音楽チートで世に絶望していたTS少女がSIDEROSの強火追っかけになる話   作:鐘楼

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ぽいずん♡やみ(佐藤愛子(14(17(23))))


A10.SHOCK(前)

「ライターさん」

「……なに、あんたも出てきたの?」

「私、普通に部外者ですし」

 

ライブハウスを出て、ライターさんに追いつき声をかける。彼女はさっさと出て行ってしまったので、追いつけるか心配だったのだが、杞憂だったか。

 

「で、何の用?」

「名前聞いてなかったので」

「……」

 

とりあえずの話題として私が名前を尋ねると、ライターさんは立ち止まり目を逸らす。

 

「…………ぽいずん♡やみ」

「はい?」

「ぽいずん♡やみよ!」

「……わざわざ自分で恥ずかしがるような名前で活動しなくても……」

「普段はキャラ作ってるから平気なの!でも今日は調子狂いっぱなしなんだから今更名乗らせないでよ!」

 

ライターさん改めぽいずんさんに理不尽にキレられた私は、夜の池袋を歩く。

 

---------------------------

 

それで。

 

「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

「はい、以上で」

 

そのままの流れで、私はぽいずんさんと外食に来ていた。私も彼女も食べて帰るつもりだったので、折角だからというわけだ。

 

「……それで、いきなりパソコンですか」

「熱が冷めないうちに記事にするためのメモを取ってるの。早い方が良いでしょ」

「じゃあそれ、結束バンドの?」

「……悪い?」

 

どうやら、ぽいずんさんが熱心に書き込んでいるのは、記事のもとになる今日のライブの感想らしい。

 

「……負い目ですか?」

「……違う。今日のライブ、凄く良かったから取り上げるべきだと思っただけ……でも、悪かったとは思ってる」

 

私はクリスマス会の時、虹夏さんがぽいずんさんとの一悶着について話していたのを聞いている。『結束バンドは本気でプロを目指しているバンドにみえない』『こんなところではギターヒーローの才能が腐る』だなんて、だいたいそんな事を言っていたらしい。けど、虹夏さんはそれを図星な部分もあると言っていた。

 

「ぽいずんさんと結束バンドに何があったのか、概ね聞いてますけど、あの事があったから未確認ライオットのエントリーを決めたそうですよ。結果的には、プラスじゃないですか」

「……」

「それに、初めて結束バンドのライブを見た時、私も思いました。ひとりちゃんに他のメンバーは追いつけないんじゃないかって」

 

義理も興味もあんまりない身だったから、口には出さなかったけど。でも、ぽいずんさんには口を出す理由があったんだろう。

 

「ファンなんですよね? ギターヒーローの」

「……そうよ」

「だったら、より良い環境に身を置いて欲しいっていうのは間違ってないと思いますよ」

 

とはいえ、あのひとりちゃんが他所でやっていけるとは到底思えないけど。でも、そういう憧れの人に対しては盲目になってしまうというのもよくわかる話だ。

 

「……なんか、情けないわね。歳下に慰められて……」

「あれ、ぽいずんさんおいくつですか?」

「じゅうよ……な……いや、23……」

「おぉ、幼く見えるけど少し上くらいかなって思ってました」

「!……ほんと!? まだいけるわよね!」

「え、はい、そうですね」

 

思ってたより歳上だったけど、失礼どころか何故か喜んでいる。まぁ怒っていないなら何よりか。そこでふと、バンドに詳しい人に聞いてみたいことがあったのを思い出した。

 

「……ところで、ぽいずんさんは未確認ライオット、どこが優勝すると思いますか?」

「……順当に行けば、シデロスかケモノリアでしょ。この二組が東京会場なのはかなり厳しい……けど、今日のライブを見て確信した。結束バンドにも、チャンスはある……!」

「なるほど……」

 

第三者のぽいずんさんから見ても、変わらずSIDEROSは優勝候補らしい。それならば、私も本格的に準備を……いや、違うな。

 

何度間違う気だ、私は。他ならぬヨヨコちゃんが必ず優勝すると言ったのだから、私はそれを信じて行動しなければならないのだ。

 

「?……どうしたの? あ、あんたはシデロス推しなんだっけ。心配しなくても──」

「どんな結果になろうと、私の一番はSIDEROSですよ……ただ」

「ただ?」

 

逡巡の後、考えてみれば隠す理由もないなと、手元の携帯を操作しながら、言葉を続ける。

 

「私、ヨヨコちゃん……SIDEROSの大槻さんと、もしSIDEROSが優勝したら私はネットで活動している名前で宣伝してライブするって約束してるんです」

「へー、あんたネットで活動してたんだ。ま、今時珍しくもないか」

「これなんですけど」

「まぁギターヒーローさんレベルはそうそう──ぶッ!!???」

 

ぽいずんさんに掲げるように見せた私のスマホの画面には、U7のチャンネルアナリティクス。正真正銘、本人にしか見れないデータに、ぽいずんさんは凄い顔で固まる。

 

「あのU7が十代で、個人!?」

「声大きいですって」

 

 

 

 

 

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