音楽チートで世に絶望していたTS少女がSIDEROSの強火追っかけになる話   作:鐘楼

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エピローグ

「ちょっと優菜!後でサイン入りのあげるからウチの物販を買い占めようとするのは辞めなさい!」

「え、いやでも……他に使い道とかないし……」

 

今や私の存在の半分を構成するSIDEROSのグッズにお金を使おうとしたところ、ヨヨコちゃんから怒られてしまった。

 

……あれから私は、U7としての活動を再開した。私はコメントを見たりエゴサーチしたりとは無縁なので、反響とかは知らないが、数字は復帰前と遜色ないものが出ている。それで結構……いや相当な額の収益が得られているのだが、生憎彼女達以外の使い道が思いつかない。

 

「あと!ライブの時にSIDEROSの宣伝とか言って変な格好をするのを辞めなさい!」

「え……ちょっとでも役に立てばいいなと思って……」

 

それから、たまに新宿FOLTにてソロでライブをするようになった。ボーカル代わりの旋律楽器のエレキバイオリンを生で、それ以外はオケ音源のインストだ。録音とはいえ、オケ音源は全て私が一つ一つ収録したもの。人数などハンデにもならない自信がある。

 

最初はあまり気乗りしなかったが、ヨヨコちゃんが『貴方に釣られた客も全部私達に染める』と言ってくれたので、心置きなく全力を出している。

 

ちなみに、彼女が指摘している服装というのは、私が少しでもみんなの為にとSIDEROSのフライヤーを身体に貼ってライブしたことを言っているのだろう。

 

「だから、私達のライバルでいたいならビジュアルも気にしなさいって言ってるの!」

「わ、わかりました」

 

わかればいいのよ、と引き下がるヨヨコちゃんだが、SIDEROSと同等の衣装はさすがに当てがない。SIDEROSの衣装は幽々が担当で、それはもう素晴らしいクオリティだが、幽々に頼んで私の分まで負担させてしまうのは申し訳ない。

 

そんなことを考えていると、ヨヨコちゃんがチラチラと度々私を伺ったり、ソワソワと落ち着きがなくなっているのに気がついた。これは、何か言うことがあるけども言い出せない仕草だ。

 

「ヨヨコちゃん、どうしたの?」

「うぇっ!?え、えっと……その、実は……」

「ヨヨコ先輩、優菜先輩とコラボしたいみたいっすよ」

「ちょ、ちょっとあくび!」

 

言い淀むヨヨコちゃんを見ていられなかったのか、横からあくびちゃんがあっけなく用件を告げる。

 

「コラボ?対バンじゃなくて?」

「ほら、優菜先輩と同じステージに立ちたいんすよ。自分だけ仲間はずれにされたってうるさいんで自分からもお願いします」

「そ、そういうんじゃなくて……!お互いの為にね……!」

 

コラボ。SIDEROSとコラボ。やりたい。絶対に楽しいし、私もヨヨコちゃんと同じステージに立ちたい。だけど。

 

「い、いいの?でも──」

「でも。なに?言ってみなさい」

 

不敵に、自信に満ちた表情で続きを促すヨヨコちゃん。彼女は、私に、もはや遠慮を許さない。だから、心からの本音を口に出す。

 

「私が同じステージにいたら、みんなが霞んじゃうよ?」

「言ってなさい!客も貴方も、夢中になるのは私達だし!」

 

──嗚呼、私の太陽。ステージの上でなくとも、私はずっと貴女に夢中だと言うのに。

 

 

 

 

SIDEROS古参ファンの間で、語り草となっている伝説のライブがある。そのライブでは、バンドの編成にバイオリンが加わり、楽曲もその日の為に作られた特別製のものが奏でられた。

 

後に『SIDEROS feat.U7』と呼ばれるそのメンバーでライブが行われることは数えるほどしかなく、中でもその初回ライブでは、センターを彩るギターボーカルとバイオリンの二人が競うように高め合い、会場の全てを魅了したと言われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一応この後も本編開始後という名の蛇足が続きますが、ひと段落したので更新頻度は落ちます。主人公ちゃんは救われたわけなのでね……

評価感想で持ち上げられたら気分が乗って頻度が上がるかもしれない()

ぼざろの二次が流行ったと思ったら後藤ひとり単萌えみたいな作品ばっかりで失望したのをバネに書いた作品でしたが、楽しんでもらえたなら良かったです。

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