもなくさないで下さいね。まぁ、なくしてしまったら、その時点でチェックポイントが分からなくなってしまう訳でもありますが。」
「了解や。」
「分かりました。」
配りつつ、
確かに、行くべき場所が分からなくなれば、その時点で失格となる可能性が高い、か。
まぁ、一瞬で記憶してしまえばそれも問題ないかもしれないが、流石に俺は、“完全記憶能力”までは持っていないからな。
気をつけよう。
・・・
道化師side
「“障害物競走”かー。何か、運動会を思い出しますねー。」
「確かにね。けどこれが、案外バカにしたものでもないわ。もちろん、学校の運動会はともかく、ね。」
「と、言いますと?」
鳴上が説明を受けている中、遠巻きに眺めていた俺達は、そんなノンキな会話を交わしていた。
もちろん、例のおっさんへの警戒は続けているが、今のところはその気配はない。
「アンタも知っての通り、GSの現場は結構様々よ。見通しのきかない山の中や、ビル群に囲まれた場所とかね。当然、悪霊とか妖怪は、私達の都合の良いようには動いてくれない。となれば、まず相手に接触する為には、“移動”する事が重要になってくるわね。」
「そりゃそーっすねー。まずは相手を見つけない事には、話は始まりませんからねー。」
「そ。けど、さっきも言った通り、奴らはこちらの都合なんかお構いなしよ。普通なら中々行かないような場所にもいる事もあるわ。んで、ちょっと大変だから、行きたくないー、なんて言ってたら、それこそ商売あがったり、でしょ?」
「けっこー美神さんは言っとるよーな気もしますが・・・、あべしっ!!!」
「・・・何か言った?」
「い゛、い゛え゛、な゛に゛も゛・・・。」
「結構。じゃ、話を続けるわね?もちろん、事前に下調べはするし、闇雲に探す訳じゃないけど、しかし、基本的にそうしたスキルを持っとけば、色々と便利なのよ。地図を読み込むスキルだったり、障害物を乗り越える技術だったり、ね。」
「なるほど・・・。確かに。」
「当たり前だけど、GSの実力は何も霊能力が全てではないわ。こうした基本的な技術も、時には重要なのよ。それにこれは、応用の効く技術でもあるわ。相手を追跡する技術って事は、相手から逃げる技術でもある。もちろん、悪霊や妖怪相手では、障害物なんてあってないようなモンだけど、生身のこっちには死活問題だからね。そんなワケで、一口に“障害物競走”って言っても、案外バカにしたモンでもないのよ。実際、六道女学院の授業のカリキュラムには、こうした授業もあるみたいだしねー。もちろん、ここまで大掛かりでもないでしょーし、難易度も高くないでしょうけど。」
「ふぅ〜ん。」
だから“障害物競走”、かー。
そういや、師匠にも“妙神山”内を走らされた事もあったもんなー。
てっきり修業の一環だと思っとったが、そうした意図もあったのかもしれんなー。
ん・・・?
「ちょっと待って下さい。って事は、例のクズ親父が襲撃を仕掛けるのには、絶好のチャンスでもないっすか?」
「あら、気付いたのね。そう。これはある種、悪霊なんかの追跡を想定した訓練の一環を参考にしているから、当然罠や妨害行為が用意されているわ。それに紛れて、襲撃を仕掛けるのは、これはちょうどよいカモフラージュになるでしょうね。」
「あかんじゃないっすかっ!じゃ、冥子ちゃんのお母さんに報告して、即刻競技を中止にしてもらわないとっ・・・!」
「それには及ばないわ。そんな時の為に私達がいるんだからね。競技に紛れて鳴上クンの妨害を試みたのなら、私達で彼を捕縛すれば良いのよ。幸いこっちには、霊的追跡力に優れたコイツらもいる事だし。」
「・・・もしかして、拙者達の事でござろうか?」
「・・・どうりで、勝手についてきたのに美神さんの対応が優しいと思っていたわ。最初から私達を利用するつもりだったのね?」
「そ。ああ、文句は受け付けないわよ。アンタらの飼い主は私なんだし。まぁもっとも、私も鬼じゃないから、仮に上手く事が運んだら、好きなモンを好きなだけ食わせてやるわよ。」
「なぬっ!」
「っ!」
「ナハハ・・・。」
流石美神さん。
この二人の扱い方も心得ている。
報酬に目がくらんだシロとタマモは、俄然やる気を見せ始めていた。
前から思っとったが、お前ら案外安いよなー。
しかしこれで、見鬼くんよりも数倍優れた霊的追跡力を手に入れたに等しいワケだ。
おっさんの命運も、いよいよ尽きようとしとるのかねー。
・・・
番長side
「それでは、位置について、よーいスタートッ!」
などという会話を横島らがしている事はつゆ知らず、俺達の最終試験は幕を開けた。
公平をきす為か、スタート地点は二人同時にスタート。
もっともここからは、チェックポイントさえ通過すれば、どのようなルートを辿っても良いので、行き先はバラバラになる訳だが。
「ほな、お先に失礼するで、鳴上クン。こい、“夜叉丸”!」
「・・・。」
なんて事を考えていると、政樹さんがいきなり“式神”を呼び出した。
以前に見せてもらった冥子さんの“式神”とは違い、政樹さんの“式神”、“夜叉丸”だっけ?、は人間に近しい形態を持っていた。
もっとも、やはり“鬼”、この場合は“夜叉”だろうか?、をベースにしているのか、その保有する霊力量は人間の比ではなかったが。
バッ!
「は、速いっ!」
“夜叉丸”は政樹さんを肩に乗せると、驚異的な跳躍力で障害物、建造物などを飛び越えていった。
やはり“鬼”だからか、人間大の姿をしていても、その身体能力は人間とは比べ物にならない。
早くもスタート地点で、いきなり差をつけられた形となる。
一方の俺はこの時点では“ペルソナ”を召喚していない。
いや、政樹さんに花を持たせるつもりだから、ってのもあるが、元々俺が異世界人って事もあってか、元々持っている霊力量、ってか出力できる量に不安があるからである。
まぁそれでも、マーガレットのスパルタ教育を経て以前に比べたら増しているのだが、やはり
故に考えなしで“ペルソナ”を召喚してしまうと、途中でリタイヤする羽目になってしまうのである。
もちろん、勝つ事が目的ではないのでそれでも良いのかもしれないが、依頼とは別にこれはある意味修業としてはもってこいの状況でもあるから、色々と試してみるのも良いかもしれない。
そんな訳で、“ペルソナ”こそ召喚も憑依もさせていない状況ながら、俺も霊力を纏った状態で駆け出したのであったーーー。
・・・
クズ親父side
「・・・なんや、あの若造。“霊能力者”としてはまだまだやないか・・・。ウチの政樹にどんどんと突き放されとるわ。・・・しかし、何か隠し玉を持っとる可能性もあるか。やはり、仕掛けに乗じて妨害をしとった方がええわな。」
一方、それをどこかで見ていたクズ親父は、ここまで快進撃を続けてきた番長が大きく出遅れた事に拍子抜けしていた。
ただ、すでに番長をただの若造ではないと踏んでいたのか、政樹の勝ちを揺るぎないものとすべく、妨害工作に打って出ようとしていたのであるがーーー。
・・・
道化師side
「っ!!!」
「・・・動いたわっ!」
「ああっ!拙者が言おうとしたのにっ!」
「そんな事はどうでもいいわ!・・・で、あのオッサンはどこへ向かってるの?」
「鳴上どのの先回りをし、罠に乗じて襲撃を仕掛けようとしてるみたいでござる。」
「ふむ。いかにも小物が考えそうな事ね。」
「・・・ただ、一点気になるところもあるわ。」
「それって何だ、タマモ?」
「そもそもその人が動き出すまで、私達の感知能力にも中々引っかからなかったところよ。相当凄腕の人物なのか・・・。」
「そんな感じじゃなかったけどなー。」
「言われてみれば確かに。アンタ達の感知能力はもちろん、六道家のセキュリティを簡単に突破してるのも考えてみればおかしな話ね・・・。内部に協力者がいるのか、あるいは・・・。」
「んなこと、ここでウダウダ考えてもしょーがないっすよ。とっ捕まえちまえば分かる話ですし。」
「ま、そーね。ただ、油断はしないでよ?」
「了解っす!」
「応っ!」
「わかってる。」
「んじゃまぁ、私達もお仕事を始めましょうか。」
そう言うとシロとタマモが先行し、それを追い掛けるように俺達もオッサンの追跡を開始するのだったーーー。
・・・
六道家はびっくりするぐらいの大金持ちである。
それは、超広大な私有地を持つ事からもおわかり頂けると思う。
具体的には、誰が住むんだ、ってほどの広さを誇る豪邸に、無駄に広く何でもある庭、何なら敷地内には大きな湖もあるし、妙な形の自家用クルーザーもあったりする。
以前、横島や番長が訪れたデジャヴーランドに匹敵する規模の私有地を個人で所有している訳である。
それはもう、びっくりするぐらいの大金持ちなのであった。
その広大な敷地内を、規定のチェックポイントを通過しながらゴールを目指すのが今回の最終試験であった。
当然ながら、ただマラソンするだけでも相当な時間を要する事となるが、謎の建造物なら森やら湖ならが点在し、あたかも“障害物”の如く行く手をはばむのである。
もちろん、六道家の面々が住んでいたり、執事さんや
するが、それは言わば迂回路であって、もしゴールまでの早さを競うのであれば、こうした“障害物”を突破する事が最短距離となるのである。
なるほど、“障害物競走”とは、言い得て妙である。
もっともこれらは、当然ながら人間の身体能力だけでは突破する事は困難を極める。
もちろん、霊能力者であれば霊力を活用し、超人的な身体能力を発揮する事が可能なのは以前にも語った通りだが、流石に生身の人間では空を飛ぶ事も壁をすり抜ける事も不可能であるから、難易度としては大して変わらないのである。
ならば、それをできる存在にご登場頂けば良い。
幽霊や悪霊などは実体を持たないので、逆に言えば物理現象から逸脱した存在なのである。
簡単に言えば、空を飛べるのだ。
また、妖怪や悪魔の中には空を飛べる者達もいるし、霊能力者が使役する“鬼”の中にも空を飛べる者達もいる。
残念ながら政樹の“夜叉丸”は、空を飛べる式神ではなかったが、しかしやはり腐っても“鬼”であるから、人間を超越した身体能力を有していた。
それ故に政樹は、“夜叉丸”を呼び出す事によって、通常では不可能に近いこれら“障害物”をものともせずに、最短距離をひた走っていけたのであった。
では、一方の番長はどうかと言うと、もちろん彼の所持している“ペルソナ”の中には、空を飛べる“ペルソナ”も存在する。
存在するのだが、ここで彼の霊力保有量(というか出力できる量)が
下手をすれば、調子よく空の旅を楽しんでいる途中で所謂“霊力切れ”を引き起こし、“ペルソナ”が消えてしまう事もありうるからである。
当然ながら、いくら霊能力者が常人を遥かに超える身体能力を発揮できるといっても、やはり生身である事には変わりないので、飛んでいる最中にその“足場”がなくなれば、墜落である。
もしかしたら、その高度によっては命は助かるかもしれないが、そのダメージは少なくとも軽症では済まないかもしれないのだ。
そうした訳もあって、もちろん今回の件があくまで政樹に花を持たせる為のものである事もあって、番長はここでは“ペルソナ”を召喚も憑依もさせずに、霊力によって強化した身体能力のみでこの競技に挑んでいた訳であるがーーー。
番長side
やはり
初手、いきなり式神を呼び出したのに、全くと言って良いほど疲れを感じさせないからである。
おそらく慣れもあって、俺とは違い効率的な出力方法を独自に体得しているのだろう。
すでに豆粒ほどになった政樹さんの背中を追いかけながら、俺はそんな事を考えていた。
それでもまだ俺が彼の姿を見失っていないのは、これは横島や老師達との修業の成果であろう。
霊力を身体能力の強化にのみ費やす事で、霊力の損耗を最小限に抑えつつ、常人を遥かに超える身体能力を発揮する事が可能だからである。
とは言えど、仮に勝つとなると、一か八か“ペルソナ”を召喚しなければならない。
俺の“ペルソナ”の中には飛行タイプの“ペルソナ”も存在するから、場合によっては一気に形勢を逆転させる事も可能だろう。
ただし、それには若干、いやかなりの不安が残る。
仮に飛行中に“霊力切れ”を起こしたら、俺は地面へと真っ逆さまである。
流石にそれを、ぶっつけ本番で試す勇気はない。
いや、時と場合によってはそうすべき時もあるかもしれないが、少なくとも今はその時ではないし・・・。
そんな訳で、霊力を身体能力強化のみに費やしつつ、(別に演じている訳ではないが)必死に政樹さんを追いかけている、という構図であった。
このまま何事もなければ、まず間違いなく政樹さんの勝利は確定的であろう。
しかし、ここで何故かイレギュラーが発生した。
いや、政樹さんにとってのイレギュラーではない。
俺にとって、である。
美神さんの説明では、この競技が擬似的に悪霊なりを追い掛ける時の状況を想定しているから、これについては納得である。
逃げていたと思ったら、いきなり襲撃なりをされる可能性もあるだろうからな。
それを罠に見立てているのだ。
で、その罠が問題だったのである。
「うおっ!!!」
飛んだり跳ねたりしながら移動していた俺は、古典的な罠である“落とし穴”に見事に引っ掛かっていた。
もちろん、流石にその下に剣山なり命を奪うほどの危ない代物があった訳ではないが、運が悪ければ足をくじくくらいの怪我はするかもしれない。
まぁ俺の場合は、回復手段があるので特に問題はないが、しかし、それは霊力を消耗する事でもある。
急いで“落とし穴”から這い出した俺は、再び競技に復帰したーーー、
「・・・あっ」
と思ったら、今度は巧みなワイヤートラップに引っ掛かる。
何かを引っ張った感覚がしたと思ったら、こちらも古典的な罠であるところの振り子の要領で木が俺に襲い掛かる。
「ぐはっ!!!」
幸いな事に、こちらもダメージは大した事はなかったが、間違いなく時間はロスしている事だろう。
どちらも古典的、かつ子供染みた罠であった。
完全に引っ掛かっている俺が言う事ではないだろうが、引っ掛かっている方がバカみたいである。
・・・こういう役回りは横島の仕事だろうっ!
などと、若干失礼な事を考えながら、何故か俺を狙い撃ちにするかの如き数々の罠に、その後も見事にハマっていたのであったがーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。