続きです。
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改めて経緯を説明しておこう。
“アシュタロス事件”後、神魔族上層部、各国政府首脳陣、世界GS協会、また主だった宗教団体の代表者が協議した結果、事件の記憶を
これは、各勢力にそれぞれ思惑はあったまでも、総じて人々の生活などを安定させる狙いがあった為である。
考えてみればこれは当然で、事件そのものの影響も然る事ながら、その後のダメージが非常に深刻になる事が予測されたからである。
単純に、アシュタロスの手によって復活した妖怪、悪霊、悪魔などが暴れまわった結果、それを調伏するまでにかなりの被害者を出しているし、“神魔”、という存在が明るみになれば、それまでの宗教観はメチャクチャになってしまう。
それに、“核ミサイル”を奪われ、使用された事は、各国の軍事バランスを著しく崩す事となるし、それをされた事に対する政治家達の責任を問う声も、当然上がる事だろう。
また、アシュタロス討伐に関して、世界GS協会が多大な功績を上げた事は否定しないが、その過程で、非人道的な行為(美神令子暗殺計画)や未成年者(横島、おキヌなど)に対する強制労働など、こちらも明るみになれば非難は免れないだろう。
まぁそんな感じに、軍事的、政治的、経済的、宗教的な問題などもあって、“アシュタロス事件”そのものが“無かった”ものとした方が、何かと都合が良かった事もある。
また、これは、一般市民にとっても悪い話ではなかった。
これは、良くある話ではあるが、何でも知っていれば良い、という訳ではないのである。
世の中には、知らない事の方が幸せな事もあるのだ。
奇しくも、“真実など知ってどうなる”といったイザナミが主張していた言葉が、ある意味では、別の世界ながらも部分的に肯定された格好であった。
もちろん、それが完全に正しいとは言えないし、各勢力の都合で人々から知る権利を奪う事となってはいるものの、また、それを完全に否定する事もできないのであった。
とまぁ、そんな事もあり、各勢力から委任を受けたカオスを中心とした技術者チームによって、極一部の者達を除いて、“アシュタロス事件”そのものが“無かった”事にされた訳である。
人的被害なり、建物などの被害は、整合性を取る為に、自然災害なりなんなりと、それっぽい理由が人々には補完される事となったのであった。
そしてそれは、横島の身内とは言えど、直接的には霊能関係者ではなかった大樹も百合子も例外ではなかったのである。
ただこれは後の祭りではあったが、少なくともこの二人には、最初から事情を説明しておくべきだった、と横島は後々後悔する事となるがーーー。
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幸いな事に、横島曰く、“悪霊も素手でぶん殴る”ほどの強靭な精神力を誇る大樹の活躍によって、アシュタロスによって復活されられた悪霊などに襲われながらも、横島夫妻は“アシュタロス事件”を無事に乗り越える事に成功していた。
ここら辺は、流石は横島の親であろう。
もっとも、彼ら自身は無事だったとしても、当然ながら周囲は無事では済まない。
いや、大樹らが現在滞在しているナルニアという国は、元々政情不安な国であるから、テロなどの人災が霊災に変わっただけで、ある意味では通常運行でもあったが。
しかし、当然ながらそんな事件が起こったとあらば、普通なら一人息子である忠夫の心配をするのが親心というものだろう。
だがここで、先程も述べた通り、“人々の記憶”を改竄した事によって“アシュタロス事件”そのものが“無かった”事にされたので、横島夫妻は一人息子である忠夫がその事件に関わった事。
それどころか、最大の功労者にして、ある意味では最大の被害者になった事実を知る機会を永遠に失ってしまったのであった。
では何故、今現在の二人が、普通に老師や小竜姫の存在を認識し、それどころか、親しい感じにまでなっているかというとーーー。
カオスらによって、所謂“情報改竄”が施された後、横島達は日常に戻っていった。
もちろん、“アシュタロス事件”の影響で、ザコ霊達が台風一過よろしく大人しくなり仕事が激減したり、美神ひのめが生まれたり、その彼女が“
ーーーだが、実際にはその裏で、密かに横島は苦しんでいたのである。
以前にも言及した通り、“アシュタロス事件”の際に、一時的に命を失いかけた横島は、ルシオラの献身によって一命を取り留めている。
その方法が、彼女の“霊基構造を横島に分け与える”、というものであった。
結果として彼女は、それによって復活を果たせなかったのだが、しかし問題はそこではない。
当時は緊急だった事もありそれしかなかったのだが、それに彼女の予測では、アシュタロス戦でも見せた横島のパワーアップ、つまり、彼女の霊体が混じった事によって、普段よりも強力な術などが使えていたのであるが、それも数日すれば元に戻ると考えていたのである。
しかし実際には、元に戻るどころか、横島の身体はどんどん蝕まれていったのである。
ここら辺は推測の域を出ないが、ルシオラの霊体を譲り受けた影響で、将来的な横島の子供が、ルシオラの転生先となる可能性に一応は横島も納得したのであるが、しかし心の奥底では、彼女の存在を忘れたくない、という思いがどこかにあったのかもしれない。
結果として横島は、本来ならば“人間”として元に戻るハズが、半分は人間で、もう半分は魔族である、という、言わば“半人半魔”の存在になってしまったのであった。
もちろん、あくまでベースは“人間”なのだが、“人間”としての霊力も持ちながら、ルシオラから譲り受けた準上位魔族クラスの“魔力”を有するに至ったのである。
ーーーだが、強大過ぎる力は、決して良いものではなかったのである。
“アシュタロス事件”の折には、まだ“幽霊”という形で横島の中にいたルシオラの存在によって、その力を利用する事で逆に大幅なパワーアップを果たすに至っていたが、彼女がいなくなる、つまり、その強大なパワーを制御する存在がいなくなってしまった事で、その力が横島の中で暴れまわってしまったのである。
先程も述べた通り、本来はルシオラ消滅と共に、その力も失われるハズだったのが、彼女を忘れたくない、という願いが、結果として変な方向に行ってしまったのだろう。
で、しかし横島は、そうした事実を隠したのであった。
以前の横島なら、何か変だと思ったり、何か困り事があれば、なりふり構わず周囲、特に令子らに助けを求めていた事だろう。
だが、“アシュタロス事件”を経て人間的に成長した彼は、(しなくても良い)我慢ができるようになってしまったのである。
それに関しても、横島も自身の不調の原因がルシオラである事に薄々勘付いていたのだろう。
愛した女が自身に悪影響を与えていた事を、認めたくない、という思いもあったのかもしれない。
結果として仲間達の誰も、横島の不調に気づかぬまま、時は流れたのであった。
だが、それを良しとしない者がいた。
誰あろう、ルシオラであった。
もちろん、すでに彼女の魂は消えているので、正確には横島の中に残った“残留思念”、つまりは幽霊の幽霊みたいなものなのだが、その“横島を助けたい”という思いが奇跡を生んだのだろう。
しかし、当然ながらすでに肉体を失っている彼女には、それを令子達に訴えかける事ができなかった。
そこで、横島と霊基構造の似ている(血の繋がりがあるからある意味当然なのだが)大樹と百合子の夢枕に立つ、という方法を試みたのであった。
(もちろん、令子達は本物の霊能力者であるから、そちらの方が成功率としては高いのだろうが、あくまで赤の他人でもあるから、そこら辺は難しかったのだ。
無茶をすれば、本当に横島が壊れてしまう可能性があったので、なるべく負担の少ない方法がこれだったのだろう。)
「アナタ・・・、これってっ・・・!」
「・・・ああ。」
結果、その試みは成功し、大樹と百合子は、あくまでルシオラ視点ではあるが、彼女の記憶を介して“情報改竄”から逃れたのであった。
さて、親としては、真実が分かった以上、やる事は一つであった。
諸々の予定を調整し、二人は急遽日本へと帰国したのである。
で、アポイントも何もなく、いきなり令子の事務所に押し掛ける。
幸いな事に、その時令子達は全員事務所に揃っていたし、何なら美智恵とひのめ、西条もたまたま事務所を訪れていた時だった。
「あ、あら、横島クンのお父様にお母様。」
「ご無沙汰してます。」
「・・・。」
「な、何だよ、二人して。来るんなら、先に連絡しておけよなぁ〜。」
「・・・。」
「・・・ん?どうしたんだ、二人して慎重な顔して・・・?」
「・・・忠夫。服を脱いで見せなさい。」
「・・・は?いきなり何言ってんの?」
「いいから見せなさいっ!!!」
「親に服を脱がされるとか、どういうプレイッ!?」
横島夫妻の謎の行動や、横島の軽口に呆気に取られていた令子達だったが、無理やり横島の上半身があらわになると、その空気も一変した。
若干、横島のストリップショーに恥ずかしがっていたおキヌですら、表情を強張らせたほどである。
「・・・チッ。」
「あ、アンタ・・・、それって・・・。」
「霊障のようだね・・・。しかも、おそらく昨日今日でできたものではないだろう。」
そう。
そこには、大小様々な霊障があったのだ。
見た目的には、傷だらけの重症のように見える。
しかし、それ以上に問題なのは、横島の霊的チャクラがボロボロになっている事であった。
むしろこれだけの傷を負っていて、生きている事の方が驚きだ。
まして、普段通りに振る舞ったり笑っていたなど、とても信じられないほどであった。
「っ!!!???」
その中で一際驚いていたのが美智恵であった。
何故ならば彼女は、似たような経験を過去にしているからである。
美智恵が強力な霊能力者である事は今更語るまでもない。
彼女の才能は、やはりGSであった両親から受け継いだものでもある。
だが、それ以上に、悪魔チューブラー・ベルのパワーと後の旦那となる公彦から一部パワーを取り込んでいる事も大きな要因であった。
そう、詳細は割愛するが、彼女自身も、かつて悪魔に寄生されていた経験があるのである。
それ故に、横島の今の状況が何となく察しがついたのである。
その様子に気が付いた百合子は、彼女に声をかけた。
「こんな時に申し訳ないのですが、美神美智恵さんですね?」
「え、ええ。そうですけど・・・。」
「先に謝っておきますわ。失礼。」
「は・・・?」
パンッ!
「っ!?」
「「「っ!!??」」」
「せ、先生っ!な、何をするんですかっ!」
「すいません。妻の非礼をお詫び致します。ですが、忠夫の父親としては、彼女の気持ちは痛いほど分かりますよ。」
「えっ・・・?」
不意討ちとは言えど、高い戦闘力を誇る美智恵に、百合子は平手打ちを决めたのである。
驚く一同。
抗議する西条。
だが、横島夫妻と当の本人であった美智恵は、それに納得していたようであった。
「・・・もしや、お二方は記憶が・・・?」
「ええ。二人して“蛍”の夢を見ましたね。それで、全て分かっていますよ。」
「そう、ですか・・・。」
「だ、大丈夫、ママッ!?」
「ええ。平気よ。それに、百合子さんの気持ちも分かるわ。」
「・・・え?」
「一人息子である横島クンを危険な目に遭わせたんですもの。親なら、抗議の一つもしたくなるわよ。」
「・・・とりあえず、詳しい話を聞かせてくれないか?」
普段の仮面を脱いで、若干キツそうな表情を浮かべながらも、忠夫がそう言った。
「理由は分からないが、私達は“記憶”が戻ったのだよ。あなた方が“アシュタロス事件”と呼んでいた時の記憶が、ね。」
「“蛍”・・・。」
「それって・・・!?」
「おそらく、ルシオラさんのしわざね。横島クンの危機に反応して、何らかの働きかけをしたのよ。」
「ええ、その通りだと思います。何故か、忠夫が密かに苦しんでいる事も分かりましたから。」
「・・・そういえば、横島クンのその状況は一体・・・?」
「こちらもおそらくだけど、ルシオラさんから譲り受けた霊基構造が拒絶反応を起こしているんじゃないかしら?本来ならば横島クンに統合されるものが、何らかの要素でそれが上手くいかなかったのね。移植手術なんかにおいて起こる反応ね。」
「・・・なるほど。」
元々はルシオラの霊基構造だったものだ。
本来ならば横島(人間)へと統合されるハズだったのだが、横島が無意識の内にルシオラを忘れたくない、と思った事によって、不完全な形で取り込まれてしまったのであろう。
結果、ルシオラ(魔族)としての性質も残したままになってしまった為、予想外の障害が現れる形になってしまったのである。
「正直に言えば、私達は憤慨しています。もちろん、状況は分かります。それだけ切羽詰まった状況だったのでしょう。ですが、せめて私達には、しっかりと事情を知らせて欲しかった。」
「私達も大人ですから、政治的なあれこれは何となく分かります。しかし、一人息子がとんでもない役割を与えられ、しかもそれを乗り越えたのに、それに対する謝罪や賠償、報酬がないのは、些か納得できませんね。」
「・・・おっしゃる通りだと思います。ですが、私はともかく、他の方々は・・・。」
客観的な事実から言えば、もちろんこれは美神親子、GSチームにも言える事でもあるが、横島らは世界を救った英雄なのである。
ならば、それ相応の報酬はあって然るべきだろう。
少なくとも、もう一生働かなくても良いほどの報酬や、あるいは生活の面倒を見ても良いくらいであろう。
それだけの功績を上げている。
だが、結果としてそれは有耶無耶になってしまっていた。
もちろん、“アシュタロス事件”そのものが“なかった”事にされているので、それをすると不自然になってしまう事も分かるのだが、少なくとも、もう少し配慮があっても良さそうなものであろう。
「ちょ、ちょっとそれはガメついんじゃ・・・。」
「あら、そんな事はないわよ?労働に対する正当な対価なんだから。・・・ま、流石にそれは期待できないだろうけど、ね。」
横島の突っ込みに、百合子はシレッと答える。
それは、令子も内心頷いていた。
「まぁ、それはいいです。各国政府も、自国の復興などに予算を割かなければならないんですから、なるべくなら余計な出費は抑えたいでしょうしね。忠夫がいらないのならば、私達が言う事ではないでしょう。ただ、忠夫の身の安全は保証して頂きたい。」
「っ!?」
「はっ・・・?」
百合子のセリフに、横島はポカーンとなる。
しかし、美智恵や令子には理解できたのか、衝撃を受けていた。
「曲がりなりにも、アンタ世界を救ったのよ?ならば、アンタを狙う奴がいても不思議な話じゃないでしょ?」
「・・・確かに。」
「い、一体誰がそんな事するってんだよっ!」
「思い当たる筋はいくらでもあるわね・・・。あくまで仮にだけど、仮に神族のどこかの一派がアンタを担ぎ出す事もなくはないだろうし、逆に魔族だって、アシュタロスを討ち取った者として、アンタを新たなる“魔神”としようとするかもしれないし、単純に、アンタを殺そうとするかもしれない。また、各国政府だったり、世界GS協会、各宗教団体にとっても、アンタの利用価値はいくらでもあるわ。」
「そうね。言いたくはないけど、その為ならば、ありとあらゆる手段に訴えかける者達も存在するでしょう。そう考えると、横島クンの立場は非常に難しいですね・・・。まぁ、一応は令子の預かりだから、今はまだそうそう手出しする事はないかもしれないけど、そのバランスもいつまで保つか・・・。」
「っ!?」
一応は、横島は令子の弟子、という立ち位置だ。
故に、今はまだある程度は安全性が確保されている。
令子はやり手の女性である。
そしてそれ以上に、悪名の方も有名であった。
少なくとも、彼女の存在を知っていて、それで彼女の関係者に手出しする事は、ハッキリ言って自殺行為である。
彼女の執念深さは折り紙付きだ。
“アシュタロス事件”の時に、それは証明されている。
しかし、当然ながら令子の庇護下にずっといられる訳ではない。
もちろん、この先も令子の事務所に勤める未来もあるかもしれないが、それでもいつかは独立を果たす事が来るだろう。
すでに横島の実力は、ハッキリ言って令子はもちろん、美智恵や西条よりも上である。
もちろん、経験や知識においては劣る部分はあるまでも、修行期間を終えてしまえば、各方面から圧力がかかる可能性もある。
“彼はすでに一端のGSなのに、何故いまだに美神令子の下についているのか?”、と。
そこからの選択肢は横島次第なのだ。
先程も述べた通り、令子の事務所にこの先も勤めるのも良いし、他の道を模索するのも良いだろう。
そしてそれに対して、いくら“師匠”という立ち位置であったとしても、その先は令子の口出しするものではないのである。
つまり、実質的に猶予は1年未満。
奇しくも、横島が高校を卒業するまでくらいがタイムリミットなのである。
その前に、彼の立場を明確にする必要があるのである。
「・・・お話は聞かせて頂きました。」
「唐巣先生っ!?」
「・・・どうしてこちらに?」
そこに、タイミングを図ったかのように、唐巣とピートが現れた。
驚愕する一同に、唐巣は苦笑しながや、しかししっかりと答える。
「横島クンのご両親がお見えになるのは予想外でしたが、実は私はとある筋から依頼されて、ずっと彼を
「「「「「えっ・・・!?」
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。