皇紀2680年 平成32年 7月22日 20時00分
「皆さんこんばんは。今年も4年に1度の聖杯合戦の季節がやってきました。司会は私、新田 文治と。」
「アシスタントの高嶺 華です。」
アナウンサー2人の挨拶で番組は始まる。
聖杯合戦は4年に1度の国を挙げてのお祭りであるため、臣民の関心度も高い。
当然マスメディアも報道には熱が入る。
この番組も日本放映連盟を中心に各民放テレビ局の共同制作の放送番組である。
「ゲストのお二人をご紹介させて頂きます。まずはタレントのジョージ申谷さんです。」
「どうも申谷です。ワイのようなもん呼んでいただいいてありがとうございます。」
胡散臭い関西弁を話す猿顔の中年は、ジョージ申谷と紹介された。
テレビで見ない日は無いと言って良いほどの人気タレントだ。
「もう1人のゲストを皆さんもご存じの。聖徳太子さんです。今、合戦の監督役のルーラーとして召喚されました。」
「いやーどうもどうも~。」
紹介された妙齢の美人はヘラヘラ笑いながら手を振る。
冠や服装が肖像画に描かれたそのままではあるが、その姿は伝承とは違い容姿端麗な美女である。
だが聖徳太子というには威厳や気品といったものが皆無であった。
表情も気が抜けて緩み切った顔をしている。
日本屈指の偉人というよりは、学生気分が抜けない若者のような印象を受ける。
「聖徳太子は諡ですから、生前の厩戸王又は厩戸皇子とお呼びした方がよろしいのですか?」
「どっちでもいいですよ~。めんどくさいですし。」
特に配慮した様子も無く質問にあっけらかんと答える。
その答えに新田は苦笑いする。
「肖像画では男性だったのですが、実際には女性だったんですね。」
「おっさんに描かれて大変不愉快です。描くならもっとイケメンか美少女にしてください。」
質問した高嶺アナやスタジオのスタッフも笑ってしまっている。
「あんたおもろいやっちゃな。もっとお固い人や思うとったわ。」
「ありがとうございます。貴方も面白いですよ。特に顔が。」
人を食ったような態度を聖徳太子はするが、申谷は特に気に留めていない様子だ。
「さて豪華なゲストを迎え番組を進行せていただきます。まずはこちらをご覧ください。」
スタジオの大型モニターに東京全体を空から撮影した映像が映る。
光の線で区域ごとに区切られており、その線も場所ごとに色が違う。
「今、合戦は東京23区の朱引陣を7人のマスターで取り合う事になります。」
「色分けしたものがこちらです。」
色分けされた23区が描かれたフリップが出てくる。
「セイバー陣営が青色、アーチャーが黄色、ランサーが緑、ライダーが赤色、キャスターが紫、アサシンが黒、バーサーカーが灰色になります。」
「各陣営には3騎づつサーヴァントが召喚されます。」
「サーヴァントは朱引陣の霊脈から魔力を得られるので、領地の数が多いほど魔力が増えていきます。」
「聖杯を得られるのは最後まで勝ち残ったマスターとサーヴァントのみ、領地を増やしながら戦い抜くわけです。」
新田アナと高嶺アナが交互に説明を行う。
次に甲冑を着た兵士の画像がモニターに映る。
本来、顔があるべき場所には顔が無くのっぺらぼうような状態だ。
一目で人では無いのが分かる。
「聖杯合戦最大の特徴がこの霊兵・足軽ですね。」
「ええ、彼らは朱引陣の魔力を元にした兵士達です。マスターやサーヴァントの命令することで行動します。」
「サーヴァントよりも弱い彼らですが1つの朱引陣から最大で1万人ほど作成できます。」
「ただしこれは朱引陣の魔力をすべて使用した場合です。サーヴァントの魔力供給がその分滞ってしまいます。」
「サーヴァントの魔力供給と兵士の数をバランスを取る事が聖杯合戦を勝ち抜く秘訣であると言えますね。」
「あのちょい質問なんやけど。」
申谷が手を上げて問いかける。
「朱引陣を制圧するのって、具体的にどないするんや?」
「朱引陣の中心にある石像に触れて、マスターかサーヴァントがパスを繋げる事で自分の陣地にする事ができますね。こちらの石像ですね。」
大型モニターが狛犬の映像を映し出す。
この像が朱引き陣の霊脈を制御しており、魔力が最も集中する場所である。
「千代田区と渋谷区は色が白いですが、誰の陣地なんですか?」
「空白地帯ですね。今回の合戦は1チーム毎に3つの朱引陣が与えられていますが、余りの朱引陣があります。
誰の物でも無いので領地を拡大するチャンスでもあります。」
「既に空白地帯に向かっているチームもいるもようです。現地と中継が繋がっています。猫戸さん聞こえますか?」
高嶺アナの呼びかけると画面が切り替わり、リポーターの女性が画面に映る。
「はい。現地の猫戸です。私達は今、千代田区上空にいます。
空白地帯の千代田区は戦闘区域になる事が予想されます。住民の皆様はお近くのシェルターに避難するか、建物の中から出ないようにお願いします。」
ヘリコプターに乗って猫戸が現地様子を伝える。
「あちらをご覧ください。空白地帯を制圧しようと進軍してくる一団を捉えました。」
遠目で蠢く人の塊らしきものをカメラに写す。
カメラがズームになるとハッキリと人物が分かった。
馬に乗った男女の姿。
高城司と【ナナシ】の姿だ。
携帯から番組を見ていた司は自分の姿が映ったことに驚く。
上空を見ると派手な音を出してヘリコプターが飛んでいる。
あれが自分たちを写しているのだ。
「…この地区はサーヴァント戦が予想されます。住民の方はお近くのシェルターか近くの建物に避難してください。この地区は…」
街中のスピーカーから同じ音声が流れ続けている。
ここまで馬に乗って街中を疾走してきたが、人影は全く無く道路も車の一台も走っていなかった。
「マスターもうすぐ着くぞ。」
「ナナさんは像の位置は分かるの?」
「ああ、だいたいな。魔力の1番集中している所だ。」
司を挟んで手綱を後ろから操っているななしが答える。
「マスター気をつけろ!敵だ!」
司達の前方の道路に魔法陣が展開され、そこから白色の旗と鎧を身につけた足軽達が現れる。
主が居ない朱引陣であっても自動防衛で展開される足軽だ。
「どうするの?」
「無論押し通る!」
彼女の剣を振り上げ、自分の兵達に命令を下す。
「全軍抜刀!突撃!」
青い足軽達は一斉に刀を抜き、雄叫びを上げ敵に躍りかかる。
「マスターはしっかり掴まっているんだぞ。俺はあいつらを蹴散らしてくる。」
そういうと名無しは馬から飛び降りて、先陣を切って駆けていく。
司はそれを見送り後陣の兵達に飲み込まれていく。
一番に切り込んでくる【ナナシ】を見つけて敵の兵は彼女に狙いを定める。
だが彼女は敵の白刃を躱し、逆に次々と敵兵を仕留めていく。
剣をひと振りするたびに敵兵が次々と崩れ落ちていく。
その姿はまるで踊りでも踊っているかのように美しさと気品があった。
【ナナシ】が1人で敵陣を崩して行くところに味方の兵が突撃してくるのだからたまらない。
あっさりと敵陣は崩壊し、勝敗はほぼ決した。
元々、所有者のいない朱引陣の足軽は指揮されている足軽よりも弱く、その上数も多く無い。
最初から負ける要素は無かったのだ。
後は石像にパスを繋げばこの朱引陣は自分達の物になると考えていたななしは別の敵が来ているのを感じ取った。
自分達とは別方向から軍勢が迫っていることを視認できた。
「黄色の旗指物…アーチャーか。」
この地区に隣接している陣営の一つだから別に不思議なことでは無い。
彼女も陣地の争奪戦は予想の範疇であった。
だがタイミングが良すぎる。
後もう少しで制圧できるというタイミングで現れたのだ。
黄色の足軽達は一定距離で立ち止まりこちらと対峙する姿勢を見せる。
その後ろから馬に乗った男が2人ゆっくりと歩いてくる。
「露払いご苦労!ワイらのためにわざわざ掃除してくれるとはなんと殊勲なやつらよ!」
先頭のサーヴァントらしき男がこちらに話しかけてくる。
引立烏帽子を被り、胴丸らしき鎧を身につけている。
その言葉で【ナナシ】は合点がいった。
奴らはわざと遅れてきたのだ。
自動防衛の足軽とななし達を戦わせて、無傷の自分達が領地を掠め取ろうと画策したのだろう。
「随分とセコい真似をするものだな。三騎士ともあろうものが。」
アーチャーと対峙しながら、霊馬ごと司を自分の後ろに付かせる。
弓兵を相手にマスターと距離を離すのは悪手だ。
「せこい?アホなこと言うな。これは戦や。勝つ為なら何でもやるもんや。そこに卑怯もひったくれも無いやろう?」
「まあその言葉には同意するよ。」
その言葉をを言い終わらぬうちに、【ナナシ】の姿が一瞬で消えアーチャーに斬りかかる。
虚を突かれたアーチャーだったが、冷静に和式の甲冑には不釣り合いなサーベルを抜いて迎撃する。
剣戟音が辺りに響きわたる。
一撃で決まらないとみるや【ナナシ】は嵐のような連撃で猛攻を掛ける。
アーチャーも負けじと打ち合う。
その攻防はまさに神速。
並の人間の目では捉えらない。
三十合近く打ち合ったすえ、アーチャーの水平斬りを避けつつ【ナナシ】は後方に下がって距離を取る。
「こんな熱烈な歓迎をうけるとはワイもまだほかしたもんでも無いな。」
アーチャーが余裕そうに軽口を叩く。
「あいにく髭面の親父は好みではないのでな。」
「アカン、振られたわ。」
「おい!おっさん!何やってるんだよ!」
アーチャー後方からマスターらしき人物が初めて声を上げる。
帽子にマスクをしている為その表情は読み取れないが、声から怒っている事は伝わる。
「さっきから防戦一方じゃないか!そいつはあんたより弱いんだからさっさと倒しちまえよ!」
「坊主それはほんまかいな?」
「ああ、そいつはステータスは殆どC止まり。おっさんの方が上だぜ!」
その言葉にアーチャーは訝しんだ。
マスターはサーヴァントの情報をある程度までは観るだけで読み取ることができる。
マスターは嘘をついていない。
しかし実際に刃を交えたアーチャーの勘はその情報に異を唱える。
膂力、身のこなし、そして技の冴え、どれを取っても一流であると言わざるおえない。
無論能力値が全てでは無いがその齟齬がアーチャーは解せない。
加えて彼女の剣である。
今まで剣と表現してきたが、彼女の得物は白い靄のようなものに包まれてその全貌は全く分からないのだ。
彼女の戦い方やおおよその得物の長さから剣だと予測できる程度だ。
いくら激しく振るっても靄から得物の姿が見える事は無い。
余程自分の正体を知られたくないらしいとアーチャーはほくそ笑んだ。
一方優勢に見えたななしもその実、攻めあぐねていた。
弓兵の得意な距離で戦わせまいと接近戦を仕掛けたのだが、一向に突き崩す事が出来ない。
剣の技量自体は自分の方が上にも関わらず、手傷一つも負わせられないのだ。
そのくせこちらの攻撃が甘いと隙を突いて反撃を仕掛けてくる。
まるで要塞の相手をしていると錯覚するような堅固さである。
お互いに構えを崩さずに睨み合い、膠着状態に陥っていた。
「影井さん!しっかり撮ってよね!」
「ああ、大丈夫だしっかり撮れてるよ。」
上空から2体のサーヴァントを撮影しているテレビクルー達も色めき立っていた。
大日本皇国、最大のイベントである聖杯合戦はすべて臣民が注目している。
だが現地の取材班にとっては過酷極まる仕事である。
今のように戦況は刻一刻と変化していき、予測が立てづらい。
最悪戦闘に巻き込まれて死亡した事例もある。
しかしここで見事この仕事を全う出来れば内外の評価はうなぎ登り。
間違いなく出世できる。
ここで名を上げ、一流キャスターになり適当なスポーツ選手と結婚して寿退社。
後は悠々自適なセレブ生活を送るのが猫戸 彩里の人生プランである。
「テレビをご覧のみなさん。セイバー陣営とアーチャー陣営の戦闘が始まりました。
どちらが勝つか予想してお手元のリモコンから投票をお願いします。」
聖杯合戦中継の最大の醍醐味、リアルタイムによる勝敗の予想である。
テレビからリモコン操作で投票し、予想が的中した場合それに応じた配当金が貰えるのである。
賭け金不要、外れてもリスク無し。
政府主導の公共ギャンブルであり、臣民のガス抜きも兼ねている。
聖杯合戦が支持されている最大の理由がここにあった。
「やはり最優クラスのセイバーが人気なようですね。果たしてどちらが勝つのでしょうか?」
夜の秋葉原で行われている2人のサーヴァントの戦いを見守る者は、両陣営のマスターとテレビ局のクルーさらにもう1人いた。
ビルの上から戦いを眺め、時折両マスターにも目線を送っていた。
男は小袖に袴を履き黒い頭巾を被っている為表情は伺え無い。
接近戦ではやはりセイバーの方に分があるが、アーチャーの手練手管によって戦況は拮抗状態に陥っている。
目の前相手にお互い夢中で周囲を警戒しているそぶりは無いようだ。
頭巾の男は白鞘に収められた自身の太刀をゆっくり引き抜く。
狙いはマスターだ。
どんな強力なサーヴァントでもマスターの存在は弱点である。
この位置からセイバーのマスターからは死角になる。
次に2体のサーヴァントがぶつかり合った時がチャンスである。
頭巾の男がそんな思惑を巡らせているところ、お互いに様子を伺っていた二体のサーヴァントの距離がジリジリと狭まる。
もう少しでどちらかが仕掛ける
頭巾の男はジッと時を待つ。
先に仕掛けたはやはりセイバーからだ。
脇構えからアーチャーに突進して距離を一気に詰める。
それを確認してから頭巾の男も太刀を左手に持ち、ビルの上から地上に飛び降りた。
計画通りセイバーのマスターに狙いを定めようとした時、予想外の事態がおきた。
アーチャーに向かっていたセイバーが突如反転して跳躍。
そのままこちらに向かってきたのだ。
セイバーの斬り上げに対して咄嗟に真っ向から刃を振り下ろす。
刃が重なり合い空中で鍔迫り合いの状態になった。
「がはあッ!?」
鍔迫り合いの最中、頭巾の男の右肩に予期せぬ衝撃が走る。
そのまま態勢を崩して地面に叩きつけられる。
すぐに確認すると矢が右肩に突き刺さっていた。
アーチャーがいつのまにか矢をつがえこちらに攻撃をしてきていたのだ。
「やっぱりいたな。出歯亀野郎。」
難なく着地したセイバーが頭巾の男に声をかけてくる。
「き 貴様ら!戦っていたのではないのか!」
くぐもった声だがなんとか聞き取れる声で頭巾の男は言った。
セイバーとアーチャーは争い合って、こちらに意識を向ける暇も無かったはずだ。
何故急に協力してこちらを攻撃したのか頭巾の男には理解出来なかった。
「これだけ大っぴらに戦っていれば、寄ってくるサーヴァントがまさかワイらだけで無いやろう。」
アーチャーが平然と言ってのける。
なんのことは無い。
2人は最初から乱入者に警戒しながら戦っていたのだ。
奇襲も想定内にすぎない。
一転して頭巾の男は窮地に追い詰められた。
そうして男が次に取る行動はおおよそ予測出来る。
「逃げたか。」
頭巾の男はゆっくりと立ち上がると同時に姿を消した。
恐らく霊体化して逃亡したのだろう。
名無しもアーチャーも追いたかったが、まだ目の前の戦いに決着はついていない。
ここは頭巾の男を見送るしかないのだ。
「どうする?続きをやるか。」
「いや、興が乗らへん。それよりもええ話があんのやけど?」
「どんな話だ?」
「ワイらで同盟を組まんか?組んでくれるならこの朱引陣はオノレらにやるわ。」
「おっさん!ちょっと待て!」
【ナナシ】とアーチャーとの会話にアーチャーのマスターが割って入る。
「聖杯を貰えるのは1組だけだぜ!何で同盟何て組む必要がある!それに朱引陣をくれてやるなんて...」
「アホ。ボウズなればこそよ。」
馬から降りて激昂しながら詰め寄ってくる自身のマスターを諭すような口調でアーチャーが続ける。
「まだ見たことも無い陣営が5つもあり15騎のサーヴァント達がおる。
ワイらだけで戦い抜くのは骨が折れる。早い段階で同盟を結んだらそれだけ有利になれるっちゅう寸法よ。」
「別にコイツらと絶対組む必要はねえだろ。他に強いヤツがいるかもしれねえし。」
「いや、こいつらは強い。ワイが太鼓判を押す。」
アーチャーのマスターは少し考える素ぶりを見せたが。
「わかったよ。おっさんの好きにすればいい。」
と答えた。
口調は乱暴だが、そこには確かに自分のサーヴァントへの信頼を伺わせている様子だった。
「こっちはまだ同盟を組むとは言って無いぞ。」
「ナ、ナナさん。」
ななしの言葉を司が慌てて止める。
「マスターが決めてくれ。俺はマスターの命令に従う。」
「いや、いきなり振られても...ナナさんはどう思う?」
「オレか?うん...」
腕を組み少し考えてからななしは答えた。
「悪くは無いだろうな。ただアイツらの正体なのかまだよく分からない。寝首を掻かないとも限らない。」
確かに一理ある。
彼らを信用するには時間が足りなさ過ぎた。
司は少し考えてからアーチャーに声を掛けた。
「あの1つ質問していいですか?」
「なんや?セイバーのマスターさん。」
司は少し気になっていたことを質問をしてみることにした。
「さっき自分が襲われた時にどうしてななさんを攻撃しなかったんですか?チャンスだったはずでしょ?」
そう頭巾の男の対応に【ナナシ】が背を向けた時、後ろから射ることも出来たはずだ。
何故【ナナシ】を援護したのかが司には気になっていた。
アーチャーは一瞬キョトンとした顔をしてすぐに豪快に笑い出した。
「確かにその通りや。頭巾の男、十中八九アサシンやろが、セイバーを射ればアサシンの奇襲は成功したかもな。
軍を率いておらんアサシンは撤退して、ワイらは陣地を物に出来る。ジブン、なかなか悪どいな。」
クックと心底可笑しいといった感じでアーチャーが司に言った。
「いや…そこまで考えたわけじゃなくて。」
司としてはそこまで考えて発言したわけでは無かったが。
「ただ、目の前の相手が突然背を向けたら攻撃するのが普通かなと思って。」
「そうやな。射らへなんだ理由の1つはアサシンが厄介やからや。攻撃移ってからやっと気配を察知出来よった。
こんなことが出来るのは、気配遮断スキルを持っとるアサシンしかいひん。こいつらを野放しにしてると後々厄介や。」
指を立ててアーチャーが説明する。
「2つ目は、あんたらに恩を売るため。助けてやった方が、同盟交渉の材料になると踏んや。先行投資やな。」
納得出来る理由だ。
既にその頃には同盟を組む構想をしていたらしい。
「3つ目は勘や。あんたらと組んだ方がおいしいとなんとなく分かったんや。」
「勘で決めたのかよ。おっさん。」
「結構重要なんやで勘は。ワイのは良く当たるで。」
アーチャー組のやり取りを見ながら司は考えていた。
アーチャーが腹を割って誠実に話してくれている事は分かった。
なら自分も自身の勘を信じてみようと。
「分かりました。同盟を組みましょう。」
「おお!さよか。それは、めでたい。」
自身の提案が受け入れられてアーチャーはご満悦な様子だ。
「ほら、手を出せよ。」
アーチャーのマスターが司に近づいて来て手を差し出してくる。
取り敢えず手を繋げば良いと解釈して司は手を握った。
瞬間、令呪を通して何かが繋がったのが分かった。
「よし、パスは繋がったな。これで同盟成立だ。」
「よっしゃ!同盟成立を祝して勝鬨やるか!」
俺達もやるのか?といった表情でななしも仕方ないといった表情で足軽達に指示をする。
「勝鬨やー!」
「鬨の声を上げろー!」
2人の声に反応して足軽達が一斉にえい、えい、おー!と声を出した。
両軍合わせて1万人近くの兵の声を凄まじくビルの合間に響き渡った。
「あの、すいません。少しよろしいですか?」
いつの間にかヘリから地上に降りていた取材班が司に声を掛けてきた。
「え、あ、はい。」
司は突然話しかけられたので、挙動不審な態度を取ってしまう。
「俺達はもう行くからな。」
「え?いやちょっと待って。」
質問を受けている司を尻目に立ち去ろうとするアーチャーのマスター。
それを何とか司は止めようとする。
「連絡先な。じゃあな。」
電話番号が書かれたメモを渡して、アーチャー組は騎乗して軍勢を率いて自身の陣地へと立ち去っていった。
必然、インタビューは司に集中する。
「まずはお名前と年齢を。マスターに選ばれた意気込みもお願いします。」
「え えっと高城 司。17歳です。マスターになったのは初めてですが頑張っていきたいと思っています。」
何とか絞り出して司はこう答えた。
こうして司は聖杯合戦の初日を無事に終えた