実は作者は、ペルソナシリーズは3と4しか遊んでいません。
それ故に、ところどころ原作とは違う点が出てくるかもしれませんが、再三述べている通り、あくまでこの物語は作者が独自に解釈した世界設定である、という事を念頭においておいて頂けるとよろしいかと存じます。
・・・
“ベルベットルーム”の主であるイゴールは、元々はとある神性の存在によって造られた被造物に過ぎなかった。
しかし彼は、その存在の従者として人間、“ペルソナ使い”達と関わっていく内に『自己』に目覚め、人間の心の可能性に興味を持ち、主の元を離れ自主的にベルベットルームの主として生きて行く事を望み今に至る。
こうした事もあり、P4の時点では番長の行く末に興味を持ち、彼の選び取る可能性を見守る事を対価に、彼のサポートを買って出た訳である。
これが、所謂“契約”であった。
結果的には番長達は、イザナミの企みを阻止し、“真実”へと至っている。
それ故に、本来ならば“契約”はそこで終わった、ハズであった。
ところが、これは番長本人のせいではないのであるが、彼の存在が新たなるトラブルを招き寄せ、結果として未知なる世界や更なる可能性が出てきた事で、彼らは再び興味を示し、番長との“契約”を更新した訳である。
とは言っても、番長はすでに“ペルソナ使い”としては完成している。
故に、イゴールのサポートはもはや必要ないので、ある意味出番がほとんどないに等しいのであるが、“ペルソナ”とは別の、“霊力”という力に目覚めた事で(まぁ、イザナギ曰く、“ペルソナ能力”も大まかに言えば“霊能力”の一つらしいのだが)今度はそれを鍛える事が彼らの役割とも言えるのだった。
では何故、彼らはそうまでして“人間”に肩入れするのだろうか?
それは、彼らの存在意義が、とある悪性の存在と対立する関係だからであった。
元々は、その存在と対立していたのはイゴールの主であったのだが、その悪性の存在は、彼らにとっても忌むべき存在である。
先程も述べた通り、イゴールは人間の可能性に興味を持っている。
しかし、その悪性の存在は、人間を破滅の道に導く事を是としており、彼らとは相容れない存在なのであった。
もっとも、その悪性の存在とイゴールの主は、今は活動を休止している状態だ。
とは言っても、別に双方が諦めた訳でもなんでもなく、いずれ復活する事はほぼ確定している。
そうした意味では、その悪性の存在と対を成すような、番長達のような善性の思想だったり、“ペルソナ使い”が増える事は、彼らにとっても歓迎すべき事態だった訳である。
で、そんなイゴールの従者達が“力を司る者”であるマーガレット達なのである。
基本的には彼女達も、目的のようなものは同じである。
正しい人間を導き、見守る存在であり、自立した自己の確立を促す存在。
と同時に、イゴールと同様、彼女達にも『自己』が存在し、各々が独自の考えによって動いたりもするーーー。
・・・
番長side
「なるほど・・・。中々壮大な話だが、これで理解もできた。つまりお前達が俺に手を貸してくれたのも、それが回り回ってその存在に対抗する為になる、からなんだな?」
「そうね。アナタ達のような人間が増える事で、ヤツの思惑を阻む事ができる。とは言っても、“人間”は悪に染まりやすいから、そうした意味ではヤツの方に分があるの。実際、アナタも見てきたでしょう?“真実”から目を背ける人々を。」
「・・・ああ。」
“真実”とは、時として残酷でもある。
実際、
堂島さんや奈々子とも親しくしていた知り合いのお兄さん。
俺とも、個人的に“親戚のお兄さん”のような関係を築いていたし、そんな人が、まさか犯人だとは思わなかった。
いや、信じたくなかったのか。
しかし、結果的に俺達はその事から目を逸らさずに、彼の暴走を食い止める事に成功している。
しかし、そもそも“マヨナカテレビ”なり“ペルソナ”の事など俺達にしか分からない事であるから、彼を見逃そうと思えばできない話ではなかったのだ。
ある意味この選択は、誰も傷付かないものでもある。
だが、おそらくそれはもっともやってはいけない事でもある。
仮にこの選択をした場合、マーガレット達が言っている悪性の存在にとってはもっとも歓迎すべき事態だったかもしれない。
人は見たい事を見たいように見る。
これはイザナミの言葉だったか。
「そういう意味では、私達がいくら強くても、物事に干渉する事はほとんどできないわ。単純に、敵を叩き潰す事が目的ではないからね。あくまで“選択”をするのはアナタ達。私達は、その手助けをする事しかできないのよ。」
「なるほどな・・・。」
彼女の“強さ”を知っているからこそ、俺も一度は思った。
マーガレット達が戦えば、話は簡単なんじゃないか?、と。
実際、シャドウとの戦闘においては、これは有利に働く事だろう。
しかし、一番重要なのは戦闘ではなく、俺達が何を選択するか、なのだ。
仮に彼女達が最初から俺達の仲間としてパーティーに加わっていて、それで彼女が俺達をそちらの方に誘導したとしても、それは“俺達”の選択ではないのだから。
それは彼女達の行動を縛る、ある種の制約のようなものなのかもしれない。
「とは言ってもね。別に私達にも“自由”がない訳じゃないのよ。場合によっては、アナタを個人的に鍛える事もできるし、私の妹のように、特定の人間を助ける為だけに、出奔する者もいるのよ。」
「妹・・・?」
それは初耳だ。
マーガレットには妹がいるのか・・・。
ってか、考えてみれば、俺は彼女達の事をあまり知らなかったな・・・。
「マーガレットには妹がいるんだな。」
「あら、以前にも言ったと思ったけれど?アナタが私を倒した時に、ね。」
・・・そういえば、かつて世界を救った少年の魂を救う為に旅に出た、とか言っていたような・・・?
マーガレット戦は色々アレだったし、その後色々あったから失念していたが・・・。
「そういえばそうだったな。で、行方は分からないのか?」
「そうね。残念ながらそれは私達にも分からないわ。まぁ、少なくとも“向こうの世界”にはいるとは思うのだけれど、今は何をしている事やら・・・。」
「ふむ・・・。ってか、世界を救った少年って・・・?」
「それは・・・、アナタには直接は関係ない事よ。けど、アナタは知っていても良いかもしれないわね。アナタの存在は、これからも重要な意味を持ちそうだし、ね。(ボソ)」
最後の方はよく聞き取れなかったが、マーガレットはかすかに頷き、そして語り始めた。
「それは、今から二年、いえ、正確には三年。いえ、もっと言えば、もう十数年前からの話になるわね・・・。」
・・・
『影時間』。
そう呼ばれる現象が、かつて存在していた。
1日の終わり。
深夜0時に訪れる隠された時間帯。
電器具は停止し、生命は『象徴化』と呼ばれる棺桶の姿に変貌する。
この時間で自由に活動できるのは、ペルソナ使いとその適性がある者、『黄昏の羽根』と呼ばれる物質を内蔵する機械。
そして実体を得たシャドウ、シャドウの『声を聴いた者』のみ。
『象徴化』した場合は認識することも傷つくことも無いが、『声を聴いた者』は無事にシャドウから切り抜けたとしても出来事を記憶できない(正確に認識・記憶できる場合はペルソナ使いや適合者となる)。
影時間で死亡した場合は原因を交通事故や病気などに書き換えられる。
『特別課外活動部』は影時間の解明、およびシャドウ殲滅を目的としていた。
2009年4月。
10年前に両親を事故で亡くし親戚に育てられた主人公は、家庭の事情で小中高一貫校『私立月光館学園』の高等部に編入することとなった。
しかし、学生寮に入寮して間もなく、彼は異形の怪物・シャドウに襲われ、秘められていたペルソナ能力を覚醒させる。
それがきっかけで、主人公は隠された世界の真実の一端を知らされることになるのであったーーー。
「『影時間』・・・?そんな現象が存在したのか?」
「ええ、その通りよ。もちろん、当時のアナタ達はまだペルソナ能力に目覚めていなかったから、気付く事はなかったでしょうけどね。それで、彼ら『特別課外活動部』が、それらを何とかする為に活動していた、って訳よ。ちょうど、アナタ達『自称特別捜査隊』と似たようなものね。」
「ふむ・・・。」
「とは言っても、まぁアナタ達は殺人事件なんかもあったから、単純な比較はできないのだけれど、彼らはもっと政治的で、ドロドロとした内情を含んでいたわ。」
「・・・。」
『影時間』、そして『タルタロス』を生み出したのは、直接的な原因は“シャドウ”、及び、“ニュクス”によるものであったが、間接的な要因は、“桐条鴻悦”らが意図的に“シャドウ”を集めてしまった事が原因である。
彼らが何故、大いなる力を欲したのか、また、何故“支配”から“破滅”へと目的が変化したのかは定かではないが、おそらく例の悪性の存在が介在した可能性が高い。
いずれにせよ、“悪意ある存在”、そして、“人間達の悪意”によって、まさに“世界”は終末を迎える、ハズだったのであるーーー。
「だけど、“世界”はいまだに存続しているし、アナタ達人間も生存しているわ。」
「って事は、俺達とは別の“ペルソナ使い”が、その件を何とかした、って事か?」
俺は、そんな事件があった事に内心驚きながらも、今もこうして生きている事から、おそらくそうなのだろうと思いそう言った。
だが、マーガレットの次のセリフは、俺の予想とは違うものであった。
「残念ながら、半分正解で半分ハズレね。そもそも、これはイザナミもそうだったけれど、“ニュクス”は倒せる、倒せないという次元ではない存在なの。“死”という概念的存在そのものだからね。だから、“ニュクス”が降臨した時点で、全てが終わる、ハズだったわ。その少年がいなかったら、ね。」
「い、一体何が・・・。」
淡々と語るマーガレットからは、一種の凄味のようなものすら感じる。
それに、俺もゴクリッと息を飲んで、言葉の続きを促した。
「アナタと同じよ。“奇跡”を起こしたの。アナタの場合は、アナタが築いてきた“絆”を依り代として、本物の“イザナギ”を召喚する事でイザナミを退ける事、言わば“封印”に成功したわよね?もっとも、彼女も日本神話における“死”という概念そのものだから、当然滅んだワケではない。アナタ達の価値を認めて、集合的無意識に引っ込んだだけよ。仮に再びアナタ達人間が破滅を望むのであれば、彼女も再び復活するでしょうね。」
「・・・。」
マーガレットの言葉に、俺は改めて身が引き締まった。
人間は弱い。
それ故に、些細な事がキッカケで、最悪の未来を選択する事もあるかもしれないからである。
そうならない様に、イザナミを打ち倒した俺達には、これからも真実から目を逸らさない事が求められる訳である。
もっとも、まだ高校生である俺達に何かできる訳ではないが、多分、その姿勢を周囲に見せる事によって、良い影響が人々に伝播すれば良いのかもしれない。
実際、稲羽市、特に商店街の者達はすでに前向きに動き出している。
これがもし、俺達の影響ならばこんなに嬉しい事はないし、彼らの様に現実を受け入れて、それでも前向きになれる人々が増えれば良いとも思う。
「話を続けるわよ?一方のその少年は、アナタとは違い、自身の身を依り代として、“ニュクス”を封印、“ニュクス”の地球への降臨を未然に防ぐ事に成功したわ。ただしこちらも、“死”という概念そのものだから、消滅させる事は不可能だったけどね。それでも“ニュクス”は再び眠りについたから、“世界”の破滅は免れた事になったのよ。」
「自身の身を依り代・・・?それってっ・・・!」
「お察しの通りよ。その少年は、自分の命と引き換えに、“世界”を救ったのよ。まぁ、正確には死んだとは断定できないのだけれど、封印の楔になっている以上、実質的には死んだも同然の扱いね。」
「・・・そうか。」
なるほど。
そんな事がかつてあったのか・・・。
そして、マーガレットの妹は、そんな彼の魂を救う為に出奔した・・・と。
「彼を救う術があるのかないのか、それは私にも分からないわ。この“世界”は案外広いからね。あるかもしれないし、ないかもしれない。けれど、妹、エリザベスは、その可能性を信じて旅に出たの、だと思うわ。」
「妹さんにとって、その人は大切な人、だったんだな・・・。」
「そうね。私にとってのアナタ、みたいなものかしらね?」
「・・・えっ?」
軽くウインクを飛ばしてきたマーガレットに、俺は一瞬呆気に取られる。
「い、いや、俺にはマリーがっ・・・!」
「あら、“世界”を救った英雄がそんな事でどうするの?それに、私達には人間達の常識は適用しないわよ?」
いたずらっぽく妖艶に笑うマーガレットに、俺はドギマギしてしまう。
・・・おそらくからかわれているだけだとは思うが、いや、しかし・・・。
と、何だか締まらない感じの最後はなったが、俺はマーガレット達の目的の一部と、貴重な話を聞く事に成功したのであったーーー。
俺達とは別のペルソナ使いか・・・。
特に俺と似た様な境遇のその彼とは、一度会ってみたかったな・・・。
・・・
「ベ〜ルベルベ〜ル、ベルベッド♪
わ〜があるじは、長い鼻〜♪」
一方その頃、マーガレットの予測を裏切るかの様に、
彼女こそ、先程番長達の話題に挙がっていたマーガレットの妹であるところのエリザベス、その人であった。
「・・・えっと、最近入ったあの娘は、本当に大丈夫なんスか?」
「知りませんよ。けど、何でも霊力はとてつもなく高いらしいから、リーダーが重宝しているらしいのです。少なくとも私が調べた限りでも、経歴に不審な点はないですし、まぁ、確かに使えるのであればどこの誰でも構わないでしょう?」
「いや、俺が言ってるのはそういう事ではないんスけど・・・。」
そして何故か、
「・・・?それでは、何が不満なんでしょうか?」
“プログラマー”と呼ばれる技術者風の男は、ポカンとした顔を浮かべていた。
それに、“オペレーター”と呼ばれた大学生風の男は、あ、この人も普通じゃなかったな、と思い直した。
「いや、不満っつか、ちょっと不安っつーか・・・。あの娘、ちょっと変わってるっしょ?」
「そうですか?よくいる、今風の娘だと思いますがね・・・。」
んなわけねぇ〜だろっ!
“オペレーター”は内心そうツッコミを入れた。
確かにコスプレとして考えればおかしな点はないが、まるで普段着の様にエレベーターガール風の格好をしているのはどう考えてもおかしい。
少なくとも、彼らの活動を鑑みれば、もっと普通の、目立たない格好をするのが好ましいからである。
しかも、いざ話してみると、会話がしっかり成立しているのかどうかも怪しいのだ。
“オペレーター”が不安を持ったとしても不思議な話ではないのである。
「ま、よく分かりませんが、別に彼女に重要な役割を果たしてもらう訳ではありませんし、いえ、ある意味では重要とも言えるでしょうが、私や貴方の様な立場とは異なりますし、特に問題はないと思いますよ?少なくとも、リーダーがそう判断した以上、決定は覆られないでしょうし。もし、それでも不安があるのであれば、リーダーに直接言ってみてはいかがでしょうか?」
「・・・うっす。」
と、思ったが、どうやらこの“プログラマー”とも会話が成り立っていない事に遅ればせながら“オペレーター”は気が付いていた。
と同時に、この集団に、所謂“普通”を求める事の方が間違いである事も。
“プログラマー”の言葉に“オペレーター”はそれ以上何かを言う事をやめたのであったーーー。
「ベ〜ルベルベ〜ル、ベルベッド♪
わ〜があるじは、長い鼻〜♪」
・・・やっぱり不安だ・・・。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。