音楽チートで世に絶望していたTS少女がSIDEROSの強火追っかけになる話 作:鐘楼
思ったより6巻にヨヨコ先輩出るやん……
ということで限定復活です
「……一応聞くけど、何してんの?」
「なにって、勉強ですよ」
つい最近顔出しでの活動を解禁した幻のアーティストにして、SIDEROSの……大槻ヨヨコのライバル『U7』こと、池揉優菜。そんな私の最近の日常風景に、家に来ていたライターのぽいずん♡やみさんがそんな疑問を投げかける。
「勉強って、鍵盤触りながら……?」
あのワンマンライブから、私はU7として大きな一歩を踏み出した。新宿FOLTのソロバイオリニストである池揉優菜と、伝説となっていたU7が結びつき、生活も大きく変わった。中でも大きいのは、勤務中の私目当ての客が来る、という理由でFOLTのバイトを辞め、私の生活リズムを矯正する最後の壁がなくなったことだろうか。
だが、そんなことよりも今の私には重大な壁が立ちはだかっているのだ。
秋の模試。ヨヨコちゃんや虹夏さんと同じ志望校。ギリギリのC判定。
私は思い出した。本来の私は不器用で要領が悪いんだと。
ということで、どんな手を使ってでも成績を上げなければと感じた私は、ある手段を思いついた。
「参考書の最初から最後まで曲にしてるんです。こうすれば私、絶対に忘れないので」
「どんな暗記ソングよ!?」
以前まで、勉強は私の“才能”の範囲外にあるからズルはできないと考えていた。しかし、楽器に触っていると長時間のライブパフォーマンスが苦にならないほど体力と身体能力が上がる……というように、音楽に絡めることで応用はいくらでも利く、ということに気づいたのだ。
そうして編み出したのが、全科目全範囲暗記ソング勉強法。U7の膨大な持ち歌をいつでも歌えるのと同じように、曲というフォーマットに置き換えた知識を私は絶対に忘れない。その効果は絶大で、学力はありえないスピードで伸びている。鍵盤に触っているので疲れもしない。完璧だ。
「あぁ、部屋の掃除、ありがとうございます。バイト代はいつも通り現金でいいですか?」
そもそもなぜやみさんが私の家にいるのかというと、元々大した家事スキルがない上に勉強漬けになった私が部屋を汚しがちになり、労力をかけずになんとかせねばと思い家事を頼んだのだ。
多分、ふーちゃんたちが私の生活を知れば無償でお世話をしてくれそうだけど、SIDEROSの活動を邪魔するのは気が引ける。そこで、私の秘密を知っていてお金に困っているやみさんに頼むことにしたのだ。
「今更だけど……こ、こんなに貰っていいの?」
「……正直言うと、相場が分からないんですけど……まぁ、住所口止め料ということで。それだけあれば、ストレイビートさんでのバイトの方は必要ないんじゃないですか?」
ライター一本で食べてはいけないやみさんは今、ストレイビートという結束バンドと契約したレーベルでもバイトをしている。
「……いや、続けるわ。ここもあそこも汚部屋で掃除ばかりしてるのは解せないけど……ギターヒーローさんの……結束バンドの活動を近い場所で見れる職場だしね」
「……そうですか。それは……ラッキーですね」
と、そんな話をしたところで私の携帯に通知が来る。U7としてのアカウントに来る連絡は通知に来ないよう設定しているので、この通知は知り合いのものだ。見てみると、相手は虹夏さんだった。
「結束バンドの企画ライブ……クリスマスに……出演依頼……」
「え、なになに? STARRYでってこと?」
「みたいですね。でも……」
新宿FOLTの恒例として、クリスマスには廣井さんたちSICK HACKのライブが行われる。そこには当然ヨヨコちゃんたちSIDEROSも出るわけで……残念だけど、それを観に行かない選択肢は私にない。
「第一、私が出たらダメなんじゃないかな……」
「なんでよ? あんたが出るってなれば……」
「私が出たら、それは私のライブになっちゃうじゃないですか」
「……あんたねぇ……そうかもしれないけど……!」
とにかく、悪いけどこれは断るしかない。その日の予定はもう埋まっているのだ。……その恒例のFOLTのライブに私が出るのかは未定だけど、いずれにせよ一番前でヨヨコちゃんの姿を目に焼きつけるという予定は決定事項だ。
「……ねぇ、あんたって大手からの誘い、今も全部蹴ってるんでしょ」
「はい、そうですね」
「なんで?」
「別に今のままで困ってないというのと……あと、手続きやメールでのやり取りが億劫すぎます。無理です」
「……それ業界人が聞いたら卒倒するわよ……」
レーベルの契約。強いて希望を言うならSIDEROSと同じところが良いけど、下手にそうして私の選定基準が知られて、彼女たちが私のおまけのような扱いをされることはどうしても避けたい。
「別に大手にこだわりはないのよね?」
「えぇ、まぁ……だって、私が入ったらもうそこは大手じゃないですか?」
「…………こいつ……じゃ、じゃあ! ストレイビートはどう? 面倒なことはあたしが代理できるし、あたしから司馬さんに言ってなるべく縛りのない契約にすることも……!」
「……理由を聞いてもいいですか?」
使命を感じているような顔で私に訴えかけるやみさん。こんな彼女は珍しい。何を思っているのか気になり、その意図を尋ねる。
「……だって、もったいないでしょ。あんたが……U7が適当なプロモーションのせいで色んな機会を逃してるなんて」
「適当……」
適当……か。事実だけど。まぁ、やみさんの熱意は分かった。だけど、私の答えは。
「……考えておきます。どこかと契約するならの第一候補……くらいに思っておきますよ」
「本当!?」
「はい。では、今日はありがとうございました」
とりあえず、この件を保留にして、やみさんを玄関まで送ろうと立ち上がる。歩こうとすると、やみさんに服を掴まれて止められた。
「ま、待って」
「? なんです?」
「その……バイト代、返すから……一曲、演奏してくれない?」
恥ずかしそうに搾り出した小さな声で彼女が強請ったのは、私の演奏。
「それは……贅沢ですね?」
「しょ、しょうがないじゃない! 忘れらんないのよ、あの日のライブからずっと……!」
あの日。U7としての初ライブ。約束通りに招待したやみさんはあの日、目が合うほどの特等席で私のステージを堪能していた。
……ならまぁ、責任は取ってあげるべきだろう。
「リクエスト、聞きますよ」
あ、すまない……続かないんだ……だって二期が来た時にネタがなくて便乗できなかったら困るし……
代わりにオリジナルの応援よろしくね
『知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう』
別に本作が好きな人にあってるわけではないけども……