P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


語られる過去 4

 

・・・

 

そんな事件も起こりつつ、日々は過ぎて行った。

 

あいかわらずアシュタロスの生死は不明な状態が続き、ヒャクメは眠り続けて、冥界とのチャンネルは閉じたままである事が伺い知れる。

 

当然ながらそんな状態では、GSの仕事などない訳で、仕事や金が大好きな令子は、ストレスがたまりつつあったのであった。

 

そんな折、令子のマンション(べらぼうに高い億ション)の隣に引っ越してきた者がいた。

芦優太郎(あしゆうたろう)

国際企業「アシ・グループ」総帥の御曹司であった。

 

見た目は完全にアシュタロスそっくりである。

実際、令子達も勘違いし、一度は攻撃を仕掛けるも、彼は自分が人間であると主張。

 

あらゆる手段で調べたが、分子構成、霊波組成、ともに100%「人間」であり、彼の主張の裏付けをするだけとなる。

 

それに、彼の家族からの強い圧力もおり、彼を拘束し続ける事も困難となり、無事に釈放される事となる。

 

だが、“似てる”という事以外、何の証拠もないとは言えど、あれだけの事件の後で放置する訳にも行かず、密かに監視と尾行をつける事とした。

 

令子も初めは疑いまくっていたが、彼も当然VIPであるから、監視や尾行にも気付いており、なおかつ令子の素性、職業、能力、生い立ち、そして性格を独自に調査させていた。

そして彼の出した結論は、令子達には“逆らわない方が良い”であった。

 

アッサリ白旗を上げた彼に、令子も本当に無関係ではないかと思いつつ、更なる彼の提案に令子は飛びついたのであった。

 

先程も述べた通り、アシュタロスの一件以降、全くといってよいほど仕事が激減し、令子はストレスをためていたのである。

 

そして彼からしたら、令子達を敵にはまわせないし、どうせ監視をされるなら仕事を一緒にしないか、と提案したのである。

 

彼は今、不良債権の処分を担当しており、その中には霊的不良物件も山ほどあったのである。

GSである令子は、ある意味申し分ない人材だった訳である。

 

散々ストレスがたまっていた令子からしたら、仕事とギャラがたんまり手に入る彼の提案に飛びつかないハズもなかった。

 

が、当然ながら美智恵はそれを却下する。

令子に何かあればコトであるから、その判断は至極真っ当なのであるが、もはや限界に達していた令子は発作が出るほどであった。

 

流石にそれを見かねたルシオラが、令子は限界のようだし、自分達もついているから、と美智恵を説得。

渋々美智恵も、それを了承し、令子の生きがい(仕事)が復活する事となったのであったーーー。

 

・・・

 

そうこうしている内に二ヶ月が経過し、眠ったままのヒャクメが目覚める、という出来事が起こる。

ヒャクメが目覚めたという事は、冥界からのエネルギーが戻ったという事で、アシュタロスの妨害霊波が消えたという事であった。

 

つまりそれは、アシュタロスが倒れた事を意味していた。

 

喜ぶ令子達。

そして横島とルシオラ。

 

特にルシオラにとっては、これで全ての心配がなくなったのだから、当然と言えば当然であろう。

 

そんな仲睦まじい横島とルシオラを尻目に、令子も一つの決断を下していた。

 

彼女にしてみたら認めるのは癪に障るだろうが、無意識の内に横島に惹かれていたのは事実である。

そして、アシュタロスとの邂逅の際に、前世の(メフィストとしての)記憶が蘇り、前世では完全に横島こと高島と恋仲だった事も思い出していた(もっともヒャクメの予測では、令子ほどの霊能力者が前世の記憶を全く持たないのも違和感があり、無意識の内に自分で自分の記憶を封印していたらしいが)。

 

しかし、前世は前世であるし、今現在では横島にはルシオラという決まった相手がいる。

 

今更横島を略奪するつもりはなく、ある意味では身を引く事としたのであった。

 

そんな折、ようやく疑いの晴れた優太郎から謝罪の代わりにデートを要求される。

 

横島の事を吹っ切る意味でも、令子はそれに応じたのだったーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろんそれは、()()()()()()の罠であった。

 

・・・

 

一方横島達は、急な胸さわぎを感じていた。

そして各々が令子のマンションを目指したのである。

 

現場に到着した横島が見たものは、倒れている西条だった。

 

もちろん死んではいないのだが、死んだと喜ぶ横島にキレた西条は何も言わず、仲良く罠によって結界にとらわれる事となる。

 

次いで到着したおキヌ、ルシオラ、パピリオに罠がある事を警告した二人は、その後ろから襲撃を仕掛ける者の存在を感知していた。

 

誰あろう、ベスパであった。

 

そして語られる罠の全容。

それはこうであった。

 

アシュタロスほどの存在が、令子をどうこうする事は実は容易であった。

 

当然だ。

そもそもの生物としてのスペックが違い過ぎるからである。

 

もちろん、神魔族を封じる為に大半の霊力を割いている事もあったのだが、それでも彼を阻む者が実質的にいない状況なら、別に回りくどい手を使う必要もなかったのである。

 

しかし、令子を殺せばそれで済む、という話ではなく(そもそも殺してしまっては、令子の魂は転生してしまうので捕まえられないのであるが)、あくまで彼の目的は、彼女の魂、そしてそれに結合してしまう形となった“エネルギー結晶”なのである。

 

強引に奪い取ろうとすると結晶が崩壊する危険があり、それ故に南極の時のように自身の手の届く範囲に誘導する必要があったのである。

 

そこで今回使った手は、南極の時に横島や令子が目撃していた“宇宙のタマゴ”なのである。

 

“宇宙のタマゴ”。

これが具体的にどのようなものかは明確には分からないのであるが、言ってしまえば新しい宇宙のヒナ形、つまりは“別の世界”を作り出すものであろう。

 

そこに令子を落とし、本来とは違う“世界”の出来事を体験させたのである。

 

実際の世界線では、パピリオが家出してから三日しか経っていない。

それ故に、そもそもヒャクメはまだ目覚めていないし、冥界とのチャンネルも閉じたまま、“芦優太郎(あしゆうたろう)”なる人物も存在しないし、全ては茶番だった訳である。

 

しかし、そんな甘い夢のような“世界”を、令子に一瞬受け入れさせれば良かったのである。

その油断を突いて、自分の手で“エネルギー結晶”を確保できるタイミングさえあれば。

 

結果、とうとうアシュタロスは“エネルギー結晶”を手に入れ、“エネルギー結晶”と結合する形となっていた令子の魂は消滅する事となってしまったのであった。

 

もちろん、令子が簡単にくたばるタマでない事を知っていた横島達は、ベスパや土偶羅の言葉を信じなかった。

だが、そこにアシュタロスが令子の亡骸を抱えていた現れた事で、現実を受け入れざるを得なかったのである。

 

さて、令子を失ってしまった横島達は絶賛大ピンチとなってしまう。

少なくとも、例の“合体技”も使えなくなってしまったし、アシュタロスは何かを始めたからである。

 

西条と横島は、緊急招集に応じていたGSチームと合流。

とりあえず、アシュタロス達の前からは脱出する事ができたが、問題は全く解決していなかった。

 

さて、令子を失って動揺する横島(と冥子)であったが、令子のライバルであるエミの発破によって気持ちを持ち直した。

“あの女がいっぺん死んだくらいで終わるワケないでしょ。”

と。

 

普段はいがみ合っている二人ではあるが、お互いがお互いに一番相手を認めている彼女達の奇妙なライバル関係に、横島(と冥子)だけでなく、GSチームもやる気をみなぎらせた。

(余談ではあるが、その時にエミは、テレ隠しも含めて“あの女を殺すのは私なワケッ!!”と、豪語していた。

もちろん、テレ隠しである事は誰の目にも明らかであったが。)

 

さて、とは言えど、状況が好転した訳ではない。

アシュタロスが何かを始めたからである。

 

アシュタロスの目的。

それをルシオラは、自身を強化する事だと捉えていた。

 

しかしそれはあくまで表向きの目的に過ぎず、真の目的は“宇宙のタマゴ”を応用した“宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)”を利用する事によって、この“世界”を作り変える事であった。

 

宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)”は、宇宙の構成を部分的にせよ完全に組み換える事ができる。

死者を蘇らせる事も、神を滅ぼす事も、である。

 

まさに、万能の力を得たに等しい状況であり、実際にアシュタロスは、かつて令子達や他のGSに祓われた強力な悪霊、妖怪、魔族等を蘇らせる事に成功し、自身の下僕として世界中を大混乱に陥れる事にも成功していた。

 

そしてついにアシュタロスは、自身に従わない神や悪魔を全て消去する事を実行に移そうとしていた。

 

が、その時、気になるノイズが発生してしまうし、令子が(勝手に)下水道に非常口を作っていた事で、予期せぬ速度での横島とルシオラの強襲を許してしまう。

 

完全なる不意討ちが成功し、“合体技”が使用できない以上、例の『模』、所謂“コピー能力”を利用するしかない横島。

だが、一瞬で仕留めれば死ぬのはアシュタロスだけであり、アシュタロス自身のフルパワーをアシュタロスにくらわせてやるーーー、と完璧な奇襲が成功したかに見えたが、当然ながら、対策を打っておかないアシュタロスではなかった。

 

南極の一件にて、煮え湯を飲まされる事となったアシュタロスは、横島の霊力の波長を合わせてジャミングしていたのだ。

つまり、横島の能力がアシュタロスやベスパには通用しない状況だったのである。

 

強襲が仇となって、一転してピンチに陥る横島とルシオラ。

あわやおしまいか、と思われた時、“宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)”がエラーを起こしたのである。

 

横島どころではなくなったアシュタロスは攻撃を中断し、その原因を探ろうとして、令子の非常識ぶりと執念を目撃する事となる。

 

魂が消滅したと思われていた令子であったが、分解されずに残留しつつ、“宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)”を逆に利用して復活を果たそうとしていたのであった。

 

先程も述べた通り、“宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)”の力は万能に近い。

悪霊や妖怪、魔族等も復活可能なら、当然人間も復活できる訳で、

普通の人間にそんな非常識なマネができるはずない、

というアシュタロスに、

()()()はな、

と、令子の非常識っぷりを理解している横島の反論によってアシュタロスは青ざめる。

 

と、そんなやり取りをしつつ、再び逃げた横島とルシオラはベスパに任せて、怒り心頭になりながらもアシュタロスは“宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)”のデバッグに入った。

 

 

一方、一時撤退した横島とルシオラであったが、横島の能力がジャミングされている状況では、ベスパに勝てる見込みがなかった。

 

もっとも、以前ルシオラとベスパの一騎打ちの際には、能力の相性もあってルシオラに軍配を上がった事を横島は覚えていたが、ルシオラが言うにはベスパは以前よりもパワーアップしており、やはり勝つのは難しいと言う。

 

だが一方で、アシュタロスの計画を阻止できる可能性のカギは、やはり令子だと言い、その令子を助けられるのは横島しかいない、と言う。

 

だからおまえは令子のところに行け、と。

 

慌てて反論する横島に、しかしルシオラは有無を言わせず、ベスパの目を撹乱しつつ、横島と別れる。

 

ルシオラの計略にハマったベスパは、横島なしのルシオラを追いかけていったのであった。

 

こうして、ホレた男の未来をかけた、姉妹同士の対決が始まったのであった。

 

一方、ルシオラが死ぬ気だと気づいていた横島は、見捨てる事はできないと彼女らを追う。

 

そして東京タワーにて攻防を繰り広げる二人を発見し、必死に二人を追いかける。

 

ルシオラとベスパの攻防は激しいものだった。

元々パワータイプのベスパは、幻術を得意とするルシオラとは相性が悪いのであるが、以前よりもパワーアップしているベスパ相手では相性以前の問題であった。

 

せめて相打ちに持ち込もうとしたルシオラであったが、それもワンテンポ遅く、

 

さよなら、姉さん!

 

という言葉と共にルシオラの敗北が確定したーーー

 

かに見えたが、ここに横島が割って入った。

 

ベスパの攻撃を横島が代わりに受け止め、反撃の態勢に入っていたルシオラの一撃が見事にベスパを貫いたのである。

 

しかし、ベスパを撃破できたものの、その代わり横島が死にかける事となった。

 

当たり前だ。

いくら強くなったと言えど、横島はあくまで人間であり、準上級魔族であるベスパの一撃に耐えられる筈もないからである。

 

慌てるルシオラ。

横島が死んでしまっては全てがおしまいだ。

 

そしてルシオラは決意するーーー。

 

 

目が覚める横島。

その傍らには、タワーにより掛かるルシオラの姿があった。

 

ルシオラは言う。

“(横島の)壊れかけていた霊基構造を私のもので代用した。”

と。

 

当然ながら横島もそれには困惑する。

“それでおおまえはなんともないのかっ!?”

と。

 

当然平気ではない。

少なくとももう動けそうにないとルシオラは言った。

 

慌てて仲間のもとに戻ろうと言う横島に、ルシオラは言う。

“今はそんなヒマはない。”

“すぐに令子のところへ行け。”

と。

 

時間が経てば、せっかく(根性で)残っている令子の魂が消されてしまうからだ。

そうなれば、アシュタロスを止める手立てが完全に閉ざされてしまうのである。

 

それでもなおも食い下がる横島にルシオラは優しく諭す。

“私はここで待っているから、全てが終わったら迎えに来て。”

と。

 

そして横島は、ルシオラを信じてアシュタロスのもとへと駆け出すのだったーーー。

 

 

もちろん、これはルシオラのついた嘘である。

言ってしまえば、横島の身代わりにルシオラがなった訳で、動かないだけでなく、もはや存在を保つ事すら困難だったからである。

 

横島を見送ると、横島との思い出を胸に、ルシオラは静かに消え去ったのであったーーー。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
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