続きです。
・・・
???side
「・・・何か、このまま奴らをぶっつぶせるんじゃないっすか?」
一方、番長らを秘密裏にモニターしていた謎の男達は、思わぬ苦戦を強いられている番長らの様子を見ながら“オペレーター”と呼ばれた大学生風の男がボソリと呟いていた。
「ふむ・・・。確かに多勢に対して、むしろ有利に事を進めているように見えますね。こちらとしては、やはり美神令子は厄介な存在ですから、ここで潰せるのならそれに越した事はありませんが・・・。」
彼らの言う“計画”を進める上では、当然ながら脅威となる存在はなるべくいない方が良い事だろう。
そうした意味では、アシュタロスが引き起こした世界規模の霊災を解決した美神や横島は、当然彼らにとってはいなくなってもらった方が何かと都合が良かった。
降って湧いたような好条件に、“プログラマー”と呼ばれた技術者風の男はそう呟いたが、
「・・・おそらく無理だろうな。確かに一見あの怪物が有利な状況ではあるが、奴らもまだ全力を出している訳ではないだろうからな。もしかしたら、彼を助ける為にわざと手を抜いているのかもしれない。」
「・・・そんな事、可能なんすか?」
「さあ?一度怪物化したら普通は元には戻せんと思うが、奴らには何か考えがあるのかもしれんしな。どちらにせよ、殺すだけなら、すでに決着がついている可能性もある。それに六道家がこの異変に気付かない筈もないからな。いずれにせよ、そう遠くない内に、何かしらの結末を迎える事だろう。」
「ふむ・・・。」
“リーダー”と呼ばれた男は、冷静にそう判断していた。
その判断は正しい。
言うなれば、今の番長達は、政樹の父親を救う為に、あえてイバラの道を行っているだけで、彼を祓う、つまり殺すだけならば、これほど苦戦する事はなかったからである。
先程も述べたが、ここで厄介な美神らが倒れてくれたら色々と彼らにとっては都合が良かったが、そうはならないだろうと判断し、ならば情報だけはしっかりと持ち帰るつもりなのであった。
「いずれにせよ、何が起こるのかはしっかりと記録しておけよ?」
「う〜すっ!」
・・・
六道家side
「強烈な霊圧を感じますねぇ〜〜〜。禍々しい感じですわぁ〜〜〜。」
「お母様。これってぇ〜〜〜?」
「ええ。おそらく異変、でしょうねぇ〜〜〜。」
一方、“障害物競走”の結果を待っていた六道親子は、のほほ〜んとそんな会話を交わしていた。
ちなみに、六道家ほどの財力があれば、“障害物競走”を行っていた政樹、番長両名に、所謂“ドローン”みたいなものをつけてその動向をモニターする事も不可能ではなかったのだが、そうした事はしていなかった。
何故ならば、それらが“霊能力者”の力にはついていけないからである。
そもそも“障害物競走”は、縦横無尽に様々な場所を通る事が想定される。
つまり建物を飛び越えたり、森林の中を突っ切ったりする可能性があるので、それらにも対応するのは機械的にはかなりの難易度であろう。
下手したらすぐに壊れてしまう可能性もあるので、最初からそうした事をしなかったのである。
また、両名に所謂“発信機”をつけて、位置情報を把握する事もしていなかった。
何故ならば、それは“霊力感知”で代用が効くからであった。
まぁそもそも、この“
そんな事もあって、六道親子が異変に気付くには多少のタイムラグがあり、なおかつ番長らのもとにまで駆け付けるのは、かなりの時間が経ってからになってしまった訳であった。
まぁ、その状況は、政樹の父親を救いたい番長と政樹にとっては、ある意味でラッキーだったのかもしれないが。
「何が起こったかは知りませんが、もしかしたら政樹さん達が危ないかもしれませんねぇ〜〜〜。まぁ、令子さん達もいるから、滅多な事にはならないでしょうが〜〜〜。」
「大変〜〜〜。助けに行ってあげなくちゃ〜〜〜。」
「そうねぇ〜〜〜。では、現場までの足を用意しましょう〜〜〜。」
しかし、そのロスタイムも終了の時が近付いていた。
彼女らも、番長らのもとに向かう準備を始めていたからである。
六道親子が現場に駆け付けるまでの残り時間。
番長と政樹は打開策を見付ける事ができるのであろうかーーー?
・・・
道化師side
「ウガァァァァァァ〜〜〜!!!」
「くっ・・・!」
ビリビリビリビリッ!!!
チクチクと攻撃を続けていた俺達だったが、怪物は全く堪えていない、どころかますます力を増していたように感じた。
鳴上のサポートもあって、いまだにこちら側にはリタイヤした者はいないが、このままではジリ貧である。
当然ながら、こちらの体力や霊力も無尽蔵ではないからな。
一方の怪物は、どういう原理かは分からないが、力が全く衰えない。
いくら小竜姫さまクラスの霊圧の持ち主とは言えど、そこに違和感があった。
それに・・・、
「・・・気付いたか、鳴上?」
「・・・ああ。」
「・・・?どうかしたの?」
戦いの合間に、俺は気になっていた事を鳴上に確認した。
すると、打てば響くように鳴上はそう答えたが、美神さんは何の事か分からず、そう質問してきた。
まぁ、鳴上との付き合いは、妙神山での修業もあって、相対的に俺の方が長いからな。
美神さんが気付かないのも無理はない。
「あの怪物、実は
「えっ!?け、けど、たまに何か召喚してるじゃない。」
「あれは、おそらく政樹さんの能力です。たしか、“式神”でしたか?」
「まぁ、美神さんがそう勘違いするのも無理はないっすよ。けど、そもそもの話として、鳴上の能力、っつか、“ペルソナ”の能力、ってかスキルか?、は、
「と言うと?」
「例えば俺の“ペルソナ”の中には、“アギ系”って魔法を使う“ペルソナ”がいます。“アギ系”ってのは、火炎属性の魔法で、こちらで言えばタマモの“狐火”みたいなモノですね。しかしあの怪物は、それを使用していません。」
「他にも、氷結、疾風、電撃、闇に光、後は万能属性、ってモンもあったか?」
「そうだな。後、回復に補助まで含めると、かなりの種類の魔法がある。」
「・・・確かに、そういった攻撃は、今のところしてきた記憶はないわね。」
俺等の説明に美神さんは納得していた。
いや、実際にはタマモの“狐火”のように、所謂“属性攻撃”っぽいものは使用しているのだが、確証となるのはそれだけではない。
「後は、こちらの方が重要なんですが、あまりにタフだから一見分からないんですけど、それらの攻撃に対する“耐性”、あるいは“無効”や“反射”、“吸収”といった事もできていないんですよ。」
「美神さんも知ってるっしょ?そもそも鳴上をひのめちゃんのベビーシッターに任命したのも、ジャアクフロストの持つ“火炎吸収”の能力を見たからっすよね?」
「あっ・・・!」
そうなのだ。
散々修業で苦労したから分かるんだが、コイツの持つ、ってか“ペルソナ”の持つ“耐性”やら“無効”やら“反射”やら“吸収”は非常に厄介なのである。
少なくとも、属性攻撃、あるいは光、闇の攻撃に対して、コイツはそれらを無効化、どころか反射したり吸収したりする事ができるからである。
まぁ、流石に万能属性にはそれはないのが唯一の救いだ。
つまり、あの怪物が鳴上の能力をコピーしていたとしたら、本来はそれらもあわせてコピーできる、ハズなのである。
しかしあの怪物は、これまでのところタマモの狐火を無効化した様子はない。
これらの事を踏まえて考えると、この怪物の能力は、おそらく“コピー能力”ではないのである。
「・・・って事は、あの怪物の能力は“コピー能力”じゃない・・・?」
「そう考えるのが妥当っすね。」
「逆に言えば、これらの事から怪物の能力もおぼろげながらに分かります。おそらく、集合無意識のような、大きな“情報の海”から能力を引き出しているんですよ。で、俺は
「なるほどね・・・。仮にアイツの能力が“コピー能力”なら、鳴上クンの能力もコピーできるハズだけど、それをした形跡はない。だとすると、アイツの能力は“コピー能力”ではなく、
流石に美神さんは飲み込みが早い。
ま、ある程度イザナギさまから事前情報を聞いていたからこそ、状況を修正できたワケでもあるが。
「そうなると、アンタの能力が頼り、ってワケね。仮にアイツの能力が“マルチスキル”なら、私達の力は相殺されちゃうワケだからね。実質的な無効化。これならアイツが、全く堪えていないのも頷けるわ。」
「まぁ、他にも色々と疑問は残るんですが、俺等も同じ結論っす。」
「・・・。」
鳴上も無言でコクリと頷いていた。
だが、ここで、鳴上の弱点が問題となる。
「俺も二人と同じ意見ですが、ここで俺の霊力量、正確には出力できる量が少ない事が問題となってきますね・・・。」
そうなのだ。
コイツを主軸として戦略を練るにしても、霊力量の脆さがネックとなる。
仮にここが“マヨナカテレビ”内や、霊力の集まる場所である妙神山なら無制限に“ペルソナ能力”を行使できるだろうが、この場ではそれらに制限がかかってしまうのである。
だが・・・、
「問題ねぇ〜ぜ、鳴上。俺に考えがある。」
「へぇ・・・。」
「・・・聞こう。」
俺の能力があれば、それも簡単にクリアできるのであったーーー。
・・・
クズ親父side
クソガクソガクソガッ・・・。
ネタマシイネタマシイネタマシイッ・・・。
・・・まずいっ!
このままではっ・・・。
一方、システムの暴走によって魔物化してしまった政樹の父親は、仮にも一端の霊能力者であった事が幸いしてか、いまだに自我を保っていた。
しかしそれも時間の問題だった。
自分の意志とは無関係に動く魔物化してしまった身体は、すでに彼の支配下から逸脱しつつあったからである。
以前にも言及した通り、謎の男達が作り上げたシステムは、あくまで霊力の集約と能力の増幅を主な目的としている。
それによって、霊能力者未満の霊力しか存在しない者達であっても、一流霊能力者並みの霊力とスペックを得るに至る訳である。
しかし、そのシステムの副作用として、これは番長が言及した通り、人々の集合無意識を利用したシステムに近いものであるが故に、人々の感情、それもとりわけ、負の感情も増幅してしまう事となってしまったのである。
少し話は変わるが、以前にも言及した通り、番長達の“ペルソナ能力”は、実は非常に危険な代物なのである。
何故ならば、こちらも人々の集合無意識を利用した力であるから、“ペルソナ”という鎧、緩衝材無しにこれらに触れてしまうと、そのあまりの情報量の多さから、個人の自我などすぐに吹っ飛んでしまうからであった。
当然ながら、例の“催眠アプリ”を利用してネットワークを形成している謎の男達のシステムは、本来の人々の集合無意識を利用している“ペルソナ能力”とは根本的な規模は段違いである。
しかしそれでも、少なくとも数千から数万単位の人々の想いとか願い、記憶や記録が集約されたそれらは、とてつもない情報量を持っている事となる。
もっとも、デバイスを介して利用している為に、一般市民が使う場合は霊力の低さが逆に幸いして、そうしたデメリットが現れる事もなかったのだが、より強い力を持つ霊能力者が扱った場合、デバイス有りとは言えど、生身でそれらの増幅の逆流にさらされる事となってしまったのである。
その結果、小竜姫クラスという、とんでもない霊力を持つ事が可能となる一方で、それらは生身の人間では扱いきれない為に、ある種の“適合”という形で自身の存在を変化させてしまう(つまり“魔物化”)といった現象が現れてしまったのであるが。
まぁこれも、楽して力を得ようとした代償であり、自業自得とも言えた。
ただ彼にとっては不幸中の幸いな事に、この場に鳴上悠と横島忠夫という二人の英雄が存在していた。
本来ならば、もはや倒す以外方法がない中で、二人の英雄と彼の息子は、まだ彼の救出を諦めていなかったのであったーーー。
・・・
番長side
「いくぜ、鳴上っ!」
「ああっ!いつでも良いぞっ!!」
横島の合図と共に俺に
行けるーーー!
俺はそう確信していた。
「頼むで、鳴上クンッ!!!」
「了解ですっ!皆さんから
政樹さんの声援を受けて、俺は“ペルソナ”を召喚する。
だいそうじょうは俺の持つ“ペルソナ”の中で、光属性最強のペルソナである。
(ちなみに唯一の弱点である、闇属性に対する対処も万全であった。)
「ホッホッホ、お呼びですかな、宿主殿。」
「ああ。だいそうじょう、『回転説法』だっ!」
「承知。」
『回転説法』は、敵全体に高確率で光属性の即死効果を与えるスキルだ。
だいそうじょうの専用スキルでもある。
もちろん、政樹さんのお父さんを殺す意図はない。
と言うか、流石に
まぁ、“マヨナカテレビ”内のボス達も、即死耐性を持っていたし、それと同じようなものだと俺は考えている。
ただ、属性の相性というものは存在するようで、やはり闇に対しては光が有効なのである。
政樹さんのお父さんは今は魔物化している訳だから、一気に力を削ぐ為には、おそらくこれは有効な一手であろう。
「『回転説法』っ!!!」
「ウギャアァァァァ〜〜〜!!!」
だいそうじょうの『回転説法』をモロに受けて、怪物は一瞬怯んだ。
しかし、これで満足する訳にはいかない。
ここで畳み掛けないと、怪物はすぐに復活してしまうかもしれないし、そもそもみんなからの霊力の
「チェンジ、ルシフェルッ!」
「ふむ。随分と久しいな、宿主よ。」
「そうだな。けど、今は悠長に話している場合じゃない。ルシフェル、『明けの明星』だっ!」
「あいかわらず忙しない事だな。まぁ、事情は分かっているがな。了解した。『明けの明星』っ!!!」
パァァァーーー!!!
「ウギャアァァァ〜〜〜!!!」
『明けの明星』は敵全体に属性無視で特大ダメージを与えるスキルである。
こちらもルシフェル専用スキルである。
連続で高い威力の攻撃を受けた怪物は、かなり弱っているように見える。
ここが勝負どころだろうーーー!
「チェンジ、ヨシツネッ!」
「ここに。」
「「『チャージ』・・・。」」
俺はここで、俺の持つ“ペルソナ”の中で最強格の手札を切った。
ヨシツネは物理攻撃最強の“ペルソナ”である。
そしてその専用スキルが、非常に強力なのである。
「ガアァァァァァ〜〜〜!!!」
が、怪物はかなりのダメージを与えたにも関わらず、反撃に転じる。
まぁ、こちらも『チャージ』をしていたから、少し隙ができたのは否めないのであるが。
(ちなみに『チャージ』は、使用後に1度だけ、物理スキルのダメージを倍以上にするスキルである。
ただし、その為にはある一定時間の“溜め”が必要となるので隙ができてしまうのである。
ヨシツネの持つ専用スキルとの相性も良く、よくお世話になったコンボであった。)
様々な攻撃が雨あられと俺達に降り注ぐ事となったが、ヨシツネは属性相性もかなり強いし、鍛えに鍛えた事によって、『力』と『速』のステータスもかなり高い。
その結果、怪物の攻撃を避けたり、ダメージを無効化する事に成功していた。
まぁ、多少は被弾してしまったのだが、それも問題ない。
「行くぞ、『八艘跳び』っ!!!」
ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ!!!
「んギャアァァァァ〜〜〜!!!」
『八艘跳び』は敵全体に物理属性で小ダメージを8回与えるスキルであり、ヨシツネの代名詞にして専用スキルである。
小ダメージとは言ってるが、ステータスの高さと『チャージ』の効果も相まって、総攻撃力はかなりのものである。
以前使った時は、なんだかんだ言って手加減していたが、今回は正真正銘全力での攻撃であった。
ビシビシビシッ!
パリンッ!
その結果、不思議な事が起こった。
叫び声に人間らしい声が一部混じっていたのには気が付いたが、怪物が纏っていた“外殻”のようなものが弾け飛んだのである。
その中には、先程見た覚えのある人物の姿が存在していた。
「父さんっ!!!」
呆気に取られる俺達をよそに、すぐに動いたのは政樹さんであった。
俺に霊力を
「よしっ!」
「よっしゃぁっ〜〜〜!!!」
とりあえず、政樹さんの父親を救出できた事を確認すると、俺と横島はそれぞれそんな声を上げていたのであったーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。