音楽チートで世に絶望していたTS少女がSIDEROSの強火追っかけになる話   作:鐘楼

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A11.adulteration(後)

「ちょっと、後藤ひとり! 優菜に相談なんかするのはやめなさい、この認識についていけるのは私ぐらいなんだから」

「えっあっはい」

「え?」

 

何故か呆気に取られているひとりちゃんに、結構前からこっそり話を聞いていたヨヨコちゃんが声をかける。私が相談に向いていない……? ヨヨコちゃんの悩みはたくさん聞いているのに……いや、バンドの話ならヨヨコちゃんの方が適任なのはそうなんだけど。

 

「で、聞きたいことがあるなら私が答えるけど」

「あっじゃ、じゃあ……大槻さんはなんでフェスに出たいんですか?」

「そんなの一番になりたいからだけど?」

「何かヨヨコ先輩って、一番とか数字にいじょーにこだわるんですよ〜」

 

困惑気味のひとりちゃんに、横からあくびちゃんが補足する。彼女の言う通り、ヨヨコちゃんは頂点に固執していて、その欲求がヨヨコちゃんの音楽活動の源……なんだと思う。というのも、私もヨヨコちゃんにはっきりとそう聞いたわけではないし、なぜ頂点を欲するようになったのかも詳しくは知らない。いつか、教えてくれるんだろうか。

 

「かっ仮に優勝できなかったらどうしますか……?」

「絶対一番になるけど」

「いやかっ仮に……」

「……まぁ万が一億が一優勝できなかったら死ぬほど悔しいけど、たかが一度の挫折で一喜一憂なんてしない」

 

そこで、ヨヨコちゃんは一度言葉を切り、聞き入っているひとりちゃんから視線を外し、私の方を見た。

 

「今の私達にとっては大きなバンドになるためと……最大のライバルに勝つための、ただの通過点だし。何があっても立ち止まらない! 最後に私達が一番だったらそれでいいの!」

「何かうちら悪役みたいっす……」

 

「目標はビルボードチャート一位グラストシベリー・フェスティバル大トリ!」と、いつか聞いた夢を高らかに宣言するヨヨコちゃんを見て、私は一人目を閉じた。

 

ヨヨコちゃんは強いなぁ、と心底思う。彼女は、どんな挫折にも、その度に思いっきり悔しがり、その分だけ前に進める人だ。そんな人が、必ず私を超えると約束している。変わらず私を見据えていてくれる。こんなに幸せなことがあるだろうか。

 

「とか言って対バン相手の方が盛り上がってると裏で毎回泣いてるくせに〜!」

「なっ泣いてない!」

 

そんなやり取りと、突然ひとりちゃんが立ち上がる音で、私は目を開けた。

 

「あっありがとうございました!私今日はもう帰ります!」

「あっ、私もちょっと聞きたいことが……」

 

……そうして、どこか晴れやかな顔でひとりちゃんは帰って行った。結局、私は何の力にもなれなかったけど、ヨヨコちゃんの言葉に何かを見出せたみたいで良かった。まぁ、ヨヨコちゃんはすごいからね。

 

「……ところで、優菜」

「なに、ヨヨコちゃん?」

「なんで私じゃなくて後藤ひとりと最初にセッションしてたの?」

「……え」

「あ、それ今日もやるんすね」

 

有意義な時間だったなぁ、なんて考えながら片付けをしていたところで、ヨヨコちゃんがそんなことを言い出した。

 

「えっと……ちょっとギターヒーローの技量が気になって……」

「私の方が上手いけど」

「あ、そ、そうだね……でも、ヨヨコちゃんとは暇さえあればやってるし……」

「私ならもっと優菜に合わせられるけど」

 

……なんか、ヨヨコちゃんは結束バンドもといひとりちゃん関連だとすぐにこうなる。おそらく、これは廣井さんが結束バンドに目をかけ始めたのが遠因なわけで……うん、全部廣井さんが悪いんだ。

 

この後めちゃくちゃセッションした。

 

 

 

 

 

 

 

 




私はギターギーローとヨヨコ先輩の実力は互角だと思っています(根拠はヨヨコ先輩の「私に追いつきたいなら一日六時間は練習……」発言)が、どう思います?(露骨なコメ稼ぎ)

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