気がついたら死亡寸前だった件について   作:花河相

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ラディッツ、内定。

 クリリンと修行を始め早半年が経過した。

 

 修行を開始してからは自立できている。

 食料も水も自給自足、電気は太陽光発電により料金かからず。

 

 この生活が成り立っているのはブルマのおかげだ。

 時折顔を出すように連絡が来る、あまり行く気はなかったのだが、教習所の金とか身元保証人とかの件の話を出され、どうしても断れなく不定期だが、お邪魔している。

 一番初めはクリリンを伴い行ったのだが、その次以降は行っているのは俺だけだ。

 理由を聞いても行きたくないとの一点張り。

 

「どうしたクリリン……ブルマに何か言われたか?……なんなら一度俺から話を」

「それだけは頼むからやめてくれ!一生の頼みだ!」

 

 そんなことで一生のお願いを使ってもいいものかと思ったが、必死なクリリンを見ていると悪いと思ったので、これ以上の追求をやめた。

 

 

 そんなクリリンだが、俺との修行で目を見張る成長をした。

 もともと肉体的には限界を迎えていたものの、戦闘技術は向上した。

 合掌拳の訓練は順調とはいかないものの、形にはなっている。弱音を吐くかと思っていたが、文句一つ言わずに黙々と続けている。

 

 最近では手応えを感じているのか、クリリンは午前の修行が終わった後自主的に修行を始めている。

 

 向上心があって何よりだ。

 俺自身も成長できているので、やはりクリリンとの修行は間違っていなかった。

 

「……何か地球に来たな」

「悟空じゃないか!」

「……いや」

 

 クリリンと修行中、何か大きい気が地球に現れた。

 クリリンは悟空かというもの、来るのはフリーザが来るタイミングと同じはず。それに感じる気の大きさも失礼だが、ナメック星の悟空の気より小さい。

 そういえばベジータの乗っている宇宙船の燃料が切れるころだとブリーフ博士も言っていたし。

 

「ベジータだな。ブリーフ博士も宇宙船の燃料がなくなると言っていた」

「あ、そうか。なんだ、少し期待しちゃったなぁ」

「そう焦るな。満足したら戻ると言っていたではないか」

「あ、そういえばお前死んでる時悟空と話したんだっけな。元気にやってんかなぁ。それにしてもどんなに強くなって戻ってくるやら」

 

 クリリンは空に微笑みながら話す。

 悟空はもう少しで帰ってくる……はずだ。いつくるか断言できないが、近いうちに地球に帰るはず。

 

 ベジータといえば生き返ってから一度も会っていないが、会いに来たりするのだろうか?

 これからベジータはカプセルコーポレーションで過ごすことになる。

 

 ま、来たところで今更戦うことはないだろう。スーパーサイヤ人を見せるように言われるかもしれないが。

 

「とりあえず問題はないな。ここにベジータが来るかもしれないとだけ言っておこう」

「えぇ…」

「露骨に嫌そうな顔をするな。おそらく危害を加えることはないだろうし、するようなら俺が全力で止めるさ」

 

 クリリンが嫌な顔をしたのでとりあえず補足の意味も込めて一言伝えておく。

 

 ベジータは宇宙の修行で実力が向上している。

 今思えばベジータは強くなるためなら24時間修行を続けられるようなやつだ。

 

 俺が地球でのんびり修行している時も倍以上はやっていただろう。

 

 もう少し休むことも大切なのだがなぁ。

 伝えたところで今のベジータが聞く耳持つわけもなく、逆ギレするのがオチだ。

 

 とりあえず、今は気にしてもしょうがないので、ベジータの対処は来たときに考えようと思う。

 

「じゃ、俺はこれから出かけてくる。お前はどうする?」

「俺は休憩が終わったらもう少し修行をするさ。……もうすぐ新技のヒントが掴めそうだからな」

「そうか。なら、頑張れ」

 

 そう言って俺は家を出てあるところに向かう。

 向かう先は教習所ではない。

 

 これから俺がするのは………就職活動だ。

 免許は早い段階で取ることができた。

 

 だが、仕事をするにも、修行を第一に考えるとなかなか条件が絞られてくる。

 

 最も俺に適した仕事といえば戦うことだろうな。ボディーガードとか良さそうと思ったが、守る対象とずっと一緒にいなきゃいけない。

 

 武道家の道もいいかもと思ったが、腕一つで食っていけるかと言われると無理だ。調べたが、武道家の収入は大会賞金だけの収入。

 

 安定的に収入を得られるわけじゃない。

 

 可能なら最低限の労働時間で暮らせるだけの収入を得ること。

 かつ、これから攻めてくる敵に街を壊されることのない都で仕事を見つける。

 

 南と東の都はだめだ。

 いつかは壊される。

 ……そう考えて消去法で選んだのは中の都と西の都で見つけること。

 

 そして、選んだ職種は。

 

「それで、大丈夫なのですか?職歴もない……それに学歴も。何より武道大会の実績もないですし。あなた今まで何やっていたのですか?」

「武道家として山に籠り修行をしていた」

「……求人を見ましたか?実績のない人物を採用するわけにもいかないのですよ。危険が伴いますし、何より失敗したらこちらは大誤算です。……あなた一人の責任では償いきれないのですよ」

 

 面談に向かった先は中の都だ。

 スーツ不要と書かれていたのでラフな格好で来た。

 相手は男性が二名。

 職種内容は現金輸送。

 賃金も高いし、輸送が行われるのは人気のない早朝だけ。銀行間を行き来して、金を届けるだけなので、結構単純な仕事だ。

 

 ただ、輸送には車を使うので狙われやすい。

 ホイポイカプセルを使った方が良いかと思ったのだが、それは過去にミスを犯した奴がいるらしい。

 

 気がついたら大金が入ったカプセルを落とした奴がいるだとか、そのカプセルをスラれてしまうと言う失態をした奴がいるだとか。

 ちなみにこの事例は俺が今面接を受けている会社ではない。

 輸送には車を使い、かつ襲われても対処ができる人材を探していたらしい。

 

 街によっては軍に依頼をするところもあるが、基本は民間警備会社の委託業務だ。

 

 中の都はそこまで治安は悪くない。前任の人が辞めてしまうので、その引き継ぎをできる人を探しているらしい。

 

 だが、賃金はいいが、命の危険がある。怪我をしたら働けなくなる。

 割に合わない仕事なので、求人に応募は俺一人らしい。

 

 こういう反応されるのはわかっていたが、ここまで露骨な態度を取られるとは。ま、気持ちはわからなくはないが。

 

 俺は今日持参したカバンの中から映像が入ったディスクを取り出す。

 事前にラオに頼んで焼き増してもらったサイヤ人戦の映像だ。

 

「実績については問題ないと思うが?以前、テレビで宇宙人が地球に襲来した事件は知っているな」

「え?…話には聞いていますが。それが何か?」

「なら、話が早い。俺はその宇宙人を追っ払った人物の一人だ」

「はぁ……そんなこと信用するとでも?」

「調べればわかるさ。映像も残っているんじゃないか?……今日はその録画映像を持参した。確かめて欲しい。動画に俺が写っているし、戦闘の映像も。それをみてもまだ疑うようなら実技試験でもしたらどうだ?……俺を雇って後悔はさせん。依頼達成率100%を保証してやろう」

「あなたのその態度もさっきからなんなんです?動画の加工ってご存知ですか?ーー」

「待ちなさい」

 

 ふと、俺の話に対して文句を言ってくる若い男性に隣から話を遮るように話しかけてくる40代の男性。

 

「まぁ、こっちも事情が事情だ。確認するだけでもいいではないか。もしも彼が言っていることが本当なら即戦力だろう?」

「それはそうですが。……わかりました。……ラディッツさん、少し待っていてください」

「ああ」

 

 そう言われ俺は一人部屋に残された。

 

 そして、それから10分ほど時間が経ち、戻ってきて、少し実技試験をすると言われた。

 

 内容は動画の内容をその場で再現するように言われた。高速移動、空へエネルギー弾を放った。

 

「ラディッツ様、先程までの態度は失礼しました。これからよろしくお願いします!」

 

 そして、先程までとは比べ物にならないくらいの丁寧な態度で接しられ、無事に内定がもらえた。

 仕事内容の説明をされると、基本は早朝、週に数回現金を銀行間や企業へ輸送する。

 時間も2時間も掛からず業務は終了する。

 車の乗車には書類をやり取りする人物が同行するようで、俺はただ運転と現金の護衛だけ。

 

 ここまでの高待遇に驚くも、その日は契約を済ませ、仕事のやり取りをするための携帯電話を支給された。

 

 そこまで信用しても良いかと思ったが、免許証があるから、登録されている住所はカプセルコーポレーションの場所、身元保証人もそこの家の人になっているので問題ないそうだ。

 こうして、俺は修行をするのにもってこいの高待遇で就職先を見つけることができたのだった。

 

「良かったなラディッツ!おめでとう!」

 

 帰ってからクリリンに報告すると、お祝いを言ってくれる。

 

「その仕事……俺にもできそうだなぁ……なぁ、俺もその仕事紹介してくれないか?」

 

 なんとなく、これから働く俺を羨ましがっているのか?

 

「いや、無理だな……その会社は俺一人で十分らしいからな」

「マジかぁ」

「別に焦って仕事を探す必要はないと思うが?」

「でも、ラディッツ働き始めるのに俺だけ何もしないのもなぁ……なんか気が引ける」

 

 どう言ったものか。多分クリリンは本気で言ってはいない。

 なんとなくで俺に聞いているのだろうな。

 

「一区切りがついたらでいいんじゃないか?」

「一区切りって言っても……どこで区切りをつければいいかがわからん」

 

 区切りか……いやでも仕事をしなきゃいけないと考えるなら。

 

「結婚したらでいいんじゃないか?」

「………へ?」

「結婚したら家族を養わなきゃならんしな」

「結婚かぁ……できるかなぁ?」

 

 美女の相手が現れるよ。

残念ながら本人には伝えられないな。

 

「カカロットとチチは戦いの中でお互い出会ったと聞いている。なら、お前も強くなればそのうち会える」

「なんだよそれ……無責任だなぁ。……でも、確かに悟空も強いからチチさんに会えたわけだし……もう少し頑張ってみるか」

 

 クリリンは決意を改めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ……あれが地球だよ」

 

 ラディッツが無事に就職し数ヶ月経過し、地球に脅威が迫る。

 それはナメック星で死んだと思われていたフリーザとその父コルドであった。

 

 フリーザは悟空とラディッツ兄弟に敗北後、コルドにより救出され生きながらえた。

 

 改造手術を施されたフリーザは怒りが煮え繰り返していた。

 

「ただじゃ殺さないよ。……この僕をコケにしたこと……後悔させてあげるよ」

 




ラディッツの仕事。
現金輸送のアルバイトみたいなものです。……仕事に関しては物語に影響ありませんのでお気になさらず。

最低限の労働で最低限生活ができる仕事なんて都合のいいやつ思いつきませんね。
危険ゆえに時給が高く、短時間で金が稼げる仕事。
現金輸送車の護衛兼運転。そんな都合のいい仕事があるかと思われるかもしれませんが、触れないでいただけると。




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