新しく世に送り出された新米ニケは、右も左も分からないまま分隊に配属される。
そこで出会ったニケ先輩クロウと、新米指揮官が任務に出るが……?

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新米ニケと、クロウ先輩

「また新しい指揮官?」

「あ、あの……」

 

 ニケ、正確にはNIKKEと称するそうだが、登用されたばかりの私は右も左も分からずオロオロしていた。

 分隊に配属されたのはいいが、すでに前任の指揮官は殉職していた。

 死因は、自決銃を突然自分のこめかみに当ててトリガーを引いた、ということらしい。

 私が聞いた話とはずいぶん違う。

 その事を聞こうとしたら、口を開けて嘆息してきた。

 

「あんた、どこ製品だっけ」

「テトラインであります」

「ああ、堅苦しいのなし。先輩後輩さえわきまえてもらえれば」

「はい。了解しました」

「まあいいわ。テトラか。おおかた、素晴らしく勇敢な指揮官が君を待っている。みたいな教育(プログラム)受けてきたんでしょ。あそこノリだけは有名だから。でも現実はその真逆だと思ってもらえれば、正解よ」

 

 そして、お互いに自己紹介をした。

 配属のときに名乗っていたが、堅苦しくなくくだけた挨拶で改めてと言われた。

 やはり名前を言うと笑われてしまう。

 

「私もだけどさ、あんたも変な名前よね」

「仕方がありません。同意書にサインをしてしまった以上、これ以外を名乗れません」

「そうね。本名も過去の記憶も、全部消されているものね。私達」

「ところで、新任の指揮官はまだでしょうか?」

「こっちに向かっていると聞いたけど……。うわ、若!」

 

 彼女の視線をたどった先に、私よりも背丈が低い少年が走ってきた。

 彼は胸を張って敬礼すると、こちらを見つめて無表情で言った。

 

「本日配属となった、マーカス=ラスだ。よろしく」

 

 思った以上に低い声に、彼は少年でないことを否応なしにも認識させられた。

 というか、指揮官が先に名乗らせるなんて大変失礼なことだ。

 私は慌てて敬礼した。

 

「本日テトララインから配属となりました、ルルーイミンです」

「指揮官、私の名前はクロウ。自決だけは勘弁してね」

「ちょっと、クロウさん」

 

 指揮官は気にもとめず、地上任務を言い渡した。

 内容は至極単純なもので「敵ラプチャーを殲滅し、拠点を確保せよ」だった。

 でもクロウさんの顔が曇っていた。

 私は気を使おうと、なにか言葉がないか必死に脳を走らせていると、それに感づいたのか肩にポンと手を置かれた。

 

「今から、実践ってやつに慣れておいて」

「はい!」

 

 それにこんな深い意味が込められていたなんてその時は、知る由もなかった。

 

 

 ラプチャーと遭遇(エンカウンター)して、その数分、たった数分しか経っていない。

 私は伏兵のラプチャーから、銃弾の雨を浴びてしまった。

 ニケの生命維持装置のお陰で、不思議と意識はある。

 痛覚は緊急停止されて痛みは全く感じない。

 それどころか、喋ることだってできている。

 肺機能が無事だったみたいだ。

 しつこく巻かれる弾幕の中で、クロウが私を射線から運び出してくれた。

 

「バカ! しっかりしろルルーイミン」

「すみません、まさか何の役にも立てないままリタイヤするだなんて」

「安心しろ。ニケはその程度じゃ死にはしない。落ち着けよ、必ず身体は元に戻るからな」

「大丈夫ですから……」

「見るな!」

「え?」

「お前はニケになったばかりだといったな。そんなお前が今の自分の身体を見たら、ショック死を起こす。いいか、絶対に顔を上げておけ。私を見ろ」

「クロウ先輩を?」

「そうだ」

「先輩、指揮官は?」

「死んだよ」

「え?」

「お前が蜂の巣になったのを見て、キレちまいやがった。まあ、ニケに銃口向けなかっただけマシだったか」

「そんな……私のせいで」

「違う。新米が間抜けだっただけだ。お前はいいから、生き残ることだけ考えろ」

「でもクロウさん一人で、この数のラプチャー相手にするなんて」

「ああ、そうだ。でも、奇跡を起こしているルーキー指揮官がこっちに向かっていると無線があった」

「奇跡?」

「いいから、私だけを見てろ」

 

 その後、本当に救援が駆けつけてきて、あっという間にラプチャーが殲滅された。

 ラピと名乗るニケとクロウ先輩に担がれた私は、早々に戦線を離脱した。

 

 すっかり身体がもとに戻った私は、クロウ先輩に礼を言うためアーク探した。

 でも、先輩の姿がなかった。

 オペレーターを担当するシフティーから聞いたところによると、あのルーキー指揮官にスカウトされて前哨基地に配属になったそうだ。

 

「クロウ先輩、ずっと私を守ってくれてかっこよかったな」

「どうしたんですか? ぼうっとして」

「あ、いやあのその」

「クロウさん、人気ありますからね。なんでしたら、チャットID教えましょうか?」

「本当ですか!」

「ええ。一度組まれたし、問題ないかと。あの……近いですよ」

 

 

 ――数週間後。

 

 

「いい、絶対に私を見てて。今の貴女は身体が吹き飛んでいるけど、確認しちゃダメよ! よし、目でそうやって合図していればいいから。いい、絶対に私が助ける!」

 

 そして今日も私は、ラプチャーにトリガーを引き続けた。


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