「私達はまだやれる。私達はまだ勝てる。絶望するには早すぎる……! ラプちゃん、あなたが選んだ先鋭達を舐めてかかってもらっちゃ困るよ!」
『魔力装填。対象の魔障壁を破壊します』
「〝フルバースト〟ッ!」
左腕の武装がガトリング砲に変形し、回転を始めるとラプラス目掛けて魔力弾が放たれる。
自身が理解出来ないとした不可思議なエネルギー、〝魔力〟――それをこの短時間で解析し、理解した博衣は瞬時に機体設定を変更していた。
今度はこちらの雨がラプラスに降り注ぐ。その集中砲火はさながらゲリラ豪雨のようだ。
「お前に魔法など百年早いわ!」
腕を天へ薙ぎ払い、焔で壁を作って魔力弾の豪雨を凌いだラプラスは、間髪入れず自身の座標を書き換え、博衣の背後へ転移する。
「その百年を科学で追いついただけのことだよ!」
博衣は焦らず、振り返ることなくそう言うと、機体の背からミサイルを発射する。
装填されたミサイルの数は機体の形状からして多くない。追尾機能も弱いため使う機会などそうないが、こうして背後に現れたのなら話は別だ。
ほぼ至近距離から放たれた六発の小型ミサイルに、ラプラスは魔力をぶつけて二発破壊すると飛翔して残りを置き去りにする。
追ってくる四発のミサイルを巧みに躱し、ミサイル同士を接触させて二発撃沈。さらに紫光を撃ち放ってもう一発を破壊すると、その勢いのまま弾幕を降らせて博衣を攻撃した。
だがそれにより隙が生まれ、爆発の火の中を通り抜けてきたラスト一発にラプラスは命中してしまう。
爆炎に包まれ、熱波が博衣の髪を揺らした。
そんな博衣はと言うと、下に居る鷹嶺達に弾幕が当たらないよう立ち回ったおかげで何発か機体に当たってしまい、墜落しようとしていた。
「……くははっ。追いつけるものか! そのまま落下していけ!」
ミサイルに直撃しても尚、ラプラスは余裕の表情で、落下する博衣に向けそう言い放つ。
意識がないのか、何も答えない博衣はラプラスの言う通り落ちていく。
――が、途端に博衣は光を放った。……というより、光そのものとなり、散り散りに解けて消える。
「はっはっはー! そっちはホログラムのダミーなんだよね〜!」
「……姑息な真似をッ」
ラプラスが崩れていったホログラムから目を逸らすと、ドヤ顔で銃口を向ける本物の博衣と目が合う。
『魔障壁、損傷率60%』
「武装変更!」
『アップグレード』
ガトリング砲から長い銃身へ武器を変えた博衣は、煙の中のラプラスに狙いを定めて魔力と電力をチャージする。チャージは一秒も掛からぬうちに終了し、発射準備が整った。
(到達速度、秒速十キロメートル……! 避けられるものなら避けてみてよ、ラプちゃんっ!)
刹那――と言うには遅すぎる。
その〝レールガン〟は正しく光の速さであり、弾丸はラプラスの魔障壁を容易に破壊するだろう。それでもまだ余力が有り余った弾は、笑みを浮かべるラプラスの脳天を貫く――……
「――
「……へ?」
弾丸は確かに、ラプラスを捉えていた。しかしその弾は、何故か博衣に向かってきている。
速度も落ちることなく、回避も間に合わず、博衣は瞬く間もなくレールガンの弾に撃ち抜かれた。
『……外殻補強完了。回復ポーションを注射します』
「っ……えらいっ!」
弾は確かに命中したが、ホログラムの盾と共に[[rb:既 > すんで]]の所でラプラスの魔障壁を模倣再現することで防御に成功し、機体が損傷するも博衣自身は無傷に終わる。
だが、あの反転は厄介極まりない。今のはラプラスと博衣の間にあった空間だけを左右反転させ、弾を博衣に返してきたのだろう。防ぐ術もないため、一方的に何度もやられては身が持たない。
(ハンバーグも作れないクセに、なんとまぁ器用なことで……)
今のレールガンで電力はほぼ欠如した。自己発電してフル充電されるのは数十分後。後のことも考えれば、時間的にこの戦闘ではもうレールガンは使えない。
ただ、ラプラスの身を守っていた魔障壁は壊すことが出来た。出力30%のラプラスにはまた魔障壁を張るほどの力は残っていない……と信じたい。博衣は滴る汗を拭い、硬直状態に陥った今、頭をフル回転させる。
「――転移ッ!」
その時、ラプラスの目の前に現れたのはナツメと沙花叉だ。それぞれナイフを振りかざす。
「
ナイフによる刺突を防いだラプラスは、面倒くさそうに衝撃波を放つと二人を地に落とす。
そうして自身も地に降り立つと、次に突撃してきたのは風真と鷹嶺だった。
「ハァァァァァッ!!!」
「その程度――……ッ!?」
風真の剣を避けようとしたラプラスだったが、それは叶わない。鷹嶺の鞭が足に巻き付き、体勢を崩したのだ。
まんまとしてやられたラプラスは斬り傷を負うも、やはり致命傷にはなっていない。
「くっ、浅いでござる……!」
「さっき手で受け止められてたでしょうが! 皮膚硬化とかそんなんじゃない?!」
「喋ってると舌噛むぞお前ら!」
「ナツメうっさい! 早く転移!」
「自分で動け沙花叉クロヱ!!」
さっきまで絶望し、立ち向かうことをやめてしまった[[rb:皆 > みな]]が連携してラプラスと戦っていた。
「みんな……!」
「ごめんこよちゃん。忘れてた……侍たるもの、背は見せられぬでござる! それが心であっても、後には引けないッ!」
「って言っても、どうやってラプラスの目を覚まさせるのさ! 沙花叉もう疲れたんだけど!」
「……た、叩けば治るでござる!」
「それは〝なおる〟違いだし、そもそも治るか! まぁこういうのは気絶でもさせれば頭が冷えるってもんでしょ!」
「ルイ姉、それいろはと言ってること同じだからね?」
「もーみんな! こよに作戦があるからちゃっちゃと終わらせるよ!」
戦闘真っ只中でそんな言い争いをしているholoXに、ラプラスは頭を押える。
(なん……だ……コイツらの声が、響く……)
懐かしさに心が揺れる。そこへ戻りたいと、混ざりたいと、そう叫んでいる。
「うるさい……うるさいうるさいッ! 私を壊すなッ! 壊すのは私だッ!!!」
ラプラスはholoXを鋭く睨みつけ、手を伸ばす。
瞳が揺れる。酷い頭痛に片手で頭を押えながら、涙を零していることに気付きたくないのか、拒絶するように伸ばした手の先に業火を燃え滾らせる。
涙は蒸発し、空間の温度が地獄のように変わっていく。
「ラプ、安心して。あなたの夢は守らせてもらう」
鷹嶺はそう言って鞭を地に叩き付ける。
相も変わらず、勝機などありはしない。
だが、博衣のおかげで絶望なんてもの、ありはしない。
希望は確かにある。ならば、どんなに遠くにある勝機でも、その手に掴むことだって出来るはずだ。
そうであるために、博衣はその背にある翼に〈