続きです。
今回は、特に独自解釈が強めです。
苦手な方はご注意下さい。
・・・
謎の男達から衝撃の内容が語られた。
例の“催眠アプリ”の正体が、その表向きの内容は欲深い者達を引き寄せる為のただの“餌”であり、その本来の目的は、そんな彼らから強制的に霊力を集める装置だったのである。
具体的には、その“催眠アプリ”に隠された真の機能によって、利用者達の脳波のネットワークを形成。
これによって、どんどん霊力を吸い取られてしまうのだ。
(ちなみに、“催眠アプリ”自体には大した効果はないのだが、繋がった脳波のネットワークから霊力を増幅し、利用者自身の霊力が一時的に引き上がる事によって、あたかも本当であるかのような錯覚してしまうのである。
あくまでも“催眠”自体は、利用者の霊力を利用しているのに過ぎないが、これによって、どんどんと依存してしまうのである。)
もちろん、このネットワークは電子的・機械的に繋がっているネットワークであるから、集めた霊力を利用するには特定のデバイスが必要となる。
だが、それさえ持っていれば、その者達から集めた膨大な霊力を扱う事ができるのである。
もちろん、彼らも語っていた通り、元々霊能力者でない者達も、そのネットワークを利用する事さえできれば、一流並みの霊能力者に早変わりする。
これが、番長も受けたゴールデンウィーク明けのGS試験に、異様に一般人の合格者が多かった理由でもあった。
まぁ、何故そんな事をするのかは依然として分かっていないが、では仮に、その利用者が一般人ではなく霊能力者の場合はどうなるのだろうか?
霊力すら満足に扱えない一般人が一流並みの霊能力者になれるのなら、元々霊能力者である者達は、更にとんでもない力を身につける事が可能なのでは?
そうした疑問の実験として、政樹の父親が利用され、そしてその答えは想像以上のものであった。
それは、言わば能力の多様化、であった。
ここで、霊能力の基本的なルールを説明しておこう。
霊能力者が扱う事のできる能力は、基本的には一人につき一つである。
もちろん、一見多様な能力を使っているように見える霊能力者も中にはいるのだが(例としては、“サイキックソーサー”、“
(横島の場合は、霊力の具現化、物質化が彼の能力である。
そうした意味では、彼の三つの能力は、どれも同じルールに則っている。
もっとも、“
更にちなみに、GS本編では“
だから、例えばタイガーの持つ“
まぁそもそも、個人によって得意不得意の分野が異なるので、こうした差異が生まれる事となるのである。
(逆に、霊力による身体能力強化などは、ある意味基本中の基本であるから、霊能力者なら誰でも扱う事が可能である。
しかし、その先、言わば“特殊能力”と呼ばれるカテゴリーにおいては、その者個人の才能などに依存するのであった。)
もっとも、特殊な方法を用いれば、あたかも別種の能力を扱っているように見える事もある。
GS本編でもあったが、冥子はあくまで“式神使い”がベースとなっているが、その式神を特殊な御札に封印する事によって、他者(ここでは美神とエミであったが)が“道具”として、擬似的に“式神使い”となる事が可能であった。
逆に冥子自身も、普段式神に回している霊力をオカルトアイテムなどに回す事によって、美神のような除霊活動を行う事もできたのである。
そうした意味では、“道具”を駆使する事によって、様々な事柄に対応できる美神のスタイルは、ある意味非常に理にかなっているし、オールマイティーでもある。
ただ、一芸に特化した横島らとは違い、“道具”を失ってしまうと著しく戦力が下がる、という弱点も内包しているのである。
とまぁ、色々と小難しい話をしたが、ようはいくら霊能力者と言えど、“特殊能力”と呼ばれる力は一つしかないのである。
・・・本来ならば。
しかし、政樹の父親は、当然ながら彼も元・“式神使い”であるから、横島の能力を真似する事は不可能なのである。
(ちなみに、雪之丞は、かつてのGS試験で横島と対戦した折に、横島の“サイキックソーサー”を真似していた事もある。
しかし、これは雪之丞と横島の得意分野が同じ方向性だったからであり(魔装術も霊気の物質化である。)、だからこそ真似できただけに過ぎないのである。)
にも関わらず、政樹の父親は、“サイキック猫だまし”という技を使ってみせた。
横島達も、その事には違和感を感じていたが、まさか、という思いがあったのである。
・・・まさか、複数の能力を同時に扱える訳じゃないだろう、と。
もっともそれだけなら、横島も考えていた通り、霊能力者ならば霊力を応用する事によって、擬似的に真似をする事は可能であった。
あったが、政樹の父親が真似したのは、実はそれだけに留まらない。
彼は“サイキック猫だまし”によって所謂“目潰し”を敢行し、横島らから逃げ出した訳であるが、しかし、シロとタマモという、人間とは比べ物にならないほど霊的追跡能力に優れた存在から無事に逃げおおせるのは、視界を奪っただけでは難しいのである。
にも関わらず、彼女達でさえ政樹の父親の痕跡を見失ってしまったのは、これは逃げる時に“幻覚”を使ったからである。
先程のルールに則れば、霊能力者が扱える特殊能力は一人につき一つである。
故に、当然ながら政樹の父親が“幻覚”を扱う事など不可能であった。
もっとも、こちらも再三述べている通り、“オカルトアイテム”を使えばそれも可能であったので、まだ結論は出せなかったのである。
ただ、横島らの悪い予感はまさに正解であった。
政樹の父親は、謎の男が構築したシステムとデバイスを使う事によって、複数の能力を扱う事ができる状態になっていたからである。
具体的には、脳波のネットワークを応用し、とてつもない霊力が彼に集まった事で彼は、擬似的に“コピー能力”を会得していたのである。
つまり彼は、目の前の相手の能力をそっくりそのままコピーするが可能な状態なのだ。
なるほど、だから、本来横島の技である“サイキック猫だまし”や、タマモの得意技である“幻覚”が使えたのである。
これは、彼が腐っても霊能力者だったからこそ可能な事でもあった。
一般人が一流並みの霊能力者になれるなら、元々霊能力者である者達が更に力を扱う事ができるだろう事は想像に難くない。
そしてそれが結果想像以上の効果として、通常ではありえない所謂“マルチ能力者”を生み出した訳であるから、謎の男達が興奮するのも無理はない話だった。
もっとも、そんなある意味チート染みた存在を作り出せてしまった事は、彼らにとっても諸刃の剣になる可能性はあったが。
何故ならば、彼がこの力を独占すれば、謎の男達の真の計画が頓挫してしまう可能性もあったからであるがーーー。
・・・
グズ親父side
「あ、危なかったぁ〜。まさか、六道家め。奴らを雇っておったとはっ・・・!」
美神達から無事に逃げおおせた政樹の父親は、生い茂った植物からひょっこり顔をのぞかせながらそんな事をひとりごちていた。
一応、政樹の父親と美神達は、以前の“式神デスマッチ”にて面識があった。
だが、あくまでその時の美神達の立場は、ただの観戦者であり、言うなれば野次馬でしかなかったが。
しかし、少し調べれば美神の噂や悪名などすぐに分かる事だ。
少なくとも、政樹の父親にとっては、美神はなるべくなら関わり合いになりたくない相手である事には間違いないだろう。
「美神令子。日本、いや、世界のGSの中でもトップクラスの使い手にして、悪名高い守銭奴の冷血女、か・・・。あの様子だと、地の果てであっても追いかけてきそうな勢いやな・・・。」
美神本人が聞いたら、怒髪天を突くほど怒り狂いそうな評価であるが、しかし事実間違ってもいなかった。
「後は、パッとせん小僧と、妖怪が二匹、か・・・。厄介やなぁ〜・・・。」
しかし、一方で政樹の父親は、横島に関する情報は見当外れの評価であった。
しかし、実はこれが世間一般の横島に対する認識なのである。
横島が美神の助手で、本人も霊能力者である、という程度の情報は出回っていても、まさか彼が、すでに美神を凌ぐほどの使い手にして、もはや“英雄”と呼ばれるに足る存在である事など、彼はもちろん、世間一般ではそんな事は誰も知らなかったのである。
まぁ、これについてはとある
いずれにせよ、彼にとって美神(とシロとタマモ)が、彼の目的を阻む最大の障害である事には変わりなかったのである。
「しかしどないするかやなぁ〜。今は政樹の方が有利やけど、あの小僧が隠し玉を持っとらんとも限らへん。かと言って、これ以上の妨害工作はあの女達の手前難しくなってしもたし・・・。」
政樹の父親は、ブツブツと呟いた。
もっとも、番長の事情を知っていれば、彼がこれ以上何もしなくても、政樹が自力で勝つ事はほぼ間違いない。
しかし、知らないが故に、彼は更に余計なちょっかいをかけようとしていたのである。
とは言え、美神達の存在が明るみになった以上、先程までと同じ手段は使えない。
もちろん、謎の男達から預かっている“力”を使えば何とでもなるのであるが、これが六道家にも悟られてしまい、そもそもお見合いデスマッチ自体が無効となってしまったら目も当てられないからである。
「そやっ・・・!」
と、その時彼は、ひらめくものを感じていた。
「妨害工作が難しいならば、政樹に“力”を与えたらええ。」
彼が思い付いたのは、謎の男達から預かっている“力”を、競技者の政樹に与える事、であった。
自分自身も経験した事であるが、それを使えば、政樹の霊力は更に増す事になるだろう。
仮に番長に隠し玉があったとしても、これならば政樹の勝ちは揺るがないものになる。
また、自分自身が妨害工作をする訳ではないので、仮に次に美神達に見付かり捕らえられたとしても、特段困る事がない。
もちろん、彼自身の立場は危うくなるのだが、それは彼にとっては二の次であったのである。
そうと決まれば、彼の行動は早かった。
順調に競技を消化し、かなり先に先行している政樹を追いかけ始めたのである。
もちろん、素の彼の肉体スペックと霊力では、この差を縮める事は不可能に近いのであるが、しかし今の彼には、チートアイテムの存在もあって、この案が実現可能なのであったーーー。
・・・
政樹side
順調に障害物を超えて、ところどころに存在するチェックポイントも問題なく通過しながらを、政樹は最速でゴールへと向かってひた走っていた。
「・・・変やなぁ〜。鳴上クンの姿が見えへんくなったわ。」
政樹は後ろを振り返り、そんな事をひとりごちていた。
先程までは、かなり遠くの方とは言えど、彼を追いすがってくる番長の存在が確認できていた。
それが(まぁ、彼の父親の妨害工作によるものではあるが)、急に見えなくなったら不思議に思うのも無理からぬ話であろう。
彼の番長に対する評価はかなり高い。
曲がりなりにも“教師”という立場もあって、一応は今回の件ではライバル関係にあるが、彼個人としては将来有望な若者、と、番長の事を好ましく思っていたからである。
そんな、これまで散々結果を残してきた番長が、ここへ来て政樹から見失うほど突き放されるとは中々想像がつかなかったのである。
と、なれば、考えられる可能性は二つである。
六道家が用意した“罠”にハマっているか、あるいは何かしらの作戦である、という事である。
で、先程の彼の評価的には、番長が“罠”にハマる可能性は彼の中では極めて低く(もっとも、実際には彼の父親のいやらしい罠にハマっていたりするが)、だとしたら考えられる可能性は一つしかないのである。
彼の父親は問題外ではあるが、競技者同士の妨害工作は、ルール上有りであるから、番長がそれを狙っている可能性は大いにありえる。
その為に、何らかの方法で姿を消したのではないか?
と、政樹は考えたのである。
もちろんそれは、大いなる誤解である。
確かに番長はただの罠に引っ掛かるほど単純な人間ではないが、悪知恵、という意味では政樹の父親の方が上手であった為に、結果彼の妨害工作に見事にハマっていたからである。
しかし、誤解であったとは言えど、こうして慎重に、そして警戒感をマックスにして事に当たる政樹は、やはり霊能力者としてもかなりの使い手である事がうかがえた。
と、
「誰やっ!!!」
周囲に対する警戒感を高めていた事によって、政樹は人の気配を敏感に察知していた。
乗っていた“夜叉丸”から降り立ち、即座に臨戦態勢に入る。
「ま、待て待て政樹!わしや、わし。」
「と、父さんっ!?」
しかし、草むらからひょっこり顔をのぞかせたのは、政樹にとって意外な人物であった。
何故ならば、彼の父親が顔を見せたからである。
当然ながら、いくら政樹の関係者と言えど、彼がこの場にやって来る事を政樹も聞いていなかった。
と、なれば、十中八九彼がこの場にいる事は、重大なペナルティである。
「な、なにしに来たんや!?ってかまさか、不法侵入やないやろなっ!?」
「・・・。」
以前にも言及した通り、政樹がこの場に立っている遠因は、このクズ親父に乗せられた部分もあった。
しかし、やはり番長という、唐突に現れた強力なライバルの存在に危機感を抱いた結果、彼は自分自身の意志で冥子のお見合い候補に名乗りを上げている。
つまりは、今更彼の父親の出る幕ではないのだ。
しかも、自分のセコンドとして会場入りしているならばともかく、そんな事を承知していない彼からしたら、いきなり現れた彼の父親は、色々と厄介な存在でしかない。
「さっさといねやっ!今更父さんの出る幕やないっ!!」
「まあまあ、そう邪険にするなや、政樹。父さんはお前の事を思ってやな・・・。」
「それこそ余計なお世話やっ!確かに父さんに乗せられた部分は否定せんけど、僕は自分自身の意志でこの場に立ってるんやでっ!?」
「うんうん。お前も、六道家を乗っ取る覚悟ができたんやな。」
「ちゃうわっ!今更鬼道家の再興とかどうでもええわっ!!僕はただ、冥子はんを他の男にとられたくないだけやでっ!?」
「な、何やとっ!?」
コソコソと言い合いをする両者。
ここに、若干の認識の違いが存在していた。
このクズ親父、以前の件で政樹を見捨てて隠居したにも関わらず、いまだに鬼道家の再興に執着していた。
もちろん、平安時代から続く数少ない陰陽師系の家系としての希少性や誇り自体は否定しないが、それも時代の流れと共に衰退していくのも致し方ない部分も存在する。
少なくとも、本気で鬼道家を再興させるつもりなのなら、自分の時代にありとあらゆる手を尽くして再興させれば良かった事なのである。
それが、霊能力者としてはともかく、実業家としては六道家はおろか、政樹の足元にも及ばない才能故に、その願いは叶わなかった、どころか鬼道家崩壊のシナリオを一気に推し進めてしまったのである。
(逆に言えば、葉子からは“ザコ式神使い”と評されたが、少なくとも霊能力者として見た場合はそれなりの使い手であったので、地道にそちらの活動に専念していれば、もう少しマシな未来もあったかもしれないのである。が、一度は六道家とも並び立つほどの名家であったプライド故か、悪手に悪手を重ねて自滅的に没落したのである。)
そして、最後の希望とばかりに、六道家との式神デスマッチに望みを賭けて、政樹をまるで道具の様に育ててきた訳である。
まぁ、その結果、霊能力者としては冥子に及ばなかったまでも、政樹の才能を開花させた事も事実であるが、しかし、結果として政樹は冥子の前に敗れ去ったし、先程も述べた通り、このクズ親父は結果も見ずに政樹を裏切って逃げた訳である。
本来ならば、今更どの面下げて政樹に会えたのか、という話であるが、例の謎の男達との接触や、政樹の六道家への婿入り話を聞き付けて、一度は諦めた御家再興の野望が再燃してしまったのであった。
まさしく、政樹にとっては、“もう大人しくしとってくれ”という感じであろう。
一方、政樹の方は、こんなクズ親父に育てられたにも関わらず、若干ズレたところもあったが、比較的マトモに育っていた。
以前の六道家との式神デスマッチの際には、まだ父親と共に御家再興に野心を燃やしていたが、先程も述べた通り、父親に見捨てられ、冥子の前に敗れ去ってしまう。
しかしその後、彼の才能を惜しいと思った六道家に拾われて、“霊能教師”という職にありつくに至った訳である。
つまり彼には、六道家に対する恩義があった訳である。
まぁその結果、逆にお互いに想い合っていた冥子と政樹だったが、六道家に対する恩義の手前、それを表立って表明する事は躊躇われた、という側面もあったのであるが。
まぁ、つまり、どちらにせよ政樹には、六道家に仇なす事をしようなど、もはや考えてもいなかったのであった。
もっとも、ここで番長という存在が現れた事によって(つまり、遠因は六道家にもある)、両者は微妙な歩み寄りを見せてしまったのである。
政樹は、冥子を他の男に取られたくないが為に。
彼の父親は、六道家の乗っ取りと鬼道家再興を夢見て。
ある種の利害が一致したから、政樹は父親の話に乗った訳であるが、それ以上のちょっかいは望んでいなかった。
一方の父親の方は、政樹が彼の望みを叶える為に立ち上がってくれたのだと勘違いをしてしまっていたのだ。
「な、何を言うとるんや、政樹っ!ほな、この競技に参加したんはっ・・・!」
「冥子はんと結婚する為だけやっ!ってか、現実的に考えてみいやっ!六道家を乗っ取るなんて、土台無理な話やでっ!?」
「っ・・・!!」
そして、事ここに来て、ようやく政樹の父親は、その認識の違いを自覚するに至ったのである。
このまま、その現実に打ちのめされて、トボトボと去って行ったら、これ以上の騒動にはならなかった。
だが、一度再燃してしまった野望を諦める事など、このオッサンには無理な話であり、また、例の“力”を使ってしまった事に対する、所謂“副作用”が、ここへ来て明るみに出る事となったのであるがーーー。
・・・
番長side
「な、何とかトラップ地帯は抜けたようだな・・・。」
俺は今、多少ヘロヘロになりながらも、次なるチェックポイントに向けてひた走っていた。
ちなみに番長にとっては、先程までの馬鹿げた罠の数々は、政樹の父親が仕掛けたものである事はこの時点では知りようがなかった。
そもそも彼は、美神達が秘密裏に別の依頼を受けていた事実を知らないのだからそれも無理からぬ話である。
あくまで彼が受けた話は、“お見合いデスマッチ”への参加の件だけなのだ。
それに関しても、政樹を刺激する為の、言わば“ヤラセ”に過ぎなかった。
もっとも、番長が思いの外“完璧超人”だった事が逆に災いして、トントン拍子にここまで来てしまった訳であるが。
しかし、やはり最終試験は彼も思っていた通り、“霊能力者”としての年季の違いによるものか、政樹が圧倒的に優位な状況であった。
故に、罠にハマっていたロスを差し引いても、ある意味自然な形で負ける事ができそうだ、と彼も思っていたのである。
だが、残念ながら番長には、横島同様、所謂“トラブルメーカー”としての素養があった。
故に、このまま何の話も起こらないまま物事が終わる事はありえないのである。
「なあ、政樹っ!考え直してくれやっ!!」
「くどいでっ!それに、これは僕にとって最大限の譲歩や。六道家に見つからん内に、さっさといねやっ!!」
「っ!!!」
「・・・ん?何だ・・・?」
具体的には、政樹と彼の父親の言い合いの現場に遭遇してしまったのである。
もっとも、今現在は“障害物競走”の真っ只中であるから、様々なルートが考えられるとは言っても、ゴールの方向は同じ訳であるから、こうした事が起こるのも、ある意味必然ではあるが。
言ってしまえば、こんなところで言い争いをしている方が悪いのである。
俺は声のする方を見る。
そこには政樹さんと、見知らぬ男性が何やら言い争いをしていたのであった。
一体どうした事だろう・・・?
などと疑問に思っていると、その男性が、突如として妙な波動を発し始めた。
「何でや・・・、ナンデナンデナンデナンデッ・・・!」
「っ!!??」
「・・・と、父さんっ・・・!?」
「政樹さんっ!離れてっ!!」
「な、鳴上クンッ!?」
「話は後ですっ!」
「り、了解やっ・・・!」
咄嗟にそう叫んだ俺に、政樹さんは一拍遅れながらも、やはり何か変だと感じていたのか、その男性からすぐに離れる。
そうこうしている内に、妙な波動はますます強くなっていく。
と、同時に、その男性にも変化が現れた。
黒い影のようなものが彼の周囲に集まり、やがて彼を飲み込んでしまったのである。
「と、父さんっ!?」
「な、何が起こってるんだっ!!??」
「ウ、ウガアァァァ〜〜〜!!」
もはやその男性から上がられた声は、“人”が発するものではないかのように聞こえた。
よく分からない状況の中、俺達はとにかく見守る事しかできなかった。
と、
「・・・。」
唐突に静けさが帰って来る。
しかし、状況はどうやら良い方向へは向かっていないようであった。
その証拠に、
「ま、まさかっ・・・!?“生成り”っ・・・!?」
「っ・・・!?」
先程まで“人”の形を持っていた男性は、どこか“鬼”を彷彿とさせる容貌と、ギラギラと輝く金色の瞳でこちらを見ていたからであったーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。