続きです。
・・・
???side
「な、何ですか、あれっ・・・!?」
「ふぅ〜む・・・。これは、予想外の現象ですねぇ〜・・・。」
「・・・。」
一方の、鬼道の父親を秘密裏にモニターしていた例の謎の男達も、彼の身におきた異変を目の当たりにしていた。
もっとも、それに焦りの声をあげたのは大学生風の“オペレーター”と呼ばれた青年だけであり、“プログラマー”と呼ばれた技術者風の男と、“リーダー”と呼ばれた男は大したリアクションもなかったのであるが。
「いやいや、そんな悠長なっ!あのオッサン、何か化け物になっちまいましたけどっ!?」
「そうですね。・・・おそらくですが、ある一定以上の力を持つ者が件のデバイスを使うと、こうした副作用があるのかもしれませんね・・・。」
「言うなれば、例のアプリやシステムの効果は、“集約”と“増幅”だからな・・・。何からの要素で、“想いの力”が暴走すれば、こういう事も起こりうるのかもしれんな。」
「そうですね。これは貴重な実験結果とサンプルですよ。」
「うむ。」
ノンキな感想を言い合う二人に、流石の“オペレーター”と呼ばれた青年も、若干引きながら質問する。
「いや、そうじゃなくて、その、大丈夫なんすか?」
「問題ないですよ。さっきも言いましたけど、今更彼らに知られたところで、もはや防ぐ事はかないませんからね。それと、これもさっきも言いましたが、彼が
「その通り。まぁ、こちらとしても、ある一定以上の霊能力者が、件のデバイスを使った時のメリットとデメリットが分かっただけでも、かなりの収穫だしな。」
「ええ・・・。」
もはや、人としての良心の欠片もない二人に、なんだかんだ言いながら、まだそこまで染まりきっていない“オペレーター”は困惑する。
「と言う訳だから、貴方はしっかりと記録しておいて下さい。情報は貴重な武器ですからね。」
「・・・う〜す。」
が、今更後には退けない彼は、己の職務に没頭する事によって、そうした葛藤から目を背ける事としたようである。
素直に指示に従った“オペレーター”を尻目に、“リーダー”と呼ばれた男は呟いた。
「さて、暴走した力はどの程度のものなのだろうな?」
その口元には、うっすらと笑みが浮かんでいたーーー。
・・・
番長side
「マ゛、サ゛、キ゛ィ〜〜〜!!!」
「来るわよっ!各自、無理はしないよーに。」
「了解でござる。」
「ん。」
「うっす!」
「はい。」
「了解や。」
美神さんによれば“魔物化”した政樹さんの父親は、政樹さんの名前を呼びながらこちらに襲いかかってきた。
それに、美神さんがリーダーシップを発揮しつつ、各々が散開した。
ビリビリビリッ!
正直、とてつもない霊圧である。
感覚的に言えば、アメノサギリやクニノサギリに匹敵する強敵だろう。
まぁ、流石にイザナミほどではないし、いまや老師や小竜姫さまとも日常的に稽古している身としては、頼りになる仲間さえいれば、負ける気は一切しない。
が、ここで、その“勝ち方”が非常に難問だった訳である。
さっきも言った通り、美神さんや横島、シロにタマモ、それに政樹さんがいる状況なら、いくら強敵と言えども負ける気は一切しない。
しかし、ここは“マヨナカテレビ”内ではないし、美神さん達の言動から、勝つ=相手を殺す事であるから、政樹さんの父親相手ではそれは最後の手段である。
もちろん、こちらが全滅する恐れがあるなら、俺はともかく、少なくとも美神さんは一切の躊躇なく相手を殺すだろう。
彼女は非常にリアリストであり、シビアな感性を持っている
故に、絶対の確信はないが、俺に課された使命はかなり重い。
こちらが全滅せずに、なおかつ相手を殺さずにどうにかしなければならないのだ。
自分で言い出した事とは言えど、結構なプレッシャーである。
だが、まぁ、やってやるさっ!
「一番槍は拙者に御任せをっ!」
「援護するっ!」
そんな風に決意を新たにしていると、シロとタマモの妖怪コンビが先陣を切った。
シロは完全な近距離タイプのアタッカーだし、何よりその素早さは群を抜いている。
それに、タマモは中〜長距離をカバーできるし、なんだかんだシロとのコンビネーションも息が合っているからな。
この二人の強襲に対応できる者など、そうそういない事だろう。
しかし、
「もらったっ!」
タマモの“狐火”の援護もあってか、そちらに気を取られた怪物は、シロの超スピードに全く対応できていなかった。
彼女の宣言通り、その一太刀は完全に怪物を捉えるーーー、そう誰もが確信していた中で、予想外の事態が起こったのである。
シロのメイン武器は、自身の霊力を“剣”、あるいは“刀”の形で具現化する“霊波刀”である。
ここら辺は、横島の“
シロが横島を“センセイ”と呼んでいるのも、かつてその“霊波刀”を習得する為に師事した事があるからだそうだ。
そんなシロお得意の“霊波刀”そっくりの“何か”を、その怪物は瞬時に生み出し、完全に捉えたと思ったシロの“霊波刀”を受け止めたのである。
「なっ・・・!?」
「「「「「!!??」」」」」
それだけではない。
思わぬ事態に一瞬戸惑い、足を止めてしまったシロに、今度はタマモの“狐火”そっくりの“何か”を、彼女に向けて放ったのである。
「くっ・・・!」
幸い、シロはすんでのところでそれをかわした。
もっとも、彼女のスピードと柔軟性がなければ、それは直撃は免れなかった事だろうが。
「ま、まさかっ!?“コピー能力”!!??」
「こりゃ、もう勘違いじゃないみたいっすねっ!」
短く美神さんはそう驚愕の声をあげていた。
それに横島は冷静に返した。
どうやら、思い当たる事があったのだろう。
“コピー能力”。
それは、読んで字のごとく相手の能力を“コピー”する能力の事だろう。
まぁ、俺の“ペルソナ能力”、というか“ワイルド”の能力は、ある意味ではこの“コピー能力”に近いかもしれない。
全く同じではないものの、仲間達の力を別のペルソナで代用可能だったからな。(もっとも、今現在は仲間達の“ペルソナ”と“ペルソナ能力”を、そっくりそのまま借り受けている状況ではあるが。)
しかし、流石の俺も、何の準備もなく相手と同じ能力を使える訳じゃない。
それは、色々とルールの違う
そもそもの話として、これは霊力を扱うようになってから改めて実感した事ではあるが、ハッキリ言ってそうした能力は現実的ではないし、無駄が多い。
何故ならば、“リソース”の無駄使いだからである。
まず前提条件として、“霊力”はほぼ無尽蔵にエネルギーを生み出す事が可能なのである。
ただ、これは再三述べている通り、それを“出力”するには限界があるのだ。
そうでなければ、霊能力者は永遠に戦い続ける事ができる事になってしまう。
もちろん、体力にも限界があるので、どちらにせよ限界はあるのだが。
つまり何が言いたいかと言うと、一日に使える霊力量にはある程度限界がある、という事である。
それ故に、これを上手くやりくりして戦う必要が生じる訳である。
何も考えずに霊力をフル活用すれば、すぐに“霊力切れ”を起こしてしまうのである。
そこで霊能力者達は、もっとも自分に適した戦闘スタイルに落ち着く訳だ。
一日のリソースが決まっているのなら、極力無駄を省くのが合理的であろう。
逆に“コピー能力”は、おそらく相手の能力をコピーする事であるから一見脅威に見えるのだが、実際には悪手であると考えられる。
何故なら、そこには“習熟度”に差が生まれるからである。
当たり前だが、例えば武道、とりわけ剣術使いは、剣術に関しては突出した力を持っている事であろう。
仮にその一流の使い手に対して同じ様なスキルを使う事が可能だとしても、そこには絶対的な力量の差が生まれる事となる。
何故ならば、それまで培ってきた時間が違うからである。
使える事と使いこなせる事は決定的に違う。
となれば、相手の土俵で戦う事は、ハッキリ言って無謀でしかないのである。
しかも、先程も述べた通り、一日に扱える霊力には限界があるので、相手の技をコピーするのは、戦略的に考えても無駄なのである。
もちろん、仮に無尽蔵に霊力を扱える事が可能ならば、相手に合わせた戦略を練れる可能性も否定しないが。
「正直ビックリしたけど、そこまでの脅威ではないわね。」
「そっすね。俺も一度やってるから分かるっすが、これって相手の状況をリアルタイムでシュミレートしてるだけっすもんねぇ〜。」
「・・・?どういう事だ?」
すぐに冷静になった美神さんと横島は、そんな会話を交わしていた。
俺は、それが気になって、思わず会話に割って入る。
「あぁ〜、つまりだなぁ〜。相手の能力
「いくら攻撃しても、相手に与えたダメージは自分自身に、こちらが与えたダメージはそのまま相手のダメージだから、ハッキリ言って勝ち目がないのよ。コピー能力って一見カッコよくて便利そんな能力だけど、ぶっちゃけると相手を一瞬ビックリさせるだけの無駄能力に過ぎないのよねぇ〜。ま、それも使い方次第ではあるんだけどね・・・。(ボソ)」
「・・・なるほど。」
最後の言葉は聞き取れなかったが、そういう考え方もあるのか・・・。
それに俺は、目から鱗のように感じていると、しかし状況はまだまだ続いていた。
「まぁ、とは言え、相手はすでに理性も吹っ飛んでいるでしょうから、そんな事を考える頭もないでしょうね。それに、こちらもダメージを受ければ、当然自分達も痛いわ。耐久性に関しては、おそらく向こうの方が上でしょうから、わざと攻撃を受けるのはオススメしないわね。」
「それはそうでしょうね。」
仮に美神さんや横島の予測が正しいとしても、わざと攻撃を受けて、相手にダメージを蓄積させる方法はこちらにとってもリスクが高いからな。
しかし、ネタが割れてしまえば対処の方法もある。
つまり、相手が自滅するのを待てば良い。
先程も述べた通り、どちらにせよそうした能力を扱う為にはそれなりに霊力を消耗する事となる。
もちろん、小竜姫さまクラスの霊力量が簡単に削れるとは思わないが、相手は一人に対してこちらな複数人だからな。
卑怯だと言われようとも、この状況を利用するべきであろう。
つまり、こちらは最小の労力で相手の戦力を削る戦法である。
生死が、それも自分達だけでなく、政樹さんの父親の命もかかっている状況であれば、もっとも現実的な戦法を取るのが当然の判断であろうーーー。
ここで、改めて謎の男達が作り上げたシステムの概要について説明しておこう。
まず始めに、“プログラマー”と呼ばれた技術者風の男が言っていた通り、あくまで彼が開発したのは“催眠アプリ”を利用して不特定多数の者達から霊力をかき集めるシステムに過ぎなかった。
以前にも述べた通り、例え霊能力者でなくてもどんな者でも霊力を保持している。
それをかき集めて増幅すれば、即席で霊能力者に匹敵する一般人の完成、である。
このシステムを利用して、GS業界に彼らの息のかかった人材も潜り込んでいる。
番長も参加した春のGS試験に、通常ではありえないほど一般人が合格したのはこの為であった。
まぁ、ある程度事情を知っている者達ならば、アシュタロスが引き起こした事件がキッカケとなって、一般人ではあっても潜在的な霊能力者が目覚める可能性は否定できないので、そこに疑問を持つ事もあまりなかったのであるが。
まぁ、それはともかく。
で、今回の件に関しては、色々と画策してはいたが、場合によっては自分達の息のかかった人材が六道家に潜り込めればラッキー。
そうでなくとも、ある一定以上の霊力を持つ者、つまりは霊能力者がこのシステムを利用した場合、どういう現象が起こるのかの実験的な意味あいの方が大きかったのである。
結果としてその実験は、とてつもない力を発揮する事となる。
まぁ、政樹の父親が“魔物化”したのは予想外の事ではあっただろうが、しかし、一流のGSすら軽く凌駕するパワーを与えられた事は、ある意味では成功と言えるだろう。
そして更に、先程述べた通り、当初想定していた効果とは別の効果が発揮される、という嬉しい誤算が生じたのであった。
それが、“コピー能力”。
相手の能力を使いこなす技術であった。
そしてこれは、実は
もちろん、一見すれば、相手と全く同じ力を発揮しているからそう誤解するのも致し方ないし、そもそものルールとして、霊能力者が扱える能力は“一人につき一つ(一種類)である”、という前提条件が存在するからこそ、可能性の一つを即座に捨て去り、“コピー能力”である、と結論づけた美神らの判断も間違いではない。
だが、ここで、先程のシステムの話を思い出してほしい。
再三述べている通り、特に
逆に言えば、それがある一定以上に達していないから発現こそしていないが、一般人であっても何らかの能力の素養を持っている、という事でもある。
つまり、このシステムとデバイスを利用した一般人が一流並みの霊能力者になれるのは、“催眠アプリ”を介して不特定多数の者達からかき集めた霊力と、その者達が潜在的に持っている様々な能力の存在があるからなのである。
個人が発現する能力は様々だが、中には同種の能力もある事だろう。(例えば、横島や雪之丞、シロは、形態こそ違いがあれど、霊力の“具現化”、あるいは“物質化”という意味では同種の能力である、と言えるのである。)
それ故に、このシステムの利用者は、かき集めたられた霊力によって、足りない分(GSレベルの霊力)を補うと共に、同種の能力も同時に増幅している事となるのである。
では、一般人が使えばこれであるのならば、すでに一定レベルの者達、つまり“霊能力者”と名乗れるレベルの霊力を扱える者達がこのシステムを利用すればどうなるのか?
すでに彼らは力を発現している。
故に、その更なる強化に向かう、と思われていたが、その予想は誤りであった。
彼らは、自分自身の能力に加えて、不特定多数からかき集められた能力を利用できるようになっていたのである。
先程も述べてが、能力は個人によってマチマチだが、中には同種の能力も存在するのである。
つまり政樹の父親が使っているのは、相手の能力を“コピー”したのではなく、言うなればを通常ではありえない“マルチスキル”を使っているのであった。
当然ながら、“コピー能力”と“マルチスキル”は似て非なるものである。
故に、美神らの予測はある意味近いのであるが、決定的に間違ってもいたのであったーーー。
「ウガァァァァァ〜〜〜!!!」
「くっ!」
「・・・おかしいわね。」
「どうしました、美神さん?」
“魔物化”に次いで、“コピー能力”にも面食らった美神らであったが、そこはそれ、彼女らは超一流の使い手であるし、そもそも潜ってきた修羅場の数が違う。
それ故に、相手がいくら小竜姫クラスの存在であったとしても、数の上での優位も活かして、危なげなく立ち回っていた。
多対一であるならば、長期戦は美神らに有利に働く。
番長の存在もあって、誰かが戦っている間、他の者達は体力と霊力をある程度回復できるからである。
それに、自分達が食らったダメージは相手にも蓄積する筈だし、自分達が与えたダメージはそのまま相手のダメージになる筈である。
故に、そろそろ状況が変化しても良い筈なのだが、以前として怪物はピンピンとしているし、何なら一向に倒れない美神らに苛立ちを募らせているようにも見えた。
「いくら小竜姫クラスの霊圧の持ち主と言っても、タフ過ぎるわ。これだけ叩いているのに、ちっとも堪えていない・・・。」
「・・・もしかしたら俺の回復能力もコピーされている、なんて事はないですよね?」
番長の発言にしばし考えて、フルフルと首を振る美神。
「可能性としてはあるかもしれないけど、そんな素振りは一切見せていないし、多分そういう事じゃないと思うわ。分かんないわねぇ〜・・・。このままじゃ、こっちが先にヘバってきちゃうかも。」
「マジですか・・・。」
「ま、だとしても、流石にここまで大事になっていれば六道家にも異変は伝わっているでしょうから、私達が下手をうたなければ、殺られる事はないけどね。ただ・・・。」
「・・・ただ?」
美神はそこで一旦言葉を区切り、番長と政樹を見据えた。
「ただその場合、彼を救うチャンスはおそらく失われる事となると思うわ。おば様はあれで結構シビアな人だからね。多数を助ける為に少数を切り捨てるなんて、六道家ほどの大きな家なら、よくやっている事でしょうし、必要とあらば躊躇なくそういう判断をして即座に実行すると思うわ。それに、冥子の場合は“
「「・・・。」」
美神の言葉を受けて、番長は葉子達の人となりはまだ把握しきれていなかったが、美神が言うならそうなのだろうな、と納得し、政樹に関しては、六道家との付き合いもあって、おそらく美神の発言は間違っていない、と判断していた。
「ま、私は正直それでも構わないんだけど、アンタらはそれじゃあ納得できないんじゃないの?だったらキバリなさい。タイムリミットは冥子達が駆け付けるまでよ。」
「「っ!!!」」
これは、美神なりの譲歩であり、そしてある意味最後通牒であった。
彼女にとっては、政樹の父親を救う事までは、絶対的な条件ではないからである。
あくまで彼を助けたいのは、番長と政樹のわがままだ。
もちろん、助けられるならそれに越した事はないので番長の提案に美神も同意したが、状況が改善しない中では最後の手段に打って出る必要が出てくるだろう。
そのタイムリミットを設定したのである。
“それまでに何とかしろ。”、と。
番長と政樹の視線が一瞬交錯して、そしてお互い頷き合う。
「分かりましたっ!!」
「了解やっ!!」
「オーケー。なら、第二ラウンドをおっぱじめるわよっ!」
「「「「「応っ!!!」」」」」
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
御指摘頂いた方は、この場を借りてお礼申し上げます。
修正させて頂きました。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。