まだ見ぬ世界のポケモン達   作:雪見柚餅子

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薄暗い沼地のまちぶせポケモン

 擬態。それは生きるための知恵の一つである。

 例えばまねポケモンの「ウソッキー」は外敵から身を守るため、いわタイプでありながら木に擬態することで敵の目をごまかしつつ、苦手なみずタイプの攻撃を避ける。また詳細な理由は不明だが、ボールポケモンの「ビリリダマ」やきのこポケモンの「タマゲタケ」、ガラル地方のトラップポケモン「マッギョ」といったポケモン達はモンスターボールに化けることで、不用意に近づいた多くのトレーナーに被害を及ぼしている。

 そんな擬態であるが、時に獲物を捕らえるために用いられることがある。そのような手段を取るポケモンは、往々にして狡猾であり凶暴であることが多い。

 

 

 

 深い霧が陽の光を遮る沼地。水底には泥が堆積し、不用意に入ればその足を取られることは必至だろう。

 そんな湿地帯では、今まさに命のやり取りが行われていた。

 

ガアァッ!

パッ!

 

 真っ赤な殻に巨大なハサミを携えたポケモンが、頬にヒレを生やした水色の小柄なポケモンを追い回す。どちらもこの沼地に長年生息しているためか、泥の中でも止まることなく滑らかな動きを見せる。

 追いかけられているポケモンはみずうおポケモンの「ウパー」。様々な地域の湿地帯に生息するみずタイプのポケモンであるが、彼は今まさに凶暴な「シザリガー」の魔の手から逃げていた。

 シザリガーはならずものポケモンという異名に恥じない気性の荒さを持ち、さらに水辺であればどのような場所にも住み着くという高い適応能力を持って居るため、様々な池や湖に入り込んではその場のポケモンを追い払おうとするため、嫌われ者のポケモンとして有名である。

 そんなシザリガーがウパーを狙っているのは狩りのため。空腹だったところに偶然現れたウパーを狙って、追いかけまわしているのだ。

 シザリガーはウパーを仕留めようと、巨大なハサミを振り回して攻撃する。その一振り一振りを、ウパーは小柄な体を活かして躱す。時に朽ち木を壁にし、時に長く成長した葦に身を隠し、シザリガーの攻撃から逃れようとする。

 

ガアーッ!

 

 ちょこまかと逃げ惑うウパー。その動きに苛立ったのか、シザリガーは一撃で仕留めるべく全力で右腕のハサミ(クラブハンマー)を叩きつけようとした。だが、

 

ウパッ!

 

 ウパーが素早く横に避ける。その場所へ勢いそのままに叩きつけられるハサミ。それは通常であれば水面に叩きつけられるだけ。しかしこの時は違った。

 

ぬめんっ

 

 弾力のある何かにぶつかったハサミが滑る。勢い良く攻撃した反動で、シザリガーは沼地に足を取られて転んだ。

 その隙にと逃げ出そうとするウパー。逃すまいとシザリガーはすぐに体を起こして追いかけようとするも……

 

メエェーッ!

 

 突然背後からの衝撃を受け、再び沼地を転がる。

 シザリガーに攻撃を仕掛けたのは、ハサミを叩き付けられた何かの正体、ドラゴンポケモンの「ヌメルゴン」だ。普段は温厚なヌメルゴンだが、一度怒り出せばドラゴンポケモン特有のパワーで、手が付けられないほど暴れ出す。

 さっきまでゆっくりと眠っていたヌメルゴンだが、ウパーとシザリガーが走り回る音、そして流れ弾で当たったシザリガーの技に眠りを妨げられ、苛立ちと共にシザリガーへ向けて咆哮する。

 対するシザリガーもヌメルゴンを邪魔な敵と認識したようで、ハサミを振り上げて威嚇する。

 そして同時に二体は攻撃を放ち、ぶつかり合う音が水飛沫を巻き上げた。

 

 

 

 

 

パァ……

 

 そんな二体を尻目に、逃げ切ることに成功したウパー。ずっと逃げ続けて疲れたのか、その足取りは少しふらついているように見える。

 くるぅ……とお腹の音が鳴る。休まずに走り続けたのだから、空腹になるのも当然だろう。何か食べ物は無いか辺りを見回す。

 

パッ!

 

 幸いにも近くには背の低い木に幾つかのきのみが成っている。周りに気配も無い。ウパーは早速そのきのみを食べようと近づく。

 だが自然界で油断は命取りになる。このウパーはまだ若く、それを経験として知らなかったのが、大きな運命の分かれ道となった。

 

キパッ!

 

 突然、ウパーの姿が消えた。否、飲み込まれた。残像すら残さぬほど素早く、茶色い体色を持った何かが、ウパーの体を丸呑みにしたのだ。

 ウパーが気配に気付かなかったのも仕方ないだろう。それはずっと地面に這い、周囲の草木に自らの姿を隠して獲物を待ち続けていたのだ。

 口内で暴れようとするウパーの姿が分かる。しかし悲しいかな、逃げることは決して叶わないだろう。油断をしたが故に、彼はこのままそのポケモンの食料と成り果てるのだ。

 

ンパ……

 

 ウパーを捕食したそのポケモンは、擬態をすることで有名な「マスキッパ」。それがこの沼地に適応した姿である。

 マスキッパは周囲の木に細長い体を絡みつかせて獲物を待つのだが、この沼地には背の高い木は少なく、もしそのような隠れ方をしても身を潜めるどころか、逆に目立ってしまう。そのためR(リージョン)マスキッパは地面に這いつくばり、草むらの中にその身を隠す。茶色い体色も、泥に紛れられるように長い時間を経て変化したものだ。

 他にも、細い手足は原種と形状自体は変わらないが、木に絡みつかせるだけのものでは無く、足場の悪い沼地でしっかりと自らの体を保持するために見た目以上のパワーを持っている。牙もより鋭くなり、獲物を決して離すことは無い。

 Rマスキッパ達はそれぞれ沼地の草むらの中や枯れ木の根元、時には水中で口を大きく広げて獲物を待ち伏せる。静かに、何時間、いや何日もずっと動かずに待ち続ける。そして何も知らない獲物が近づいた瞬間、強靭となった足から齎される瞬発力によって、目にも止まらぬ速度で飛び掛かり、その大顎で獲物に食らいつくのだ。襲われた哀れな獲物は何が起きたかも分からぬまま、Rマスキッパに飲み込まれることとなる。それからしばらくの間、養分をじっくりと時間を掛けて吸い取られていくのだ。

 油断大敵。自然界では決して気を抜いてはならない。もし不用意な行動を取れば、それが人生の最期となるのかもしれないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


マスキッパ
ぶんるいまちぶせポケモン
タイプくさ・あく
たかさ1.5m
おもさ38.8kg
とくせいがんじょうあご
種族値
HP84
こうげき110
ぼうぎょ72
とくこう75
とくぼう72
すばやさ41
合計454

 

おぼえるわざ
レベルわざ名
1しめつける
1せいちょう
7かみつく
11つるのむち
17あまいかおり
21ねをはる
27どくどくのキバ
31トラップファング
37たくわえる
37はきだす
37のみこむ
41かみくだく
47くらいつく
50パワーウィップ

 

 

 

わざ名タイプ分類威力命中率PP範囲優先度直接攻撃効果
トラップファングくさ物理851005選択1体+1相手が攻撃技を選択しており、こちらが先に行動したときでなければ失敗する。




さすがにむしタイプ4倍でむしとりポケモンと名付ける勇気は、私には無かった……。
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