続きです。
今回からは不定期掲載となります。
???
〈
〈どういう事だ・・・?すでに“マヨナカテレビ”はその機能を失っている筈・・・。異界にでも行かない限り、その姿を見失う事などありえないし、いくらペルソナ能力者と言えど、ただの高校生が我々の存在に勘付く筈もない。〉
〈分かりません。が、事実です。
〈・・・怪しいとしたら、その見知らぬ
〈それで、どうしますか?我々は今、
〈そうだな・・・。何の手掛かりもない以上は、そこが唯一の手掛かりと言えば手掛かりか・・・。数日間は様子を見るべきかもしれんな・・・。とりあえず、同士諸君はその場にて待機してくれたまえ。何か異変があれば、逐一報告する様に。〉
〈ハッ、了解しました。〉
「我々の宿願が果たされる可能性が生まれたばかりだと言うのに、やはり一筋縄では行きませんな。」
「それも致し方ありますまい。しかし、
「然り。だが、
「・・・まさか、
「それはありますまい。我々の監視を掻い潜り、密かに
「いずれにせよ、手掛かりが皆無ですか・・・。ここは、少し別の手法を模索する必要があるかもしれませんな・・・。」
「と、申しますと?」
「例えばですね・・・。」
イザナギの懸念通り、鳴上は、謎の組織から密かに監視されていた様である。
もっとも、イザナギの素早い行動の為、とある山中にて彼らは鳴上の姿を見失う事となってしまっていた。
まぁ、これは、イザナギと鳴上が霊場である“妙神山”を介して
こうして、謎の勢力が密かに暗躍する中、そんな事は知らない鳴上のGS世界での生活が、本格的にスタートする事となったのであるーーー。
3/24
番長side
「改めまして、拙者は
「私はタマモよ。その・・・、よろしく。」
「鳴上悠です。よろしく。」
「ってなワケだから、基本的にはひのめの事はコイツらに聞いてちょーだい。私も面倒見てるけど、そうは言っても仕事もあるからねー。」
「分かりました。」
「って言っても、昨日ママも言ってたけど、基本的にはママが面倒みるわ。一応産休中の身だからね。どーしても外せない用事の時には私の方で預かるって感じだから、ベビーシッターのバイトもそう頻繁にあるワケじゃないわ。ま、それは事前に知らせるわね。」
「確か、美智恵さんは政府とかとも関わりがあるんでしたか?」
「まーね。本っ当、御役所勤めは大変よねー。」
「分かる気がします。俺の叔父も警察の人間ですから。」
「あら、そうなの?随分お堅い職業なのね。」
「その分安定はしてますけどね。ただ、家族と過ごす時間が制限されて大変そうでした。」
「それはそーね。私みたいなフリーランスと違って、安定と引き換えに時間の融通はつけにくいモンねー。ママはその点、半民半官みたいな立場だから、時間の都合はつけやすいけど、その分各省庁なんかからの相談事なんかには対応しなきゃならない、ってワケよ。」
「なるほど。」
「ま、そんな話はいーわ。今日は久々に仕事なのよ。そろそろおキヌちゃんと横島クンを連れて出るわね。後は頼むわ、シロ、タマモ。」
「了解でござる。」
「いってらっしゃい。」
軽く頷いて、美神さんは颯爽と出ていった。
なんだかんだ言っても、カッコいい女の人である。
「それで、俺はどうすれば良いんだろうか?」
「そんな難しい事ではござらんよ。基本的には、ひのめどのと遊んだり、ミルクを飲ませたり、おしめを取り替えたり、寝かしつけたりするだけでござるからな。」
「まー、それが大変なんだけどね。それと、ひのめの場合は、念力の問題もあるわ。だから、その封印も定期的にしているの。もっとも、それは美智恵さんや美神さんがやるわ。私達は、そういうの苦手だから。」
「なるほど。とりあえず、ひのめちゃんの遊び相手、兼火災対策としてジャアクフロストを喚んでおくか。
来い、ジャアクフロスト!」
「喚ばれて飛び出てジャジャジャジャーン、だホー。」
「あー、だー、だー!」
「おー、ガキんちょ。今日も元気そうだホー。で、主よ。オイラに何の用だホー?」
「あ、いや、ひのめちゃんの遊び相手、兼火災対策としてお前に居てもらおうかと。」
「何ー!?主よ、オイラの事なめてるのかホー?オイラこれでも生粋のワルなんだホー?」
「きゃっきゃっ!!」
「けど、ひのめちゃんはお前の事がお気に入りの様だな。頼むよ、ジャアクフロスト。・・・それとも、そのワルとやらは子守りの一つもできないのか?」
「そ、そんな事はないホー。よーし、ガキんちょ。オイラが遊んでやるから覚悟するホー。」
「あー、うー。」
フッ、案外チョロいモンだ・・・。
俺が少し挑発すると、ジャアクフロストはひのめちゃんの周りを飛び回りながら、チョンチョンとつついて遊んでいた。
それを、ひのめちゃんが追いかける、と言ってもまだ歩き回れるほどではないから、手を動かしてジャアクフロストを捕まえようとする程度なのであるが。
というか、自分で言っていて悲しくなったのだが、ジャアクフロストがチョロいって事は、
ま、まぁ、そこは深く考えない事としよう。
「本っ当、アンタの式神って変よねー。普通にしゃべるし、術者に平気で逆らうし。」
「式神ではなくペルソナだ。」
「我々には区別がつかんでござるなー。しかし、ひのめどのの遊び相手が増えるのは大歓迎でござるよ。赤ちゃんの体力はとてつもないでござるからな。」
「赤ちゃん、ってか幼児は、基本的にセーブする事をしないからな。」
それからしばらく、ジャアクフロストと戯れるひのめちゃんを見守ったり、何故か先にバテたジャアクフロストと交代してシロ、タマモ、俺でひのめちゃんの遊び相手を務めたり、おしめを取り替えたり、ミルクを作って飲ませたり、ゲップをさせたり、寝かし付けたりと、一通りの事をこなした。
「アンタ、物覚えが早いわね。」
「そうか?普通だろ?」
「いやいや鳴上どの。タマモの言う通りでござるよ。普通は何回もやって覚えるモノでござるよ。」
「そうなのか?」
「それを、一度見ただけで覚えるって・・・。」
俺にとっては普通の事なのだが、もしかしてこれも、ペルソナ能力に目覚めたからかもしれない。
イザナギの話だと、ペルソナ能力者は人々の集合的無意識に繋がっているそうだから、そこから無意識的に技術や情報などを引き出している事もある様だ。
戦闘技術などがその最たる例だが、意外と日常生活におけるあれこれについても、そうした恩恵を受ける事があるのかもしれないな。
「まぁ、どのみち私達にとってはありがたい戦力だけどね。」
「そうでござるな。」
ひのめちゃんのベビーシッターを通じて、シロとタマモとの間に、新たなる“絆”の芽生えを感じていたーーー。
・・・
「助かったわー、鳴上クン。昨日の今日で、悪かったわねー。」
「いえ、楽しかったです。」
「なんだかんだ、令子も仕事で忙しいし、シロちゃんとタマモちゃんにも迷惑掛けたわねー。」
「いえいえ、美智恵どの。子どもの面倒は皆で見るモノでござるよ。」
「ま、なんだかんだでお小遣いも貰えるしね。」
「もー、素直でないでござるなー、タマモは。」
「な、何よ。」
ぶっきらぼうにそう言うタマモに、シロがそうツッコミを入れていた。
なるほど、二人の関係性が少し見えてきた様な気がする。
シロは素直で人懐っこく、裏表がないタイプだが、タマモはぶっきらぼうで、警戒感の強いタイプなのかもしれない。
だが、根は優しくて、それを表現するのが少し苦手なだけなのだろう。
・・・どことなく、マリーを彷彿とさせるな。
まぁ、いずれにせよ、タイプとしては別々の二人なのだが、それが良い感じにハマっているのかもしれない。
「しかし大変ですね。今日も何処かから呼び出しを受けたんですか?」
「ええ、そうなのよ。昨日、西条クンも話していたかもしれないけど、最近は日本でもオカルト絡みの犯罪が多いの。で、オカルト絡みの話は、日本では最近までは民間GSに頼るしかなかったんだけど、オカルトGメンが日本に置かれる様になったから、私達のところに来る案件や相談事も多くてね。基本的には、西条クンに任せてるんだけど、やっぱり人手が足りないのよ。」
「横島も言ってましたが、GSは誰にでもなれるモノじゃないですもんね。」
「そーなのよー。しかも、日本は最近まで民間GSの天下だったから、安定はしていてもフリーランスで稼いでいた頃に比べたら大分収入が減る可能性も高いから、なりたがる人があまりいないのも人手不足に輪をかける要因よ。ま、その辺は、“外部協力”とか、“出向”って形で程度は解消できるんだけど、やっぱり正式なメンバーが増えない事には根本的解決にならないのよねー。」
「なるほど。」
仕事は増えても人手がいなければ、当然仕事は回らない。
かと言って、人手を増やそうにも、特殊な才能が必要だし、給与面での問題があるのか。
「それなら、単純に給与を増やしてはどうですか?まぁ、簡単な話ではないでしょうけど、民間のGSだって、所謂一流どころばかりではないでしょうし、そうした人々を取り込むと言うのは?」
「それも有りだけど、オカルトGメンは一応は公務員、って立場だからねー。知ってるかもしれないけど、公務員って、給与面が法律によって規定されていたりするから、一般企業なんかと違って、簡単にはベースアップをする事はできないのよ。」
「けど、危険手当てとか、特別手当ては出せるのでは?横島の話だと、オカルト絡みの話はかなり危険が伴うとの事でしたし。」
「確かに、その方面で切り込む事はできるわ。実際、私もそれは訴えているからねー。まぁ、こちらも時間が掛かるでしょうけど。」
「後は、単純に役割を分担するとか。オカルトGメンだって、実働ばかりが仕事ではないでしょうし、事務方の仕事は一般人でも可能ではないですか?」
「・・・なるほど、それも一つの手ね。けれど、どっちにしても専門的な知識は必要だから、それもすぐには難しいわね。」
「ふーむ。」
「まぁ、そんな感じに、色々と動いてはいるけどその調整なんかが大変なのよ。だから、産休中の私まで駆り出される、って訳ね。」
「なるほど。昨日の西条さんの話に出た、捜査などに向いた特殊な才能を持った人材の確保と同様に、どちらにせよ、時間が掛かる問題な訳ですね。」
「そうそう。・・・けど、鳴上クンは、高校生にしては中々鋭い意見を言うのね?」
「一応、叔父が刑事でして。もちろん、直接的に話をする事はありませんでしたが、裏の話はちょくちょく漏れ聞こえていたもので。」
「あら、そうなのね。」
「それと、例の事件で、色々考える事には慣れてまして。まぁ、素人考えではありますが。」
「いえ、そんな事はないわ。そういう意見こそ、実は貴重ですもの。」
「だー、だー。」
「あら、ごめんなさい、ひのめ。すっかり話し込んでしまったわね。じゃ、私達、そろそろお暇するわ。シロちゃんもタマモちゃんも、今日はありがとうね。鳴上クンもありがとう。また、ひのめの事お願いね。」
「はいでござる。」
「じゃ、また。」
「ええ、分かりました。」
ひのめちゃんの声をキッカケに、そう言って美智恵さんは去っていった。
「・・・とりあえず、こんな感じでよかったんだろうか?」
「いーんじゃない?」
「むしろ、立派にお役目を果たしていたと思うでござるよ。我々も、鳴上どののお陰で、今日は比較的余裕でござるからな。」
「・・・子守りって大変なんだなー。」
「そーね。」
「そうでござるなー。」
そんな感じに、俺のベビーシッターとしての初仕事が終わった。
しばらくして、仕事から帰ってきた横島と共に、彼の部屋から“妙神山”に戻るのであったーーー。
・・・
道化師side
最近は、大きな仕事のなかった美神さんは、久々の仕事に上機嫌であった。
やっぱり、なんだかんだこの仕事が好きなんだろーなー。
「今日は、都内の◯✕ビルでの仕事が一件ね。昔は、こんな仕事でもボロい商売だったんだけどなー。」
「それでも、数千万の仕事ですよね?」
「昔なら、これだけで億は行ったわよっ!全く、足下を見てるわよねー。」
「まー、オカルトGメンも出来ましたからねー。」
「それだけじゃないわよ。日本全体が不景気なせいよ。あー、嫌だわ!バブルの頃が懐かしい。」
「ギリギリの発言ですねー。時代背景、完全にバグってないっすか?」
「オホホホ~、何の事かしらー?」
「「・・・。」」
メタい会話を交わしつつ、俺達は、今日の現場である◯✕ビルへと到着していた。
「着いたわよ。」
「俺も、早く運転免許欲しーなー。」
「そういや、アンタも今年で免許が取れるんだっけ?」
「そうっす。6月が誕生日なんで。」
「なら、早ければ夏休みには免許取れるじゃない。この仕事を続けるなら、最低でも自動車免許はあった方が良いと思うわよ。」
「そっすよねー。」
「ま、それはそれとして。」
「よく来てくださいました、美神さん。早いトコ、あの悪霊を退治して下さいっ!」
「ええ、お任せ下さいな。」
「・・・随分、痛々しい格好ですね。」
「中々狂暴な奴でしてね。少し様子を見ただけでこの有り様ですよ。この間も、別のGSの方がお見えになったのですが、残念ながら・・・。」
「そうですか・・・。」
「・・・。」
以前の俺なら、この時点に逃げ出そうとしていた事だろう。
しかし、色々と経験を重ねた今の俺は、この程度の事には動じなくなっていた。
「ところで、随分賑やかそうなビルですね?」
「ええ。他のビルに比べたら、ややこじんまりしていますが、その分、女性に人気のヨガやスパなんかでこれでも繁盛してまして。上の階には、新進気鋭のITベンチャーなんかもオフィスが入ってますからな。」
「ヨガにスパ、ね。・・・なるほど。」
ギクッ!
「・・・何か?」
「いーえー、こちらの話ですわー。」
「・・・。」
「まぁ、そんな事もあって、一刻も早く再開したいのですよ。今は、臨時休業やビルのメンテナンスなどと言い訳をして誤魔化していますが、悪霊が出たビルと噂になると、風評被害は免れませんからな。ビルのオーナーは、その為ならもう少し金額をつり上げても良い、とおっしゃっておいでです。」
「ラッキーッ!・・・あ、いえ、私共も、精一杯やらせて頂きますわ!」
「え、ええ。よろしくお願いいたします。」
「ったく、少しは成長したかと思えば・・・。」
「でも、今は臨時休業中だそうですから、女の人達なんていないと思いますけど・・・。」
「ウハハハハー、嫌だなー、美神さん、おキヌちゃん。俺がそんな邪な気持ちで仕事に来てるワケないじゃないっすかー。」
「・・・ま、いいけどね。それに、思わぬ追加料金で気分も良いし、速攻で終わらせるわよっ!」
「はいっ!」
「うっすっ!」
そう言うと、美神さんは“霊視ゴーグル”を取り出した。
「っつっても、強力な悪霊の存在は感じるんだけど、このビル自体には不審な点は見つからないのよねー。」
「そうなんですか?」
「ええ。悪霊が発生するって事は、この場所に何らかの原因がある筈なの。けど、ビルの管理人の話じゃ、この場で不審な事件や事故が起きた形跡はない。もちろん、昔、この場所が墓地だったとか、そういうアレもね。」
「あ、ちゃんと調べてるんすね。」
「当ったり前でしょ?下調べも重要なのよ。覚えておきなさい。」
「はいっ!」
「うっすっ!」
「まぁ、本来はその原因まで特定して改善できれば、それが一番良いんだけど、とりあえず今は悪霊をしばく方が先決ね。と、言っても、今の私達なら、ラクショーだけど。」
「油断はしないで下さいねー。」
「大丈夫よおキヌちゃん。これは油断じゃなくて、明確な事実なんだから。ってワケだから、居場所は分かったわ。さっさとやっつけちゃいましょう。」
「いやあ、本当にありがとうございました。ほんの小一時間ほどで問題を解決されるとはっ!日本最高のGSと言うのは、噂通りでしたな。」
「いえいえ、そんなー。」
その後、大した見せ場もなく、悪霊は俺達の手であっさり退治された。
まぁ、美神さんはこれで世界最高峰のGSの一人だし、おキヌちゃんのサポート能力は、ヒャクメの訓練もあって、“心眼”はなくとも感知力みたいなモノは俺達の中でもすでに一番だからな。
俺にしたって、煩悩パワーが霊力の源である事には変わりないが、老師との修業で基本的性能はかなり伸びている。
つまり、よほど強力な魔族や悪霊でもない限り、苦戦する事すらなくなっていたのであった。
「けれど、とりあえずの脅威は去りましたが、原因はあいかわらず不明のままですわ。まぁ、調査なんかは他のスイーパーでも十分に可能ですから、よろしければそちらもご検討下さいな。」
「はぁ・・・、分かりました。」
「では、私達はこれで。」
「ありがとうございましたー!」
「あの感じだと、調査はしないかもしれないわねー。」
「そうっすねー。」
「まぁ、一般の方には、その重要性が分からない事も多いですからね。」
「私達にしても、アドバイスはできても、最終的に判断するのはクライアントだからねー。ま、更に追加でギャラを貰えるなら、調査を請け負っても良いんだけど。」
「更にぼったくるつもりっしょ?」
「あら、正当な労働に対する正当な報酬よ?それを請求して悪い事はないわ。ま、確かに私のギャラは高いけど、他のスイーパーなら、割安で請け負ってくれる人もいるわ。けど、人間、いざ何か起こらないと対策は打たないものよ。火災の原因となる要素があったとしても、いざ火災になるまで放置するのが良い例ね。」
「・・・確かに。」
「ま、とりあえず、こっちは無事職務は果たしたワケだから、大手を降って帰りましょー。」
こうして、その日の仕事を終えた俺は、ベビーシッターのバイトを終えて待っていた鳴上と、俺の部屋から“妙神山”に戻るのだったーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆・掲載しておりますので、よろしければそちらも本作共々チェックして頂けると幸いです。