音楽チートで世に絶望していたTS少女がSIDEROSの強火追っかけになる話   作:鐘楼

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手が空いたので


Sd.SIDEROS

「で、どうするんすか? これ」

 

 ライブハウス、新宿FOLT。

 

 そこで活動する人気バンドSIDEROSのドラマー、長谷川あくびがぐい、と突き出したスマホの画面には、『【悲報】U7さん、怪文書を晒してしまう……』というまとめ記事が映っていた。

 

 伝説のアーティスト、U7こと池揉優菜。活動を再開し、そして自身の集客力をガン無視した箱ライブを敢行して話題になった彼女は、そのプライベートについても注目の的だ。

 

 そんな最中に、これである。事の発端は、その優菜が新宿FOLTのオーチューブチャンネルに投稿された動画に対して、何やら距離が近いとか一番一緒にいたいなどと長文ヘラコメントをU7の本垢でコメントしたこと。

 

 最近若干メッキが剥がれてきていたとはいえ、元々U7は全くと言っていいほど自我を出さないことからクールでミステリアス、孤高な求道者のようなイメージを持たれていた。ところがこの件はそこそこ大きく拡散されてしまったため、イメージの修復は不可能だろう。

 

「でも、ゆーちゃん先輩らしいよね〜」

 

 そんな優菜のやらかしを見て呑気に笑うのは、ギタリストの本城楓子。

 

「……たしかに、あの人垢分けって概念がなさそうっす……」

 

 あくびの想像は当たっている。事実、優菜自身にアカウントを切り替え忘れたという認識はなく、普通にコメントを書いただけとしか思っていないのであった。

 

「でも〜、これってヨヨコ先輩が悪くないですかぁ〜?」

「わ、私が悪いの!?」

 

 ベーシストの内田幽々が、矛先をリーダーの大槻ヨヨコに向けると、場の全員の視線がヨヨコに突き刺さった。

 

「そうですよ! お勉強で会えないゆーちゃん先輩の気持ちも考えてあげてください!」

「煽っといてなんですけど、二人羽織はやりすぎっすね」

「不誠実〜」

 

 相次ぐ非難に、ヨヨコがたじろぐ。件の動画では、ヨヨコが結束バンドのギタリスト、後藤ひとりと共演していた。常人には見るに耐えないクオリティの動画だったが、その一環でヨヨコはひとりと密着したりセッションしたりしていた。それが、優菜がヘラった大きな原因であることは間違いない。

 

「それは……っ! わ、悪かったけど……最近、優菜は勉強が忙しいって言って会ってくれないし……」

「あ、私とはーちゃんはたまに会ってますよ〜」

「なんでよ!?」

 

 ヨヨコはキレた。自分とは会わないくせに、あくびと楓子には会うのかと。

 

「優菜先輩、うちらの邪魔したくないって言ってましたけど、こっちから押しかければそんなの関係ないっすからね」

「ゆーちゃん先輩、生活力ダメダメで心配になっちゃうもんね〜」

「でも最近は意外と部屋が片づいてるんすよね」

「家政婦さんとか雇ったのかな〜?」

 

 自分の知らない優菜の話がどんどん出てきて、ヨヨコは唖然とした。不誠実なのは優菜の方ではないのかと。

 

 そんな時だった。ヨヨコの携帯に通知が届く。

 

「……マネージャー?」

 

 それは、マネージャーからのとある提案だった。昔とは異なり、SIDEROSは正真正銘の人気バンド。今ではちゃんとしたマネージャーだってついている。

 

 そしてその提案というのは……今の状況を利用すること。つまり、U7たる優菜との関係をもっと推し出してプロモーションに活用しないか、という提案だった。

 

「ゆーちゃん先輩を宣伝に、ですか〜」

「良いんじゃないっすか? こうなった以上はどの道うちらは先輩との関係で注目されますし。多分優菜先輩は歓迎すると思うっす」

「幽々は〜、どっちでもいい〜」

 

 三人の反応は概ね前向きなものだった。しかし、当のヨヨコだけに、確かな迷いがあった。

 

「でも……私たちは実力で優菜を迎えに行くのであって、その為に優菜の力を借りるのは……」

「気持ちは分かるっすけど。でも使える手は使っても良いんじゃないすか? ヨヨコ先輩が頼めば、あの人何でもしてくれますよ」

「こ、言葉にされると不健全ね……」

 

 

 

 ──そして、そんな相談の中でヨヨコが出した結論は……受験が落ち着くまで先延ばしという、至極真っ当なものだった。

 

 




え……? 久々の更新でこれだけ……?

ってなるよね。俺もなる。そう考えると気軽に更新ってできなくなるんだよね。そこんとこどう思う?

なお今回に限り、補填として明日ももう一話だけ更新します
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