P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


語られる過去 6

 

・・・

 

宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)”の崩壊から脱出した令子、横島、おキヌであったが、横島は激しく後悔していた。

結局、世界と引き換えにルシオラを見殺しにする事となってしまったからである。

 

感情を吐露する横島。

慰める令子とおキヌ。

 

横島の叫び声だけが、下水道内に響き渡るのであったーーー。

 

 

一方、アシュタロスの妨害霊波が止まった結果、ヒャクメや小竜姫、人間界に留まっていた神魔族の活動も再開。

本調子ではないものの、令子らの活躍によって、ようやく潮目が変わった訳である。

 

もっとも、このままで終わる訳がない、と小竜姫は言ったが。

 

 

マンホールから地上に出た令子らは、GSチームと合流。

再会を喜び合いつつ(マリアだけはデータとしてカオスに返されたので、カオスはショックを受けていたが)、しかし横島とパピリオの表情は暗かった。

 

その時、令子達の後を追うようにアシュタロスが現れる。

彼は、“宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)”崩壊によって、もはや人格が崩壊しかかっていたが、弱体化したとは言え、まだ人間とのレベル差は圧倒的である。

 

だが、ルシオラを失い頭に血が登ってしまっていた横島は、アシュタロスに特攻する。

仕方なく援護した西条の一撃が見事に命中し、アシュタロスは倒れた。

 

抗議する横島だったが、アシュタロスは言った。

 

「…この肉体はもう不用なのだ。だから…捨てたまでのこと!

私には…もうひとつ分身がーー

究極の魔体……」

 

令子はハッとする。

 

“究極の魔体”は、メフィスト時代に目撃しているからである。

本来、それを起動させるために“エネルギー結晶”を用意していたのであった。

 

しかし、“エネルギー結晶”が破壊された今となっては、“宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)”も“究極の魔体”も使い物にはならない、筈なのだ。

 

「もはや、我が野望は潰えた…!

だが、俺ひとりではくたばらん!!

神界・魔界のことはあきらめてもーーー

おまえら人間は!!

一人残らず道連れに…!!」

 

不穏な言葉を残し、アシュタロスは消滅した。

 

そこに、魔鈴が現れる。

 

美智恵が非常呼集をかけていたからである。

 

急いで都庁本部に戻った令子らは、小笠原諸島に現れた“究極の魔体”を確認していた。

 

その推定全長は180メートル。

もはや妖怪とかそういうレベルではなく、怪獣とか、そういった類の存在であった。

 

救いとなるのが、“エネルギー結晶”がないので活動期間が極々短い事であったが、ヒャクメの見立てでは二、三日は動く事ができる、との事。

 

そんな折、“究極の魔体”の主砲から発射された光弾が、小笠原諸島の一つの島を吹っ飛ばすところを目撃する。

 

雪之丞は言う。

 

「冗談じゃねえっ…!!

三日もあれば地球がふっとぶぞ!?」

 

と。

 

ただ、幸いな事に、アシュタロスのこの“究極の魔体”は、その明晰な頭脳なども全て殺戮本能のみ残して破壊エネルギーに変換した結果、美智恵曰く“バカ”であった。

 

島を吹き飛ばした勢いのまま、令子らがいる東京を()()()()狙っていたのだが、地球の丸みを一切計算に入れておらず、方角だけ狙って撃った結果、明後日の方向に光弾が飛んでいってしまったからである。

 

アシュタロスはもうパワーだけしか残っていない残がいでしかなかったのである。

 

もちろん、その火力は凄まじいので油断はできないが、相手がバカなら付け入る隙はある。

こうして、とうとう最後の戦いの火蓋が切って落とされようとしていたのであった。

 

アシュタロスは飛行しながら高速で接近してきている。

故に、令子と横島の“合体技”以外だと、飛べる者達しか戦力にならない。

何故ならば、いくらバカでも、東京の射程圏内に入れば、その火力を防ぐ事は不可能に近いからだ。

 

そうなる前に、海の上で決着をつける必要がある為、飛べないとそもそもお話にならなかったからである。

 

クライマックスに戦力になれない事を悔しがる面々の前に、突貫で飛行形態に換装したマリアを連れてカオスが現れる。

 

それを見て、パピリオは驚愕する。

マリアは完全に壊れたと思っていたからである。

 

しかし、人工霊魂を持つとは言えど、あくまでマリアはアンドロイド、ロボットであるから、データさえ回収できれば問題ない。

大事なのはボディーより情報だ、とカオスは言う。

 

パピリオはその言葉に、何かを思い付く。

そして、GSチームから離脱して、どこかへ飛び立ってしまう。

 

カオスは、行かせてもよかったのか、と言うが、強要しても戦力にはならないし、パピリオの立場は微妙なので(アシュタロスは生みの親だし、二人の姉は敵味方にわかれて相討ちになってしまった)、彼女の行動は見過ごされる事となったのであったーーー。

 

 

一方、活動を再開した小竜姫達は、妙神山からようやく東京タワーまでやって来ていた。

普段なら極短時間で、場合によってはテレポートすら可能なのであるが、アシュタロスの妨害霊波の影響の後故に、冥界からのエネルギー供給が追いついていないので、かなりの弱体化を食らっていたのであった。

 

結局、小竜姫とワルキューレにエネルギーを与え、この場に残る事となったジーク達。

しかし彼らはその場で、蜂の巣を目撃していたのであったーーー。

 

 

一方、海上にてアシュタロスを迎撃に向かった令子達は、ほどなくして彼と接触する。

ヒャクメ曰く、これといった弱点がなく、パワーしか残っていなくとも、アシュタロスを撃破するのはかなりの難問であった。

 

とりあえず額に存在する元々アシュタロスだったものに狙いを定めるが、“バリア”によって令子達の一斉攻撃は阻まれてしまったーーー。

 

 

蜂の巣の正体は、ベスパの使い魔が作っていたものであった。

小竜姫とワルキューレにエネルギーを渡してしまっていたジーク達に勝ち目はなく、刺激しないようにしていた。

 

そこに、カオスの言葉によってヒントを得ていたパピリオが、ベスパとルシオラの霊体の破片を探しにきており、彼女も蜂の巣の存在に気付いたのであった。

 

パピリオが声をかけると、パピリオの手のひらサイズではあったが何とか復活したベスパが現れる。

ベスパの使い魔達が、ベスパの霊体の破片を集めてくれていた為であった。

 

弱体化していると分かったジーク達は、せめてベスパだけでも、と襲いかかろうとするも、パピリオに止められる。

 

続いて、ベスパはルシオラの霊体の破片も集めさせている、というが、まだ何とも言えない、との事。

 

そしてベスパは、自分が倒れていた間の状況をパピリオに聞くのであったーーー。

 

 

アシュタロスの迎撃に失敗した令子達。

アシュタロスは令子達が全滅したと思い、再び東京に向けて侵攻していった。

 

が、やられたフリをして海中に潜んでいた令子達は、全員無事であった。

 

ただ、先程の戦闘によって霊力を使い果たした仲間達は、ここで離脱する事となる。

残ったのは、令子(&横島)とヒャクメだけになる。

 

どちらにせよ、アシュタロスの相手が務まるのは、現状では“合体技”が使える令子と横島だけだ。

 

だが、その為には例の“バリア”を何とかしなければならない。

 

そこで、“バリア”の正体に何となく気付いた令子。

“宇宙のタマゴ”を応用し、一方通行で空間を歪めて攻撃を別の宇宙に逃がせば、こちらからは手が出せなくなるのではないか、と考察する。

 

しかし、正体が分かっても、攻略法が分からない事には手詰まり感は否めない。

もう一度接近し、何とか攻略法を探ろう、と主張する横島の言葉に、令子とヒャクメは仲間達と分かれて再びアシュタロスを追うのだった。

 

だが、令子には、“バリア”の他にももう一つ気がかりな事があった。

それは、横島が弱体化している事である。

 

ルシオラの件もあり、非常にシリアスでカッコいい横島なのだが、彼の霊的パワーの源は煩悩パワーであるから、シリアスな横島にはGSとしての存在価値がないのであったーーー。

 

 

一方、パピリオとベスパ、それとジーク達は、美智恵らと合流していた。

“究極の魔体”の弱点を知らせる為である。

 

もちろん、元々敵対していたベスパからの情報であるし、中々信じられない事ではあったが、すでにアシュタロスが東京に刻一刻と迫っている状況の中では、彼女の情報を信じるしかなかった。

 

ただ、ジークから当然の疑問がベスパにぶつけられる。

 

“なぜ奴を裏切って弱点を我々に教えるんだ!”、と。

 

それに対するベスパの答えは、

 

“裏切ってなんかいないさ。

あんたたちにはわかんないよ!”、であった。

 

その答えに、一触即発の雰囲気になるも、先程も述べた通り時間がない。

 

美智恵と西条は、その場を収め、パピリオとベスパに令子達のもとへ向かうように指示を出すのだった。

 

それと、横島に関する事を一つ頼み込んでーーー。

 

 

更に一方、ようやく令子達に追いついた小竜姫とワルキューレだったが、彼女達の持っていた情報は、“アシュタロスにはバリアがある”という事だけだった。

 

すでにそれは分かっていた事であるから、ハッキリ言って全く頼りにならない助っ人なのであった。

 

そうこうしている内に、アシュタロスがもう東京目前まで迫っている。

やぶれかぶれで突入するしかない、と主張する横島に、令子も頷きつつ、ヒャクメや小竜姫、ワルキューレに改まって最後のお願いを告げるのだった。

 

“あんたたち、脱げ!!”、と。

 

ずっこけるヒャクメ達だったが、令子は大真面目であった。

横島の煩悩パワーを上げるにはこれしかないのだ。

 

ワーワーと、目の前の危機もよそに騒ぐ面々。

が、その時、パピリオと()()()()が追いついて来たのであった。

 

ヒャクメ達には幸いな事に、間一髪、どうにか神様のストリップショーは回避した訳であった。

 

“アシュ様のバリアにはーーー

腰の後ろに穴があるでちゅ!”

“そこから接近して大砲のつけ根を攻撃して!

エネルギーを通すパイプがあるから大打撃になるわ!”

 

突如もたらされた攻略法。

しかし、横島はルシオラの存在の方が気になっていた。

 

“そんな話はあとよ!!がんばって!!”

 

再起した横島は、凄まじいパワーを爆発させる。

令子がメインだった“合体技”も、オーバーフローしてキャラクターのメインが横島になるほどだった。

 

更に煩悩全開にする横島。

流石にそれは節操がなさすぎると令子に突っ込まれるも、あんたがやれって言ったんじゃねーか、と横島は言った。

 

ようやくいつもの調子が出てきた彼らだったが、実は横島は気が付いていた。

そのルシオラが、本当はベスパである事を。

 

“すまん。

俺は…やっぱ俺らしくしてなきゃな。

でないとルシオラもガッカリするよな。”

“……!

おまえーーー

ひと目で……?

………

けど、まるっきりウソでもないよ。

少しだけどルシオラ再生の可能性はまだーーー”

“そうか。

頼む。”

 

短く言い残すと、横島らはアシュタロスに向かっていった。

 

小竜姫達が注意を分散させてる隙に、ベスパからもたらされた情報通り、バリアの穴を縫って内部に侵入。

そして渾身の霊波砲を大砲のつけ根に放ち、とうとうアシュタロスは断末魔の叫びを上げながら倒れたのであったーーー。

 

 

“本当にこれでいいのか?”

 

というパピリオに、ベスパは頷く。

 

“アシュ様はね、パピリオ、あの方はもう何千年も前からーーー

ずっとーーー

死にたがっていたんだ。”

 

 

アシュタロスの本当の真の目的は、自らが死ぬ事であった。

 

これはどういう事かと言うと、アシュタロスには死が認められていなかったからである。

 

そもそも神魔の争いというのはカードの裏表に過ぎず、魔族はそのカードの表になる為、魔族が支配し、神族が悪役となる世界の為に争ってきたのである。

 

これはまだ救いがある。

言うなれば、物語の主役になれるチャンスが残っていたからである。

 

しかし、今や神と魔はデタントの時代となってしまう。

進化し、多様性をきわめた生物達、惑星を飛び出すまでに発展した人類文明。

これらはあまりに貴重すぎて、今さらひっくり返すにはあまりに惜しいーーー、というのがその理由である。

 

アシュタロスはそれに反対だった。

何故ならばそれは、永久に邪悪な存在であり続け、勝ってはいけない戦いを繰り返し、茶番劇の悪役である事を強いられる事だからである。

 

主役になるチャンスも潰えてしまった以上、“物語”から降板したいのが心情だろう。

 

だがアシュタロスは、その茶番劇から降りる事すら許されなかったのである。

何故ならば、彼ほどの魔神が消滅すると、神魔の霊力バランスが崩れるからだ。

仮に滅んだとしても、強制的に同じ存在に復活するようになっているのである。

 

アシュタロス曰く、「魂の牢獄」。

まさに、アシュタロスの立場はその言葉にふさわしいのである。

 

そこから抜け出すのがアシュタロスの真の目的であった。

そして、それを認めさせる為に今回の件を企てたのであったーーー。

 

 

横島の渾身の一撃に倒れたアシュタロスだっだか、最後の一発を東京に向けて発射する。

が、それは東京には到達せず、その間には最高位の神と魔の存在があった。

 

アシュタロスの一撃を防ぎきり、彼らは言った。

 

““おまえのーーー

罪を許そう、アシュタロス………!!””

 

それは、アシュタロスにようやく与えられた、唯一の救いの言葉だったのかもしれないーーー。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
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