ホロックス・ブラック・ボックス   作:ゆっくろ❀

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ちりばめた光を抱く闇の空に。

(ごめんな、ルイ…………お前が羽ばたける空を……吾輩が黒く塗り潰した……これは……わたしの……)

 

 ――塗り潰したなら、塗り変えればいい。

 

(…………無理だ。わたしには何も出来やしない……)

 

 ――それでも総帥か。

 

(無謀だったんだよ、はじめから……何もかもが)

 

 ――だから諦めるって? そんなの許さない。

 

(なんだよ……許さないって……わたしが始めたことを、誰に許さない権利があるって言うんだ……)

 

 ――ラプラスが、私達を選んでくれたからだよ。

 

(……吾輩が、選んだ)

 

 ――そうだよ。自分で選んだんでしょ? だったら最後までとことんやろう。この道を行き抜こう。

 

 ――突然で、無謀で、無茶で、それでも毅然として。だから私は付いて行くんだ。

 

 ――お子様なラプラスは、私達が居ないとなんにも出来ないんだから。

 

(お前……は……)

 

 ――さあ、立ち上がりなよラプラス・ダークネス。

 

(立つって……吾輩は今、首根っこ掴まれて地に足が着かないんだが……)

 

 ――やれやれ……全く…………仕方ないでござるな。

 

「――ラプラスは! 本当に! 世話の焼ける総帥でござるよッ!」

 

 心眼を開いた風真いろはが二本の刀を手に、まるで突風でも吹いたかのように現れる。

 右手のチャキ丸、左手には星月夜天鏤(ほしつきよあまのちりばめ)

 左の刀で、ルイの手首を斬る。

 

「いろは!?」

 

 ラプラスはいろはの行動に思わずそう叫んだが、直後に理解する。

 星月夜天鏤の刃が、ルイの手首を()()()()()()()()、体に()()()()()()()()()()()()()()()のを見たからだ。

 

「ッ!? まさか、魂を斬り裂いて――――」

 

 悪魔が狼狽えた瞬間、右手がラプラスの首を離す。

 立て続けに、剣が肘、肩を斬り裂くと、反撃しようとした悪魔の左拳をルイの右手が受け止めた。

 

「――そうか、なるほど……その刀、存在していないな? だから不完全である私のみを斬ってルイの操作権を……しかし驚いたな。二刀流を使うだけでなく、あの場から短時間でよくもここへ辿り着けた……」

「……この刀は贈り物でござる。存在しないのであれば、きっとそれはまやかしで……でも、つい見とれてしまうほど綺麗な幻なんだ。あのおじいちゃんの剣戟を完全に物には出来ないけど……でも、真似ぶ(学ぶ)でござる!」

 

 即ち、狸流の変化術。

 剣術模倣――【暁】

 

「【流星光底(いつか見た閃光のように)】!!!」

 

 光に届かずとも、風のように(はや)く。

 星のように輝けずとも、風に舞う麗容な木の葉のように。

 一瞬でもいい。

 それで少しでも届くなら、魂を燃やして――!

 

「やぁぁーーーーッ!!!」

「風が光になれるものか。葉が輝けるものか。そのまま燃え尽きるがいい!」

「だとしても、私は剣を振るう! 大切な人を取り戻すために! 燃え滾るッ!」

 

 悪魔は魔法(バリア)で刃を受け止める。

 単純な衝突だが、凄まじい風圧に悪魔は後退ることを余儀なくされていた。

 

「さすが侍! ボク達に出来ないことを気合いでやってのける! まぁいろはちゃんなら戻ってくるだろうって信じてたけどさ!」

 

 こよりはニヤリと笑みを浮かべる。

 これは単なる偶然で、本当に奇跡に近いタイミングだ。

 だが、それでも悪魔に一矢報いることが出来るなら、嘘でも真にしてしまおう。

 

「さあさあ、お待たせしました! ――こんなこともあろうかと! 博衣こよりの覚醒(エクステンド)……【水滴石穿(レドランス)】は今、発現するっ!」

 

 指をパチンと鳴らした刹那、バリアが砕け散った。

 

「な――ッ!?」

「ルイねぇから、出ていくでござるーーッ!」

 

 レドランスによる打撃は、加算されていく打撃数に応じて乗算された強攻撃が時間差で任意発動する。

 その一撃をバリアの破壊に費やし、たじろいだ悪魔へ振るわれたいろはの剣が遂に届いた。

 

 クリティカルヒット。

 星月夜天鏤による袈裟斬りは、悪魔を確実に斬り裂いた。

 

「……うっ、あ…………――どうしてッ、どうしてだ……! こんな奇跡……あるはずがない……あってたまるか……! 私は……!」

 

 悪魔は左手を伸ばす。

 

「ちょ、魔法を使うつもり!?」

「そんな状態で使ったらルイねぇの体が崩れる……!」

 

 クロヱは鞭を回収し、距離がある。

 こよりといろはは全力を出し切り満身創痍。

 

「――ルイぃぃぃぃッ!!!」

 

 ラプラスは疾走する。

 体格差のあるルイの体を押し倒し、腕を押さえ付けてその顔を睨み付ける。

 

「吾輩のところに戻ってこい! お前が居なきゃ吾輩は何も出来ない……世界征服は、お前達が居ないと意味ないんだ! だからそんな奴なんかじゃなくて、吾輩のところに来いよ!!」

 

 気付けば、ラプラスは涙を零していた。

 押し倒したルイの体は、攻撃を受けたとは思えないほど綺麗で、傷一つない。

 それなのに、ホークアイを発動したままの彼女は瞳に涙を溜めていた。

 

「…………なぜ、こんな気持ちに……ならなきゃいけないんだ……なあ、ラプラス……」

「悪魔……お前……まさか、人格を得ただけじゃなくて憑依したことで感情が……」

「これも計算通りだ。……だが……やはり、未来視だけでは分からないものだな……経験というものは……」

 

 悪魔は微笑し、空を見つめる。

 

「おめでとうholoX――君達は未来に基づきここまで辿り着いた。しかし()()()()だ。ここから先は灰燼の末路なのだから」

 

 電球が焼き切れたかのように音を立て、悪魔はルイを手放す。

 感情に呑まれてしまう前に、遂げる。

 

「……さぁ、始めようか」

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