続きです。
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元々小竜姫と知り合いだったのは、唐巣の方であった。
唐巣は実は美智恵、そして令子の師匠であり(もっとも、正確には美智恵は元々は冥子の母である葉子に師事していたのだが、冥子のお産の関係で一時的に唐巣が師匠になった事は事実であるし、その過程で、美智恵にとって重要な出来事が起こった事もまた事実である。)、日本でも屈指の霊能力者であった。
ここら辺は割愛するが、美智恵と公彦のあれこれの後、彼は改めて霊能力者としての修業の為に妙神山に挑んでいたのである。
妙神山は、元々霊能力者の修業場として古くから存在していた。
だが、それに挑めるレベルとなると、いくらGSが現代ではある程度メジャーな職業となったとは言えど限られてくる。
つまり、美神と知り合った後は、小竜姫も彼女を頼る事も多かったが、元々人間の知り合いが多くはない彼女の交友関係を鑑みれば、唐巣は頼りになる数少ない人間の一人なのであった。
で、ここで思い出して頂きたいのが、GS本編でも活躍の場が少なかった老師こと、“斉天大聖孫悟空”の存在である。
妙神山の管理人は小竜姫であるが、本当のトップは老師である。
更には、老師は神族においても有数の実力者でもある。
(まぁ、人間界においても超有名な孫悟空が、下っ端なハズもないが。)
ハッキリ言えば、彼の実力ならば、アシュタロスをどうこうする事は不可能な話ではなかった。
もっともこれは、神魔族最上層部も同様だ。
アシュタロスに勝てる存在は、限りなく少ないが、存在しない事はない。
だが、ここで神魔族がデタント状態であった事が足枷となる。
それほどの存在が出張ってアシュタロスとどうこうとなると、情勢は一気にかつての緊迫していた状況に逆戻りである。
理由はともかくとして、それでは神魔族がお互いに一触即発状態となってしまい、ハルマゲドン一直線のコースになってしまうので、それは回避しなければならなかったのである。
こうした事もあり、老師は活躍する機会もなく、それどころか出番もなく、その前に天界に呼び戻されていたのであった。
“アシュタロス事件”が起こったのは、まさにそんなタイミングなのであった。
ここら辺は、アシュタロスもかなり綿密に計算した結果だろう。
彼に対抗できる存在は、当然彼も警戒しているハズである。
ならば、神族、魔族問わず、そうした者達が動けない状況を見極めるのは、智謀に優れたアシュタロスならば、なるほどいかにもありえそうな話であろう。
こうして神魔族の思惑とアシュタロスの策謀が上手く噛み合ってしまった結果、老師をはじめとしたアシュタロスに対抗出来る存在は冥界とのチャンネルが閉ざされた結果、動く事が叶わない状況となってしまったのだが、とはいえ、彼もただ黙ってそれを見ていた訳ではない。
意外かもしれないが、老師は武勇に優れた神であると同時に、実は智謀にも長けた神でもあった。
まぁ、神となった年月を考えれば、所謂“老獪さ”を獲得していたとしても不思議な話ではないだろう。
地上で起こっていた“アシュタロス事件”を注視しながらも、その先。
“アシュタロス事件”解決後を見据えて、色々と立ち回っていたのであったーーー。
神父side
「老師がっ・・・!?」
「ええ。“アシュタロス事件”が解決した時から、老師はこうなる事を予期していたようですね。もっとも、横島クンが
「・・・えっと、すんませんけど、一体どういう事でせう・・・?」
辛そうな表情ながらも、横島クンはいつもの調子でそう尋ねる。
・・・フフ、世界を救った青年ではあるが、彼はいつもと変わらないようだ。
「バカねぇ〜。つまり、アンタの処遇は、老師が預かる、って言ってんのよ。」
「・・・はっ?」
「正確には、“老師の弟子”、という立場をお考えのようです。これならば、神魔族はもちろん、各国政府もキミには手出しできない。何故ならば、キミに手出しした瞬間、老師と敵対する、という事だからだよ。老師の実力はキミもよく知っているだろう?」
「ええ、まぁ。・・・確かにあんな化け物とやり合いたくはないよなぁ〜・・・。けど、なんだってそんな俺を気にかけてくれるんすかね?」
「曲がりなりにも、アンタが一時的にでも老師に師事していたからじゃない?ま、そこら辺は本人に聞かないと分かんない事だけどね。」
「ほぉ〜ん・・・?」
不思議そうな顔をしていた横島クン。
もっとも私は、老師から直接、何故そんな事をするかは聞いているのだが・・・。
「横島クンを老師の後継者に、ですか?」
「うむ。まぁ、最初からそのつもりでいた訳ではないがの。アヤツと出会ったのは偶然に過ぎんし、ワシもあの時は、まさかここまでの存在になるなどとは予想もつかんかったからな。・・・ただ、曲がりなりにもアシュタロスを倒してしまった以上、アヤツはこの先、もはや普通の人生は歩めまい。ここら辺は、神話などを鑑みれば、“英雄”がその後どうなるかなどわかりきった話じゃからな。」
「・・・まぁ、それについては否定しません。しかし、何だってそこまで肩入れを・・・?」
「そういう訳ではないんじゃが、ワシにとっても都合が良い事もある。こう見えてもワシは、かなり高齢での。以前から密かに自分の後継者を探していたのじゃ。」
「いやいや、そんなそんな。」
確かに、老師は人間の感覚で言えば長い間生きている事だろう。
だが、ボクも霊能力者の端くれだ。
見た目こそ御老体だが、老師の内に秘められたとてつもない霊力は、年を取った、と言うにはあまり説得力に欠けていたのである。
「もちろん、まだまだ若いもんには負けるつもりはないが、とはいえ、このご時世、そうそう新しい神など生まれるハズもない。が、此度の事で、アヤツには神になる資格を得たに等しいのじゃ。本人がどう思うかは関係なく、の。」
「ふむ・・・。」
「それ故に、ワシの正式な弟子とする事で、各方面からの介入を牽制しつつ、あわよくばワシの後継者として、できればこの妙神山を、小竜姫と共に継いでくれたら、と思っているのじゃ。」
「なるほど・・・。」
確かに、まぁ、ボクは宗教上、また別の信仰を持っているが、霊能力者として見た場合、人から所謂“神”になる事例がある事は承知している。
しかし、これは、所謂“歴史的偉人”に限定された話である。
いくら現代ではGSが世間一般にも認知されているとは言えど、一般市民から見れば異常な力を持っていても、当然彼らが全て“神”になれるハズもない。
そうした者達は、所謂“歴史的偉業”なり神話的・伝説的な“逸話”が必要となるのである。
しかしその観点から言えば、なるほど、横島クンは、その条件に合致しているワケだ。
(もちろん、ボクや美神親子、他の仲間達が協力した事も事実ではあるが)彼がアシュタロス討伐の中心的存在となった事は紛れもない事実だ。
人の身でありながら、魔神を打ち倒したのは、これは間違いなく“歴史的偉業”と呼べるものだろう。
老師からしたら、自身の(一応は)弟子であり、なおかつ新たなる“神”になれる素質のある横島クンを、今の内から囲い込んでおきたいのだろう。
「それに、これはオフレコで頼みたいのじゃが、小竜姫もアヤツの事は憎からず思っているようじゃしの。」
「なんとっ・・・!」
ま、まぁ、分からない話じゃない。
横島クンは、あれで結構モテるからなぁ〜。
本人にはその自覚はあまりないようだけど。
つまり、小竜姫さまの親代わりでもある老師は、横島クンを後継者にすると共に、小竜姫さまとくっつけて妙神山を任せようとお考えなのか・・・?
「まぁもちろん、今すぐの話ではないし、最終的に決めるのはアヤツじゃから、ワシも強要するつもりはない。だが、いずれにせよ、本格的にワシの弟子とする事は決定事項じゃ。それがアヤツの為でもある。そんなワケで、お主にはアヤツにそれとなく伝えてもらいたいんじゃが・・・。」
「老師の頼みとあらば・・・。ですが、何故私に?一応は横島クンは私の孫弟子に当たりますが、それなら彼の師匠である美神クンに話を持っていくのが筋だと思いますが・・・。」
「まぁそれはそうなんじゃが・・・、相手は
「あぁ〜・・・。」
それは納得である。
まぁ、悪い娘じゃないんだが、少々ひねくれているところがあるからなぁ〜。
それに、本人は否定するだろうが、彼女が横島クンを気に入っているのは周知の事実だ。
そんな彼女が、これがベストな選択肢とは言え、素直に横島クンを手放すとも考えずづらい。
少なくとも、老師達に、トレード料だなんだ言って、無茶な金銭を要求する可能性もある、か。
まぁ、それはボクでも同じ事なんだが・・・。
「少なくとも、ワシらよりかはお主の方が美神令子の扱いには慣れておるじゃろ?無茶を言っているのは承知しておるが、何とか頼む。」
「分かりました。あまり自信はありませんが・・・。」
ーーーというがあって、ボクらは横島クン勧誘の為、密かに彼に張り付いていたワケである。
で、そんなタイミングで横島クンのご両親が突然来訪したのである。
正直言えばこれは予想外の事ではあったが、こちらとしてはありがたい事でもあった。
聞けば横島夫妻は、ルシオラクンの影響によって記憶を取り戻していたり、横島クンが霊障におかされていたりと驚くべき事実も並んでいたが、逆にそれが美神クンや美智恵クンの負い目ともなっていたからである。
このタイミングに乗っかれば、老師からの話は比較的スムーズに事を運ぶと計算したからである。
・・・いや、我ながら弟子である美神クンに影響されまくっているという自覚はあるが、彼女らと渡り合うなら、この程度の策謀は使いこなせないとやってられないしね。
「・・・良いんじゃないでしょうか?老師ならば、横島クンの事を安心してお任せできると思いますわ。少なくとも、他の神魔族や、各国政府などに比べたら幾分かマシでしょうね。」
美智恵クンが代表してそう見解を述べた。
おそらく、この言葉は横島夫妻に向けての言葉だったのだろう。
お二方は霊能力者関係者ではない。
故に、そちらの事情には詳しくないので、そもそも考える材料がないのだ。
それを察して、美智恵クンはそう言ったのだろう。
お二方も納得していた。
当然ながら、美智恵クンに対して思うところはあるまでも、彼らが言うように、ルシオラクンの記憶があるのならば、彼女が頼りになる女性である事も理解していたのだろう。
「ボクもそう思います。まぁ、彼の弟子に、というのは、様々な情勢を鑑みれば半強制なのですが、その後については、老師曰く、あくまで横島クン次第という事ですし。」
「な、何だか大事になってきちゃったなぁ〜・・・。」
話がまとまりかけた事を察してか、横島クンがそんな軽口を叩く。
「ま、それだけの事をしたんだ。色々と大変だとは思うが、個人的にはキミは誇って良いと思うよ?」
「・・・。」
ボクの言葉が響いたかどうかは分からないが、横島クンは、微かに頷いたように見えたーーー。
「えっと、そっちの話はひとまずまとまった、って事で良いんですよね?」
横島クンと同じく、話がまとまった事を察してか、おキヌクンがおずおずとそう確認する。
「そうね。ま、老師や小竜姫には世話になってるし、正直私の手には余るわ。ここは、申し出を素直に受けておいた方が得策でしょ。」
それに、美神クンは、若干面白くなさそうにそう言った。
まぁ、彼女としても思うところがあるのだろうが、彼女も(一応は)大人だ。
大人なら、世の中の汚い部分も知っているし、それをやり過ごす術も心得ているのだろう。
「そうですか・・・。なら、もう一つの問題についても、何とかしませんか?」
「もう一つの問題?」
「・・・“霊障”か。」
コクリ、とおキヌクンは頷いた。
そういえばすっかり忘れていたが、横島クンの身体には、数々の霊障が現れていたのであった。
まぁ、それに関しては話を聞きながら、おキヌクンが
「と言っても、正直どうすれば良いのか・・・。あまりに事例が少なすぎるし・・・。」
美智恵クンがそう呟いた。
確かに、横島クンの状況はあまりに特殊だ。
美智恵クンの時とも違うし、完全に魔族になってしまった勘九郎クンとも違う。
ボクらが頭を悩ませていると、ボクと一緒にいたピートが言葉を切り出した。
「あの、少しよろしいですか?」
「うん?どうしたね、ピート?」
「あ、いえ。あくまで想像の範囲は超えないのですが、それに、横島さんの状況を詳しく知るには、やはりドクター・カオスに調べてみてもらった方が確実だとは思うのですが、少しばかり思い当たる節がありまして・・・。」
「「「「「えっ!?」」」」」
突如ピートからもたらされた情報に、ボクはもちろん、みんな呆気に取られていた。
「えっと、横島さんのご両親にも分かりやすく説明しますと、実は僕、吸血鬼と人間のハーフでして。つまり、“バンパイア・ハーフ”と呼ばれる存在なんですよね。」
「あっ・・・!」
「え、そうなの?てっきり普通の人間だと思っていたんだけど・・・。」
「普通に真っ昼間から活動してるもんな。イケメンだけど・・・。」
ニヤニヤと横島クンのお父様は横島クンをチラッと見ながらそう言った。
横島クンがイケメン嫌いである事を見抜いているのだろう。
「で、僕らのような“バンパイア・ハーフ”は、幼少期に特殊な病気を発症するんですよ。まぁ、人間で言えば、成長の過程で克服するもの、としてご理解下さい。」
「ふむ、それは初耳だね・・・。」
「・・・けど、考えてみれば納得でもあるわ。ある意味“バンパイア・ハーフ”そのものが非常に珍しい種だもんね。なら、その種特有の事象だったり病気があっても不思議な話じゃないわ。」
「ええ。もちろん、純粋な吸血鬼は罹りません。あくまで、吸血鬼と人間のハーフである、という点がその病気を発症する原因だからです。で、その病気というのが“半魔症”と呼ばれるものなんです。」
「“半魔症”・・・?」
「これは、吸血鬼の強大な魔力によって、全身を霊障におかされる病気です。」
「ちょっ、それってっ・・・!」
「ええ、似てますよね。横島さんの今の状況と・・・。」
ピートの言葉に、僕も含めて一様に息を飲んだ。
確かに、非常に符号している。
全身に霊障が現れる事。
そして、その原因が強大な魔力である事。
もっとも、吸血鬼と魔族という違いが存在するし、そもそもピートは先天的な半人半妖であるが、横島クンは後天的なそれである、という違いはあるのだが。
「じ、じゃあ、ピートはその克服方法を知っているのかねっ!?」
「ええ。方法は非常に簡単です。この“半魔症”が起こるメカニズムは、吸血鬼としての魔力を上手く使いこなせていない事から、暴走した魔力が悪さをするからです。ならば、その魔力をコントロールすれば良い。このようにして、僕ら“バンパイア・ハーフ”はこの“半魔症”を克服しています。」
「「「「・・・。」」」」
「な、なんだよ、そんな簡単は方法があるのかよ。」
ボクの問いに、ピートはそう答えた。
それに横島クンは意外そうな顔を、横島クンのご両親も横島クンの反応に安堵の表情を浮かべていた。
だが、少なくともボク、美智恵クンに令子クン、そして西条クンの表情は厳しいものであった。
「アンタ本当に分かってる?確かにシンプルな方法だけど、これってかなり無茶な条件よ?」
「・・・へっ?」
見かねた美神クンが、横島クンにそう突っ込みを入れる。
「・・・令子の言う通りね。確かに横島クンの才能は、今や誰もが認めるものだわ。特に霊力のコントロールに関しては卓越した技術を持っている。それは、その集大成とも言える“
「えっ・・・!?け、けど、ピートは魔力をコントロールしてるって・・・。」
美智恵クンの説明に横島クンは困惑する。
「アンタ忘れてない?ピートは“バンパイア・ハーフ”なの。つまり、どれだけ人間に見た目が近いからって、人間とは全く異なる肉体強度を持っているのよ。例えばピートは、これでも700歳を超えているわ。それだけでも、肉体の“強さ”が人間とは比べ物にならないレベルである事が分かるでしょ?」
「そ、そういやそうだったな・・・。お前、ドテっ腹に穴開けられても生きてたもんなぁ〜。」
「また、シロやタマモも、カテゴリーとしては“妖怪”であり、人間よりも数倍頑丈よ。まぁその分、その種族特有の病なんかもあるんだけど、簡単には死なないから“妖怪”なのよ?」
「・・・。」
美神クンがそう締めくくると、その場を沈黙が支配した。
「じ、じゃあ忠夫は・・・。」
「いえ、結論はまだ早いかと思います。横島クンの超人的なコントロール技術と精神力いかんでは、とりあえず霊障を抑える程度には持っていけるかもしれませんからね。いずれにせよ、それらの扱いを学ぶ上でも、老師の提案はある意味渡りに船ですし、神族の知識によっては、また別の解決方法もあるかもしれませんからね。」
「そう、ですか・・・。」
「そうなると、やはり我々もしっかりと彼らにご挨拶をしておくべきではないかな、百合子?これから息子がお世話になるんだ。長い付き合いになるかもしれないしな。」
「そうね・・・。」
「なんだか大変な事になってきたなぁ〜・・・。」
まるで他人事みたいな横島クンだったが、こうして彼の立場の保証に加え、彼に現れてしまった霊障を何とかする為に、正式に老師に師事する事になった横島クンだったがーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。