P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


後日談

 

・・・

 

番長side

 

「お〜う。邪魔するぞ~い。」

「失礼・致します。」

「あら、カオスにマリア。」

 

あの事件から数日後。

ひのめちゃんのベビーシッターのバイトで美神さんの事務所を訪れていた俺は、ドクターとマリアさんの突然の訪問に居合わせていた。

 

「どうしたのよ、突然?」

「いや、お主等にも情報を共有しておこうかと思っての。六道家当主の意向もあるしの。」

「それってっ・・・!」

「“指輪”の解析結果が出たんじゃよ。」

「「っ!!!」」

 

その言葉に、あの場にいた当事者である横島、シロ、タマモも興味深げにこちらに集まってきた。

ちなみにおキヌさんは、当日はいなかったが、訪問者二人の為にいそいそとお茶を入れに行っていた。(まぁ、マリアさんは飲まないのだが。)

 

「ってか、冥子ちゃんのお母さん、カオスのじーさんに解析を頼んだんかい。」

「そりゃそうじゃろ。自慢じゃないが、今現在のこの世界で、ワシ以上の頭脳の持ち主はおらんからなっ!!ヌワーッハッハッ!!!」

「イエス、ドクター・カオス。」

「「「「「「・・・。」」」」」」(-_-;)

 

豪快に笑うドクター。

・・・確かに、聞いた話、この人は紛れもない天才ではあるが、自分で言いますかね。

まぁ、だからこそのドクターなのかもしれないが。

 

美神さん達もそれには軽く呆れていたが、否定もせずに続きを促した。

 

「じゃあ、その“大天才”にご説明頂こうかしら?」

「おう、良いぞっ!ヌワーッハッハッハッ!!」

 

分かり易い美神さんの“お世辞”なのか、“嫌味”なのかは定かではないが、に、ドクターも気を良くして再び豪快に笑うのだったーーー。

 

 

「結論から言えば“指輪(これ)”は、一種の受信装置じゃ。」

「受信装置?」

「うむ。言うなれば、“スマホ”のような物じゃな。まぁ、送信機能は無いようだがの。」

「なんちゃらウォッチの更には小さいバージョン、ってトコか。」

「おお。お主にしては、中々鋭いではないか、小僧。まぁ、そのような物だと解釈してくれれぱ良いぞ。」

「ふぅ〜ん。って事は、それによって何らかの情報を取得していたとか?それこそ、盗聴器みたいな。」

「うむ、悪くない線じゃな。“情報の取得”、ってのは、良い線だと思うぞ。」

「勿体ぶってないで、早く教えなさいよ。」

「まぁ、そう急ぐな。物事は順序立てて理解しないと、思わぬ落とし穴があるモンじゃなからな。」

「・・・。」

 

いよいよ確信に迫る雰囲気だっただけに、美神さんも少し焦っていたのかもしれない。

ドクターの言葉に、ふぅ、と一息吐くと、改めて彼に向き直った。

 

「アンタの言う通りね。で?結局“指輪(これ)”と、あのオッサンの魔物化の因果関係は分かったんでしょ?」

「い〜や、それがサッパリ。」

 

ズコッーーー!!!

 

訳知り顔なドクターから発せられた間の抜けた答えに、思わずマリアさんを除く全員がズッコケた。

 

「カッコ良い事言っといて何も分かっとらんのかいっ!!!」

「こ、こら、年寄りはもっと丁寧に扱わんかいっ!」

「やっかましいっ!!!」

「あうちっ!」

「ま、まーまー。」

 

すぐに復活した美神さんが、ドクターの胸ぐらをつかむ。

それにあうあう言いながら抵抗するドクターに、しかし美神さんは物理的なツッコミを入れるのだったーーー。

 

 

「じゃ、じゃから、情報があまりになさすぎて、分からん事だらけなんじゃよっ!」

「・・・ま、それはそうなんでしょーけど、いやでも待って。六道家も何か調べたんじゃなかったっけ?」

「流石に耳が早いの。確か、“指輪(これ)”の受信記録から、怪しい施設に踏み込んだらしいわい。」

「そこには、何か情報はなかったの?」

「それがサッパリでの。いや、目撃情報から、その場には高価な機材が存在しとったらしいから、そこから何かしらの情報なりを送っとった可能性はあるが・・・」

「すでに情報は消されていた、と?」

「いや、そんな生温いものではないわ。時限爆弾、じゃよ。」

「「「「「っ!!!???」」」」」

「物理的に物を破壊すれば、証拠隠滅は容易じゃな。もちろん、そこから回収した機材から情報を取得できる可能性もあるが、しかしどうやら一度証拠なんかを消した上で爆弾をセットしとったらしく、サルベージできた情報はほとんど皆無に近かったらしいわ。」

「・・・まさに、骨折り損のくたびれ儲け、ってワケね。」

「うむ。幸い、六道家の者達に死者は出ておらんが、負傷者は多数出ている。誰だかは分からんが、相当なやり手じゃろうな。」

「なるほど・・・。」

 

自分達の弱みになるものすら罠に利用し、なおかつこちら側に打撃を加えただけで情報もシャットアウトする・・・。

 

確かに、それをした手腕は見事、としか言いようがない。

まぁ、六道家にとっては笑い事ではないだろうがな。

 

「ただし、“ヒント”は残っとったわい。」

「“ヒント”?」

「ああ。それだけ徹底的に証拠隠滅しとったのに、何故かとあるメッセージだけは拾い上げる事ができたんじゃよ。おそらく、あえてこちらにその存在を知らせる為じゃろうがな。」

「・・・そのメッセージというのは?」

「“我々はどこにでもいる。”」

「っ!?それってっ・・・!」

「例のアプリの捜査でも残されていたメッセージ、ですよね?」

「逆に言えば、それしか分からなかったヤツよ。そうか、その連中が関わってたのね・・・。」

 

ドクターの言葉に聞き覚えのあった俺は、話に割って入る。

それは、俺が西条さんらオカルトGメンに捜査協力した時のメッセージと全く一緒だったからである。

 

“催眠アプリ”なるものが中高生の間に出回り、少なくない被害が出てきた事もあって、その大元を探ろうとした件だが、結局それは分からず終いであり、残されていたのがそのメッセージだけだったのだ。

 

なるほど、今回の件も、その者達が裏で関与していた、という事か・・・。

 

「それらの状況証拠から、ある程度の事は分かった。まぁ、さっきも言った通り、確固たる証拠がないので、あくまで推測に過ぎんがな。」

「なるほど・・・。それをカオスは六道家に伝えた、って事ね。」

「ま、そういう事じゃ。」

 

証拠がないとは言えど、流石はドクター。

そんな少ない情報から、何かを掴んだようである。

 

「聞かせて。」

「うむ・・・。結論から言えば、おそらく奴らのやっている事は大掛かりじゃが意外と単純じゃ。仮に件のアプリも利用したと考えると、霊力の電波への変換、電波から霊力への変換、じゃろうな。」

「・・・と言うと?」

 

あまりに端的過ぎて、こちらには意味が理解できなかった。

ドクターもそう来ると分かっていたのか、改めて説明を続ける。

 

「意外な話、でもないかの。お主の母も、それを利用した事があったか。条件さえ揃えれば、科学技術は霊能力に活用する事が可能じゃ。例えば、()()()()()()()()()()()()()()、の。」

「あっ・・・!!!」

 

「・・・空母?」

「ああ、お前は知らんわな。隊長は一度、原子力空母を戦術に組み込んだ事があるんだわ。まぁ、今考えれば“時間移動能力者”である隊長にしか、まぁ、美神さんはワンチャンあるか。それと、俺も多分“文珠(もんじゅ)”を使えば不可能じゃねぇかもしれんが、とにかく、その副次的効果として、()()()()()()()()できるんだわ。ああ、もちろん準備は必要だぜ?単純に電力を受け取っただけじゃ、“時間移動”の能力を発動しちまいかねないからな。隊長の場合は、特殊な魔法陣を使用してそれを可能とした。んで、その力は凄まじいんだわ。何せ、都市を丸ごと賄えるほどの電力を自分の“力”にできるんだからな。具体的には、準上位魔族と互角くらい。小竜姫さまよりも上だな。」

「し、小竜姫さまよりも上、だとっ・・・!?」

「ま、あくまで魔法陣内限定だけどな。」

「そ、それでも凄まじいなっ!・・・あれ、なら今回の件も・・・?」

「・・・そうだな。何らかの条件で“力”を受け取っていた、と仮定すると、オッサンの変化も納得できる。」

「・・・。」

 

「つまり、何らかの方法で霊力をかき集めて、それを“指輪”に送っていた・・・?」

「そう考えるのが自然じゃろうな。聞けば“催眠アプリ”は特殊な呪術が組み込まれておったそうじゃし、それを介して所有者の霊力を増幅する効果があるみたいじゃ。もっともそれはあくまで撒き餌に過ぎず、本命はそやつらから霊力をかき集める事。当然ながら霊力を吸い取られると生命維持が困難になるから、昏睡状態に陥る者達も現れる。んで、それらから集めた膨大な霊力が、“催眠アプリ”を介して“指輪”に送られる、んじゃろうな。」

「お手軽にパワーアップが可能となる、か。今回の件を考えると納得できる話だわ。」

「ま、さっきも言ったが、あくまで仮定じゃがの。それに、仮にこの推測が正しかったとしても、それを防ぐ手立ては無いに等しい。」

「・・・麻薬と同じね。一度拡散した物を回収する事は不可能に近いわ。例の“催眠アプリ”も相当拡散しているらしいし、それを全て回収する事は警察機構やオカルトGメンでも難しいわね・・・。後は、“指輪”みたいなデバイスがあれば、向こうはお手軽パワーアップが可能、と。」

「そういう事じゃな。ま、六道家もその対応を検討しておったが・・・、まぁ、難しいじゃろうな。」

「・・・。」

 

原因が分かってもそれに対処する事が困難を極めるのか・・・。

 

そう考えると、メッセージの意味も何となくニュアンスが変わってくるな。

 

“我々はどこにでもいる。”

 

どこにでもいるからこそ、止める事は非常に困難だ。

止められるものなら止めてみろ、という意思表示にも聞こえてくる。

 

「・・・そいつらの狙いは何なのかしらね?」

「さあのう。しかしこれらの事から、今回の件は始まりに過ぎんじゃろうな。そやつらはおそらく、もっと大掛かりな事を計画しておるに違いないわ。」

「・・・かもね。」

 

重苦しい雰囲気の中、何かが分かったようで、結局何も分からず終いのままドクターの説明が終わる。

 

「気をつけろよ美神令子。お主らはトラブルの女神に愛されておる。今回の件も、おそらく巻き込まれる事となるじゃろうな。」

「どうせならお金の女神に愛されたいわねぇ〜・・・。」

「美人なら大歓迎じゃっ!」

「横島・・・。」

 

それまで黙って聞いていた横島は、お調子者っぽくそんな発言をした。

 

以前の俺ならば、またコイツの病気が始まったと思うところだが、これはコイツなりの気のつかい方なんだろう。

 

現時点では分かっている事は多くないが、だからと言って、それで不安に生きていく必要もない。

いつ起こるかも分からない事故を警戒し過ぎて、結果的に精神的にも肉体的にも追い詰められていたら、本当の“いざ”という時に動けなくなってしまうからな。

 

だったら、もちろんそれらの事は念頭に置きつつも、あまり気にし過ぎないように、日々を過ごしていく方が良い、のだろう。

 

「センセイはノンキで良いでござるなぁ〜。」

「ま、アンタらしいけどね。」

「ナハハハッ!!」

 

それは俺よりも長い付き合いである美神さん達にも分かってるのか、コイツの発言をキッカケとして重苦しい雰囲気は四散する。

 

あくまでも平常心。

それが大事な事が良く分かっているのだろう。

 

「ま、横島クンの発言はともかく、確かにここでこれ以上不安を募らせても仕方ないわね。OK、分かったわ。情報提供、感謝するわよ、カオス。」

「なぁ〜に、お安い御用じゃわい。」

 

敵がいかに強大であろうとも、この人達とならば乗り越えられる。

 

そんな確信のようなものを、俺は感じ取っていたのであったーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、じゃ。」

「ん?」「はい?」「おかわりですか?」「・・・?」「なんでござるか?」「なに?」

 

しかし、ドクターがいて話がキレイに纏まるワケもなかった。

良い雰囲気のまま話が終わるかと思ったら、ドクターは突如として話題を変えてくる。

 

「聞いたぞ、鳴上の小僧。お主、魔物化した人間を元に戻したそうじゃな?」

「ああ・・・。」

 

が、残念ながらこの時の俺は、まだドクターのハチャメチャっぷりを正確には認識していなかったのである。

 

故に、何の疑問もなくその問いに答える。

知的好奇心旺盛なドクターなら、その事に興味を抱いたとしても不思議ではない、とも思っていたのである。

 

「ええ、まぁ。自分でも確信があった訳ではないのですが、“マヨナカテレビ”での前例もあったのでね。いやぁ、上手くいって、正直ホッとしていますよ。」

「ほうほう。」

 

「・・・まずいんじゃないっすか?」

「そうね・・・。元々カオスは、鳴上クンに並々ならぬ興味を抱いていたもの。それで今回の件、となると、()()無茶をやらかさないかしらね。」

 

「お主は知らんかもしれんが、こちらの世界では一度魔に堕ちた人間が元に戻る事は普通はありえん。もちろん、条件次第ではそれも不可能ではないが、お主の場合は特に何の準備もなくそれを成しておる。これは凄い事じゃ。」

「は、はぁ・・・。」

 

ドクターの素直な称賛に、俺は気恥ずかしい気持ちもありつつ曖昧に頷いた。

 

「やはりお主の“力”は、根本的にこちらの世界の霊能力とは異なるのかもしれんなぁ〜・・・。」

「ま、それについては同感よ。一応事例は少ないみたいだけど、こっちにも“ペルソナ能力者”はいるみたい。だけど、鳴上クンのように現実世界でも行使可能ではないみたいだからね。もしかしたら彼らも、鳴上クンと同じ条件なら、アンタと同じ事ができる可能性もあるけど、その為にはまず、そもそも“異界”でしか使えないハズの力を、現実世界でも使えるようにする必要があるもんね。」

「うむ。お主の“力”は、やはりイレギュラーなのじゃよ。しかしそれが故に、もしかしたらお主が、今後切り札になりうるかもしれんな・・・。」

「そんな・・・。」

 

それは流石に大げさでは?

仮に俺がいなくても、美神さんの知識と横島の文珠(チート能力)があれば、大抵の事には対処可能だろう。

 

今回の件にしても、横島の力ならもっと安全に魔物化から復帰させられた可能性もあるし。

 

だが、ドクターが言いたいのはそうした意味ではなかった。

 

ガシッ!!!

 

「・・・ん?マリアさん?」

「すいません。鳴上・サン。」

 

突然マリアさんに掴まれる俺。

彼女は無表情の中にも、どこかしら申し訳なさそうな雰囲気を漂わせている。

一体何だろうか?

 

「よくやったマリアよっ!っつーワケだから、改めてお主の“力”を我がラボにて調べたいんじゃ。協力してくれるなっ!?」

 

グググッ!

 

「いたたたっ!」

 

そんなドクターの言葉をキッカケに、俺は万力の如きマリアさんの力で引っ張られた。

 

「そうくると思ったわよ、カオスッ!ウチの丁稚に勝手な事すんなっ!」

「ええい、邪魔をするな、美神令子!」

「誰が丁稚ですかっ!ってかマリアさん。痛いから止めてっ!」

「ノー。ドクター・カオスの命令は・絶対なのです。」

 

・・・

 

「あぁ~あ、結局こうなるんかい・・・。」

「しまりませんねぇ〜、ウチの事務所は。」

「いやいやセンセイにおキヌどの。ノンキにしている場合ではござらんよ?」

「あん?こんなのいつもの事だろ?」

「それはそうなんだけど、今はひのめがいるのよね・・・。」

「「・・・あっ。」」

「ひのめどの、鳴上どのをいたく気に入っているのでござる。」

「そんな()()()()()が、目の前で拉致られそうになっていたら、どうなると思う?」

「・・・マズい?」

「・・・。」

 

コクリと頷くタマモ。

そしてクイッとひのめの方を指差した。

 

「・・・ほあぁ・・・。」

そこには、今にも爆発し(ぐずり)そうなひのめの姿が。

横島達は、サッーと血の気が引いた。

 

「ヤベッ・・・。」

「っつーワケだから、私達は一足先に脱出するわね。」

 

そそくさとシロとタマモが出ていく。

少し躊躇しながらも、おキヌもそれに続いた。

 

「こ、こらっ、キタねぇ〜ぞっ!!!」

「うっさいわねっ!私らはこれまでかなりの被害に遭ってんのよっ!!これ以上火傷したくないわっ!!!」

 

横島はそれを引き止めようとするも、軽く返り討ちにあった。

 

基本的に事務所に住んでいるこの三人は、以前は安アパートに、今は妙神山に拠点を置いている横島(つまりは通いである)とは違い、ひのめの被害に遭う確率は彼女達の方が高いのである。

 

まぁそれも、番長が来てからは激減しているのであるが、その彼は今、マリアに拘束されている状況だ。

 

カオスと美神は言い争いに夢中だし、番長とマリアは押し問答を続けている。

 

つまり、その危険な兆候に気付いているのは横島達だけであり、なおかついつ爆発するかも分からない状況の中では、薄情と言われようとも自らの安全を確保するのが最優先事項であろう。

 

昔の横島ならば、タマモ達と一緒に脱出するところだろう。

もちろん、変な間の悪さ故に美神に引き止められて、結果彼だけがひのめに被害に遭うのがある種のお約束であったが、今の彼は、依然としてトラブルメーカーであったり、お笑い要員である事には変わりないが、多少は成長もしていた。

 

それに、何かあった場合、後で美神の機嫌を損なうのも彼にとってはあまり好ましくない事もあったのだろう。

 

それ故に、意を決してすうっと大きく息を吸い込んだ。

 

「鳴上ぃ〜〜〜!!!ジャアクフロストを召喚しておけぇ〜〜〜!!!」

 

・・・

 

「鳴上ぃ〜〜〜!!!ジャアクフロストを召喚しておけぇ〜〜〜!!!」

 

「・・・ん?何だ???」

「・・・高熱源反応、増大。」

「あっ・・・。」

 

マリアの警告に、遅ればせながら番長も異変に気が付いていた。

 

そもそも彼は、今日はひのめのベビーシッターのバイトで美神の事務所を訪れている。

ならば当然、この場にはひのめがいるワケで、カオスの説明の際にはスヤスヤと大人しくお昼寝をしていたひのめだったが、彼らが騒ぎ出した事で目を覚ましてしまったのである。

 

しかも、お気に入りの()()()()()である番長が、まだ赤子なので状況は分からないまでも、自分の目の前から連れ去られる=いなくなるとなれば、不機嫌になるのも当然であろう。

 

ただ、普通の赤子と違い、ひのめはこの歳にして高レベルの“念力発火能力者(パイロキネシスト)”でもあった。

普通の赤子はギャン泣きする程度(まぁ、それでも結構な音波攻撃かもしれないが)で留まるところを、彼女の場合、その不満が“発火”という形で現れてしまうのである。

 

火災の恐ろしさなど今更語るまでもないだろう。

もちろん、それはすでに発覚している事実なので、美神親子はその対策をしているのであるが、彼女の強力な力故に、封印の御札などは気休め程度でしかない。

根本的に解決する為には、彼女がもう少し成長し、自身の力を完璧にコントロールする術を会得するしかないが、残念ながらおしめも取れていない赤子には荷が重い話でもある。

 

だが、そんな“念力発火能力(パイロキネシス)”に完璧に対応できる能力が番長にはあった。

ご存知“ペルソナ能力”であるが、その中には火炎を吸収してしまう、という完全に物理現象を無視したスキルも存在するのだ。

 

それは、美神親子が強引に番長をひのめのベビーシッターにするのも無理からぬ話であろう。

何せ、周囲への被害はもちろん、“念力発火能力(パイロキネシス)”のもっとも恐ろしい点は、術者自身も燃やしてしまう可能性がある事だからである。

自分の娘が、妹がそれで命を失う可能性を考えれば、それすらも問題なく対応できる番長は、喉から手が出るほど欲しい人材なのである。

 

「ほあ゛あ゛!!ほあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

「くっ、来い、ジャアクフロストっ!!!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

「「「ぎゃあぁぁぁぁーーー!!!」」」「・・・。」

 

ドゴォ〜〜〜ンッ!!!

 

ひのめのギャン泣きに、番長は咄嗟にジャアクフロストを召喚した。

お陰で事務所内が火の海になる事は防げたが、

 

「あ゛ち゛ぃ〜〜〜〜!!!」

「ドクター・カオス!今、消火致します。」

 

咄嗟の事だったので、完璧に火が打ち消せず、何故かカオスだけが炎に包まれる事態となっていた。

 

「ひ、ひのめはっ・・・!?」

 

ようやく我にかえった美神が、自分の妹の身を案じる。

 

「ぶ、無事っすよぉ〜〜〜!」

「キャッキャッ!!!」

 

そこには、すすだらけになりながらも、何とかひのめをあやす横島の姿があった。

 

ひのめにとって、番長もお気に入りのお兄ちゃんだが、横島もお気に入りのオモチャである。

それで、機嫌も直っていたようである。

 

「ホッ・・・。サンキュー、横島クン。もしかして“文珠(もんじゅ)”を使ってくれたの?」

「うっす。鳴上が間に合わないかもと思ってね。ひのめちゃんに何かあったら、隊長に申し訳ないですし。」

「やるじゃないか、横島。」

 

そう。

番長の対応が間に合わないと踏んだ横島は、こちらも咄嗟に“文珠(もんじゅ)”を使って、自身とひのめを守ったのである。

 

横島も、すでにただのお笑い要員ではないのである。

 

・・・いや、

 

「あ゛あ゛〜〜〜!横島の小僧ぉ〜〜〜!た゛す゛け゛て゛く゛れ゛ぇ゛〜〜〜!!!」

「動かないで・ドクター・カオスッ!」

「んぎゃあぁ〜〜〜!こっち来んなぁ〜〜〜!」

 

残念ながらの生来のトラブルメーカー故に、混乱したカオスに助けを求められて追いかけられるハメになったのであるが。

 

「ええい、外でやらんかぁ〜〜〜!!!」

「ギャンッ!」

「ヘブシッ!」

「ドクター・カオスッ!」

 

ギャアギャア騒ぐ二人を、美神は窓から突き落とした。

若干酷い行いだが、この二人にとってはいつもの事でもあるし、衣服の燃えていたカオスが暴れまわり、せっかく守った事務所を荒らされてはたまらなかったのであろう。

 

マリアもそれに続いて外に飛び出していく。

 

「・・・ったく、ほんっとにしまらないわねぇ〜。」

「ハハハッ・・・。」

「あう・・・?」

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
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