気がついたら死亡寸前だった件について   作:花河相

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ラディッツ 、覚悟を決める。

「神様」

「これは……どうなっているんじゃ?」

 

 ここはカリン塔より上にある神の神殿。

 神様とその付き人、全身黒色の丸い体型、アラビア風の服を着ているミスターポポは困惑していた。

 

 二人は神殿の上から地上の様子を窺っている。

 対象は地球の危険分子サイヤ人のラディッツ 。

 

「……なぜ人間と暮らしている?」

 

 神様はラディッツは怪我が癒えると破壊行動をすると思っていた。

 いたのだが。

 一月ほどが経つが、被害が全くない。それどころか、人間と暮らし始めていた。

 

「神様……あのサイヤ人、もう悪いことしない」

「いや、まだそう決めつけるのは危うい。まだ警戒すべきだ」

 

 二人は警戒を解くことをしない。

 

 理由はわからない。

 だが、これは好都合だ。

 

 今神殿には一年後にくるサイヤ人に向け戦士たちの修業をつけている。

 集められた戦士は5人。

 

 お馴染みクリリンとギザギザ頭に野性味溢れるイケメンフェイスヤムチャ、三つ目が特徴のスキンヘッドの天津飯、肌が白く小柄なチャオズ。

 最後に太っていて着物を着ているヤジロベー。

 

 5人は戦闘力が上がり、実力も向上している。

 

 だが、地球にいるサイヤ人は手負いとはいえ実力差はかけ離れている。

 今、無理をして倒しに行くことはせず、力を蓄え備えることに専念した方が良い。

 それが神様が下した判断だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにきて一ヶ月か。そろそろ怪我も癒えたな」

 

 チャズケ村にきてはやひと月。

 Z戦士たちの襲撃はなく、平穏に過ごすことができた。

 

 そのおかげで傷は完治した。

 ゆっくり療養がてらラオたちの手伝い、主に食料採取と力仕事を行なう。

 

 そのおかげで今ラオたち家族とは良好な関係を築けた。

 ポジション的には人のいいおじさん、便利な居候といったところだろう。

 ライムは始めは怯えていたものの、今では懐いてくれている……勘違いではなければ。

 

 だが、この生活は終わりだ。

 これ以上迷惑はかけられない。

 

 幸いにもここら一帯には湖はもちろん果物、肉も多くある。

 ラオたちに取ってきていた薬草や果物も採取して種類や効果を教わりある程度の知識はもちろん、価格とかも聞くことができた。

 

 野宿は平気だし、やろうとすれば金も稼げる。

 もう独り立ちできるのだ。

 

「これもまだ使えるな。……やはりこれがしっくりくる」

 

 俺は家を出るための準備をしている。もともと着ていた右肩のパットが壊れ、鳩尾部分が少し割れている戦闘の鎧を着る。

 

 この地球の服も良いが、安全性に欠ける。

 これが一番安心できる戦闘服だ。

 

 ……さて、これで終わった。

 

 俺が寝ていた部屋は掃除はした。布団もできる限り綺麗に畳んだ。

 後は置き手紙も用意した。

 

 たった一言「世話になった」とだけ記した置き手紙。

 

 ここは俺にとって居心地が良すぎる。

 ひどい考えだが、Z戦士が襲ってきても優しい彼らのことだ。

 ラオさんを思って本気で戦えない。俺に有利になる。

 だが、その行為はダメだ。

 ここを危険に晒したくない。

 

 だから、ここを出ていーー。

 

「何してるのおじさん?」

 

 驚いた。

 まだ朝早い。

 時間ならいつも俺に声かけてきてくれるライム。時間はいつも7時くらい。

 

 今は4時。みんな寝ている時間だ。

 

 なんでここに?

 

「なんでお部屋片付けてるの?」

 

 ………なんといえば良いのだろう?

 ここは正直に言うべきか?

 騙す事はできるが、それだけはダメだ。

 

「俺はもうこの家を出る」

「お出かけ?ならお日様出てからにしよ。まだ暗いよ?」

 

 ……だめだ。子供は純粋と聞いたことあるが。

 

「違う、今日でこの家に住むのは最後だ。もう二度と会うことはない」

「……え?」

 

 キョトンとしているライム。

 ラディッツに憑依してひと月。今は体と心は一致して一人の人間となった。

 

 前世の俺の人格とラディッツの人格は一つになりつつある。

 やはりお互いに影響しあって今では口調はラディッツのままで性格は前世のものとなった。

 前みたいにきつい口調になることはなく、今では率直に伝えられるようになった。

 

「もう……会えないの?」

「ああ」

「もう……一緒にご飯食べないの?」

「そうだと言っているだろう」

 

 ライムは目に涙を溜めていて、今にも泣きそうになった。

 だが、泣くのを我慢している。

 

「い………」

「……い……なんだ?」

 

 なんだよ今の間は。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「?!……おい泣くな!」

 

 大泣きするなよ。

 他のやつが起きたらどうするつもりだ。

 俺はあやそうとする。

 だが、それは遅かった。

 

「ライム!どうしたの?」

「うわあああああん!おじさんがぁぁあ!」

「ラディッツさん?」

 

 おい!その言い方だと俺が何かしたみたいだろ!

 頼むから何あったのって目をやめろ、早く泣き止め!キウリ。どうにかしてくれよ。

 

「……なんですかその格好は……それになぜ部屋が片付いているので?」

「……」

「おじさんもう少しいてよ!出ていかないでよ!」

 

 うん、代弁してくれてありがとうライムあと、そろそろ泣き止もうな。そうしないと。

 

「「何があった?!」」

 

 あーあ全員起きちゃったじゃん。計画台無しじゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分世話になってしまった。これからお前たちを危険に晒してしまう。これ以上は居られん」

 

 俺は全てを語った。

 自分がここにきた経緯、出自、これから起きること。

 

 理由は納得のいく説明ができなかったから。

 俺の尻尾について、地球にはまだ存在しない鎧。

 俺の説明を聞くと4人は黙って見つめ合う。

 戸惑っているのだろう。

 

「……なるほどの」

 

 シンッとした沈黙を破ったのはラオだった。さすがは年長者だ。

 

「宇宙人ならばあの人間離れした動きも納得だ。気になってはいたが……」

「地球がもうすぐ終わるとか……信じられないわね」

「その不思議な格好も、尻尾も……宇宙人なら説明がつく」

「おじさんすごい!お猿さんみたい!」

 

 

 ラオ、キウリ、レンモ、ライムはそれぞれそうコメントした。

 

 今、ライムに対して俺は尻尾を動かし遊んでいる。

 普通、尻尾を掴まれたら力が抜けるんだが、怪我の療養中、やることがなく、自分の尻尾を触り続け、鍛えたら弱点を克服できた。

 だから、説明する手前、泣いていたライムをあやすため尻尾を動かしていたら、今、真剣な話をしているのに、一人だけ楽しんでた。

 

「お前さんは……どうするつもりなんだ?」

「どう……とは?」

「これから地球を滅亡させるつもりなのかと聞いておる」

 

 ラオは真剣な表情で聞いてくる。

 何を言っているのだか。

 ひと月、ラオたち家族と過ごした。その生活の中で人としての喜びを知った。感謝されることの喜び。助け合うこと、頼られることの嬉しさ。新しいことを覚える大切さ。

 

 全て人同士で過ごさないと分からないことを知った。

 前世では当たり前だったこと。だが、ラディッツに憑依してからは初めて感じる感情ばかり。

 何故だろう?人と過ごすことで心が軽くなり、身体中が温かくなっていく。

 

 これら全てラオたちと過ごさないとわからなかった。ラオに助けられなければ知る機会すらなかった。

 

「俺が恩を仇で返すように見えるか?」

 

 すでに答えは出ている。

 俺はサイヤ人として、地球人のために戦おうと。

 他のやつはどうでもいいが、ラオたちがこれからも平和に暮らせるために……この一生かけても返せない恩に報いるために。

 

 俺は強くなろうと決めたんだ。

 

「だからこそ修行をする。俺が強くなろうが勝算は低い。だが、ここにいると皆に迷惑がかかる。危険な目に遭わせる可能性がある」

 

 俺の話を聞き終えると、3人は呆然としていた。

 そして、お互いにまた顔を見合わせ微笑んでくる。

 

「なら尚更ここにいた方がいいだろう」

「私たちのために戦ってくれるのならできる限りのサポートもしなきゃ」

「ああ。それにラディッツさんがいなくなると大泣きする子もいる。もう少しライムと一緒にあげてほしい。なんなら、戦いにいくその日まで」

 

 ……どれだけお人好しなんだ。

 これがただの虚言かもしれないのに。

 

「俺が嘘をついているとは思わんのか?」

 

 俺の問いはその答えは否であった。

 

「お前さんは正直な人だ。それはひと月過ごしてきてわかっておるつもりだが?」

 

 もう勝てんわこの人には。

 

「一年だ。……それが過ぎたら俺はこの家を出る。それまでは好きにさせてもらう」

「ああ、それで良い」

 

 俺はもう少しこの家で世話になることになった。

 

「うぅぅ。おじさん、いかないで……むにゃむにゃ」

 

 ちなみにライムは俺の尻尾を枕に床で寝てしまっていた。後で判明したことだが、ライムはトイレで目を覚まし、俺のいた部屋の明かりがついてたので気になってきたそうだ。それでそのまま話し合いになった。

 4歳児にはまだ寝足りないようだった。

 俺たち4人は寝ているライムを見て、ほっこりするのだった。





補足説明。

ラディッツの感情変化はS細胞が増えている。
ラオたちの優しすぎる性格について。

アニメでラオたちはガトウという悪者の一味に対して邪険に扱っていました。
しかし、悟飯に対しては人柄の良さに優しい態度を。
また、悟飯が超人的な力を持っている見抜くも態度を変えることはなかった。
ガトウ一味が村の人たちに銃を向け、武力で攻撃しようとし、悟飯が対処しようとして、ラオはそれを止めた。
理由は悟飯が出ていったらガトウ一味はただではすまないと言ってラオが戦った。

間に感じで力があるからと恐れることはなく、敵味方関係なく最低限の慈悲を持つ人間の為、ラディッツのことも信じたのです。

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