気がついたら死亡寸前だった件について   作:花河相

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数多くの誤字脱字報告、感想やお気に入り登録ありがとうございます。

日間ランキングで5位に入ったました。本当にありがとうございます。

以前にも指摘があった尻尾の件は予定通り今回触れます。
本当に少ししか触れません。




ラディッツ 、一瞬の覚醒

 突然だが、スポーツを行なっている人、武術をしている人ならば心当たりがある人は多いのではないだろうか?

 

 極限に集中力が増したとき、頭が真っ白になりプレーに集中していた時にはなおさら起きるだろう。

 

 突拍子もないタイミング。普段練習をしていないのに突然体が反応し自分でも驚くようなパフォーマンスをすることがある。

 

 だが、そのパフォーマンスをした張本人ですら何故そのような動きができたか疑問を持つ。

 

 インタビューや家族、友人などが聞かれると誰もが皆こう答えるだろう。

 

「体が勝手に反応した」……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は悟飯たちを守った。だが、ナッパの攻撃はそれだけでは終わらなかった。

 

 ナッパは爆風から奇襲。完全に不意をつかれた。ナッパの拳は俺に迫っていてどうやったってかわせない。

 防御も取れない。これは致命的な一撃になるだろう。

 

 ……本来ならば。

 

 目の前に迫る拳。

 しかし、このような局面にも関わらず俺は冷静であった。

 

 俺は気がついたら合掌していた。

 無意識であった。体が勝手に動き、気が付いたらいつもやっていた流れの通り、気を一点に集中させ、両拳を腰につけていた。この一連の流れで放たれる一閃の拳は俺の最大火力。

 

 そこまでの動作が終了した時、俺の視界はクリアになっていて、ナッパの動きはスローモーションに見える。

 

 ナッパの拳が俺に迫る。

 

 ……どこに攻撃すれば良いのだろう。

 

 こいつの耐久性はすごい。このままやり合ったら……この機会を逃したら次のチャンスはない。

 

 ここは確実に倒すには………。

 

「ふぅー」

 

 狙いを定めると脱力し、迫るナッパの拳をぎりぎりまで引きつける。

 そしてーー

 

「ふん!」

 

 ーーナッパの鳩尾に拳を打ち込んだ。

 

「グッ……ケホ、ケホ」

「ふぅ……」

 

 俺は目の前にいるナッパから拳を戻す。

 ナッパは呼吸がうまく出来ないのか、苦しそうにしている。

 ……勝負あったな。

 

 まさか、こういう結末になるとは予想外だった。

 

 ただの気のコントロール訓練でやっていたことでナッパとの勝敗が決まるとは。

 

「ち…ちく……しょう」

 

 ナッパはそのまま倒れた。

 俺はそのままナッパを蹴飛ばし、ベジータのいる方向に飛ばす。

 ベジータは俺を見て驚いていた。

 

「もうナッパは動けないだろう。介抱してやれ」

 

 ナッパの生死はベジータ次第。

 まぁ、おそらくは殺されるかもだが……今心配すべきは。

 

「お前たち……無事か?」

 

 俺は後ろにいる3人に声をかける。

 ここまで体を張ったが、あれだけの衝撃があったんだ。

 怪我している可能性がある。

 

「……俺は何ともないが」

「僕も……その……ありがとう。助けてくれて」

 

 よし、クリリンと悟飯は無事か。

 

「……貴様……何のつもりだ?」

 

 いや、そう言われても何と言えば?

 原作キャラだから。助けたかったから。

 ここは。

 

「罪滅ぼしのつもりだ……。この一年……ある地球人に世話になり考えを改める機会があったんだ」

「それを信用しろと?」

「おいおい待てよピッコロ!」

 

 俺とピッコロの会話中、クリリンが割って入ってくる。

 

「疑う気持ちはよくわかるが、今はそんな時じゃない。少なくともラディッツは俺たちを助け、一人サイヤ人を倒した。今はそれでいいじゃないか!」

 

 クリリンは俺とピッコロの中に割って入ってくれた。

 本当にありがたい。だが、まだ完全には警戒心は取れていない。

 

「それにしてもすげぇよ!俺たちでも勝てなかったサイヤ人に一人で勝っちまうなんて!そんなやつが味方してくれるなんて心強いぜ!」

「そうだよピッコロさん!たしかにラディッツさんはひどいことしたけど、心入れ替えたって言ったし、それに僕たちのこと守ってくれたよ!」

 

 ……この二人どれだけ純粋なんだ?人の良し悪しがわかるのか?いや、今はこの考えはよそう。ベジータに集中しないと。

 

「信用できないのはわかるが今は我慢してくれ」

「……チッ!……いいだろう。だが、少しでも妙な真似してみろ?そのときは」

 

 何をやられるのだか、いろんな意味がありそうだが、おそらく殺されるかもな。

 

 とりあえずこれで協力関係を築けた。

 ピッコロは妥協しているが。

 

「肝に銘じよう」

 

 返す言葉としてはこれが妥当だろう。

 

 話が一段落つき、俺はベジータに視線を戻す。

 ベジータは倒れて助けを求めるナッパを見ていた。

 ナッパが手を伸ばし、ベジータはその手を取ったその瞬間、空へと投げ飛ばした。

 

「なにを!」

「そーれ!」

「何を!ベジータ!ベジータ!」

「動けないサイヤ人など必要ない!……はぁ!」

 

 お、これは伝説のセリフか。

 いや!そんなことを気にしてる場合じゃない!てか、なんつう気だ。

 

 ベジータはエネルギー砲を放ちナッパを消し去った。

 

「ベジータ……何故ナッパを」

「足手纏いはいらないからな」

 

 目の前にいる強者のベジータ。

 ナッパの時とは違い、こいつには………絶対に勝てない。

 今の戦闘力が18000で俺が5000くらい。

 勝つのは難しい。

 どうするか。

 

 とりあえず、3人は遠くに行かそう。

 

 悟空がくるまでは時間を稼がなきゃいけないし、このまま3人は戦ったら殺される。

 

 この場で時間を稼げるのは俺だけだ。

 

「お前たちは遠くに行っていろ」

「逃すと思うか?……サイヤ人の裏切り者、歯向かう奴は生きていることを後悔させんとなぁ?特にそこにいるガキ……そいつはただでは殺さん。カカロットが来るまで徹底的に苦しめ、目の前で殺してやる」

「……ベジータ」

 

 ……マジかよ。

 物語登場当初はここまで非道だったのかよ。悟飯怯えちゃってるじゃん。

 まだ普通なら幼稚園に通っているような子供なのに。

 

「だが、まずは貴様だラディッツ……戦闘力1000程度のゴミに手こずり、誇りである尻尾を失い、のうのうと生きていたお前はサイヤ人の恥だ。………楽に死ねると思うな?」

 

 なるほど。俺のことをそのように思っていたのか。もともと評価が低かったが、それがもう最底辺になり、無関心だったと。

 それで今の地球の現状を見て聞くまでもない……と。

 

 正直勝ち目はない。界王拳のような戦闘力を倍にする技はない。

 

 最後ナッパにとどめを刺した技……それなら唯一勝機を見出せるかもだが、不安要素が多すぎる。

 何故技として出せたのか、何故視界が一瞬スローモーションになったのかもわからない。

 そんなものに縋るのは良くない。

 

「クリリン……だったか?」

「え?……ああ」

「カカロットは……ここに来るんだな?」

「ああ。…だけど、いつ来るかまでは」

 

 クリリンの声は震えていた。

 

 本来の物語では三時間の待ち時間が終わった後、クリリン、悟飯、ピッコロの3人で戦う。

 悟空が来るまでにピッコロは殺され、悟飯とクリリンはボロボロに。

 その中で悟空が登場する。

 

 だが、その本来の物語からはほど遠く、俺がナッパを倒した。

 3人は無事だ。

 

「俺がベジータの相手をし、カカロットが来るまでの時間を稼ごう」

「?!……ここはみんなで一緒に戦うべきだ。そうすれば一矢報いることが出来るかもしれない」

「そうだよ!……こ、怖いけど…僕だって」

 

 だが、悟空が来るまでに時間を稼げたのは相手がナッパだったから。

 ベジータは別格だ。

 

 少なくとも俺の実力の三倍以上。

 下手したら殺される。

 

「やめておけ……無駄死にする気か?」

「理解が早くて助かる」

「……チッ」

 

 ピッコロは冷静に判断する。

 ベジータの気を感じただけで底知れぬ気を察するのはさすがだ。

 

 殺されるのは俺だけでいい。

 

「何をしている!早く降りてこい!……まさか逃げる相談でもしているのか?」

 

 ベジータは声をかけてきた。

 もう、これ以上は待ってくれないかもな。

 

「少し離れていろ。……心配することはないさ。1秒でも長く稼ぐ。……死んだとしてもな」

 

 死ぬ気で時間を稼ぐ。

 どうせ殺されるのなら地球のために。

 恩を返す。

 

 だが、簡単にはやられない

 

「場所は変えておくか」

「……ああ、そうしてもらえるとありがたい」

 

 せめてこれ以上被害を出さないためにと物語でもクリリンは悟空に頼んでいた。

 

 ヤムチャと天津飯の遺体があるからと。

 

 俺の意図を察したのか、クリリンは礼をいう。

 俺は地上に急降下する。

 

「逃げても無駄なことは良く理解しているな」

「何年の付き合いだと思っているんだ?……ベジータ」

「ふん」

 

 とりあえず提案するか。

 

「場所を変えたい」

「……好きにしろ。同じことだ」

 

 これで心置きなく戦える。

 圧倒されボコボコにされるだろう。

 

 だが、ただではやられない。

 

 せめて一撃だけでも。

 

 俺はベジータと共に移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうする?」

 

 それはラディッツとベジータが戦う場所を移動した後にクリリンが悟飯とピッコロに問いかける。

 

「俺は残る。……どうせ孫悟空が来るまでにあいつがやられたら死ぬのだからな」

「なら俺も残る。……足手纏いかも知れないけど」

「僕も!」

 

 ピッコロの言葉に悟飯とクリリンは同意するようにお互いに頷く。

 できることは少ない。だが、地球の運命はラディッツにかかっている。

 

 ベジータはもう悟空以外には対抗できない。

 もしかしたらラディッツならもしくは……そう思うも本人が勝ち目はないと、時間を稼ぐので精一杯だと断言した。

 

 それほどまでの強者なのだと。

 

 3人はラディッツとベジータがいる場所に向かうのだった。

 




補足説明。

ラディッツがナッパを倒した技は正拳突きで気を溜めて一気に放つ一閃の拳、これは気で身体能力を極限まで高めた一撃のため、最大火力と表現した。

ラディッツへの評価。
ベジータとナッパはもう無関心です。どうせ、尻尾がないのは地球人にやられたからだと思っています。
それは通信の会話から悟空が尻尾がないことを事前に知っていて、地球人がサイヤ人の尻尾に警戒して油断して切られた。
そう思っています。

クリリンと悟飯
自分達を守ってくれたいいやつ。
始めは警戒していたが、ラディッツと会話をして、少しでもプラスに思考した。

ピッコロ
完全に警戒を解くわけにはいかない。何か怪しい動きを見せたらその時は殺してやると思っている。
だが、ベジータの気を感じることで今の自分には歯が立たないと直感で感じたため、孫悟空が来るまでラディッツにベジータの相手を任せる。
だが、もしもベジータが隙を見せたらその時は参戦すると決めた。


追記です。
ピッコロの反応について。
原作でもサイヤ人の戦闘ではクリリンたちと共闘をしていました。

まだこの頃のピッコロは地球征服を諦めていなかった。敵対するとも言っていた。
しかし、その前に地球が壊されたんじゃ意味がない。
だから目の前の脅威が排除するために協力しようとしたという流れです。

また、悟飯と一年弱過ごして心境の変化もした。
一年前なら共闘とかはしなかったと思います。

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