気がついたら死亡寸前だった件について   作:花河相

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ラディッツ、翻弄する

 

 

 

「ふぅ………」

 

 俺は深呼吸し、昂る気持ちを落ち着ける。

 常に冷静であれ。それが今の俺に大切なことだ。

 今から使う技は俺の戦闘スタイルに合わせている。しかし、実戦で使うのは初めて。

 形にはできている。タイミングも何回もシミュレーションした。

 

 緊張するのは仕方ない。だが、雰囲気に飲まれるな。俺はナッパに善戦している。このまま何も秘策なしで戦ったら埒があかなくなるし、下手したら俺が負けることも。

 

 だからこそ望みは短期決戦。

 何かさせる前に、ナッパの普段通りの戦いをさせることなく……終わらせる。

 

「どうしたナッパ?……手こずってるようだが……手を貸してやろうか?」

 

 突然のヤジが飛んでくる。

 冗談でもやめろよベジータ。

 こっちはナッパ一人で手一杯だっつの。頼むから静観していろよ。

 

「大丈夫だ。少し準備体操をしただけだ」

「そうか……ならさっさと片付けろ」

 

 よかった。

 流石に静観してるよな。信じてたぜベジータ。だって原作でもナッパがやられるまで何もしてなかったしな。

 ナッパはベジータと会話を終えると俺を見る。

 

「どうした?さっきから逃げてばっかじゃないか?戦闘力が上がっても、所詮は弱虫ラディッツだな」

「言ってろ……ハゲ!」

「……なに?」

 

 ブチッと血管が浮き上がる。いや、見たまんま言っただけじゃん何キレてんだよ。

 罵倒されたから仕返しただけなのに。

 その後は沈黙が続いたが、長くは続かない。とりあえず仕切り直しか。

 

「いくぞぉぉぉ!」

「こい!」

 

 ナッパはまたも攻めてくる。

 だが、俺も正面から戦い続けるほど人は良くない。……仕掛ける。

 

「はぁぁぁ」

 

 俺は両手から複数の赤色のエネルギー弾を出し、ナッパの目の前に2つ。俺の周囲に8つほど放つ。

 

「こんなもの!……ふんうごぉ!」

 

 ナッパがエネルギー弾に当たった瞬間爆発した。これは触れたら爆発する効果をもつ。

 威力もそれなりにあるので、多少警戒が必要だろう。だが、この技はただ爆発するだけの技ではない。

 実はもう一つ効果がある。

 

 だが、今の二発だけで少しだけ怯んだ。攻撃を緩めない。

 俺は接近し、殴りかかる。

 

「どりゃりゃりゃりゃ!」

 

 ナッパの巨大な体に拳と蹴りの連打を喰らわす。上半身の腕の付け根、そして顎。

 

 ただ、複数の場所に攻撃しても意味がない。

 攻撃の仕方を変え、急所を狙う。

 たが、ナッパもすぐに立て直す。

 だから俺は誘いをするため、あえてナッパの攻撃を受け後ろに後退する。この時、ダメージを最小限にするため、殴られると同時に後ろに飛ぶ。

 

「調子にのるな!」

「ぐぁ!」

 

 後方に飛ぶ俺を追撃するナッパを俺は攻撃する。だが、ナッパはそのまま追撃してくる。

 ……流石に思い通りに動きすぎだろ。

 まぁいい。

 俺は空中にセットしてある爆発するエネルギー弾を──

 

「くらえ!」

 

 ナッパが赤い気弾の前を通りすぎるタイミングで一定方向に操作してぶつけ、起爆させる。

 

「ぐわぁ!……くそ!」

 

 これが二つ目の効果。設置してある気弾を一定方向に飛ばす。

 この触れれば爆発し、一定方向にだけだが操作できる赤い気弾。名をサーズディレイ。

 

 

 原作のキャラたちの技を参考にした。「スーパーゴーストカミカゼアタック」「繰気弾」の二つ。

 

 当たったら爆発する。気弾を操るこの二つの要素を組み合わせる。

 残念ながら気に意志を植え付けることやヤムチャのように気弾を完全に操ることはできなかった。

 

 だから、単純な動作に爆発。

 威力もあるし、動きが単純な分、気弾そのもののスピードがある。

 

 使い勝手は少し悪いかもしれない。

 一回一回気弾の場所の把握と気弾を操作しなきゃいけない手間がある。

 

 だが、使い方によっては戦闘の幅は広がる。相手に警戒させ、時には目眩しにもなる。

 

「はぁぁあ!」

 

 俺はサーズディレイがナッパに着弾すると接近し、蹴りで右腕の付け根に攻撃をする。

 

「おりゃ!」

「ぐわぁぁ!」

 

 ナッパは後方に飛ばされて背後の岩山に激突。

 

「サタデークラッシュ!」

 

 ラディッツがよく使う技だ。

 雷の形状の気を放ち、着弾、爆発した。

 

「……マジかよ」

 

 爆風から少し時間がたつ。

 見えたのは爆風の影響ででた土埃、そこから現れる大きな人影。

 ナッパよ……お前という奴はどこまでタフなんだ。その耐久性は……反則だろ?

 

「ゆるさねぇ……」

 

 ブチギレてやがる。

 キレたいのはこっちだよ。

 

 俺の蹴り本気だったぞ。

 気にしても仕方がない。切り替えろ。

 ダメージを蓄積させれば必ず勝機はあるはずだ。

 

「ふぅぅぅぅ」

 

 俺は一度考えを切り替えるため、深呼吸をする。

 苛立つと人は集中力が下がる。考えが単調になる。判断力が鈍る。

 

 俺が付け入るのはその隙、意表をつく。ただの攻撃ではダメなら別の手法を。

 俺は次の技を使う準備のため、右拳に気を集める。

 

「いくぞナッパ!」

 

 声を上げ、今度は俺から攻める。

 俺の最高速度で向かうのに対してナッパは。

 

「死ね!ラディッツ!!」

 

 ナッパは俺の攻撃を受けることなく、攻撃をするようだ。俺からの攻撃ではダメージが少ないなら今度はナッパの力を利用する。

 

 俺は接近し、右手に溜めた気を手から肩の方向に気の流れを作る。

 ナッパの左からの拳打をずらしながらワザと腕に当てる。

 

「なに?!」

 

 ナッパの拳打は俺に当たることはなく、流れるように俺の背後に飛ばされる。

 

 気の流れを利用し、自分の体に気の激流を発生させる技「ウェンズデシェド」

  

 ナッパは気の激流に触れた瞬間、俺の後方に体勢が崩れ地面に顔をぶつける。

 

「ぐぇぇぇ!」

 

 ナッパは完全に倒れ隙だらけに。

 俺は倒れるナッパに迎撃をする。

 倒れるナッパを踏みつけるように上から頭を両足で踏みつける。

 

「どりゃ!!」

「ぐは!」

 

 ナッパの顔は地面に埋まる。

 今度は表と裏の二重構造での攻撃。

 

 俺はそのまま空を飛び、もう一度攻撃。

 

「サタデークラッシュ!」

 

 放たれたエネルギー弾は着弾し爆発する。

 殺すことを覚悟で放った。

 

 どうなるのだろう。

 

 俺は少し離れた位置に移動し、着地する。

 

「す……すげぇ……倒しちまった」

 

 ふと、右後ろの方から感心の声が。

 だがなぁ、クリリン。それは何かのフラグを立てるのはやめろよな。

 

 

 ……どうだ?ナッパは次はどう反応する?

 

「くそぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 その雄叫びが聞こえると、強い風圧があたり一面に起こる。

 

 それは台風並みに強かった。

 

「くそ!くそ!くそ!」

 

 地団駄をしイラつきマックスのナッパ。

 ……俺はサイヤ人を……いや、ナッパを見誤っていた。

 

 これがサイヤ人ナッパ。

 アニメでは悟空に圧倒されていて、ベジータに花火の如く打ち上げられたナッパ。

 

 ナッパは当て馬ポジションにいたが、やはり強い。

 正直にいえばこれで勝負を決めたかった。

 

「おのれぇ……よくも俺様の歯を!」

 

 よく見れば歯が抜けてるけど……気にするところおかしくないか?……まぁ、いい。

 それにしても少しやばいな。

 もしかして俺の攻撃通じてないのか?

 

 ………落ち着け。冷静になれ冷静に。

 

 次の技に備えろ。

 どう来る?どう動く?……あれ?

 

「……今度こそ……あ、れ?」

 

 ナッパの行動に警戒するも、ナッパは突然動きが止まり、ふらふらし始めた。

 

「何でだ……体が」

 

 ナッパは自分の体の異変に気づき始めた。

 ああ……やっとか。

 これだけ攻撃をして……ようやく効果が出たか。

 致命傷になり得る、本気の攻撃を何回も受け、脳を何回も揺らし、何度も急所に攻撃を打ちこみ、ようやくダメージが蓄積されて効果が出た。

 

「どうしたナッパ?」

「はぁ……はぁ……チクショー!……俺は名門出のエリート戦士だ!それを貴様のような臆病者に舐められてたまるか!」

 

 俺は少し煽り、ナッパはさらにイラつきが増す。

 よし……怒れ……冷静さを失え。単調になればなるほどお前の動きは読みやすい。

 だが、世の中そんなに都合は良くない。

 

「愚か者め!頭を冷やせ!異様な技に翻弄されおって!落ち着けば対処出来るはずだ!」

「はぁ…はぁ…ありがとうよ、ベジータ」

 

 ナッパは静観しているベジータの一言で冷静になる。

 余計なことを……このまま俺有利に戦いを進めたかったが。

 

「俺様としたことが、臆病者相手に冷静さを失うとはなぁ……一族の恥だぜ……はぁぁぁ」

 

 落ち着いたナッパは気を高める。体に異変があるはずなのに、まだ動けるのかよ。

 ナッパは気を高め、身体中が黄色に光る。

 そして、ナッパは右手を少し上げる。

 

「はぁぁぁ」

 

 ふと、ナッパは俺の背後に視線を向け、右手に気を高めてあげようとして……こいつ!まさかクリリンたちも巻き込む気か!

 

「全員消えちまえ!」

「くそ!」

 

 俺は急ぎクリリンたちの前へと急いで移動。

 あいつ、全力で放ちやがった。

 ピッコロならともかく悟飯とクリリンは確実に死ぬ!

 

「何が!」

「あわわわ」

「空へ飛べ!」

 

 クリリン、悟飯は何か分からず戸惑い、ピッコロは今起きようとしていることが何となくわかったようで避けようとする。

 

 くそ……ナッパが巻き込むとか考えていなかった。

 

「貴様!何を!」

 

 俺の行動にピッコロは反応する。

 よくこんな状況で反応できるものだ。

 

「はぁぁ!」

 

 ピッコロたちに近づいたあと、俺の足元に……気を放ち足元の爆発の威力を抑える。

 

ドカーン!!

 

 爆発と同時に俺を含めた3人がいる場所以外が足元から爆発した。

 

 

 その爆発での被害は抑えられ、3人を守ることができた。だが、その一瞬の気の緩みがら命取りになった。

 

「うぉぉぉぉ!」

 

 爆発の煙の中から大木のようなナッパの拳が迫っていた。

 




補足説明。

ラディッツは初陣で短期決戦を望むが、自分の開発した技が通用するか実験もしていた。ラディッツの技は曜日が特徴なので、いくつかオリジナルで作りました。名前や技についてはあまり突っ込まないでいただけると。

サースディレイ 木曜日。
固定する気弾。空中に固定し、仮に触れたら爆発する。一つの動きならば気の操作できる。高速でぶつかるエネルギー弾は不意をつかれた時、最も効果が発揮する。

ウェンズデシェド 水曜日。
 気を川の激流のように流す。相手のバランスを崩したり戦闘のリズムを変える時に使う。
 今回はナッパの攻撃を受け止め、体勢を崩させることに使用した。





ラディッツの尻尾がない件について。ベジータたちがあって早々、ラディッツの尻尾がない件に触れないのは不自然ですか?少し数話先で触れる予定だったのですが。

  • 不自然
  • 別に大丈夫じゃない?
  • 作者が思うがままに進めていい。

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