音楽チートで世に絶望していたTS少女がSIDEROSの強火追っかけになる話   作:鐘楼

15 / 52
A2.Pathos(後)

そんなこんなで、いよいよ二人を自宅へ迎える。機材やら楽器やらで整理はされていないかもしれないが、まぁできるだけ綺麗にはしているので、見せても恥ずかしくはない。

 

「うわ〜、楽器が一杯……!」

「壮観っすね……」

「本当はもう一つの部屋に纏めて置いておきたかったんだけど……ここにあるのは頻繁に触る楽器だね」

 

玄関すぐの部屋には、よく弾いたり触ったり収録に使う楽器が結構なスペースを使っていた。主にロックバンドでよく見る楽器群が目立つのは、長くSIDEROSの楽曲に関わっていたからだろうか。最近はU7の作風もそちらに寄ってしまっている気がする。

 

「お、あれが作業用のPCっすか。さすがに良さそうなの使ってますねぇ」

 

まずあくびちゃんが興味を持ったのは、私の作業用のPC。ゲームは入っていないけど一応ゲーミングPCなので、ゲーム好きなあくびちゃんは見覚えがあるのかもしれない。

 

DAWソフトを動かすだけなら、それ専用に組み立てるかオーダーした方が安く済むんだけど、そちら方面の知識が乏しい私はとりあえず高いが間違いのないパソコンを買った。ゲームをスムーズに動かせるPCなら、大抵のことはできるのだ。

 

「なんかゲームとか……入れてないっすよね優菜先輩は」

「あはは……」

 

大分私のことが分かってきているのか、あくびちゃんが自己解決してジト目で私を見る。曖昧に笑うと、少しの呆れを感じた。

 

「はーちゃん見て見てー!私たちのグッズだよ!」

「お〜、毎度ありがとうございますっす」

 

ふーちゃんが注目したのは、部屋の一角を占領しているSIDEROSグッズの数々。ヨヨコちゃんに怒られてしまったので最近は自重しているが、それでも私の唯一の趣味なだけあり、相当な数になっている。

 

「あ〜、私の色もあるー!」

「こうして見ると嬉しいもんっすね」

 

そうして、私の家を見て回る二人。と言っても、寝室とこの部屋以外の楽器置き場となっている部屋は足の踏み場もないので、ちらりと見せてあげることしかできない。グランドピアノみたいな大きすぎる楽器は持ち込めなかったが、この部屋にも中々に取り回しの悪い楽器が多い。私も用事がなければ入らない部屋だ……そろそろ掃除をしないと埃がやばい。大抵ケースに入っているとはいえ、楽器に良くないかもしれない。

 

ということで、案外すぐに見るものがなくなってしまう。パソコンの中を見せてあげてもいいけど、作曲は二人の専門じゃないから、あんまり踏み込んだ話はできないのだ。

 

「ゆーちゃん先輩、冷蔵庫開けていいー?」

「あぁ……いいけど……」

 

全然構わないけど、そこには纏め買いしたお茶しか入っていない。

 

「……ゆーちゃん先輩、えっと……普段何食べてるんですか?」

「ていうか、キッチンが使ってない人のそれなんで察せるんすけどね」

「れ、冷凍庫の方には冷凍食品あるよ?」

「もー、ダメじゃないですか!」

 

ダメだった。さすがに3日連続コンビニ食なんかは避けるようにしているんだが、ふーちゃんからすると考えられないことのようだ。

 

「決めました!今度ご飯作りに来ますから!」

「えぇ……?」

 

料理覚えてもらいます!と息巻くふーちゃん。それはまた来てくれるということで、正直嬉しい。

 

「ていうか、先輩お金余ってるって言ってましたよね。ならゲーム買いましょうよゲーム、一緒にできるやつ」

「いいけど……え、今から?」

 

そのまま、あくびちゃんに連れられて私達は買い出しに行った。この辺りにはゲームのあるビデオショップ以外にも色々な店が揃っているので、他にも足りない料理道具や食器も見繕ってもらった。バイト代が丸々余っているくらいなので、これくらいの出費はなんともない。ちなみに、二人は自然にコップと歯ブラシを買っていた。

 

それから、帰ってきた私たちは遊び倒した。ゲームをするのは、あくびちゃんの家にお邪魔した時以来だが、3人でやるものも存外に楽しく、夕食も宅配にして夢中になって楽しんだ。

 

「あ、電話っすね……ヨヨコ先輩っす……」

「あ、なら向こうの部屋に……」

「いや、ここでいいっすよ」

 

そんな時、あくびちゃんに電話がかかってきた。その相手はヨヨコちゃんらしい。離れることもなく、あくびちゃんはその場で電話を取った。

 

「なんすか?」

『ちょ、ちょっと……幽々から聞いたんだけど……楓子と優菜の家に行ったって本当……?』

「はい。ていうかまだ居ますよ。一緒にゲームしてます」

『なっ!?なんで誘ってくれなかったの!?』

「ヨヨコ先輩今日は忙しいって言ってたじゃないっすか」

『そうだけど……そうだけど!』

「あと自分用の歯ブラシ買いました」

『はぁっ!?と、泊まる気なの……?』

「今日は違いますけど、優菜先輩が良いって言うのでまぁいずれは」

『いずれ!?』

 

これは……スピーカーじゃないから、ヨヨコちゃんの方の声はよく聞こえないけど、なんとなくあくびちゃんがヨヨコちゃんを揶揄っているのはわかる。今度、私が埋め合わせしないとまた拗ねちゃうかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。