ホロックス・ブラック・ボックス   作:ゆっくろ❀

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蜷後§螟ゥ縺ォ縺ッ逕溘°縺励※縺翫¢縺ャ

 11月13日――夜。

 風真いろは、博衣こより、鷹嶺ルイ、沙花叉クロヱ、夜砥ナツメ――合流。

 廃ビルの入り口手前に集まった彼女達と彼は、互いに顔を見合せていた。

 

「……それであそこでゴソゴソしてるサングラスくんが協力することになったと?」

「にわかには信じ難いでござるが……二人がそう言うなら信じるでござる」

 

 敵であるナツメが手を貸すことを説明した鷹嶺と沙花叉は、ホッと胸を撫で下ろす。博衣と風真が気付いた違和感について聞かされた後では、余計に協力者が必要だと思わざるを得ない。ここで争って戦力も体力も削ってしまえば、どんな結末を迎えてしまうか――鷹嶺は最悪の状況を想像し、背筋がゾッとする。

 

「おーい、開いたぞ!」

 

 ゴソゴソしていたナツメが階段裏の隠し扉を開け、四人に手を振った。

 

「大丈夫かなぁ……? こういう敵が味方になる展開って絶対味方になった途端に弱体化するのがお約束じゃない?」

「家族のためなのに手を抜けっかよ。ちゃんと仕事はするから任せろって、犬の嬢ちゃん」

「コヨーテね! 確かに食肉目イヌ科イヌ属だけど! ……ってあれ、聞いてる? おーい! うぅ……がうがう!!」

 

 噛み付こうとしてくる博衣の顔を鷲掴みにして押さえるナツメは、今度は風真を真っ直ぐ見つめる。

 

「侍の方も安心して背中を預けろとは言わねェ。俺が先頭に立つから、何かあったら盾にすればいいし後ろから始末してもいい」

「……むぅ、風真を一発で忍者じゃなくて侍と言ったから許すでござる」

「じーちゃんがそうだからな。たとえ刀を持ってなくてもわかるぜ」

「……! そ、それって……もしかして……」

 

 と、風真は懐から折れた刀の刃先を出してナツメに見せる。

 その刀を見たナツメはどこか寂しそうにすると、息を吐いて地下への入り口を潜る。

 

「まァ……歩きながら話そう。時間ないんだろ」

「そうだね。相手が時間操作も出来るなら……考えたくはないけど、もう手遅れ間近かもしれないし」

「お前さんの眼でも状況はわからねェか」

「……どうやっても地下だけが見えない。何かが壁になってるというか、見ようとすると弾かれる」

 

 恐らくは地下空洞の魔力溜まりが高濃度で、他の介入を許していないのだろう。

 全員が地下通路に入ると、風切り音のような、あるいは生物の息のような音が絶えず聞こえてくる。

 この入り口付近でさえ、魔力が濃いのか少し空気がピリついていた。

 

「こよは魔法とかそういうのよくわかんないけど、なんか鳥肌立ってきたよぉ」

「私も〜……」

 

 博衣と沙花叉の二人はくっ付き合いながら階段を下りていく。博衣の尻尾が沙花叉の足に巻きついているのを、風真は羨ましそうに指を咥えた。

 しかし指を咥えるのも程々に、真剣な表情で先頭を歩くナツメに声をかける。

 

「それで、さっきのおじいちゃんって……」

「ん、あぁ。俺とねーちゃん……ミフユって言うんだが、俺達の祖父だ。まァ曾祖父かもしれねーけどな。お前がそれを持ってるってことは、じーちゃんの夢は果たせたんだろう。気にすることはねーよ」

「あのおじいちゃん、強かったでござる」

「だろうな。あのクソジジイ、どんな勝負でも俺に一度も勝たせてくれなかったんだぜ?」

 

 ナツメは懐かしそうに話していた。悪い思い出ではないようだ。

 だがしかし、そんな思い出を拒むように行く道の壁が歪み始める。

 

「なになに!? ぐにゃぐにゃだよ!?」

「クロちゃん落ち着いて! 暴れるとこよも転んじゃうからぁ!」

「う、後ろから壁が来てるでござるよ〜!」

 

 たちまち変形したコンクリートに包まれた五人は、そのままどこかへ輸送されていく。

 

「ぐぇっ! ちょ、いろは、柄が私のお腹に引っかかってるんだけど!」

「あぁごめんルイ姉! でも動けないから無理でござる!」

「なんでいきなりコンクリ(まゆ)になるのさ〜!」

「落ち着けお前ら! とりあえず止まれ!」

 

 暴れるholoXの面々に、頭をげしげしと蹴られたり顔面パンチを食らったりしているナツメは冷静に停止を呼びかける。

 それを聞いて、四人は言われた通りピタリと止まった。うんともすんとも言わない。

 

「うわ急に落ち着くな!!」

「落ち着けって言ったのそっちじゃないっすか〜」

「ごもっとも。……はぁ、周りがテンション高いと冷静になるもんだが、冷静になったらなったでお前らと居ると疲れるな……」

「楽しいと疲れも忘れるものだよ」

「そーゆーもンか?」

 

 冷静になる前は疲れなどなかったことは事実だ。ナツメは知らずのうちに楽しんでいた。ようやく、楽しさというのがわかってきた気がする。

 

「それでこの状況はなにかねナツメくん」

「あ、あァ……俺達が向かおうとしてたのは地下空洞……魔力溜まりだ。ここは龍脈が近いからか、得体の知れねェものがいろいろ流れ込んでくる。魔力もその一つでよ、溜まりまくった魔力が空間を変質させてンだ。ここはもう地上とは違う。異常が通常と考えて、全員で固まって――」

 

 刹那、歪みまくるコンクリートの繭は動きを止め、目的地に到着したバスのように穴を開けた。

 

「……ね、ねえ、なんかさっきよりも凄くピリピリするんだけど」

「こ、この気味の悪いピリピリにはピリオドを付けたいな☆」

「ルイ姉、今それどころじゃないでござる」

「はい、すみません」

 

 繭から脱出し、五人は辺りを警戒しながら進む。

 天井は高く、火が点々とついている。かなり広い空間で、異様な空間だ。壁はコンクリートのクセにいくつもの柱は木の幹で、枝葉や蔓が垂れている。

 床も所々はコンクリートだが、進むと土になったり、泥だったり凍結していたりとおかしなことになっていた。

 

――そして、電車が走り抜けるような轟音が響く。

 

――あるいは土砂が崩れるような音。

 

――またあるいは猛獣が()くような声。

 

――それとも、人が泣いているのだろうか。

 

 いくつもの音が混じり、強引にひとつとなって聞こえてくる。それらは酷く耳障(みみざわ)りで、一つ一つが何の音なのか理解出来ない。いや、理解したくない、というのが正直なところだろう。

 理解してはいけないモノだと、五人はそう直感した。

 

 なぜならば、〝それ〟を目にしてしまったから。

 

「なに……あれ……」

 

 沙花叉は震え声で呟く。

 

 だだっ広い空間で鎮座するかのようにそこに居たのは、黒く細い手が無数にうごめく泥のような塊だった。

 形が定まらず、常に変形を続ける物体はぐにゃりと縦に伸びたと思えば力尽きたように崩れ落ち、その黒泥(こくでい)のような体を波のように広げる。

 

「お前ら俺に掴まれ!!!」

 

 押し寄せる黒泥の波を見たナツメは、呆然とする沙花叉の手を掴んで叫ぶ。とにかくこの状況から逃れることが出来るならと、鷹嶺達もナツメにしがみついた。

 

「――転移ッ!」

 

 それはコンマ一秒もかからない。気付けば全員、木の上に居た。

 ナツメは四人を足場になりそうな枝に誘導すると、この世のものとは思えぬ〝異形〟を睨む。

 波は獲物が居なくなったのがわかるとギュッと絞るように引っ込み、急激に収縮するとナメクジのように地を這って獲物を探し始める。

 

「ナツメ、あいつは何!?」

 

 鷹嶺が焦った表情でナツメの襟を掴む。

 

「っ……確証はないが、アレは魔力の塊……いや、もっとヤベーもんだ。ありゃきっと怨霊の類いだな……」

「怨霊……?」

「ここが魔力溜まりとは言ったな? その魔力ってやつは主に人の感情から生まれる。特に負の感情からは強い魔力が生まれるモンなんだ。つまりアレは、人の憎悪の寄せ集め……積怨(せきえん)の獣だ」

 

 すると、ナツメからそれを聞いた博衣が眼鏡をかけ、白衣に隠れていた幅が細い腕輪を露出させる。

 

「簡易デスク展開、小型ドローン出動! 情報収集開始、常時報告モード!」

 

 いくつも浮遊する半透明のパネルが博衣を囲むように現れ、ドローンのカメラから得た映像が映し出された。

 

「……データ上は存在なし。でもエネルギーが集中してる……? 怨念の集合体なんてオカルトな! いやぁでも現に見えてるしっ!」

「こよちゃん、何かわかるでござるか……?」

 

 不安そうに聞く風真に、博衣は笑いかける。

 

「うぅん……研究対象としては最高! 敵としては最悪! あとはわからないけど……でも、わかるようにするのがこよの役目!」

 

 そう言うと、博衣の裏からイヤホンを取り出してそれぞれに投げ渡す。

 

「こんなこと言うのはちょっと(しゃく)だけど……あれは怨霊なんて可愛げのあるものじゃないかも」

「うげっ、それなら知らない方が幸せというやつでは……」

「ちゃんと聞きなインターン! あれは多分、積怨が磨かれてより強く変質したもの……エネルギー源は、魔力と龍脈エネルギー……そして残留思念。それらが覚醒して産まれたモノは霊とは呼べない。かと言ってデータ上は存在しないから生物でもない……」

「じゃあ、あれは……一体なんなんでござるか……」

 

 眉をひそめて自身の言葉を待つ四人に、博衣は尚も送られてくるデータを見て声が震えるのを隠しながら伝えようとする。

 非科学的にも程があるそれを、どうやっても信じなければならないのだ。

 

「……《タタリガミ》だよ。今こよ達がしがみついてるこの木は樹齢千年以上……他の木も多分そう。もしアレも同じ年齢なら……何千年も人の怨念を蓄え続けた化け物ってことになるってわけ」

「あながち間違いじゃないかもな。アイツからねーちゃんの魔力も感じる……博衣の言う残留思念ってのは、大部分がねーちゃんだろう」

 

 タタリガミが壁を這い、さっきまで五人が居たコンクリートの繭を調べていた。しかし獣のように匂いを嗅いでいるわけでもなく、無数の手でコンクリートを押している。細いのにかなり怪力らしく、コンクリートにヒビが入り始めていた。

 

「あれ、まさか……外に出ようとしてる? 」

「あ、あんなのが外に出たら大変だよ!」

「沙花叉の言う通りだね……ここで止めよう! こより! タタリガミに物理的攻撃は通用する?」

「……今ドローン一機を突っ込ませてみたけど、どっちも無傷。通り抜けたよ。でも、対抗策が無いわけじゃない……タタリガミがこっちを攻撃しようとした時、飛び散った泥が服に穴開けてる」

 

 博衣はそう言うと、風真の羽織りに指をさす。

 

「うわっ、ホントでござる!」

「慌てなくて大丈夫だよいろはちゃん。直接触れなければ平気。つまり、向こうが攻撃を仕掛けた瞬間にカウンターすれば攻撃は通るはず……かなり危険な賭けになりそうだけど、これしかないよ」

「……やるしかないね。コイツを残して先に進んでも、連れて来ちゃったら余計に事態が悪化する。ラプを探す前に神祓(かみばら)いと行きますか!」

「「「了解!(でござる!)」」」

 

 そしてholoXの四人は、躊躇うことなく木から飛び降りる。

 着地と同時にタタリガミがこちらを向き、無数の手を広げて雑音混じりに咆哮した。……こちらを向いたと言っても顔がどこかはわからないが。

 そんな四人の勇気に当てられたのか、神とやり合う気なんてさらさらなかったナツメもやれやれと下へ転移する。

 怨み纏いて人を喰らう、不倶戴天(ふぐたいてん)のタタリガミを祓うべく。五人はその怨神(えんしん)を睨んだ――。




〜小ネタ〜

『蜷後§螟ゥ縺ォ縺ッ逕溘°縺励※縺翫¢縺ャ』

サブタイトルの理解出来ない謎の文字列。変換すると――?
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