――holoXアジトにて。
禍々しくも威厳のある大きな椅子にどっかりと座り、ラプラスはうっすらと目を開け瞳を妖しく輝かせる。
「かっこつけてないで電気点けたら?」
「まぁまぁ、そういうお年頃なんだよ」
「あー……」
「おい、そんなかわいそうな子を見る目をするな」
冷静にツッコミを入れ、ラプラスは目を擦った。
「……ラプラス?」
クロヱはその様子に違和感を覚える。
弄られたら、いつもならもっと、喚くように突っかかってくるはずなのに。
少なくとも、クロヱを助けた直後まではもっと元気があったはずだった。
「なんだよ」
「いや……なんでも。それよりこれからどうするの?」
無理やり話を戻し、クロヱはマーカーを手に取ってホワイトボードに向かう。
「そうだな……お前操られてる時のこと覚えてないのか?」
「うーん……覚えてるような覚えてないような……ホント突然だったんだよ! 急に頭がぼんやりして、暗くなって……気付いたらめちゃくちゃにしてた」
「そうか……あと状況をまとめるためにホワイトボードを使うのはいいんだけど、読めないぞ」
「はぁ!? なんでよ! 読めるでしょ! し、シオン先輩は読めますよね!? ね!?」
「ぜんっぜん分かんない!」
清々しいまでの笑みでそう言われた。
「くっ、どうして……でもシオン先輩かわいい……!」
「書記はシオンがやるねー」
状況を整理しよう。
まず沙花叉クロヱを救出できたことは大きい。
【
しかし――。
「吾輩は火力不足……クロヱも戦力にはなるが、暴走した力が与えた異能が障壁だ。というか、あの銃だが槍だか分かんないヘンテコ形態は出来ないのか?」
「全然反応無し。使えなくなってるぽい」
「使えないな……」
「それさかまたのことじゃないよね? 銃のことだよね?」
こよりの
どちらも厄介な破壊力がある。
いろはに至っては、まだどんな異能を宿しているか一ミリも分からないのだ。
「残りはルイちゃん、こよりちゃん、いろはちゃんだよね。シオンも魔法を何度も使えるほど体力おばけじゃないよ」
ルイとこよりはここから少し離れたスーパーマーケット付近で、共に行動している。
いろははどこに居るのかさえも不明。奇襲の可能性もある。
「ルイとこよりを同時に相手には出来ない。分断作戦で行こう」
「ぶ、分断って……そんな簡単に行くもん? あの二人だよ?」
クロヱの憂慮も当然で、頭脳のこよりと機転の利くルイが一緒に居るとなれば、作戦に気付かれてしまうことだって有り得る。
「そもそも、分断したところで勝てるの?」
シオンは声に厳しい色を混ぜて言った。
現状の戦力はたったの三人。相手を分断するとなると、誰かは必ず1VS1の状況が出来てしまう。言うなれば囮だ。
勝つ……いや、生きて戻ることすら危ういのではないか。
考えれば考えるほど、この場の全員が力不足を痛感する。
「協力者が必要だな……」
椅子から立ち上がったラプラスはホワイトボードにある一言を書き込む。
「こよりだ。こよりをまず救う。うちの博士はこのことを分かっていて吾輩をシオンのところへ転送させたんだ。何か案があるかもしれない」
「でも、それにはルイねぇを引き剥がさないとなんでしょ? 私は無理だよ。足止めなんて」
「沙花叉はこよりの相手をしてもらわないと困る。洗脳を解けないからな」
「えー! じゃあシオンがソロってこと!? ムリムリムリムリ」
「カタツムリ?」
「言ってる場合か!」
ボケたクロヱに、ラプラスはすかさずベシンとツッコミを入れた。
「こより相手には吾輩と沙花叉、あともう一人は欲しいな」
「シオンだって欲しいよ。せめて二人でやらせて」
こより相手には、突破口が必要だ。
ルイ相手には、シオンをサポートするディフェンダー。
最低でも二人、協力者が居なければ話にならない。
「よし、決まりだ」
ホワイトボードに作戦が書き込まれる。
「吾輩たちの次の手は――――!」
――仲間作り大作戦、決行。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――同刻、山の麓。電脳桜神社にて。
さくらみこは今日も今日とて、ゴミ捨て場になりつつある賽銭箱を眺めて唇を噛んでいた。
「ん゙に゙ぇ゙……しけてんにぇえ!! どいつもこいつもよぉ! みこのことなんだと思ってんだ!」
ブツクサと呟きながらゴミを回収していると、不意に風が吹き、季節外れの満開桜の枝が揺れた。
長い階段を上がる足音がやがてカサッと落ち葉を踏みしめ、鳥居を
「……お? あ、いろはたんだ! なになに、お賽銭しに来てくれたのー?」
そうして電脳桜神社に現れた風真いろはに、みこは何の警戒心もなく、にぱーっとした満面の笑みで駆け寄るのだった。