続きです。
いよいよここから、独自解釈や独自路線が強くなります。
苦手な方はご注意下さい。
念の為。
・・・
結局アシュタロスは、一種の適応不全だったのである。
彼は、自分が魔物である事に耐えられなかったのだ。
逆説的には、邪悪な存在である事を拒んだゆえに、コントロール不能な最も凶悪な魔物になってしまったのではないか、というのが小竜姫達の見解だった。
ワルキューレも、アシュタロスの気持ちも多少分からなくはない、と言う。
彼女達キリスト教系の魔族は、大抵一神教に否定されて悪役として取り込まれた土着の神々だったからである。
“法”や“秩序”、と言えば聞こえはいいが、おしつけられた側からしたらたまったものではないだろう。
と、まぁそんな感じに、アシュタロスが引き起こした事件は、彼が消滅した事によって、
・・・
番長side
「・・・で、結局ルシオラさんは・・・。」
「こっちに来てそんな長くはないとは言え、お前が会った事ないんだ。分かんだろ?」
「・・・そうか。」
「や、別にそれに関しちゃ俺の中で整理はついてんだ。アイツとの恋愛は成就しなかったが、アイツの魂は俺の中で息づいているからな。だから、将来生まれてくる俺の子どもが、ルシオラの生まれ変わりになる可能性がある。その子に愛情を注いでやれば、形は違うまでも、アイツを幸せにしてやる事もできるからな。」
「なるほどね。確かにそれはありえない話じゃない。横島くんの功績を考えれば、それくらいのサービスをこっちの神々もしてくれるだろう。」
「・・・そうか。」
時折コイツが、妙に大人びた感じがあったのは、そうした経験があったからなのか・・・。
俺は、自分の大事な人を失う事を想像し、ゾッとする。
もし、俺が横島と同じ立場だったら、果たしてそれほどの決断ができただろうか?
いや、俺も菜々子やマリーを失うかもしれない、という状況にはなったが、しかし幸いな事に、二人とも今も生きているからな。
今は中々会えない状況ではあるが。
「・・・で、話はそれだけではないだろう、横島くん?」
「・・・・・・・・・え?」
「・・・やっぱ、イザナギさまは鋭いっすね。」
「これでも神の端くれだからね。そもそもおかしな話なんだよ。それほどの事件があったにも関わらず、この世界は異常に平和だ。いや、
「・・・どういう事だ、イザナギ?」
そんな事を考えていると、イザナギから意味深な質問が出る。
俺は、それに軽く混乱していた。
「横島の話じゃ、アシュタロスが倒されておしまいだろ?おかしな事なんて何もないじゃないか。」
「そんな訳ないでしょ、悠くん。マンガやアニメじゃあるまいし、
「あっ・・・」
・・・言われてみればその通りだ。
少なくとも、アシュタロスが“
にも関わらず、俺もこちらの学校に通っているから分かるが、そんな事はまるでなかったかのように、平和そのものである。
まぁ、一部、不穏な事件は起こっているようだけど。
「やはり、ナギは察しが良いのぅ。」
「流石ですね、イザナギ様。」
「まーね。これでも昔から、政治的な話には深く関わりがあるから方だからねぇ〜。」
手離しに老師と小竜姫さまはイザナギを褒め、イザナギはそれに照れくさそうに笑っていた。
・・・ガッカリ大神のくせに・・・。
「お察しの通りっす、イザナギさま。あの事件の後、すぐに世界各国の首脳陣と神魔の代表者達なんかが話し合いをして、とある決定が下されたんですよ。それが、人々の記憶から、通称“アシュタロス事件”を消し去る事でした。」
・・・
アシュタロスが引き起こした事件の爪痕は、イザナギが言う通り非常に大きなものであった。
ここで改めて説明するが、再三述べている通り
それ故に、
しかし、だからと言って、流石に神様や悪魔という存在がそこら辺を闊歩している訳もなく、そうした存在は、一部の高位の霊能力者、あるいはGSくらいにしか認知されていないのであった。
つまり、番長の世界と同様に、神様や悪魔の実在が世界全体に認知はされていないのである。
実はこの状況は、神魔が意図的に引き起こしているものでもあった。
いやいや、人類全体にも自分達の存在をアピールすれば良いではないか、と思われるかもしれないが、事はそう単純な話ではないのだ。
何故ならば、宇宙のエントロピーを早めてしまう可能性があるからである。
仮に、神魔が自らの存在を積極的にアピールした場合、“信仰”というものの意味合いが変わってきてしまう。
少なくとも、今現在のような、人間社会における宗教観は大きく変質してしまう事だろう。
これは、それぞれの勢力に恩恵をもたらす。
人間の“信仰心”、あるいは“負の心”というのは、神魔にとっても大きな活動エネルギーとなるからである。
しかし、今現在の神魔族はデタントの状態だ。
つまりは、どちらか一方が大きな力を持つ事、あるいは完全なる融合をしないように、秩序ある対立の状況を維持しなければならない。
仮にそんな状況で、自らの存在を大々的に宣伝してしまえば、一気にバランスは崩れ去ってしまう事だろう。
故に、神魔にとって、(大半の)人間達に自分達の存在が認知されていないのは、バランスを一定に保つ上でも必要な措置だったのである。
ところが、件の“アシュタロス事件”は、そのバランスを一気に崩してしまったのである。
対立する神魔を封じ、令子の持っていた“エネルギー結晶”を奪い返す為に、アシュタロス一派は派手に暴れまわってしまったからである。
この事件は、人類の大半が知るところとなった。
つまり、魔神、すなわち“魔族”の存在を、全人類へと知らしめてしまったのである。
“魔族”が実在するとなると、当然ながら“神族”も存在する訳で、これまで暗黙の了解でお互いの存在を
さて、困ってしまったのは神魔族、その最上層部である。
確かに、アシュタロスは倒され、事件は終息に向かった訳であるが、しかし彼がやらかした後始末をどうにかしなければならなかったからである。
一方の人類の各国首脳陣も頭を抱えていた。
アシュタロスが引き起こした事件は、言わば未曾有の霊的な災害だ。
当然ながら自然災害のような、いや場合によってはそれ以上の被害を(もちろん、国や地域によっては影響は様々であるが)、被ってしまったからである。
更には、これは特定の国々に限定された問題ではあったが、アシュタロスが“核ミサイル”を強奪し、それを使用した、という事実もある。
もちろん、神族や魔族すら手玉に取り、1年間という期間限定ではあるが、彼らの活動を阻害するほどの力、手腕を見せたアシュタロスに、ただの人間がどうにかできる訳もないのであるが、しかし、そうは言っても、安全保障上の観点から言えば、つまりはテロ活動に対して対抗できなかった、というのもまた事実な訳である。
結果としては、令子らの活躍中によって核ミサイルが人類に向けて発射され、人類が滅亡する最悪のシナリオは回避されたが、これらを管理、運用する上で問題点がある事が浮き彫りになった訳でもある。
そうなれば、核廃絶、核根絶の機運が高まるのは目に見えているし、それらの責任を問う声が上がる事も想像に難くないだろう。
そして最後に、横島の取り扱いに関して、大きな問題があったのである。
客観的な事実から言えば、これは美神親子やGSチームも同様ではあるが、彼らは間違いなく世界を救った英雄であった。
ただ、横島だけは、彼自身の才能や、作戦上仕方ない部分も存在したのであるが、一時的に敵、つまりはアシュタロス一派に加担していた、という覆しようのない事実があるのだ。
もちろん、これはスパイ活動であったし、敵側の情報収集する上で非常に大きな功績を上げたのであるが、しかし事情を知らない者達からしたら、横島は敵に寝返った人類の裏切り者であるし、実際心無い者達からの嫌がらせも受けている。
もちろん、その後、世間に対して彼の活動が公表されてはいるが、一度ついたイメージを覆す事は非常に困難だろう。
更に更に、いくら彼がこの事件によって、人間的、またGSとして超一流になったとは言えど、あくまで彼はまだ未成年である。
人類の危機だったとは言えど、未成年者を一番危険で、なおかつ人類のヘイトを集める立場に立たせたのは、どう言い繕ってもあまりよろしい事ではないだろう。
しかも、それはあくまで世界GS協会から委任を受けた美智恵の判断ではあったが、それを最終的に承認したのは協会側であるし、しかも彼らは、こちらも仕方なかったとは言えど、令子暗殺すら指示している。
こちらも、人類滅亡の危機とは言えど、一人の人間の人権を完全に無視した事でもあるから、彼らに対する世間のイメージは最悪だった事だろう。
と、このように、例を上げればキリがないほど問題は山積みであり、政治的、軍事的、経済的、宗教的などの観点から言えば、こんな事件はそもそも“なかった事”にした方が、神魔族最上層部、各国首脳陣、世界GS協会、そして当事者となったGS達にとっても、正直ありがたい状況だったのである。
もちろん、一度引き起こされた事象を“なかった事”にはできないし、仮にそうする事ができたとしても、時空の復元力によって、結局は元の木阿弥となってしまうのが目に見えている。
実際、アシュタロスも“宇宙意志”の力に大きく足を掬われる事となった訳であるし。
だが、そこで逆転の発想である。
起こった事象は“なかった事”にはできなくとも、人々の記憶を操作する事は、どうであろうか?
もちろん、それほど大掛かりな改変など、いくら神魔族でも不可能である。
が、ここで、アシュタロスが
そう、“宇宙のタマゴ”である。
アシュタロスも失敗し、先程も述べた通り、これを利用して“
だが、あくまで“アシュタロス事件”そのものはあったが、それを人々の認識を歪める事で、別の事象、例えば、
実際、令子も“芦優太郎”なる、ふざけた人物が存在する“世界”に引き込まれていたし。
そんな訳で、回収した“宇宙のタマゴ”を利用して、人々の記憶
ただ問題となったのは、では、具体的に誰にこの計画を主導してもらうのか?、という話であった。
アシュタロスの真に恐ろしい点は、その力でも頭脳でもなく、その高い技術力にある。
実際、神魔を封じた際も、“逆天号”なる神魔が持つどの兵鬼よりも優れた移動要塞を使っていたし、
だが、アシュタロスが消滅した今、彼に匹敵するレベルの技術者となるとーーー。
そこで白羽の矢が立ったのが、ドクター・カオスだったのである。
今現在でも超える者のない
秘術によって不老不死を体現し、今現在でも生きている正に人類最高峰の頭脳であった。
もちろん年老い、ピーク時よりも幾分低下しているが、それでも、事技術においては、神魔を含めて、彼に匹敵する者がいなかったのである。
ただ、やはりネックとなるのがその年齢であり、しかしそれは、横島の力である程度の若さを蘇られる事で克服している。
もちろん、各国政府や神魔族の了承を得て、であるが。
それと、アシュタロスの従者であり、演算処理に優れた土偶羅も、カオスの助手に任命された。
アシュタロスの技術を身近に体感した存在。
当然、貴重な人材(?)であろう。
後は、各方面の天才と名高い連中が集まり、カオスを中心としたチームができあがった訳であった。
そこからは、具体的な内容などは割愛するが、結果として人々の記憶から“アシュタロス事件”を消し去る事に成功。
こうして、まるで“アシュタロス事件”などなかったかのように、偽りではあったが、いつもの日常がこの世界に戻った訳であったーーー。
・・・
番長side
「なるほど・・・。“記憶の改竄”、か。ま、僕はこちらの神ではないから、こちらの世界の神魔や各国政府のやり方を批判するつもりないよ。それに人は、悲しみを忘れられるからこそ、前に進める生き物でもある。」
「そうじゃな。まぁワシは、多少思うところもあるが、彼らの判断を否定するつもりはない。」
横島の説明を受けて、イザナギと老師は口々に言った。
俺は多少理不尽ではあるとは思うが、確かに彼らの判断も理解できる。
俺は、奈々子が死んだ、と言われた時の事を思い出していた。
何もする気力がわいてこない、まさに空虚な感情。
この世界で、それと似たような感覚に陥っていた人々にとっては、偽りとは言えど、その“記憶の改竄”は、前に進む為には必要な事なのかもしれない、か。
ま、政治的なあれこれは分からんのだが。
・・・あれ?
けど待てよ?
「あの、ちょっと待ってくれ。」
「ん?どうした、鳴上?」
「人々の記憶を改竄したんだよな?だったら、大樹さんや百合子さんも、当然ながらその対象だと思うんだが・・・。それとも、横島の関係者だから、特例でそれをしてなかったとか?そういえば、美神さん達当事者達は、普通に覚えているみたいだし。」
「ああ、それか・・・。」
若干気まずそうな横島が、大樹さんと百合子さんの方を見やる。
二人はコクリと頷き、横島を見据える。
「実は、実際には親父とお袋にも、その“記憶の改竄”が施されたんだよ。」
「・・・えっ?」
「ふむ・・・。」
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。