気がついたら死亡寸前だった件について   作:花河相

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ラディッツ 、見参する

 

 

 ……結果だけいえばライムは症状がひどい風邪であった。

 検査し、点滴をすれば治るらしい。

  

 点滴は三時間ほどで終了するそうで、点滴の時間中、時間が進むにつれてライムの症状は改善していくのか、顔色が良くなってきた。

 

 本当に安心した。

 

 だが、状況は最悪だ。

 ベジータとナッパは宇宙船で到着後街を破壊し、その衝撃で地震が起きた。それはテレビで放送されていた。

 地球側の戦士たちが集まりサイヤ人たちと戦っている。

 この内容は病院のテレビで映っていた。だが、おかしいことにテレビではサイヤ人という単語が出ていない。

 宇宙人の侵略の疑いがある、とだけ放送されていた。

 

 だが、俺が病院に着いてからその放送を見た時には手遅れであった。

 

 状況は一時休戦しているらしく、テレビにはベジータとナッパ、ピッコロ、クリリン、悟飯は距離をあけて立ち止まっているだけ。

 

 ……つまり、ヤムチャ、天津飯、チャオズは死んでしまったということか。

 

「くそ!」

 

 俺は何をしているんだ。なんのために修業したんだ。

 俺は何もできない。

 

「おじさん」

 

 ふと、目の前に寝ているライムから声がする。

 

「ライム……よかった」

 

 俺は心から安堵した。

 ライムは俺の反応に少し微笑む。

 

「おじさん、やっと笑った。えへへ」

「ふ……」

 

 今思えば俺笑った顔したことなかったか?記憶があやふやだが、多分そうなのだろう。

 

「おじさん」

「なんだ?」

 

 ライムは俺の顔を見て、話しかけてきた。

 何を言うのだろう?

 気になり耳をすませると

 

「行ってきていいよ。おじさん、すごく行きたそうな顔してるもん」

 

 ……この言葉にドキッときた。

 子供は見ていないようで実はよく見ていると聞いたことがある。純粋な子供に見透かされているような鋭い指摘に驚く。

 

「ただ、一つ約束して」

 

 驚くあまり何も反応できなかったが、ライムは言葉を続けた。

 

「急にいなくならないでね」

 

 心が苦しい。

 この子供は俺がした一年前の行動をここまで気にしていたのか。

 俺が修行に精一杯で家に遅く帰っていた時は急にいなくなると思いずっと起きていたのか。

 

 ……俺はどこまでダメなんだ。

 

「ああ、約束しよう」

 

 俺はライムを安心させるため、返答した。

 

「やくそく!……気をつけてね」

「ああ」

 

 最後に安心したのか、ライムは満足したような表情で寝た。

 

 

 

 俺はライムが寝たのを病院の看護師に持ち合わせが少ないから金を取りに行くと話し、このまま入院させてもらうように頼み病室を出る。

 

 

 ライムとまた会うと約束した。

 

 その約束を守るため、必ず地球を守る。

 

 

 俺は戦場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し時間が遡る。

 それはベジータとナッパが地球に到着した時。

 

「これはどうなってんだ?」

「ラディッツのやつ……ここまで無能だとは思わなかったな」

 

 二人が地球に着いた時、一番に思ったことは何故地球に人がいるという疑問だった。

 

「まさかあの野郎……一人でやることに怖気付いて俺たちがつくのを待っていたな?」

「……サイヤ人の恥晒しが!」  

 

 ナッパの言葉にベジータは怒る。サイヤ人の誇りを大切にしている二人だからこその反応。

 

「どうする?」

「殺すに決まっているだろ!」

 

 ナッパとベジータはスカウターを操作する。

 

「?!こ……これは」

「ほう……ラディッツのやろうは殺されたかもしれないな」

 

 スカウターを操作した二人は映しだされた数値に少しだけ驚いた。

 ラディッツを一先ず殺すため起動したが、この地球には戦闘力1000以上の反応が複数ある。

 

「一つや二つじゃない」

「狼狽えるな、この中で一番高い戦闘力のやつを探せ」

 

 ベジータとナッパを二つの反応に狙いを定めて、出発した。

 その反応は悟飯とピッコロの二人。

 

 地球にいるZ戦士たちは気を感じて一つのところに集まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サイヤ人対地球陣営の戦いは進んだ。

 サイヤ人の二人に損害はなく、逆に地球人側は既に犠牲者が出た。

 サイバイマンとの戦闘でヤムチャは自爆で殺され、チャオズは自爆でナッパを殺そうとするが無駄に終わり、天津飯は最後の決死の覚悟で全力の技を放つがナッパには通用しなかった。

 

 このまま、ナッパは残りを片付けようとした時、ベジータは止めるように言う。

 理由は悟空を待つためだ。

 

 悟飯たちは強くなり戻ってくると言った。

 

 サイヤ人の裏切り者。だからなるべく苦しませて、悶え苦しませ殺すために。

 

 

 

 三時間。

 それが猶予の時間。

 

 そして、三時間まであと20分というとき、苛立ちを隠せないナッパは近づいてきたテレビ局の人間たちを発見した。

 ナッパは暇潰しのために、破壊行動に行こうとした。

 その瞬間であった。

 

 突然、ベジータの持つスカウターが反応した。

 

「おいナッパ。少し待て」

「どうしたベジータ」

「今反応があった。誰かこっちに向かっている。後2分ほどで到着する」

「待たせやがって、カカロットのやろう」

 

 それはクリリン、悟飯、ピッコロも感じていた。

 

「この気はまさか!」

「お父さん!」

「孫悟空……やっとか」

 

 3人とも遅れた援軍に歓喜する。

 しかし。

 

「ふ!ははははははは!」

 

 突然笑ったベジータに全員の視線が無く。

 

「これがお前たちの期待したカカロットか?……待って損したぜ」

「おい、教えろよ。カカロットがどうしたんだ?」

 

 サイヤ人の反応に3人は戸惑う。

 

「たった戦闘力3000程度のやつだ。……可哀想になってきたぜ」

「戦闘力3000か……ラディッツよりかは強いな!ふはははは」

「お父さんを笑うな!」

 

 悟飯は二人の反応に怒った。

 そして、ベジータはある提案をする。

 

「ベジータどうする?カカロットがくる前にやっちまうか?」

「まぁ、後2分程度で到着する。……せっかくのお待ちかねの援軍だ。待ってやろうじゃないか」

「そうだな」

 

 クリリン、悟飯、ピッコロはサイヤ人二人の対応に安堵した。

 このまま、戦っても勝率は少ない。

 悟空がいればなんとかなる。

 待っていた援軍に歓喜するのだった。

 だが、その期待は裏切られることになる。

 

 

 

 それから2分後、向かってくる戦闘力の持ち主の正体が見え始める。

 

「あれ?……お父さんじゃない?」

 

 悟飯のその言葉はクリリンとピッコロも思ったことだった。

 そして、3人は焦りだす。

 

「よぉ……待たせたか?」

 

 その発言した男は悟空ではなかった。

 長い黒髪にギザギザした。サイヤ人特有の髪型。

 ナッパが着ていた同じ戦闘鎧を来ている人物。

 

 それは一年前、悟空とピッコロが二人で戦っても全く歯が立たなかった人物。

 

「チッ……期待して損したぜ。……今さら何しに来やがったーー」

 

 ベジータは苛立ちを増した。

 その恥晒しのサイヤ人に。

 

「ーーラディッツ」

 

 それはどちらの陣営にも歓迎されないラディッツだった。

 




補足説明。

一応、戦闘の流れは原作と同じです。
ただ、原作ではベジータは悟空が登場時すぐに3人を消そうとしました。しかし、その時の悟空の戦闘力のスカウター表示は5000。それに比べてラディッツの戦闘力は3000。敵ではないと判断した。

ナッパが暇つぶしに出る時間が原作よりも遅い件について。
ラディッツが及ぼした影響です。
原作ではヤジロベーがテレビ局に情報を売るが、ヤジロベーはそもそもサイヤ人との戦闘に参戦していない。むしろ恐怖心からその場から逃げ出した。そのせいでテレビ局が戦場を発見するのが遅れ、テレビ局の人たちも戦場に近づくのが原作よりも遅れ、ナッパがテレビ局の人たちに気付くのが遅れた。
これらが原因でナッパは破壊行動という名の暇つぶしに出るのが遅れた。


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