舞い降りし軍艦鳥   作:帝都造営

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第84話 素敵な硬貨と陰謀論

 小学校というのは何でも子供たちを平等に育てるのだという。脱税者の子供も教科書が貰えて、未納者の子供にも給食が振る舞われる。そんな虚構の平等が存在するなんてことも知らされず、あの頃の私たちは育てられていた。

 そのクセに、あの日出された宿題は、とんでもなく不平等なものだった。

 

『家族の調べ学習【お父さんとお母さんのこと】?』

『うん。がっこうの宿題! 質問するから答えてね!』

 

 首を傾げる父の顔は、よく印象に残っている。私には母がいない。となると果たしてこの二つ目の欄に何を書けばいいものだろうか。電子メールやメッセンジャーサービスを知らないあの頃の私じゃ北海道にいるという祖父母に問い合わせるという選択肢も無い。困り果てたのはよく覚えているものだ。

 とはいえ、私はまだ幸福だったのだろう。私には父がいた。まあ、色々と厳しい父だけれど、ちゃんとご飯も作ってくれたし家の外は駄目でも島の外にも連れて行ってくれた。

 こう認めるのはアレだけれど、私は父に対して人並みに懐いていたのだろう。

 

『いくよ、えーと。【あなたのお父さんは、どんな仕事をしていますか?】』

 

 それなのに、その時の父は私の質問に答えてはくれなかった。どんな食べ物が好きなのか。どの動物が好きなのか。そう言ったことは答えてくれるのに、どんな仕事をしているか、その一点においては、あの人は何も答えてくれなかったのだ。

 でも、私は単純だったから。その言葉の意味も知らずに、自信満々で発表したのだ。

 

『私のお父さんは、みんなの生活をささえる仕事をしています! それは大事なことなんだって、お父さんは言っていました!』

 

 

 

 

 

 

 

 幹部国防軍人と聞けば、世間のイメージは高給取りの高級官僚(エリート)と言ったところだろう。

 それは大体あっているし、その分だけ責任ある仕事を任されるのが幹部だ。そんな理由(ワケ)で私にも自身が教導する駆逐隊(ユニツト)が与えられている。名誉の第一護衛隊群は第163護衛隊。駆逐隊やら護衛隊やら表記が揺れてややこしいのは旧自衛隊の残り香で、とにかく私は自分含めて四隻の小型で一人乗りな特殊艦艇(かんむす)たちを率いる隊司令ということになる。

 所詮は駆逐艦娘になる程度の才能しかなくとも、勉学に励み幹部としての精神を備えていればこの位の役職には就けて貰えるというのは、私にとっては有り難い話だった。

 そして自分で言うのもなんだけれど、ユニットの指揮はよくやってきた方だとも思う。編成からもうすぐ一年。大小数十回の出撃と一回の大規模作戦を経験したけれど、脱落者はナシ。一発の砲弾であっさり沈んでしまう戦場じゃ幹部か下士官かなんて関係ない、そんなフラットな関係を部下たちとも築けているつもりだ。

 

「アンタのセクハラさえ無ければ、そりゃもう最高の駆逐隊(ユニツト)だと思うわよ、私だって」

「うわっ、なにそれ。流石の私も傷付くんですけれど?」

 

 しかしそんな私をバッサリ斬ってしまうのが霞という部下である。ちなみにこの「霞」というのは彼女に与えられた艦名で、厳密には彼女が背負う基部ユニットと海面下の推進系、そして武器関係の装置全てをひっくるめた「艤装」と呼ばれる装備品に対して与えられたものなのだけれど、艦娘(わたし)たちの間では専らこの艦名でお互いを呼び合う。そんな誰が言い出したとも知れない文化が根付いていた。

 

「ねーねー不知火酷くないー? このパッツンったら私のことをセクハラだとか変態親父だとか言うんだよー? 酷いよねー?」

「やめて下さい陽炎。後半の台詞は霞も言ってませんし、今の台詞はご自身が変態だと自白しているとも取れるのですが」

 

 そう冷たくあしらって私の腕から逃れるのは不知火。私は彼女の本名は知らないし、知ろうとする気も起きない。重要なのは彼女の冷たくあしらう様は可愛く、言葉とは裏腹に満更でもなさそうな様子であること。そして何より――――私がそんな、部下にセクハラをするような気の抜けた上官だと思われていることだ。

 

「なによぉ、不知火まで私に酷いことするなんて……ちょっと霰、ピケット任務しながら聴いてるんでしょ? アンタもなんとか言いなさいよ」

『……本艦は無線封止中、です』

「いやガッツリ喋ってるじゃんか!」

 

 こんな会話は、きっと全部嘘。言葉というのは転がせばどこまでも転がっていくもので、きっと目の前の彼女らは私の台詞が本物だって信じている。いや、もちろん本物ではあるのだ。不知火は可愛いし、霞も口は悪いけれど思いやりのある子。霰は先ほどの通信からも分かる通り、意外と茶目っ気がある。そして彼女たちのそんな表情は、私が教科書みたいな「真面目系軍人」を演じていたら引き出せなかったもの。

 上官が上官として振る舞うのは戦闘の時だけでいいというのは、この艦娘という特殊な兵科で私が学んだ知見(コツ)だ。階級の壁を感じさせず、なるべくナマの人間として見てもらう。少なくとも格下に見られがちな駆逐艦という艦種において、この手段は有効だった。

 

「それにしても最悪ね。7護群の練度は何処に行っても低いし、移動手段もないし」

 

 吐き捨てるように言う霞。確かにここ一ヶ月、第7護衛隊群の管轄海域を西から東へと見て回ってきたけれど、全体的に見て練度の低さは目立つもの。私も大きく頷いて同意したいところだけれど、後ろに続いた「移動手段」という単語が私の口を閉じさせた。

 上官の価値なんて、部下にとっては人脈(コネ)と責任転嫁先の代名詞である。例えば私は日本からニューギニアまで6000キロの旅に欠かせない移動手段の確保に失敗した。輸送機(そら)艤装便(ふね)も使えないのであれば、口には出さずとも不満は溜まるだろう。

 

「別に、陽炎1尉(アンタ)に文句を言ってるわけじゃ無いのよ。ただ、ロクに訓練もしてあげられずに次の任地に移動って言うのが……納得出来ないのよ」

 

 それは責任感の強い霞らしい意見だった。彼女は曲がったことを嫌う。教導の役割を任せられたのに、十分に練度を挙げられずに次の基地へと移るのは納得出来ないだろう。

 だから私は口を開く。この言葉(ウソ)が、彼女の自責を和らげてくれることを願いながら。

 

「一つの部隊が強くても戦争には勝てないでしょ? まずは7護群全体の練度を把握して、それから必要な場所に処置(くんれん)を施していく。教導っていっても、形は一つじゃないの」

 

 教導部隊というのは、何かと引っ張りだこな存在だ。もちろんその名の通り各部隊の練度向上もそうだが、必要となれば精鋭部隊として最前線にも赴く。もしも新型の艤装や装備品が卸されるなら、技術本部の次にテストを行うのは教導部隊になることだろう。

 

「ま、気持ちは分かるわよ。でも、今は幹部試験の心配した方がいいんじゃない?」

「……な、なんでアンタが知ってんのよ!」

 

 まさか知らないとでも思っていたのだろうか。国防大学校専科コースへの編入試験に彼女が志願書を提出していることは、この駆逐隊(ユニツト)の誰もが知っていることである。

 

「いや。私これでもあなたの上官だからね? 編入試験には推薦状が必要でしょ。そっちが言い出してくれないせいで、早く推薦してやれって催促がきたのよ?」

「そ、それは……陽炎1尉(アンタ)じゃ書いてくれないと思ったから」

「うーん、そうね。確かに口は辛いけれど的確な進言をくれる部下を喪うのは惜しいわ」

「ほら、やっぱり書いてくれないじゃない!」

 

 とはいえ、向こうも私が本当に書かないとは思っていないだろう。次の基地で書いとくわよと言えば、小さな謝礼が返ってくる。なんだかんだと霞も可愛いものだ。

 とまあこんな調子で部下を弄ってしまう上官に価値があるかはともかくとして、部下を把握している上官は戦果を挙げやすい。少なくとも私はそう信じているし、戦果だって教導部隊に指定されても疑われないレベルには、挙げてきたつもりだ。

 それでも、教導部隊という言い訳(ウソ)を使うのは、気持ちの良いものじゃない。霞の指摘はその通りで、私たちが各部隊をつまみ食いするかのように巡回したところでなんの役にも立たないであろう事は分かっている。未練がましく、携帯鞄を開いてみせる霞。

 

「はあ……」

 

 そして小さくため息を吐く彼女に、不知火が口を挟む。

 

「なんだかんだで、霞は面倒見がいいですからね。一番よくコインも貰っていました」

 

 そういえば、霞はむすっとした表情になる。向けられる視線は不知火ではなく私の方。

 

「何言ってるの。一番コインを貰ってるのは陽炎1尉でございますよーだ」

 

 コインというのは、チャレンジコインのこと。それは太平洋の向こうで始まった文化で、戦友の証みたいなものだ。帰れるとも知れぬ戦場に旅立つ戦友に再会を望む……そんな大仰な意味があるのかはともかく、教導を施した――とは言え少しの演習や合同作戦をしたくらいだけれど、ともかく顔見知りになった――幾つかの部隊から貰っていた。

 

「お付き合いみたいなものよ。我が駆逐隊(ユニツト)が誇る霰ちゃん考案のイカすデザインのコインを広げられると思えば交換のしあいっこも悪い話じゃない。でもまあ……」

 

 その先の言葉は飲み込む。このコインが再会を望む誓いだとして、教導という名目で東南アジアを渡り歩く私たちにとってこれほどの口約束もないことだろう。コインを交わした部隊(あいて)のうち、果たして何割と再会できるだろう。それでも約束をしたがるのがヒトというもの。私は飲み込んだ言葉の代わりに、言葉を並べる。

 

「大丈夫よ、霞。今は確かに再編で練度は落ちてるかもしれない。だけれどすぐに改善するわ。そのために私たちがいるんだし、あなたも幹部になるんでしょ?」

「分かってるわよ、そんなこと。当たり前じゃない」

 

 これで霞も少しは威勢を取り戻しただろうか。私は笑う。

 

「そーそ、やっぱり霞ちゃんはその調子じゃないとっ」

「ちゃん付けすんなッ!」

『――――先遣(ピケツト)艦より、前方に艦影』

 

 その言葉に、弛んだ空気は一瞬で消え失せる。これでこそ私の駆逐隊(ユニツト)。この緩急こそ、いい部下を持ったと思える瞬間だ。私は小さく頷くと、通話器の送話スイッチを押す。

 

「こちら陽炎。敵味方(トラポン)は?」

敵味方識別装置(IFF)に感あり。友軍(フレンドリー)、です……艦番号視認、331』

 

 読み上げられたその数字が、私の脳内検索装置を起動させる。引っ掛かった艦名に、私の口角は自然と吊り上がる。それは国防海軍の護衛艦〈きんもくせい〉だった。

 

「霰ちゃーん? 向こうさんとレーザー通信出来る?」

通信同調(コンタクト)……〈きんもくせい〉の後部扉(ハツチ)は両舷とも開放済み(オープン)、みたいです』

 

 通信機越しに霰がそう告げる。〈きんもくせい〉を始めとする哨戒護衛艦は艦娘運用のために回収用スロープが付いている。その両舷の扉が開放されているということは、つまり私たちの収容を〈きんもくせい〉が望んでいるということ。 

 

「要するに、あれは私たちの歓迎役兼、籠ってワケか。ここの司令官はお優しいわね?」

 

 大変結構と頷く私に、心底嫌そうな顔をするのは霞だ。

 

「乗り込んだ瞬間『すぐに前線に向かえ!』とかにならないわよね?」

「まあ、この時点で私たちはもう分遣隊の指揮下にあるから。その時はその時ね」

 

 広大な南洋戦線を構築するとき、国防省はその指揮系統の構築に苦心したと言われる。かつて自国沿岸の防衛のみを任務とした旧自衛隊(こくぼうぐん)にとって太平洋防衛など考えたこともないテーマであったし、また誰もが()()()()()()()していたテーマであった。何処の島に司令部を置き、どの海域を主軸に作戦を組み立てるか。軍隊と地政学(せかいちず)が密接に結びついていて、尚且つ日本(スタート)南方防衛(ゴール)が一緒なら、結論は「あの戦争」に向かうしかない。

 それでも同盟国との連携、あくまで深海棲艦討伐のためだけの派兵という国会答弁(いいわけ)を使い続けているのがこの国で、その手先が各地域を担当する分遣隊というわけだ。

 そしてそんな戦略単位としてニューギニア島西部に位置する国を守るのが、私たちがこれから向かうことになるポートモレスビー分遣隊。「あの戦争」で遂に日本が突破出来なかった珊瑚海を超えて、オーエンスタンレー山脈の麓に位置する港湾都市に位置するその基地は、約30平方キロの土地を現地政府より租借する南方有数の「日本領」であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ最前線へ。歓迎するわ」

 

 第7護衛隊群のポートモレスビー分遣隊の司令部庁舎は、ありきたりな鉄筋コンクリート三階建て。北向きの窓から、暖かな光が差し込んでくる。そんな副司令執務室。官給品のデスクに座っているのは、緊急出撃(スクランブル)に備えてなのか和装に身を包んだ副司令。

 

「それにしてもいいわね、その制服。動きやすいし機能的で」

 

 挨拶、そして世間話というのは滅多に正解と呼べるものがない。適当に相槌を打てば良いわけではないし、下手を打てば後が怖い。ましてや今回の話題は制服ときた。駆逐艦(わたし)の服は大量生産品、対する副司令の服は受注生産(オーダーメイド)。同じ自己負担でも額が違う。

 

「別に妬んでなんかないわよ。私の方がずっと高給取りだし、こっちの方が可愛いしね」

 

 そう言いながら立ち上がる副司令。甲型航空母艦の艦娘でもある彼女の服装は、どう表現したものか、ちぐはぐな印象を与えるモノだ。構造自体は恐らく袴姿と呼ぶべきなのだろうけれど、それにしては袴が短い。膝を隠す気ゼロと言わざるを得ないデザインは、技術本部が説明する所によれば塩害防止、しかし彼女の場合は別の意味合いもありそうだ。

 そして下半身に問題があるなら上半身にも問題あり。国防軍でも随一なのではないかと言うくらいの胸部装甲。和装は着痩せする(めだちにくい)という話は何だったのか。それとも彼女が意図的に盛っているのか。そしてわざとらしく結ばれたツインテールが、彼女を幾分か若々しく見せていた。上から下までじろりと見る私の視線に気付いたらしく。彼女は笑う。

 

「ね? 見とれるくらいには可愛いでしょ? 陽炎ちゃんならいいわよ、もっと見ても」

「……その台詞が許されるのは30までですよ。蒼龍1佐」

「ひっどいわねぇ。私、まだ身体と心は20代よ?」

「仮にも分遣隊の副司令たる1等海佐がそれを言いますかね……?」

 

 とはいえ、1佐の言葉に間違いはない。特務神祇官(かんむす)は、言わば民間伝承と近代科学の合わせ技。深海棲艦という異形の化物は、奇しくも戯言(オカルト)じみた霊力というエネルギー存在を証明してしまった。かねてより自然崇拝(アメニズム)という形で認知されていた『モノに宿る力』。それは深海棲艦を打ち滅ぼすための力であり、私たちを癒す存在でもあるのだ。

 

「うーんまあ、陽炎ちゃんが再生医療派だって言うなら文句は聞くわ」

「……私も霊力再生派ですよ。でなきゃ27にもなってツインテールなんて結えません」

 

 もっとも、目の前の御仁は40になってもそんな格好(ツインテール)なのだけれど。それは口にせずともちゃんと伝わったようで、1佐はいけないねぇ陽炎ちゃん、と楽しげに嗤う。

 

「自分の姿を卑下するようじゃ立派な乙女にはなれないわ。ツインテールは強いのよ?」

 

 もちろん、そんなことは知ったことではない。この御仁(そうりゆう)に男遊びも女遊びも教えては貰ったけれど、あんなのに強くてもどうにかなるわけではないのだ。そうですねと流していると1佐も飽きたのだろう。席に座ると、先ほどまでの雰囲気を吹き飛ばして言う。

 

「まあいいわ。それで肝心の()()()()はどう? うまくいってる?」

 

 ようやく本題へと突入である。私は胸を撫で下ろして、頭の中のメモ用紙を捲った。

 

「極めて平静。武装蜂起(クーデター)の兆候と思われる事項はナシ。強いて言えばブインですかね」

「ブイン? どうして」

 

 そう問いかけた蒼龍1佐は地図へと視線を投げかける。国防軍ブイン基地はソロモン諸島の北、ブーゲンビル島に位置する基地。「あの戦争」でも最前線となった場所だ。

 

「鉱石の値上がりで、また管理会社と政府が揉めているらしいんですよ。第N次(なんどめかの)ブーゲンビル戦争になるんじゃないかって、基地司令は心配されていましたよ」

「まさか。戦争したところで深海棲艦の前じゃ共倒れよ?」

 

 そうは言いながらも、付箋紙に何かを書き込んでは机に貼り付ける蒼龍一佐。それは彼女が考え事をする時の癖だった。彼女は何事にもマメなのである。

 

「ですから強いて言うなら、のレベルです。一種の労働争議ですし、関連性は低いかと」

 

 ただ、関連性がゼロかと言われれば嘘だろう。武装蜂起というのは結局のところ、なんらかの不満があってそれを解消するために行われる。炭鉱会社が起こせばそれは労働争議。国防軍が起こせば武装蜂起。そこに言葉以上の違いはない。

 

「まあいいわ、ご苦労様。でも陽炎ちゃん的にはここからが大変よ? だってここ、ポートモレスビー基地はこれまでとは比べものにならない広さなんだから」

「ええ、存じております」

 

 ポートモレスビー基地は、南方に点在する国防軍の基地の中でも特に手広いことで有名である。南方での大規模作戦を実施するためのハブ基地として存在するこの基地は、弾薬庫、医療設備、指揮設備。そのいずれを持ってしても南方……いや日本がもつ基地として最大の規模を誇っている。巨大な艤装工場では一部を除いた大半の部品を生産または修理可能で、その隣には護衛艦を修理するための船渠までも備えられている。そしてその広大な敷地で働く人々が生活するための居住施設、商業施設に公共施設……もはや一つの地方都市が移転してきたんじゃないかと思われる程の人と建物が集まっているのだ。

 

「でもまあ、ここからの調査では頼もしい味方もいますし大丈夫ですよ」

「ん、頼もしい味方? まさか他のヒトにこのコトを言ってたりしないわよね」

 

 私の言葉に、蒼龍1佐の視線が鋭くなる。武装蜂起を起こすとされる『子供』が誰かは分かっていない。ということは誰もが『子供』である可能性があるわけで。

 

「言いませんよ……正直、私の駆逐隊(ユニツト)まで疑っていうのはどうかと思いますが」

「念には念を入れて、よ。それで誰なの? 頼もしい味方ってのは」

「いやここまで来たら、貴女しかいないでしょう1佐殿」

 

 ところが、蒼龍1佐は首を傾げるばかり。いやですから、広大な基地に潜む『子供』を探すのを手伝ってくれるんですよね? と私が念を押すようにいえば、一言。

 

「え。なんで私が手伝わなきゃいけないの?」

 

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