続きです。
今回は特に独自解釈と独自設定が強めです。
それと、作者はあまり関西方面の方言には詳しくないので、なんちゃって方言になってしまいますがご容赦下さい(笑)。
・・・
クズ親父side
「・・・ここはっ・・・?」
「ざまぁないわね、鬼道ちゃん〜〜〜。」
「よ、・・・いや、六道はん。」
美神らと番長、政樹の機転によって、無事に救出された政樹の父親は、冥子の暴走によって彼から独立した不定形の化け物が倒された後、気を失っていた。
そして気付いたのが今であり、見知らぬ天井に戸惑う中、こちらは見知った声によって一気に現実に戻されたのであった。
葉子の表情は複雑であった。
怒ったような、それでいて憐れむような、何とも形容し難いものだったのだ。
それは彼女の心境を、ある意味では如実に表しているものでもあったが。
ふぅ、と一息吐くと、ややあって葉子は言葉を続ける。
「今、この場には私以外誰もいないわ〜〜〜。だから、“以前のように”私を呼んでも構わないわよぉ、いっくん〜〜〜?」
「・・・よっちゃん・・・。」
葉子に促されるまま、政樹の父親は昔の呼び名で葉子を呼んだ。
実はこの二人、ある意味では幼なじみのような関係であった。
まぁそもそも、鬼道家は今は没落しているとは言えど、平安時代から続く“式神使い”の家系は非常に貴重な存在であるから、現存する家同士の交流があったとしても何ら不思議は話ではないのである。
それ故に、この二人は子どもの頃からの知り合いであったのだ。
また、これは余談ではあるが、この二人をくっつけようとした話も実はあった。
先程も述べた通り、今や“式神使い”の家系は非常に貴重な存在であるから、今回の件のように、その血筋を色濃く残そうとした流れがあったのである。
もっとも、政樹の父親の父親、つまり政樹からしたら祖父に当たる人物が鬼道家没落のキッカケを作ってしまい、その話は御破算となってしまっていた。
実質的にトドメを刺したのは政樹の父親ではあるが、それはそれまでの失敗を取り戻そうとした結果故の事でもあったのである。
そうした意味では、このクズ親父、もとい
もっとも、政樹に強いたあれこれを鑑みると、所謂“善良な人物”、とは言い難いのであるが。
まぁ、それはともかく。
「それで?ここはどこや?ワシはどうなったんや?」
一瞬、様々な思いが交錯したが、一樹は今の自分の置かれた立場を思い出してそう尋ねる。
「ここは六道家の客室よぉ〜〜〜。あの後、気を失っていてしまった貴方を運び込んだのよぉ〜〜〜。ついでに、その時にお医者さんにも診てもらっているわぁ〜〜〜。まぁ、気が付いたのなら、またしっかり診て貰う必要があるでしょうけれどねぇ〜〜〜?」
「・・・。」
「ああ、皆も無事よぉ〜〜〜。後、いっくんにも命に別状はないわねぇ〜〜〜。ただし、霊力は大分持っていかれたのか、今は一般人に毛が生えた程度になっちゃってるけどぉ〜〜〜。」
「さよか・・・。」
衝撃的な葉子の発言に、しかし一樹は冷静に受け止めていた。
これも、おそらく例のシステムを使った事による副作用であろう。
もっとも、一度魔物化したにも関わらず、“
「今度はこっちから質問いいかしらぁ〜〜〜?」
「・・・ああ。」
「一体何が起こったのかしらぁ〜〜〜?人の身で魔物化するケースは、前例がない訳じゃないけど、非常にレアなケースよぉ〜〜〜。少なくとも、何らかの
「・・・。」
鋭い目つきの葉子に、一樹も誤魔化すつもりはないのか自身の手を広げて見せた。
「・・・指輪〜〜〜?」
「ワシに接触してきた者から貰ったモンや。何でも、“願いが叶う指輪”、らしいで?」
「・・・。」
何とも胡散臭い代物である。
だが、仮にこれが“オカルトアイテム”だとしたら、色々と納得もできた。
「ああ、一応言ってとくけどな。これは“オカルトアイテム”やないで?ワシも一応は霊能力者の端くれや。“オカルトアイテム”やったら、その時点で気付いとるわ。」
「ふむぅ〜〜〜?」
しかし、葉子の考えは一瞬で否定される。
そうなると、益々分からない事が増える。
「とりあえず、それはこちらで預かってもぉ〜〜〜?」
「好きにしいや。ただ、今見た感じ、壊れとるみたいやけどな。」
「あら〜〜〜?」
素直に指輪を手渡してきた一樹だったが、彼の言う通り指輪は損傷が激しかった。
「ちなみに、その人はどんな感じの人だったかしらぁ〜〜〜?」
「別に“普通”やで?少なくとも、霊能力者ではあらへんかったわ。まぁ、金は持っとったみたいやけどな。」
淡々とした一樹の証言に、葉子は眉間のシワがより深くなっていった。
ハッキリ言って、分からない事だらけである。
何故、一樹は、今回動いたのか?
何故、一樹は魔物化したのか?
おそらくその答えは、その一樹に接触してきた者が知っている可能性が高いが、この分では一樹が持っている情報はあまり多くないと見た方が良いかもしれないからである。
とは言え、現状大事な手がかりとなるだろう、この“指輪”が手元に来たのは一応は収穫だ。
これを、科学的、オカルト的に調べれば、何か分かるかもしれないからである。
「ふぅ〜・・・。すまんな。ちょっと疲れたわい。」
「そうねぇ〜〜〜。命に別状がないとは言えど、今は安静にしておくべきでしょうねぇ〜〜〜。とりあえず、この“指輪”は預からせて貰うわよぉ〜〜〜。それと、お医者さんのOKがでたら、捜査なんかも協力もぉ〜〜〜。」
「了解や。今更ワシも、隠し立てするつもりはない。まぁ、ワシが持っとる情報は少ないだろうが、よっちゃんなら何とかするやろ?」
「フフフ・・・。」
流石に色々あって観念したのか、あるいは色々と吸われて毒気も抜けたのか、一樹はサバサバとした表情で頷いた。
それに葉子は、そんな場合ではないとは分かっていたが、微笑みを浮かべずにはいられなかった。
それはもしかしたら、葉子が知る、昔の一樹の姿だったのかもしれないーーー。
「ああ、それとぉ〜〜〜。」
「ん?何や?まだ何かあったか?」
「いえ、一応確認までに〜〜〜。政樹さんは、
「・・・・・・・・・へっ?」
その葉子の宣言に、一樹は分かり易く間の抜けた表情をしていた。
しかし、これは一樹の反応がむしろ当然である。
あんな事があった後だ。
『お見合いデスマッチ』の結果も有耶無耶であろう。
それに、今回の騒動の原因の一因は、まず間違いなく一樹にもある。
そんな者が身内にいるのならば、いくら政樹が優秀とは言っても、中々そういう決断には至らないものだろう。
・・・普通ならば。
だが、残念ながら葉子は普通ではないし、かなりの切れ者でもあった。
「今回の件、実は茶番だったのよねぇ〜〜〜。いっくんは前の時に姿を消してしまったから知らないだろうけど、あの後、ウチの冥子と政樹さんは結構いい感じだったのよ〜〜〜。ただ、
「なっ・・・!?そ、そうやったんかっ!!??」
葉子のネタばらしに、当然ながらそんな事情を知らない一樹は驚愕の表情を浮かべる。
次いで、だとしたら自分のやった事が、全て無駄、どころか政樹の足を引っ張っただけであり、なおかつ、自分自身で自分の望みを潰しかけた事実にも気付いていた。
「そ。だから、いっくんがやった事は全て無駄だったのよねぇ〜〜〜。」
「・・・あいかわらず手厳しいな、よっちゃんは・・・。」
「それはそうよ〜〜〜。昔からこれはいっくんの悪い癖だけど、猪突猛進過ぎるのよねぇ〜〜〜。」
「・・・。」
先程も述べた通り、鬼道家没落の直接的なキッカケを作ったのは、実は一樹の父親である。
彼はそれを回避すべく、色々な事業などに手を出してしまい、結果としてトドメを刺してしまった訳である。
他にも、そんな状態で葉子に求婚したりして断られたり、事業失敗の穴埋めに借金を申し出て断られたりと、とにかくやる事成す事全て裏目に出る感じであった。
まぁここら辺は、その人の性格にもよるのであるが、しかし実際には、所謂“ギャンブル”の如く、一発逆転を狙った結果、起こった事でもある。
周囲の意見も取り入れて、ハイリスクハイリターンである一発逆転を狙わずに地道にコツコツやっていけば、もしかしたらそうした未来も回避できたかもしれないのである。
まぁ、だからこその一樹、なのかもしれないが。
「しかし、それやとこっちが得するばっかやないか。まぁ、実質的に鬼道家がなくなる事には変わらんが。」
「そうでもないわぁ〜〜〜。いっくんも知っての通り、
「なんや、自慢かい。」
「そういう話ではないわぁ〜〜〜。六道家の盟主ともなると、財界や政界との繋がりもあって色んな会にも出席しなければならないし、GS業界との会合も多いのよ〜〜〜。それに加えて六道家の持つ事業なんかも管理しなきゃならないから、時間がとにかく足りないのよ〜〜〜。」
「・・・。」
サラッと言ってるが、これが現在六道家が置かれた状態である。
ただのお金持ちならばともかく、六道家が持つ社会的立場はかなり重要な位置にある。
その盟主、当主ともなると、各方面との調整や根回しに色々と時間を取られる事となる訳である。
その為に、様々な事をサポートする存在、例えば執事さんやメイドさんの存在がある訳であるが、更に六道家には、“霊能力者”の家系、という立場もある。
当然ながら“霊能力”は、普通の人々に扱えるものではないし、特に六道家は“式神使い”という特殊な能力を持つ家系でもあるから、外部から優秀な“霊能力者”を連れてくればそれで解決、という訳にもいかないのである。
「無事に政樹さんと冥子の婚姻が成立すれば、将来的には“霊能力者”の子供が生まれる事となるでしょうねぇ〜〜〜。そうなったら、当然、その子を育てる為にも、色々と必要になるのよ〜〜〜。もちろん、作法や教育なんかは何とでもなるけど、“霊能力”を普通の人達に育む事は難しいわ〜〜〜。そして、さっきも言った通り、六道家の中枢を担う“霊能力者”、つまり私や政樹さんや冥子も多忙になるでしょうから、暇をしている“霊能力者”、それも“式神使い”は喉から手が出るほど欲しい人材だわぁ〜〜〜。」
「・・・つまり、ワシをその“教育係”に任命しよう、ってワケかいな?」
「そう〜〜〜。理由はともかくとして、また冥子には敵わなかったとは言え、政樹さんをあれほど一流の使い手に育て上げた手腕を私は評価してるのよぉ〜〜〜?」
「フッ、あいかわらず毒舌やなぁ〜。しかし、ええんか?ワシにとっては願ったり叶ったりの条件や。断る理由はないわ。まぁ、まだハッキリと分かった訳やないけど、ワシの霊能力が一般人並みになっとるのは何となく分かっとる。が、政樹でノウハウは学んでるから、人にものを教えるのは難しい話やないやろ。けど、ワシがその子に、ある事ない事吹き込むとは思わへんのか?」
「まさかぁ〜〜〜。今更そんな事、全くの無意味よぉ〜〜〜?むしろ本気で鬼道家再興を目指すんなら、その子
「その子、
「ああ〜〜〜、いっくんは六道家の
六道冥子は一人っ子である。
六道家ほどの名家であれば、むしろ兄弟は多いに越した事はないように思われるが、しかし葉子が語った通り、逆に大きな家だからこそ、遺産を巡る争いが生まれる可能性もある。
そこで六道家では、医療の発達した近年に入ってからではあるが、あえて後継者を一人にする事で、そうした諍いを未然に防いでいたのである。
またこれは、優秀な“霊能力者”を残す、という事にも繋がる。
何故なら、技術を一部の者達で継承する事によって、“質”を維持できる側面もあるからである。
例えば、“能”のような伝統芸能は、あえて門戸を広くしない“一子相伝”的な技術として、現代まで生き残っている。
これと同じように、“式神使い”としての技術を一人に集約する事によって、六道家は現代まで生き残れた側面もあるのである。
(また、単純に、六道家の“式神”、十二神将は非常に強力だが、仮に後継者が複数人存在する場合、それらを分割した可能性があり、そうなれば当然“式神使い”としての力は落ちる事となる。
そう考えると、葉子が知らないだけで、実は大昔からあえて一人っ子、というスタイルを貫いていた可能性もある。)
「な、なるほどっ・・・!仮に二人の子供が生まれたとしても、一方はこれまで通り、六道家を、もう一方は鬼道家を継げば、丸く収まる、っちゅ〜ワケか。」
しかし今回の場合、“継ぐ家”、というものが二つに増える事となる。
それと同時に、十二神将と夜叉丸、という“式神”の選択肢も広がっているのである。
「そう〜〜〜。企業なんかでも、一旦吸収しておいて、ある程度再建が進んだらまた独立させる、なんて事は良くある事よぉ〜〜〜?となれば、どちらの方が鬼道家にとって得かなんて、今更言わなくても分かるわよねぇ〜〜〜?」
「・・・精一杯やらせて貰いますわっ!」
現金なもので、葉子の誘導に一樹は手のひらを返し、大仰に頷いた。
「そう〜〜〜?」
それに、葉子も満足そうに頷き、今度こそ部屋を出ていくのであったーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。