気がついたら死亡寸前だった件について   作:花河相

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ラディッツ、失念する

 悟空から放たれた巨大な元気玉はフリーザに直撃した。

 ナメック星も壊れてしまうと思ったが、どうやら持ち堪えてくれたようだ。

 

 ただ、元気玉が放たれた場所は大きなクレーターができており、それを中心に地上にひび割れが星全体に広がっていた。

 

 星は壊れる寸前であった。

 

 

 何はともあれ、結果よければ全てよし。ドラゴンボールを使用しナメック星人たち及びクリリンたちの避難は終わった。

 

 ナメック星が持ち堪えてくれたので俺も悟空も死ぬことはなかった。

 

 本当によかった。

 

「おーい!にいちゃん!」

「……カカロット」

 

 内心安心していると上空から呼ばれる。声がした方向を見るとゆっくりと俺に近づいてくる悟空の姿があった。

 

「やったな……カカロット」

「おう!」

 

 お互い言葉を掛け合う。全て終わったことを確認し合うように。

 

「ナメック星……壊れなくてよかったよな」

「そうだな。もし元気玉で壊れちまったら今頃オラたち死んじまってたからな」

「ああ」

 

 ふぅーっと安心したように深呼吸し周囲を見渡す悟空。

 俺は相槌をする。

 

「これで無事終わったことだし。けぇるか」

「……そうだな。……ふぅぅ」

「?!……どうした!」

 

 安心してしまい急に体に力が入らなくなり仰向けに倒れる。

 悟空は心配で驚いていたのですぐに安心させるため声をかける。

 

「大丈夫だ。少し疲れただけだ。精神的にな」

「精神的?……なんでだ?」

 

 いや……なんでって聞かれても。

 

「俺はフリーザ相手に二度も戦ったんだ。そりゃ疲れるさ」

 

 一度目は風穴を開けられた。デンデに治してもらっても精神的な疲れは回復しない。

 合掌拳を初めて実戦で使い余計に疲れた。これらから一気に緊張から解放されたので蓄積された疲労がどっときた。

 

「何故お前は笑ってるんだ。……疲れていないのか」

「いや、オラも疲れたさ」

「ならなんで」

「……何て言えばいいんか分からないんだけどよ」

 

 悟空は思考した。

 少し経って考えがまとまったのか、話始める。

 

「宇宙にはもっともっと強い奴らがいるっちゅうのがわかって嬉しんだ」

「……は?」

「今回でフリーザのようにすげぇ強い奴がいた。もしかしたら想像もできねぇような強い奴が、わんさかいんじゃねぇかと思うんだ」

 

 まぁ、確かにその答えはあっている。

 今後人造人間や魔人ブウ、破壊神がいるくらいだしな。

 目を光らせる悟空。

 あ、こいつもしかして喜んでるな?

 

「ワクワクしてこねぇか、にいちゃん?」

 

 しねぇよ。

 これからのことを考えたら体が震えてゾクゾクしてくるわ。

 

「だから、もっともっと修行して……強くなろうぜ!」

「そうだな」

 

 強くなることには賛成だ。だが、俺は強い奴と戦いたいが、悟空のように積極的にはなれない。

 

 まぁ、フリーザを完全体にして戦いたいと思ったのも今思えば、突然沸いた感情だし。

 

 多分サイヤ人としての本能だと思う。俺もサイヤ人の血が色濃くあるし、元のラディッツと心が一つになって混ざり合っている途中だからだろうな。

 

「さ、もどるか……地球に」

「おう!」

 

 俺の言葉に悟空は元気の良い返事をする。

 

「ほら」

「……ありがとな」

 

 立ちあがろうとしたら悟空が手を差し出してくれた。

 俺はその手を取り立ち上がる。

 

 ……痛い。

 

 そういえば今右足を痛めてるんだった。

 すっかり忘れていたわ。

 それにしてもなんで俺って戦闘終わった後こんなにもボロボロなんだろう?

 

 地球に戻ったら少し療養しよう……うん。

 

 だが、その前に俺はやらなければいけないことがある。

 それはギニュー特戦隊が乗ってきた宇宙船でヤードラット星に行くこと。

 

 そこで瞬間移動とフュージョンについて学ばないと。

 今後のことを考えたら必要になる。

 なんなら悟空も誘っていくか。

 

「なぁ、カカロット」

「うん?」

「よかったらなんだ……が」

「なんだ……」

 

 だが、俺は言葉を途中で止めた。

 悟空も異変を感じ取ったのか聞いてくることはなかった。

 

「な…なんで生きてやがるんだよ」

 

 突然ある人物が流れ着いてきた。

 それは死んだと思っていた人物。

 

「フリーザ」

 

 下半身が水に浸かり上半身が地上に乗っている。

 

 見える範囲でだが、後頭部の一部がなくなり、身体中はボロボロでところどころに欠損があり、左腕はなくなり右腕は肘から先がなくなっていた。

 

 本当になんでこの姿で生きていられるんだよ。

 普通なら死んでるよ。G虫みたいな生命力だ。

 

 だが、それを見て安心した。

 こいつはもうまともに戦える力はない。

 

 完全に息の根を止める。

 

「待ってくれにいちゃん」

「なぜ止めるカカロット」

 

 悟空に制止され理由を求める。

 

「とどめを刺す必要はねぇだろ。こいつはもう戦えねぇ……」

「だが、どうする?こいつがもしも生きながらえてたら?……今度は地球に攻めてくるぞ……そうしたら今度は地球が終わる」

「……なら今度は倒せるように強くなればいいだろ?」

「……勝手にしろ」

 

 悟空の意志を尊重する。

 悟空は強者と戦い勝利することに喜びを見出すサイヤ人。

 

 おそらくだが、フリーザにとどめを刺さないのは強者と戦うことのできた一つの感謝の表れなのかもしれない。

 

「よくも……よくも……よくも」

「まだ立ち上がれるのか」

 

 フリーザは一人悔しがり、ゆっくりと立ち上がる。

 体はフラフラとしており、満身創痍。

 

「殺してやる……猿ごときに」

「フリーザ……もうオメェの負けだ」

「なに……」

 

 悟空の言葉に苛立ちを増すフリーザ。

 

 だが、俺はフリーザを倒して気が緩んでいた。

 失念していた……追い詰められた奴が何をやらかすか分からないということを。

 

「きぇぇぇ!」

 

 フリーザは自分の足元にエネルギー砲を放った。


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