――ラプラスの悪魔こと、マイナスが引き起こした極夜事変からしばらく。
彼女が残した爪痕は人々の心に深く刻まれた。
人が人を苦しめる。
確かにそうかもしれない。
だからこそ、人々の心には明るく照らす光が必要だ。
「おっ、ねーちゃんねーちゃん。あれ見ろよ」
「ちょ、揺らさないでよ。鷹嶺さんから連絡来たんだから……」
「すーぱーえきすぽ……だってよ。行こうぜ!」
「バカね……とっくにチケット取ってるわ。ライブの方もね!」
「えぇっ!? 俺のは!?」
「はぁ……安心しなさい、ちゃんとナツメの分もあるから」
「よっしゃ! そんじゃまあ、応援しに行くか!」
「当たり前よ。だって私達、あの秘密結社に救われたんだもの」
光の形は様々で、世界征服を目論む秘密結社もまた、誰かの光である。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ズゴゴ……と、底に残ったコーラをストローで吸い取ったラプラスは肉の焼ける音を聴きながら手をパタパタとさせて待つ。
「ほい、焼けたよ~」
ルイがみんなの皿に焼けた肉を配ると、ラプラスは脂で煌めいて見える牛ハラミを箸でつまみ上げた。
「お、おおおぉ……肉だ!」
「こ、こんなの食べてもいいの!?」
目を輝かせるラプラスとクロヱに、ルイは苦笑する。
「もちろん。食べ放題だしね」
「おっしゃあ! クロヱ、こうなったら食べまくって元取るぞ!」
「お腹はち切れるまで食べ尽くしちゃうもんね! ばっくばっくばく~ん!」
二人で焼けた肉を片っ端からつまみ、もりもりと口の中へ放り込んでいく。
「二人とも、野菜もちゃんと食べるでござるよ」
ナスばかり焼いてるいろはが二人の皿にそっと焼きナスを置いた。
「吾輩が肉を担当するからいろはナス担当な」
「なんで!? お野菜食べないと大きくなれないでござるよー!」
「もごごっ、
あの時、力を抑えず全て出し切った。
もはや封印する必要もない……が、その出来事を忘れないように、枷はいまも着け続けている。
「焼肉丼にはマヨネーズだよね~!」
「ちょっ、勝手にマヨネーズかけるな!」
ラプラスが肉をかき集めて作った焼肉丼に、こよりがマヨネーズの山を作る。
もはやマヨ丼となったそれをじとーっと見つめ、試しにひと口食べてみると……悔しいが美味しかった。
「成長するよ、ラプちゃん。あの子が残した想いを背負って、みんなが笑顔になれる世界にするんだからね!」
そう――『楽しい』を届けるために、これからも秘密結社は成長していく。
こよりはマヨネーズを飲みながらサムズアップした。
「そうだな……吾輩達が征服してやろう!」
ラプラスは新しく注文したコーラを片手に立ち上がる。
「我らholoXの未来に! ――乾杯!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――未来とはブラックボックスだ。
開ければ全ての『先』を理解するが、分かってしまえば案外つまらない。
見たものと全く同じ光景をなぞるように歩いていくのは、いつか飽きてしまう。
分からないからこそ、必死に足掻いて勝ち取った未来がより一層輝いて見える。
価値が生まれる。
その未来はやがて、輝かしい過去として鮮明に記憶が刻まれる。
「さあ、見せてやろう! 吾輩達の未来を!」
可愛らしいアイドル衣装に身を包んだholoXにライトが向けられる。
直後、弾けるような歓声。
会場のテンションが一気に引き上げられる。
その熱に呼応するように、holoXは自信ありげな表情で観客に向けて手を差し伸べた。
「そこに跪け!」
「吐いて捨てるような現実を!」
「一刀両断叩き斬る!」
「終わりなき輪廻に迷いし仔らよ!」
「漆黒の翼で誘おう!」
虚空を掴む。
その手を胸の前へ。
「我ら、エデンの星を統べる者……!」
さあ、楽しもうじゃないか。
疲れも忘れるほどめいっぱいに、心が思うままに。
「秘密結社――――!」
「「「「「holoX!!!」」」」」
「……でござるー!」
秘密結社holoXの日々は続く。
不確かな未来へ閃光を灯しながら、前へと――――。
ホロックス・ブラック・ボックス【完】
ハーメルン版【ホロックス・ブラック・ボックス】――
これにて完結です!ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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